第156回国会 厚生労働委員会 第17号
平成十五年五月二十九日(木曜日)
午前十一時一分開会
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委員の異動
五月二十八日
辞任 補欠選任
朝日 俊弘君 角田 義一君
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出席者は左のとおり。
委員長 金田 勝年君
理 事
武見 敬三君
中島 眞人君
浅尾慶一郎君
山本 孝史君
沢 たまき君
委 員
狩野 安君
斎藤 十朗君
伊達 忠一君
中原 爽君
南野知惠子君
宮崎 秀樹君
森田 次夫君
今泉 昭君
谷 博之君
角田 義一君
堀 利和君
風間 昶君
井上 美代君
小池 晃君
森 ゆうこ君
大脇 雅子君
西川きよし君
国務大臣
厚生労働大臣 坂口 力君
副大臣
厚生労働副大臣 鴨下 一郎君
大臣政務官
経済産業大臣政
務官 桜田 義孝君
事務局側
常任委員会専門
員 川邊 新君
政府参考人
厚生労働省労働
基準局安全衛生
部長 大石 明君
厚生労働省労働
基準局労災補償
部長 高橋 満君
厚生労働省職業
安定局長 戸苅 利和君
厚生労働省職業
能力開発局長 坂本由紀子君
厚生労働省雇用
均等・児童家庭
局長 岩田喜美枝君
経済産業大臣官
房審議官 桑田 始君
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本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の
確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関す
る法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
○参考人の出席要求に関する件
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○小池晃君 短期常用雇用化ということ自体も望ましいことではあるというお話もありましたので、是非こういう施策も、少しでも派遣労働者の雇用を安定化させるということをやはり真剣に検討するべきだということを申し上げておきたいと思います。
その上で、製造業への解禁の問題ですが、請負と派遣の区分の明確化の問題であります。これは元々、派遣法成立のきっかけともなった構内下請の現代版業務請負業だった。今回の法案のやっぱり大きな問題点は、先ほどからも議論あるものづくりへの解禁の問題です。
これ、既にもう大きく広がっているわけですね、実態としては。NHKのテレビでも特集されました。このNHKのニュースでは、別の業種が新たに参入して更に競争が厳しくなることも予想されている、労働者の立場に立った対策が急がれていると、そういうコメントだったんです。
厚労省は、昨年、請負関係の企業や労働者への調査を実施しております。今日は資料3としてお配りをしておりますが、何でこの調査を行ったのか、簡単に御説明をお願いします。
○政府参考人(戸苅利和君) 前回、平成十一年の派遣法の改正の際に、物の製造の業務については、ネガティブリスト化する中で、労働者も多い、労働条件に与える影響も無視できないということで、附則において、省令で外す業務ということでこれまで認めてこなかったわけでありますけれども、この物の製造の業務について、今、委員御指摘のとおり、実際には偽装請負というふうなケースも中にはあるんだろうと思いますけれども、業務処理の請負という格好で製造業の現場に相当数の請負の発注者、それから請負の労働者が働いているわけであります。
そういったところにつきまして、現状を把握し、もし適正な請負で行われていないといったときにどういった対応が必要なのかということも把握し、それから、今お話しのように、請負についてあるいは派遣についてどういったニーズがあるのかという辺りも把握しておこうというふうなことで、実態も含め調査をいたしたわけであります。
○小池晃君 この調査によると、一般の現場労働者の平均勤続年数は三年七か月であります。平均年齢は三十三・四歳、平均月収十九・九万、年収でいうと二百六十三万一千円。非常に厳しい条件だと思います。
このお配りしたアンケートの中身で少し議論をしていきたいと思うんですが、四ページの表30を見ていただくと、請負のデメリットという質問がございます。将来の見通しが立たない四二・二%、雇用が不安定三五・二%、収入が不安定二九・二%、賃金が低い一九%。年収二百六十三万ですから当然だと思うんです。
それから、ちょっと後先になって済みませんが、三ページの表27を見ますと、今後希望する働き方ということでは、正社員として働きたいという方が一般現場労働者で四二%、パートとかアルバイトを希望している人は三・二%しかいません。
