2006.12/26
※関連用語集「半導体 製造工場」、参照下さい。
up 2009.10 研究論文(2003 英文)(PDF)、ご紹介の追加
【おかあさん、太もも筋肉離れした。立ってると疲れるって、年寄りだよね】
ニコン熊谷製作所に勤務して7ヶ月ほど経った1998年5月28日に勇士が電話してきました。え、なに?太ももがつった?、6月1日「筋肉がだるいって感じ」、6月7日「立ってると疲れるって、年寄りだよね」これじゃあしょうがないなあというような、自分の衰えぶりをかすかに笑いを含んだ声で話しました。頑丈な体を目指してトレーニングしていた頃には、決して聞くことのなかった意外な言葉でした。
当時、ニコン熊谷製作所のクリーンルームにはイスが置いてありませんでした。中にいる従業員は2交替勤務で11時間の拘束時間を過ごすシフト体制でしたが、クリーンルームの中では、座ることは許されませんでした。それは夜勤であっても、夜勤明けの残業の時であっても。
この部屋は「半導体」が主人公であり機械の為に考えられた特殊な部屋なのです。半導体は、ほこり・塵埃をいちばん嫌います。塵埃をいかに取り除いて室内を清浄にするかが最大の課題です。従業員が座ることは、その立ち居振る舞いによって塵埃が増えることを意味します。清浄度を保つためにそれは禁止されていました。
裁判が始まると、当時の様子をいろいろ知らせてもらうようになりました。証人になったMさんは(ネクスターからニコンに派遣)、クリーンルーム内の非常階段に見えないように座ったと証言しました。ここで証言してしまうとこれからは仲間が出来なくなるのではないかと心配しながらの証言でした。座るなと言われても、やはり疲れて我慢できなかったと、その後も内部からの声は届きました。うっかり座ると外の監視(?)ルームから見えてしまい、さっそく上司に連絡が入ったそうです。「Tの所で座っている!!」そうならないようにルームから見えない死角を探して、大きな機械との間に体をはさんで、立ったまま体を壁に押し付けて休んだ、これだけでもほっとした。足が疲れて我慢できなくなったら大きめの機械の陰にうずくまるようにして腰を下ろした、関節がゴキゴキなった。本当はその機械の側にそんなに近づくのはまずかったのかもしれない、いろいろな光線がでている、でもそんなことはどうでも良かった、とても疲れて休みたかった。
ここで言うクリーンルームは、半導体を扱う製造工場で使用される工業用クリーンルームのことです。
請負や派遣の募集の時に、「半導体」という言葉があれば確実にこの種の部屋にいくことになります。その言葉がなくても、電子機器、電機メーカーなどの半導体を扱う段階の仕事なら、この部屋で働くことになります。
クリーンルームは徹底した清浄環境を誇っています。
この部屋の気圧は高く設定され、従業員が部屋の中に入ってくる時に外の空気が入って来ないようになっています。気圧の高いほうから低いほうに風が流れるので、部屋には塵埃に汚染された空気は入ってこない、そのための工夫です。
さらに従業員は予め「クリーン着」を着て入室します。一言でいえば、宇宙服のように全身をすっぽり包んでいて、かろうじて目で様子が見えるというウェアです。
「クリーン着」は人間から落ちるほこり(髪の毛、化粧のカス、体毛、・・・)を徹底して避ける為に着用されています。その服を着用した上で、部屋に入る前にはエアシャワーというものを浴びてから入るという念の入れようです。
それでもさきほどのように、座ってもらっては困る、それほど清浄に気を配る特殊な部屋なのです。
「クラス数100万」と「クラス1000」(数値:ニコン第5準備書面から)
クリーンルーム内の空気の清浄度は「クラス」という単位で表します。(アメリカIES規格)
この数値は一定容積の中の塵埃の数を示しています。
