『陳述書』

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	（５）平成10年７月　勇士は、平成10年７月20日から８月４日まで、仙台の古川に２週間の長期出張に行っていました。　７月19日（日）、勇士から電話があり、�あしたから25日まで古川に出張だよ。帰りに寄ろうと思っているんだ。疲れているけど出張すると残業代っていうか、お金は結構入るからね。貯金の為にも頑張るよ�と言っていました。　勇士は、留学の為の費用は大切に貯めようと思っていたようです。ただ、この頃は仕事の合間にしようと考えていた勉強も全く時間が取れず、トレーニングも料理も、勇士の好きな事は何一つ出来ない状態でした。７月26日（日）、勇士は、電話で�出張延びるって。こっちに長くいそうだ。こっちの作業はほんと辛い。朝から夜中までだよ。夜２時過ぎだもの毎日ホテル戻るの。起きたらもう又って感じでさ。ご飯食べられないよ。睡眠４時間ぐらいだ�と言っていました。　出張は、始まる時期も終わる時期も、全て前の工程の関係で必ず予定変更になっているようでした。　出張は、する前もしている最中も、落ち着かない様子でした。勇士は、�いつも通りに出張が始まらないとそれへの待機の為に生活パターンが狂わされ、休日も開けて待っているのでリフレッシュできない�と言っていました。　７月28日（火）の夜は、勇士は、出張先の古川から、岩手の実家に来て一泊しました。この時、私は、駅前の回転寿司に連れて行きました。就職前は普通30皿は食べていたものが、６皿のみで私より少なくなっていました。食べたものもかっぱ巻きや納豆巻き等でした。以前に増して顔色が悪く、頬だけでなくこめかみあたりの肉もやせ落ちていて、目がとても大きく見えました。　勇士は、�ほんとは明日の朝ゆっくり鈍行で来ようかと思ったんだけど、こっちでゆっくり眠りたかったから。急いで来た�と言いました。　岩手の祖父母が勇士の形相にびっくりして、�大丈夫か�と声をかけると、勇士は�眠くてグラグラする�と言っていました。　勇士は、�胃の調子？　いいんだろうか。悪いんだろうか？　とにかく義務的に食べている感じだよ�と話し、私にも、�眠くてグラグラする。寝るのがやっとだもの。今回の出張もすごいよ。ほとんど寝れないよ。夜２時頃帰って来て４時間ぐらいしか寝れない。おかあさんと一緒の時みたいに８時間寝るなんてもう無理だ。出張は昼勤てことだけど、夜12時過ぎるから夜勤のような感じがする。体の調子最悪。ホテルの部屋で、帰って何か食べないとと思って、調理パン一個買って食べた。あんまり疲れててパンをかじりながら寝てしまった�と話していました。　また、勇士は、�ホテルに帰ってきたらもう食事は無理だ。夜遅くに食べると朝まで胃が痛い。何も入れないと余計辛いかと思って、消化の早いパンとかうどんにして少し食べている。くわえたまま寝るのも参るし�と言っていたのが印象に残っています。　７月29日（水）一泊しての翌朝、勇士は、祖父母より早く朝５時頃にはもう起きていたようです。朝のご飯をゆっくりかみ締めながら、ぼんやり外を眺め、�鳥の声を聞きながらご飯食べるってやっぱりいいよ～�と言いました。朝食を一膳、ゆっくり時間をかけて食べました。就職前は三膳が普通でした。その日の昼食は、みんなで外食にしました。勇士はそこでも一人、最後まで時間をかけてゆっくり食事をしました。そして、昼には古川の出張先に戻って行きました。　勇士は、休日であるにもかかわらず翌日の30日には、また出勤しています。
	（６）平成10年８月　８月４日（火）、勇士から電話がありました。仙台への出張が終わった直後でした。　勇士は、　�今、熊谷についた。同期の人が全部解雇が決まった。この前からリストラの話は出ていたけど。来月自分もそうなるかもしれない� 　�皆、半年も経たないうちから解雇の話をされ始めた。こうやって出張とか一生懸命頑張っているのに。ニコンは見通しも立てずに派遣社員をたくさん採用し、勝手にクビを切って行く。派遣社員って使い捨ての便利な社員ってことなんだ。どこにも文句を言えず、追い出されていく。最初の就職なのに大変なところへ来たようだ。初めての一人暮しで張り切っていたのに� 　�頑張らなくてはやばい状態だ。アルバイトよりひどい扱いだ。使い捨てにならないためには、期待された仕事をこなし続けるしかない� と話し、ニコンでのリストラに相当ショックを受けていた様子でした。　勇士のニコン以外の仕事の経験は、学生の時のアルバイトだけです。いきなり身近な人達がリストラの対象になり大変に動揺していました。　勇士は、�俺だけが残ったのは今の仕事の評価だからか？　残業や出張断ったら俺もクビだろう�と、本人がこんなに激怒しまくし立てるのは、初めてのことだったので、私は大変驚きました。　勇士にとって、自分一人が解雇の対象にならなかった、という現実は解雇された以上のショックになったようです。何に気を付ければ解雇にならないのか、というせっぱ詰まったものを私は感じました。　この頃の勇士は、各月ごとに、�今月はセーフだった�とか、リストラ対象とならなかったことを一喜一憂するようになっていました。　８月８日（土）、勇士から、電話があり、�ＩＢＭのパソコンを注文した。後で届けてもらう。いろいろやってみる。楽しみ�と言っていましたが、他方、�相部屋のＨさんも解雇になった。もう部屋にいないんだよ。すごい量の就職雑誌がある。あの後どうなったんだろう。就職雑誌にふるさとの所にマークついてるから、田舎に帰ってるんじゃないか。俺も同じようになるのかな。ほんとどうなるんだろう�と嘆いていました。　私もよく分からないし、一緒になって不安な思いでした。　８月13日（木）、勇士は、�ここ数日は昼勤だったから、落ち着いて食事作って食べてるよ。ごぼうって皮取るんだっけ？�と、前日来のせっぱ詰まった感じの口調ではない電話があり、ちょっと体調は落ち着いているかなと思いました。　８月14日（金）勇士から、�きょうは臨時出勤だよ。頑張ってくる�と電話が入りました。　８月15日（土）、勇士から、�パソコンが入ったよ。取り組むぞ�とても嬉しそうな明るい声でした。私は、勇士が出張から戻り、昼勤になって少しほっとしましたが、また二交替勤務に戻ると、慢性的な疲労感、日中の眠気等を訴えるようになりました。　８月20日（木）、勇士から電話がはいりました。　勇士は、 �二交替に戻った。なんか、妙に眠くてたまらない。朝起きても疲れが取れていないのが実感できるんだ。あちこちだるくて慢性疲労の感じだよ。今、休むとクビにされるかも知れないから頑張るしかない。配置転換もあるかもしれないってさ。ハッキリしないからすごく落ち着かない。俺だけ残ったのって、出張とか残業してるからだと思うし。評価下がったら、たぶん情け容赦なく切られるんじゃないかな。アルバイトの頃、なつかしいよ。あの時と比べもんにならないよ。とにかく辞めさせられないように頑張るしかない� 　�今月は岩手に行かないよ。休みの日は一人で横になっていたいんだ。とにかく寝るだけだよ� と話していました。　勇士は、８月は自分だけが解雇されずに残ったことで、緊張感が強まったようです。電話での会話も、配転・リストラ・疲れたという話題ばかりになって来ました。声もイライラした感じでした。

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