○委員長(尾辻秀久君) 次に、市田忠義君の質疑を行います。市田忠義君。
○市田忠義君 日本共産党の市田忠義です。
今、雇用を取り巻く状況というのは、かつて経験したことのないような異常な深刻な事態であります。これが格差社会の根本問題の一つにもなっているわけですが、まじめに努力して働いても働いても貧困から抜け出せない、そういう人が大量に増えている、社会問題化している、いわゆるワーキングプアと言われる存在ですけれども、総理にまずお聞きしますが、ワーキングプアとは一体どういう状況の人々のことで、総理としてどういう認識、対応を考えておられるか、まずお聞きしたいと。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先般、たしかNHKの番組だったと思いますが、ワーキングプアの特集の番組がなされまして、大きな衝撃を与えたというふうに私は聞いております。つまり、一生懸命頑張って働いているけれども、給料が大変低い水準にとどまっているということだと思います。
近年、このワーキングプアと呼ばれる人々が増加をしていると、こういう指摘があるわけでありますが、給与所得三百万円以下の者の数が平成十七年度で千七百万人であるとの報告を受けています。そうした中には近年増加している非正規雇用者が相当数含まれているのではないか。これはやはり、近年のこの非正規雇用者の増加というのは、経済産業構造の変化や、また場合によってはこの価値観の変化ということもあるのではないかと、このように思っておりますが、いずれにいたしましても、このフリーターなど若者を中心に低所得の非正規雇用者が増加をしていることは、これは将来の格差の拡大につながっていくわけでありまして、十分に注意が必要であると、こう認識をしております。
そのために、ワーキングプアと言われている若い方々が、この非正規雇用から正規雇用に移っていく可能性をもっと拡大をしていく環境をつくらなければならないと思っております。具体的には、フリーター二十五万人常用雇用化プラン等により、正社員への転換を推進して、二〇一〇年までにピーク時のこのフリーターを八割までにしたいと思っております。また、ハローワークにおいて正社員としての就職の支援を積極的に支援をしてまいりたい。また、正規、非正規の労働者の均衡待遇を何とか、その均衡待遇に向けて法的整備を含めて検討をしていきたいと考えています。
○市田忠義君 国税庁に確認しますが、年収三百万円以下という極めて低い賃金の労働者がこの五年間でどれだけ増えましたか。
○副大臣(富田茂之君) 国税庁が実施しております標本調査によります民間給与実態統計調査の結果によりますと、一年を通じて民間企業に勤務した給与所得者で年収三百万円以下の人数は、平成十二年は一千五百七万人でありましたが、平成十七年は一千六百九十二万人であり、百八十五万人の増加となっております。
○市田忠義君 この五年間で百八十五万人増えたと。全労働者の四割近くなったわけですが、改めて総理、どうしてこういう低所得層が急激に五年間で増えたのか、お答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 確かにこれ増えてはいるわけでありますが、その前から、この五年以前からそういう傾向はあったわけでありますが、それは先ほど申し上げましたように、経済、産業の構造が変わってきていることも一つ大きな要因でございますし、またもう一つの要因というのは、価値観について、働くことの価値観も随分変わってきたのではないかと思っております。
○市田忠義君 働き方の価値観の違いと。希望してワーキングプアになりたい人がどこにいるかと。私は、現実を見ない暴論だと思うんです。
不安定雇用の若者がどういう働き方を望んでいるか。内閣府、二〇〇六年の国民生活白書、どう述べていますか。
○政府参考人(西達男君) 平成十八年版国民生活白書におきましては、正社員を希望するパート、アルバイトを中心に転職希望者が増加していると指摘をしておりまして、具体的には、転職希望者は一九八七年から二〇〇二年の十五年間で百二万人増加したが、現職がパート、アルバイトである転職希望者の増加、九十二万人増によりそのほぼすべてが説明できると指摘しております。
なお、現在、パート、アルバイトで将来、正社員になりたいと考えている人は多いとの指摘もしておりまして、これは、具体的には内閣府で行いました多様な働き方に関する意識調査を基に指摘をしておりまして、例えば現在、パート、アルバイトとして働いている二十代男性のうち八五%が十年後に正社員として働くことを希望しておりますし、十年後もパート、アルバイトとして働くことを希望している者はゼロ%となっておるところでございます。