「クラス数100万」は、日常生活での空気中に含まれる塵埃の数値です。「クラス1000」はクリーンルーム(ニコン熊谷製作所)内空気に含まれる数値ですから、大変な清浄さを誇っています。しかし、日常生活の数値が「クラス数100万」なら「クラス1000」は人間にとっては清浄というより異常な数値です。従業員はこの極端な2つの数値の中で、1日のほぼ半分ずつを過ごします。
さらに機械の為に温度・湿度を一定にしています。従業員はここでもまた、温度・湿度が一定の環境と一定でない日常の生活環境と、ほぼ半分ずつを過ごします。夏と冬の寒暖の差も全国ニュースに乗るほど激しいような地方で働く人達からは、社宅に戻ってすごく辛かったという話もたくさん聞いてきました。
さらに、電機メーカー等の半導体製造現場は既に「クラス100」より高い清浄度となっているそうですから、労働者にとってはもっと落差の大きい中で、1日の半分ずつを過ごすことになります。
人間は極端な生活はできません。この時点ですでに身体が不調な人もでていました。
クリーンルーム内は徹底して清浄な空気を保つので、普通の部屋のようにすき間だらけでは、どこからでも塵埃が入ってしまいます。それを防ぐ為にクリーンルームは徹底的に密閉空間となっています。何もぜったいに入らないように密閉する、その中を清浄にした「クラス1000」の空気を還流させます。しかしそうなると今度は逆に中にあるものはどんなものも出ていかなくなってしまいます。
機械は「クラス1000」の空気さえあれば非常に満足な状態です。機械優先の部屋ですから、人間は二の次の扱いになります。
普通の部屋なら、音も自然に消えてしまいますが密閉の中では残響音として残るといいます。従業員の経験的な話によると、誰かが風邪をひくとあっという間にうつってしまう、もっと気になるのは有機溶剤、あれは揮発するけどどこから消えていくだろう?ほかにもある、エキシマレーザーなどもれていると思うがあれはどうなっている?第一、エキシマレーザーは自然界にはないもので危険だと思うんだけど・・・。従業員、特に請負・派遣は密かに気にしながら働いてきました。
どうせ、派遣会社や請負会社の営業マンに聞いても子供だましのような言葉しか返ってこない、配属先の社員に聞いてもまともな答えは戻ってこない。
そしてこの部屋では、感光紙を使用しているので、感光しないように黄色の光線で統一されています。長く居ると視力が落ちてくる、外部労働者の間ではここでも経験則的にそんな言葉がささやかれていました。
こんな中では身の危険を感じて、本で研究する人も出てきました。危ないのではないか。
裁判の情報でなくてすみません。こんな女の子聞いてませんか?
裁判が進むにつれて、勇士からは決して聞けなかった女性からの内緒の問いが増えました。職場はどの人も半導体クリーンルームの中でした。女性達に共通する点は、クリーンルームで働いていても、交替勤務ではなかったことです。その若い彼女たちに異変が起こっていました。1年ぐらいするとお腹が痛くて仕方がなかった、最初は生理がとまってぜんぜん来ない、妊娠するおぼえもないしおかしいと思っていると腹痛は我慢の限界に達する。病院に行って「卵巣のう腫」と診断され手術しますが、もちろん解雇になりました。自然の病気と思ってあきらめましたが、一緒に働いていた友人も同じになったと聞いて穏やかではありません。
確認すると他にも、同じような勤務で「子宮全摘」、「卵巣のう腫」を2度にわたって手術した(左右摘出)。どちらの方ももう、自然の形での妊娠は出来なくなってしまいました。「歯に腫瘍」が出来た。目が痛くてたまらないので医者にいったが、他の部分も痛くてたまらないようになった、診察で難病と分かったが、医者が相手企業の名前を聞いて「面倒なことに関わりたくない」と診断書を断ってきた、病名から医学辞典をひいてみると「肺門リンパ節、目、皮膚、肝臓などに小さなしこり(肉芽腫)が多数できる病気」となっていた。
腎臓がとても調子が悪くなった。全体に不調になった。うつ病の子が多かったように思えるが・・・。