そこで、もう一度一ページに戻っていただいて、表11ですね、生産業務における請負業務で使用する機材等の所有者という問いに対して何と言っているか。必ず自社の所有しているものを使用するというのは六・八%しかない。その一方で、発注者のものが多いというのは六一・六%、必ず発注者のものを使用する二四・七%。だから、九割近くは本来は違反となる、これ、人材だけしか供給していないということになるんじゃないか。
こういう実態、これは派遣法違反の実態がかなり広がっているということを示唆するものではないでしょうか。いかがですか。
○政府参考人(戸苅利和君) 派遣と請負の区分基準でありますけれども、これによりますと、自己の責任と負担で準備し調達する機械、設備、器材等により業務を処理することと、こうなっています。
これは、その考え方としては、今御指摘のとおり、請負業者が自ら所有するというケースが中心なんだろうと思いますが、それ以外にも、発注者からの貸借契約を結んで、それによって貸借料を払いということでやっている場合もこれは該当するということだろうと思いまして、そういった意味で、今御指摘のその数字が、すべてが派遣法違反ということではないんじゃないか、請負、適正な請負になっていないということではないんじゃないかというふうに思います。
ただ、正直申し上げて、これだけ製造業の現場に請負業者が入っていますので、適正な請負になっていない、あるいは派遣法違反である、実際は派遣だけれどもやってはいかぬ派遣が行われている、あるいは派遣という形態に照らしても問題があるというケースもあるということは、これは否定できないと思います。
○小池晃君 貸借契約と言うんだけれども、その下の表12で、賃貸契約結んでいますかというのに、していないというのは多いんですよね、大変。ですから、もうかなりこれは派遣法違反という実態がまかり通っているということだと思うんです。
もう一つお聞きしたいんです。表48、一番下ですね、一ページの。これを見ていただくと、指揮命令の問題があります。これ、発注者の従業員からの指揮命令が必ずあるが一一%です。それから、大体あるが一五・五%、さらに、半々程度が二一・五%、合わせて五割近くは発注者の従業員からの指揮命令があるんだと。
一方、これは事業者側の調査ですが、労働者側の調査は四ページにあるんですけれども、四ページの表31を見ていただくと、これは労働者側の調査では、必ずあるというのが二五・六、大体が一九・二%、半々が一〇・一%、これも五割を超えています。逆に、これを見ると、請負事業所の作業リーダー等の現場管理者から指示を必ず受けている、これは必ず受けなきゃいけないわけですけれども、必ず受けているという人は三六・二%しかいないんですね。しかも、このアンケートの取り方には、管理者というものの範囲が作業リーダーも含むとなっていますから、これは請負で送られている人の中の一人を管理者としている可能性もあると。
さらに、また戻って恐縮なんですが、一ページのところの表45、業務請負についての現場責任者の有無というのを見ても、すべての現場に責任者がいるというのは四八・四%しかないです。その一方で、一部の現場に責任者を置いてその者が他の現場を巡回しているというのが四七・九%。
ですから、この請負の基準定める告示に私は明らかに違反する事例、実態がここにはっきり出ていると思うんですね。こういう調査をされたんですから、この後正すことをされたというふうに思うんですが、そこはいかがでしょうか。
○政府参考人(戸苅利和君) 今回の調査は、その実情を正確に、なるべく実態をきちんとといいますか、正確に把握しようということで行ったということでございまして、そういった意味で、違反だということを自分で自覚して違反だという答えをいただけないということになるとますます何のために調査をしたのか分からないということもありまして、そういった意味で、郵送無記名のアンケート調査ということで行いました。
そのために、今のお話のように、かなり実態に迫っているというか、というふうな調査結果になっているんだろうと思いますし、それからもう一つは、労働者のアンケート調査などにつきましては、恐らく労働者の思い込みでこういった回答になっているというケースもあるのかなとも思いますけれども、ただ、いずれにしても、違反があることは間違いないわけであります。
ただ、この調査ということで申し上げますと、そういうことで調査をしたということでありまして、この調査を使って指導監督をするというふうなことは基本的にはいろいろ問題があるんじゃないかというふうに思っていますけれども、ただ明らかに悪質であるというものがあれば、これはやはり必要な指導をしていく必要があるだろうと、こう思っています。
〔委員長退席、理事中島眞人君着席〕
○小池晃君 そこで、今までの議論を踏まえて大臣にお伺いしたいんです。
衆議院の委員会で大臣は、偽装請負がかなりあるのではないかと危惧しているというふうにおっしゃっているんです。今まで非常にあいまいだったと、今まで派遣業を禁止してきたこともあって代替措置と取られかねないというような答弁されているんですね。