○市田忠義君 もう数字が明確だと思うんですね。
非正規労働者というのは今千六百万人、そのうちの八割が年収百五十万以下なんですよ。しかも、不安定な働き方を強いられている人のほとんどは、今も話があったように、正社員で働きたいという希望を持っている。ところが、その希望がなかなかかなえられないと。
どうしてかと。原因は雇う側にあります。働き方の多様性じゃないんです。みんな正社員にできればなりたい。安い給料で必要なときだけ雇って、昇給も昇格もない、いつ首切っても平気だと。企業にとってこれほど使い勝手のいい労働者はいない。自動車や電機など日本を代表するような企業でも、実際に工場で働いている人というのは正社員は少なくて、派遣だとか請負だとか契約社員入り乱れて働いているというのが現状であります。
総理に改めてお聞きしますが、派遣や請負で大企業の工場に送り込まれている労働者がどんな働き方をさせられているか、知っておられる範囲で結構ですから、お答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 詳細については厚生労働大臣からお答えをいたしますが、いわゆる大企業のこれは製造業の現場についてのお話なんだろうと思います。もちろん、製造業の現場では、その大企業の正社員の方々も働いておられると思います。それと同時に請負の方々が、言わば、まあいわゆる協力会社的な立場で働いていると思います。その中で、近年いわゆる偽装の請負の問題が指摘されたところでございます。
○市田忠義君 私は現実をもっと直視していただきたいと。NHKのワーキングプアをごらんになったんだったら、どういうあれを見て感想を持ったかというのを自分の言葉で語っていただきたかったというふうに思うんですけれども。
あれは派遣や請負で働く人々に共通する姿であって、例外じゃないんですよ。例えば、神奈川県内の自動車メーカーで派遣労働者として働いている人、時給は千二百円、工場のラインで塗装の傷やほこりを点検する仕事、昼間は八時から十七時まで、夜は二十時から翌朝の五時までの勤務が一週間置きに組まれる。時差ぼけから疲れが取れない日々が続いたと。仕事が遅い人は容赦なく首です。月収は二十万円。何か一見高いように見えるけれども、派遣会社が管理している三LDKの寮に三人で共同生活です。給与から寮費が五万円引かれる。布団代、共同使用の洗濯機、冷蔵庫、テレビの利用料で一万円引かれる。水道光熱費で一万円引かれる。そして、所得税や社会保険料引かれると、手取りはわずか十万円です。ある日、四十度の熱で寝込んだら、派遣会社からマスクをしてでも仕事に行けと、そう言われたと。ついに倒れたら、もうおまえは要らないと、寮から出ていけと。新たにアパートを借りるお金もなくて、この人はホームレスになったと。日本を代表する大企業の生産現場でこういう働かせ方が広がっている。総理は異常と思われませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 基本的に、もちろん労働基準法に違反する働き方をさせているのであれば、直ちにそれは法の執行をしなければならないと、このように思うわけでありますが、いずれにいたしましても、いわゆるワーキングプアと言われる人たちを前提に言わばコストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それはもう大変な問題であろうと、このように思います。
言わば非正規の方々も正規への常にチャレンジができるという状況をつくっていくことにおいて、企業も積極的に向かい合うことによって、むしろ長期的、中長期的には企業の私は基本的に信頼感は高まり、また基本的には活力も高まっていくのではないかと思います。
○市田忠義君 こういう事態を異常と思わないかと聞いたのに、どう認識されているんですか。異常と思うんですか。いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今おっしゃったような例が特定の企業で続発をしているということであれば、それは異常だと思います。
○市田忠義君 私が今紹介したのは極端な例じゃないんです。氷山の一角なんですよ。だから社会問題化しているんですよ。そういう認識では、私は、
今の実態、改善できないと思うんです。
こういう働かせ方を可能にしているのが派遣や請負そして偽装請負です。我が党は、この間、偽装請負問題でこの予算委員会を始めいろんな委員会でも繰り返して追及してきました。今月三日、ついに大阪労働局が派遣会社を偽装請負で行政処分しました。何が問題で、だれを処分しましたか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) ただいま御指摘の大阪労働局による処分の対象会社につきましては、労働者派遣法に違反する請負を継続していたこと、労働者派遣法第五十条に基づく報告徴求に対して正しくない報告を寄せていたこと、平成十七年六月に既に業務改善命令を発出していたにもかかわらず遵法体制が十分確立されていなかったこと、こういうことが明らかになりました。このため、本年十月三日、大阪労働局長は、この企業に対しまして、企業の姫路営業所については一か月間、その他の事業所については二週間の事業停止、これは新規の契約を排除するというものでございますが、そういうことを命ずるとともに、請負事業の総点検と是正、違法な労働者派遣の再発防止措置、遵法体制の整備等を内容とする事業運営の改善命令を発出したところでございます。
○市田忠義君 何という企業ですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 株式会社コラボレートが対象でございます。
○市田忠義君 コラボレートが派遣していた受入先の企業はどこですか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) この会社は一つの企業グループのメンバー企業でございまして、そのグループ会社の名称はクリスタルコーポレートかと存じます。
○市田忠義君 聞いていることがお分かりになっていないんじゃないですか。それは、コラボレートというのは労働者を派遣した会社なんです。受け入れた企業はどこですかと聞いているんです。
○政府参考人(高橋満君) ただいま大臣がお答えをいたしました処分事案にかかわっての株式会社コラボレートが派遣をいたしました事業所の企業にかかわる情報でございますが、これは個別企業にかかわる情報でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
○市田忠義君 そういう姿勢だから問題がなくならないんですよ。どうして企業名公表できないのか。問題があるから調査に入ったんでしょう。駄目ですよ。
○政府参考人(高橋満君) 派遣事業におきましては、許可の対象になっておりますのは派遣元事業所でございます。今の事案で申し上げますれば株式会社コラボレートでございまして、ここの許可事業所にかかわっての行政処分ということでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
○市田忠義君 何という情けない姿勢かというのが浮き彫りになったと思うんです。
コラボレートというのは、クリスタルという人材派遣グループの中核的な企業ですが、このコラボレートは、実際は労働者派遣であるのに請負を装っていた。労働者派遣と請負では、労働者を実際に働かせているメーカーにとってどこが違うのか、柳澤大臣、もう少し簡潔に分かりやすく、テレビをごらんになっている方に説明してください。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 請負契約というのは、委員も御承知のとおり、ある一つの仕事を完成するということを請け負う。そして、それが契約上の債務です。そういうものでございますが、他方、労働者派遣法というのは、一人一人の労働者を雇用している先から派遣先に派遣をさせると、こういうものでございます。一番端的に言えばそういうことでございます。
○市田忠義君 全く質問を聞いておられないんですかね。ユーザー、それを受け入れた企業にとってはどう違うのかと聞いているんですよ。ちゃんと昨日も質問予告しておきましたよ。
○国務大臣(柳澤伯夫君) これは、受け入れた企業においては、ある一つの仕事、例えばメーカーであったらこん包なぞの部門が請負で下請に出されることが多いわけですけれども、そういうようなことは専門のこん包会社がやるのが非常に効率的であると、こういうようなメリットがあると、こういうことです。
それから、派遣の職員の場合には、通常そういう特殊、特別のいろんな知見を持っているような労働者を必要なときに必要な期間使うことができる、こういったことが原則的に受入先のメリットだろうと、このように思っております。