このお話をちょっと議事録で拝見して、私、受け取ったのは、大臣は偽装請負というのはこれは製造業に派遣を解禁してこなかったからこういうふうに起こったんだというふうにおっしゃりたいわけでしょうか。
○国務大臣(坂口力君) それはそうではありません。派遣業がないから偽装請負が大きくなっているというふうに私は思っているわけではございません。しかし、現実の問題として偽装請負というのがかなり企業の中に大きくなっている事実は否定し難いというふうに思っている次第でございます。
これはやはり何とか正していかないといけないし、ただ請負業というのは一つのいわゆる法律に基づいて企業の中に入っているというケースではないものですから、ここはどちらかといえば野放しになっているといった嫌いがございます。
ですから、一方におきまして、今回、派遣業として明確にしたわけでありますから、この請負業の方につきましても、これは厚生労働省の範疇なのか経済産業省の範疇なのかちょっと分かりにくいところでございますが、ただし働く人たちの働き方の問題になれば、これは厚生労働省の所管であることだけは間違いがないわけでありまして、きちんとここを見ていかないといけない。今後の問題、どういうふうにここを見ていくかということを考えないといけないというふうに思っている次第でございます。
○小池晃君 私は、前回の当委員会、参議院の当委員会でも、この法案、議論をしたときの附帯決議を見ても、こう言っているんです、偽装請負の解消に向けて、区分の具体化、明確化を図るとともに、周知徹底、厳正な指導監督を行うことと。しかし、これやってきたんだろうかと、果たして。私は、この実態調査の結果を見ても、偽装請負に対する厳正、そして適正な周知徹底、指導監督が行われたとは到底思えないんですよ。
大臣は基準を明確化する必要があるというふうにおっしゃるんだけれども、私は、今なすべきことというのは行政がやっぱり果たすべき役割果たすことではないかと。やっぱり、脱法的な行為がほとんど野放しになってきたということにあるわけですから、私は、参議院の附帯決議にもあったように、徹底した指導監督をこの偽装請負の問題についてもやっていく、そして現状を改めると。
それをすることなしに、言ってみれば、物の製造に派遣を解禁すれば偽装請負が合法化されていくということになっていくということになるわけですから、私は、現状をまず正すことこそ必要なんであって、この脱法的に行われている偽装請負を合法化してしまうようなやり方でもっともっと拡大していくような道を歩んでいくということは、私は正しくないやり方だというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。
○政府参考人(戸苅利和君) これまでも請負を行っている事業所に対する指導監督はやっているわけでありまして、例えば、平成十三年度で申し上げますと、七百六十七件指導監督して、そのうち、違法がある、適正でないということで百十一件に対して文書指導を行っているということであります。
そういった意味で、派遣を製造業に適用するということで直ちにすべての問題が解決するということでは当然ないわけでありまして、適正な請負として行われているのかどうか、適正な派遣として行われているのかどうか、その辺りきちんと点検をして、それ以外のものについては厳しく指導監督をしていくということであります。
○小池晃君 適正な派遣なのかどうか、適正な請負なのかどうか、それぞれ指導監督をするんだとおっしゃる。
しかし、請負について監督官庁、あるんですか。厚生労働省は、請負について明確な監督権限があるのはどこなのかと聞いても、これはどこだという答え、出ないわけですよ、ないわけです。それは、そうですね。
○政府参考人(戸苅利和君) おっしゃるように、恐らくそれぞれの請負の業態ごとに所管官庁はあるんだろうと思います。
ただ、我々としては、行われている、請負と称して行われているものが派遣法に照らしてこれは適正な派遣として行われていないと、あるいは、職安法に照らして労働者供給事業に当たるということであれば、これは職業安定法なり労働者派遣法に基づいてきちんとした、あるいは厳正な指導を行うということは十分可能であります。
○小池晃君 派遣なら派遣、請負なら請負、それぞれきちっとその監督をしていく、強化していくという仕組みがあるのであればまた話は別なんですが、そういう仕組みがあるわけではないわけです。
そういう中で、大臣が言っているように、今までのようにあいまいだったところをはっきりさせなきゃいけないというふうになると、これはやっぱり偽装派遣だったものがどんどんどんどん合法化されていくということになりかねないと。
〔理事中島眞人君退席、委員長着席〕
そして、物の製造への派遣を禁止してきた理由はなぜかというと、これは八百万製造業に派遣を入れると常用代替一気に進むからという、そういう理由だったわけです。それなのに、常用代替はさせないんだと先ほどもおっしゃる一方で、物の製造には派遣を解禁していくと。
私は、こういうやり方は筋が通らないというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(坂口力君) 請負、この請負業の問題は、派遣業から見れば、それは全部その派遣業の中で処理できる話ではありません。したがって、派遣業の中から見て派遣業に違反していないかどうかということを見る以外にないわけでありますから、この請負業につきましてのいわゆる問題というのはもう少し別途考えないといけないというふうに私は思っております。したがって、そこは限界があるということを申し上げているわけでございます。
○小池晃君 ちょっともう少しこの問題続けて聞いていきたいと思うんですが、ちょっと実態で議論したいんです。
これ、二年前になるんですが、光学精密機械メーカーの有名なニコン、この熊谷製作所に入っている請負業者、ネクスターという会社ですが、ここで働いていた当時二十三歳の上段勇士さんという男性が過労自殺されました。で、お母さんがニコンとネクスター相手に裁判を起こしています。
この上段さんのお母さんが大臣に手紙を送ったというふうに聞いております。大臣、受け取っておられますでしょうか。読まれた感想などあればお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(坂口力君) かなり前のお話だと思いますので正確には覚えておりませんけれども、お手紙をちょうだいをしたということは記憶いたしております。
○小池晃君 この男性、上段さんは請負会社で働いていたんですね。このニコンの熊谷製作所というのは半導体の製造機器を造っておりまして、その検査のためにクリーンルームで仕事をしていたんです。請負会社の担当者はクリーンルームには入らなかったそうですから、これは指示全くないわけです。明らかなんですね。日常の仕事はすべてニコンの社員から指示をされていたそうであります。昼夜二交代勤務で十一時間拘束、ほぼ毎日残業、十五日間の連続勤務、労働時間は死亡前には月七十時間だと。体調が悪くてもニコンの医療施設には入れない、利用できない。で、体重が一年四か月で十三キロ減ったそうです。たまりかねて退職を申し出たが、引き延ばされて、そしてついに自ら命を絶ったということなんです。
この裁判は、過労自殺認定と、それから請負と発注者を相手にして使用者責任問うています。で、ニコン側は、これは請負契約だから責任は請負だと言っている。請負会社の方は何と言っているかというと、事実上の派遣だったというふうに裁判では証言しているんです。いずれも責任取らない、押し付け合うという、そういう状況になっている。
確かに、業務遂行方法に対する指示、あるいは労働時間やその他の管理を行うべき監督者、これは現場にいない。作業も機械ももちろんニコンのものを使っているわけです。これは正に送っているのは人だけです。クリーンルームですからもう間違いないわけです。
厚労省にお聞きしたいんですが、こういうケース、もうこれは間違いなく偽装請負ということになるんじゃないでしょうか。
○政府参考人(戸苅利和君) 御質問のネクスターとそれからニコンの熊谷製作所の関係でありますが、これは私どももその投書というか手紙をいただきましたので調べました。調べたところ、これは派遣法違反でございます。
○小池晃君 こういう実態なんです。お母さんのお手紙には法律改正してほしいというふうに訴えておられる。これ、各党党首にもみんな送ったそうです。手紙にはこうあります。社員と全く同じ労働をし、さらに、上乗せ労働を拒否できず、命、人権の保障なく、低賃金、自分の親戚や息子を送りたいとはとても思えない環境です、派遣を労働の底辺にしく発想をやめてください、やめさせてください、夢も技術も育ちません、こんな進み方では日本の未来には何も残りません、気付いたところから軌道修正してください、こういう訴えであります。
現在、この法案の成立を見越してでしょうか、本当に既に報道でも、製造業に次々と参入するという、そういう報道がされているんですね、派遣業者が。そういう動きがもう本当に大きく広がりつつある。国会の附帯決議にも明記された厳正な指導監督がなされていない。そして、先ほど厚労省もお認めになったように、もう正に偽装請負、こんな事件が起こっている。お母さんがこう言っているんです。法があるから安心できるのではない、法に実効性を見いだしたときに初めて安心できるのですと。そのとおりだと思うんですね。
私は、これ、派遣でも請負でも本当にこんな問題が起こっている、それぞれのその規制をやはり徹底的に強化していく、そのことこそ今求められているのであって、今、物の製造に派遣解禁したらば、こういうような事例が本当にどんどんどんどん日本じゅうで起きていくということになっていくんじゃないか、そのことを大変深く危惧するわけであります。