○市田忠義君 まだ分かっておられないと思うんですけれども、派遣の場合には労働安全衛生にかかわる使用者責任がメーカー側には発生するんです、一応ね、ひどい働かせ方をさせられているけれども。そして、一年以上派遣が継続した派遣労働者に対しては、メーカー側は、直接雇用いたしますという申入れを労働者に対してしなければならない義務を負うんです。請負はそういうことは一切要らないんですよ。労働安全衛生にも何の責任を持つことも要らないし、どういう期間働かせようが、正社員になりますかというようなことを申し入れる必要もない。ほかにもいろいろ違いはある。社会保険に入っているか入っていないかと。一番大事なポイントを、今一番問題になっていることを全然お答えになってないんですよ。
クリスタルは、請負を装うことで受入先である電機や自動車などの製造会社の負担を軽くしてやるというやり方で急速に業績を伸ばした、そういう会社なんです。このグループのオーナーが系列会社に徹底する人生観と経営姿勢、私読んで驚きました。こう書いてあります。大競争に勝ち残り業界ナンバーワンになるには、プロは規制緩和の違法行為が許される、境界線で勝負する、第三者に迷惑を掛けない違法やうそは許される。違法の勧めそのものであります。
このクリスタルグループは、以前、大門議員が予算委員会で質問しましたが、給与の前借りをした労働者から返済利子を取ることまでやっていたと。当時、厚生労働大臣は予算委員長の尾辻委員長でした。尾辻委員長はそのときにどう答えられたか。労働基準法違反は許されないと、しっかりと調べる、そう答弁されました。調べましたか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 私は、市田委員の質問を真っ正面から受け止めているんですよ。どういうことが受入先のメリットかといったら、私が今言ったようなことがメリットだという、まず第一にそれを答えるのは、私は当然だと思いますよ。
この調べたかという質問に対しては、調べて、先ほど私が触れたような業務改善命令等を発出したと、それでなお、それが十分に矯正されないということの下で今度のような処分につながったというふうに私は理解しております。
○市田忠義君 ということは、金貸し業までやっていたということが明らかになりました。
クリスタルグループというのは違法のデパート、そう言ってもいい名うての問題企業だ。ですから今度の行政処分にもなったわけですが、ただね、ここで問題なのは、そのコラボレートを使って偽装請負の一番の恩恵を受けていたのはだれかというと、労働者の供給を受けている製造業者なんです。そのメーカーの側でも、コラボレートからの労働者の受入れが法律に違反する偽装請負だと十分認識していたはずなんです。偽装請負というのは、労働者を食い物にして派遣会社も受け入れる企業も双方が利益を上げる、言わば法違反の人入れ稼業そのものであります。
で、パネルを出してもらいましたが、(資料提示)受け入れる企業は正社員を一人雇えば、ここに書いてあるように、年金や健康保険料などの福利厚生費を含めると時給で大体三千五百円掛かる。これを派遣会社から派遣してもらうときは二千五百円で契約をする。ここで製造業者は一千円もうけると。派遣会社は労働者に千円しか払わない。ここで千五百円もうけると。ここももうかるし、ここももうかると、一番損するのはここなんです、直接雇用すればこうなるのに。
こういう仕組みが派遣請負の仕組みなんです。自分の工場で働いている人間に対して何の責任も負わない。先ほど具体的な事例を紹介したように、ほとんど前近代的な労働条件に置かれている、そのことにも何の関心もユーザー側は示さないと。社会保険に入っているかどうかも、本来自分たちが責任を負わなければならない自分の企業内で働いている人の安全と衛生にも全く関心、責任持たない。ただ部品のように、物のように働く人を扱って恥じないと。私は、これはもうモラルハザードとローハザードも極まりだと。総理、そう思いませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) それはいろいろな例があるでしょうけれども、もし経営者がまるで働いている人間を部品のように考えているんであれば、それは私は間違いだと思います。
○市田忠義君 厚生労働省に聞きます。
コラボレートから労働者の供給を受けていた企業はどこか、またどれぐらい受けていましたか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 我々が処分をしたのは株式会社コラボレートでございまして、その労働者派遣なり請負の事業の現場がどこであったか、どの企業の中にあったかということについては、私どもとしては、将来の行政の正しい運営というものを考える中から、細目にわたって御説明をするのは差し控えさせていただいておるところであります。