大臣、いかがお考えですか。
○政府参考人(戸苅利和君) このネクスターのことで申し上げますと、これは正直言って、雇用主がどっちだったのかということが、ニコンなのかあるいはネクスターなのかということがはっきりしないわけであります。そういった意味で、偽装請負の問題点というのは、一体雇用主がだれなのか、指揮命令するのがだれなのか、この辺りがあいまいになっているということでありまして、我々としては、むしろ派遣法を導入することによって、雇用主は派遣元であるということがはっきりいたしますし、それから労働条件の管理等は一体どこがやるのかという辺りもきちんと整理されるということで、それぞれの責任が明確になる、いろんな争いがあったときにどっちが責任があるということはより明確になるんだろうと、こういうふうに思っております。
○小池晃君 ニコンはこんなこともやっているんです。こうした事実上の派遣、偽装請負ですね、これ工場内に三百人入れているんです。その一方で、IC集積回路製造のラインで働いていた正社員、こういった人たちを余剰人員だといって出向させているんですよ。出向はどういう形で出向しているかというと、関連会社というんですが、全く直接の資本関係もない業務請負会社なんですよ。アウトソーシング会社に出向させているんです。そして、四十五歳以上の三十人既に出向対象としてなっていまして、既に十二名がニコンの工場から出されて請負会社の請負先、これマヨネーズの製造工場だそうです、そこで製造ラインから落っこった何か廃棄物なんかを集めるという仕事をやらされているというんですね。これ、現場の方は本当に、労働者があきらめて自ら辞めますと言うのを待っているようなやり方だと、本当に人権無視だというふうに怒りの声が上がっているんです。
ですから、派遣を入れているという問題じゃなくて、派遣を入れることによって更に、余剰人員だと称して中高年リストラを、派遣会社に、外に出すというやり方を取っているんですね。私、本当にあきれてしまうわけです。
大臣は正社員を直接解雇して代替することは解雇法理からも起こらないというふうにおっしゃっているけれども、実際、現実に企業の現場ではこんなことまで起こっているんですね、今。正に請負とか派遣制度を使って常用労働者を追い出して、その上、追い出した労働者を請負で使うと。もう請負、派遣で常用労働者をどんどんどんどんもう置き換えているような、こういう実態があるわけですよ。こういう中で、この物の製造に今度正々堂々と派遣が入ってくるという仕組みを作ることが、こういうふうに本当に危険な状況に置かれている今の不安定労働者のこういう実態をますます悪化させるということに私はなるというふうにもう危惧を持たざるを得ないんですよ。
大臣、ちょっとここは大臣、答えていただきたい。こんなことが果たして許されるのかということも併せて大臣、お答え願いたい。
○国務大臣(坂口力君) 現在までの、今お話しになったようなそうしたケースが不法に行われていたということが非常に問題であります。
したがいまして、今回こういう改正をいたしますけれども、今後そうしたことが正々堂々と法の下に行われるように、法を犯して行われないようにどうしていくかということが大事でありまして、各都道府県、今度は労働局でしたね、労働局を中心にして、今までハローワークならハローワークでやっておりましたけれども、ハローワークだけで収まらない話がありますから、今度は労働局が中心になりまして、この派遣業の問題をそれぞれの都道府県でお受けをして、そして解決をしていく、お話を十分に伺っていく、あるいはまたその労働局自身も調査をやっていく、厳正にやっていくというふうにしたいというふうに思っております。
○小池晃君 いや、大臣、今のおっしゃり方で私言いたいですが、今までは違法状態の下で労働者の権利侵害、人権侵害が進んでいた、それが合法的に堂々と行われるというだけになるじゃないですか。こんなことがあっていいんですかと。私は、物の製造に拡大するということは、本当にこういう危険な状態を日本じゅうの製造現場に広げるということになるんじゃないですかというふうに言っているわけです。
私の指摘にはちょっと正面から答えていただいていないんじゃないかと思うんですが、私はこういう中で物の製造に派遣を広げていくというのは本当に不安が募るばかりであります。
しかも、こういうそのことが先ほどもあったように進んでいった場合に、日本のものづくり、日本の将来の労働というのは一体どうなっていくのかという問題であります。ものづくりが継承されなくなるんじゃないか、青年の雇用がずたずたにされていくんじゃないかということです。
例えば、いろんなチラシがまかれているんですね。東北地方などでは、本当に高卒の人たちなどに対して、高校生たちに対してもうチラシが一杯配られているそうであります。中見ると本当にいいこと書いてあるんです。技術も身に付くからスキルアップもできるよというような形でスタッフ募集というようなチラシがまかれている。しかし、こうしたところで本当にまともな教育訓練というのは行われているんだろうか。