○市田忠義君 余りにも無責任だと思うんですね。私は、クリスタルグループが一体どれだけのメーカーに何人労働者を供給していたかを示す資料を入手しました。それによると、全国で千九十一の事業所におよそ四万三千人の労働者を供給している。決して例外的なことじゃなくて、日本の製造業全体を深くむしばんでいる実態が明らかになりました。クリスタルグループが労働者を供給している企業には、当然クリスタル以外の他の人材派遣会社からの供給もある。その数は十万二千七百三十七人にも及ぶということが入手した資料の中で記されている。一見華やかな日本の製造業の現場では、これだけの数の派遣や請負労働者がまるで女工哀史を思い起こさせるような前近代的な劣悪な労働条件で働いている。
私は、クリスタルグループから百人以上の労働者の供給を受けている事業所を抽出してみました。これがそのパネルですが、(資料提示)百一事業所もあるんです。その大半がしかも請負なんです。ちょっと小さい字なので分かりにくいと思いますが、その大半が請負であります。松下グループが二千七百一名、キヤノングループが三千三十三名、ソニーグループは千四百八十五人、東芝グループは八百五十五人であります。
今の製造現場の実態からして、メーカーの側の指揮監督なしで労働者を働かすということはできないわけですから、純粋な請負などは製造現場、ラインではないんですね。ほとんどが偽装請負というのは、これは明白なんです。派遣事業者はもちろん、その業者からも派遣や請負労働者を受けている製造業者も違法な働かせ方で不当な利益を得ているわけですから、だから、受け入れている製造業者に対しても厳正な指導が必要だと思いますが、いかがですか。
総理、これお答えください。
○国務大臣(柳澤伯夫君) これは、法に基づいて私どもは行政を展開し、また必要に応じて司法的な手続の発端を作っているということでございますので、そのように御理解をお願いしたいと思います。
○市田忠義君 偽装請負と認定されたということは、要するに実態は派遣だったという認定を受けたということなんですよね。だから、製造業者に一年以上派遣した場合には、受け入れたユーザーは、いわゆるメーカーの側に新しい責任が生じますね。どういう義務が生じますか。
○政府参考人(高橋満君) 一般論でお答えいたしますが、派遣を受け入れた事業所におきまして偽装請負と言われる派遣法違反が、もし事案が生じました場合には、派遣元への指導のみならず、派遣先への指導ということも私ども、先ほど大臣御答弁ありましたように、やっておるわけでございます。そういう指導の結果として、十分に派遣先の対応がなされない悪質な場合については、派遣法に基づきまして勧告というものができることになっております。
○市田忠義君 製造業者に一年以上派遣した場合にはメーカー側にどういう義務が生じるかと聞いたんです。
○政府参考人(高橋満君) いわゆる派遣労働者の雇用の安定を図るという意味で、一年を超えて派遣が行われる場合、派遣先の雇用、直接雇用ということに対する努力義務が生じてくるところになります。
また同時に、これ一年以上というのは努力義務でございますが、同時に、それぞれの業務について派遣期間が制限期間のある場合の業務につきまして最高三年まで認められておりますが、この三年を超えて派遣を受けたいという場合につきまして、これは同時に申入れをしなければならないという規定になってございます。
○市田忠義君 そういう義務が生じるんですよ。だから、偽装請負だったということは派遣だったわけですから、そういうことが分かったら、一年以上過ぎた場合には、正社員として働く意思がありますかという申し入れる義務が生じるんですよ。
私、総理は再チャレンジと度々言われます。働いている人にそういうハッパを掛ける前に、今ある法律を厳正に活用するだけでも数万、数十万という単位でワーキングプアと言われている劣悪な環境に置かれている若者を安定した生活に戻すことができるんです。
私、総理に言いたいんですが、メーカーに対して直接雇用への働き掛けをそれこそ厳格にやるべきだと。本会議での私の質問に、そういう場合は厳格に、厳正にやりますとおっしゃったわけですから、メーカーに対しても直接雇用への働き掛けを厳格にやるべきじゃありませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今委員が御指摘のいわゆる偽装請負等につきましては、法令、労働基準法に反しているのであれば、やっぱり適切に厳格にこれは対応していかなければならないと思っております。
○市田忠義君 企業側、受け入れたメーカー側、企業側にも厳正な指導をやるということを総理言われました。確認しておきたいと思います。
次に、こういう事態が日本じゅうに広がったのは企業の要求だけじゃないんです。政府の後押しがあった。特に、二〇〇三年の労働者派遣法の改定で、それまで禁じられていた製造業への労働者派遣が認められることになった。そのことが一気に製造現場での派遣、請負の拡大を加速した。
厚生労働省にお聞きしますが、製造業への労働者派遣を行う事業者は、〇四年三月時点では幾つ、〇五年三月、〇六年三月、それぞれ幾つかお答えください。
○政府参考人(高橋満君) お答えいたします。
製造業務に派遣を行う旨の届出を行っておる事業所の数でございますが、それぞれ三月時点で申し上げますと、二〇〇四年におきましては六百十三事業所、二〇〇五年におきましては四千三百三十七事業所、二〇〇六年におきましては八千十六事業所となっております。
○市田忠義君 二〇〇三年に労働者派遣法の改悪があって、製造業にも派遣労働者を雇い入れていいと。で、二〇〇四年から施行されたんです。そこから急激に増えている。実に十三倍ですよ、今の数でいきますと。この大本を正さない限り、幾ら総理が再チャレンジを叫んでも、今進んでいる異常な事態は決して改善されないと。
元々、一九八五年に労働者派遣法が作られたときも、その後の改正でも、〇三年までは製造業への派遣を認めていなかったと。その理由は何だったか。
当時、一九九九年四月二十八日、衆議院労働委員会の当時の渡邊職業安定局長のその部分の答弁、読み上げてください。
○政府参考人(高橋満君) 平成十一年四月二十八日の政府委員の答弁でございますが、製造業におきます派遣の適用につきましては、特に製造業の現場にこれを適用することについて、強い懸念が表明されたところであります。したがいまして、改正法案におきましても、こういった意見に留意をいたしまして、製造業の現場業務につきましては、当分の間、労働省令においてこれを適用しないこととするというふうにしておるところであります。これは、特に製造業において、今委員御指摘ありましたように、いわゆる偽装請負というふうなものがまだ存在するのではないか、こういった懸念があるために、今回もこういった措置になったというふうに理解しております。
○市田忠義君 政府自身が懸念していたとおりの結果が出たわけであります。製造業への解禁で偽装請負は減るどころか一層蔓延することになったと。やってみて心配していたとおりの誤りがはっきりしたんだから、元に戻すべきじゃありませんか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) いずれにいたしましても、法令に反した行為が行われているのであれば、それは断じて許すわけにはいかないわけでありますから、この法令に反した行為に対しては政府としてしっかりと対応してまいります。
○市田忠義君 製造業にも派遣を認めたと、その結果どういう事態が起こっているか。
去年、東京労働局の調査で、派遣会社の法令違反と業務請負会社の法令違反はどれだけありましたか。
○政府参考人(高橋満君) お答えいたします。
東京労働局が二〇〇五年度に行いました指導監督状況でございますが、労働者派遣事業にかかわります八百七十五事業所のうち七三・七%、また業務請負にかかわります百七十五事業所のうち八四・六%、合わせますと七五・五%の事業所で労働者派遣法等の違反が見られたことから、是正指導を実施をいたしたということでございます。
○市田忠義君 いわゆる法令違反が減るどころか、ほとんどの会社が法令違反だったということを今の答弁で認められたわけです。非人間的な働かせ方が横行しているのは自然現象ではない。その土台に労働法制の規制緩和があったということは事実が証明している。政府は全く政治の責任を感じていないし、この問題は非正規の人だけの問題じゃないんです。家族も深刻です。
じゃ、正規労働者が恵まれているかというと、もっと下の人がいるからあなたたちも我慢しなさいと、長時間労働、低賃金で、成果主義賃金を押し付けられて、心の病の人が大変増えている。しかも、社会保障の支え手を土台から崩すことにもなる。技術の継承もできない。これは物づくりにも否定的な影響を与えるし、日本社会と経済の発展にとってもゆゆしき私は事態だと。やっぱり人間らしい働き方のルールをきちんと確立する、そして今あるルールをきちんと守らせる、これこそ政治の責任だということを強く指摘して、質問を終わります。
○委員長(尾辻秀久君) 以上で市田忠義君の質疑は終了いたしました。(拍手)
|