先ほどのアンケートへ戻ると、請負労働者の調査、四ページの表の33というのがありますが、ここでは仕事に関する教育訓練を受けていないという人は二七・三%であります。その次のページの表35を見ると、教育訓練を受けたという人でも、受けた日数というのは大体一日から二日が四五・九%なんですね。だから、全体で見ると六割が未教育か一日か二日のごく簡単なものでもう配属をされています。
有給休暇あり、寮完備、こんなチラシもあるんですが、これもくせ者です。これ、休暇申込みは一週間前に届ける、ラインに迷惑が掛からないと判断したときとなっているんです。だから、事実上取れないわけですね。受注先との契約終了時に次の配属先が見付からないとなった場合は即刻解雇です。寮も引き払えと言い渡される。満足なお金持っていませんから、これは引っ越しのためのお金、あるいは当座の生活費をサラ金に頼らざるを得ない、こういう青年の声も聞かれています。こういう悪循環がどんどんどんどん広がっているんですよ。これは実は先ほど自分の息子さん亡くされた上段さんが今全国の実態を調べていらっしゃるお話聞いたものであります。このアンケートの結果と私は合致すると思うんです。
大臣、お伺いしたいのは、こういう派遣労働、まともな教育訓練も行われないままこういう労働がどんどんどんどん青年の間で拡大していくということになれば、私はこれは日本の将来にとって決していいことだとは思えない。こうした実態を果たして放置してよいのか。大臣、いかがお考えですか。ここは大臣、答えてください。
○政府参考人(戸苅利和君) ネクスターの件で申し上げれば、先ほどのお話のとおり、一体どっちが雇用主なのかということを、お互いにおれは雇用主じゃないということを争っているということだろうと思います。そういった意味で、先ほど大臣申し上げたのは、派遣法になればこれは派遣元たるネクスターが雇用主であるということは紛れもない事実になるわけでありまして、そういった意味でそれは逃れられないということになり、労働者が守られるということだと思います。
それから、求人広告についてはこれは職安法で、とにかく虚偽の広告をした場合は、これは職安法違反になりますので、これも厳しく対応していくということだろうと思います。
それから、教育訓練につきましても、これは派遣法が適用ということになれば、やはり派遣元の責務として教育訓練を一生懸命やる、それから派遣先にも協力をお願いして教育訓練をやるようにと、こういうことになりますので、少なくとも現状の偽装請負よりは労働者にとってのメリットは大きくなるというふうに思います。
○国務大臣(坂口力君) 法律を守らない話は、これはもう別な話でありまして、いわゆる働く人たちの選択肢を広げるという問題とそれからでき上がった法律を守らないのとは、それはもう別の話でありますから、これはもう法律は守る、ちゃんと守るようにさせなければいけませんし、厳しく取り締まらなければいけないというふうに思っております。
○小池晃君 私は日本の将来のことを聞いたんですけれどもね、このままでいいのかと。そのことについての大臣の基本的な見解をお聞きしたかったんですが、ちょっと時間がないので。
ちょっと確認したいんですけれども、先ほどからお話ありましたように、請負業に対する監督権限ないのは問題だと、これは考えるということでありました。私、これはひとつしっかり考えていただきたいのと、併せて、派遣労働者の権利を守るために職安行政の中に労働基準監督官と同様に司法権限を持つようなセクションを作って、やはり申告に基づいて厳正、的確に違法な事業者は摘発するんだというような仕組みもやっぱり検討していく必要があるんじゃないか。これだけ派遣労働広がっている中で、やはりきちっとこういったものを摘発をし、労働者を保護していく、やはり政府の中に監督権限を持つ部署を作っていくということと、やはりこういうセクションを設けていく、これは検討すべきではないかと思いますが、これはいかがですか。
○政府参考人(戸苅利和君) 派遣法の指導監督については、先ほど大臣も申し上げましたように、ハローワークに分掌しております今の指導監督を都道府県労働局に集中して専門的に対応していこうと、こういう考え方でやっておるところであります。今後、物の製造業ということになると、安全衛生法上の問題、それから基準法上の問題等々も出てくる可能性もあるわけで、そういったものについては当然労働基準監督官が厳正に対処するということになると思います。
そういった意味で、我々としては労働基準監督行政との連携、これを強固にしていくと、それから労働局に集中するということで適切に対応してまいりたいと、こう考えています。
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