派遣や請負は社員と違う使い方をされることが多い。立っている位置によっても溶剤の位置などで違ってくるのではないか。雑用係のように便利に使われて頻繁に部屋の外に出たり入ったりしているうちに、目が開いていられないぐらい辛くなった。残業が多い。残業の翌日も正社員のように早く帰ることはできない。正社員との違いなんて他にもいくつもあった。そんな違いは、重なって大きな負担となってはね返ってくる。それなのに社員にはあって派遣・請負には相変わらず健康診断がまったくない。
あの「クリーン着」は機械の為に塵埃を出さないように着用しているものであって、他の有害物質から人間を守ってくれるものではまったくありません。そんなことも外部労働者はずっと後で知りました。
クリーンルームで具合悪くなった人?いないよ。
この部屋に関して、疑問をもった請負(形は偽装でした)の男性(30代)が、社員であるリーダーに聞いてみました。過去にこの部屋で働いて体調を崩した人はいませんでしたか。リーダーは胸を張って答えました。1人もいないよ。
リーダーの声が大きかったので、仲間にも聞こえました。昼休みになって仲良しの正社員が教えてくれました。
うつになった先輩がけっこういた。通院していたと思ったら別の部署に配属替えになった。今でも休職中だけど。社員は具合悪くなったらクリーンルームから出してもらえる、出たら別部署だ、クリーンルームでおかしな人は一人もいなくなる。
この部屋から移されてすぐ自殺した人もいた、それでも訃報の広報は、新しい部署名で発表される。自殺の原因だって、異性関係のもつれかギャンブルか借金ということに必ずされる。間違っても自殺はできない。
請負・派遣はどうか。
自分と同じ症状で生理がこなくて悩んでいた女性がある日、来なくなった。若い女性(20代)が営業マンに聞いてみると「一身上の都合で辞めた」という返事です。おかしい、ずっと頑張ろうって約束したのに。携帯にかけてみると解雇されたといいます。聞いてみるとその彼女は思い切って営業マンに相談していました。病院にいこうと思って休暇を申し出た時に、通院の理由をしつこくしつこく聞かれたので、正直に話しました。お腹が痛くて仕事が出来ません。もう半年も生理がぜんぜんないんです。「そんなことで。それは彼氏に話すことじゃないのか」理解できなかった営業マンは、顔色の悪い彼女を見て『退職届け』を用意しました。「ゆっくり休みなさいよ」
この会社に来て具合が悪くなったのに、請負・派遣はそのまま解雇になる。健康で就職してきて不健康にして追い出される。でもこのローテーションで、この会社のクリーンルームで具合が悪い請負・派遣は一人もいないことになる。
これは企業秘密なのか・・・
請負・派遣は企業間を転々とさせられるので、彼らはそれぞれの企業の安全衛生に関して、その違いを敏感に感じ取っています。前の職場でしていた防具や方法とまったく違ったことをさせられると無性に不安になります。
中には専門書などで調べたり研究したりして、思い切って聞いてみますが、
「前の所でどうだったとか、今度の所はどうだなんて、企業秘密じゃないか。駄目だ、そんなこと言っちゃあ!!」
「あんまりくどいと、次の所にも言っておかないといけないな」
自分の手がレーザー光線でかぶれたり、色が変わったりしているのです。被爆しているのではないか、と心配するのは当たり前です。これから何年も後で自分がこうむるかもしれない被害について既に調べている人にこの調子です。まして調べてもいなくて、まったく無防備な人達が多いのが請負・派遣の日常ですから、製造の現場に安易に送る今の形は、おおげさでなく破滅に向かっているといえます。
安全衛生の知識もなく、企業側の言うままに労働者を送っているだけの会社は危険きわまりない存在です。配属先企業は信用できる状態ではありません。労働形態の違法ももちろん取り締まってもらいたいです。しかし、安全衛生に関しては緊急の問題です。日々間違いなく病人を作り出しています。
不安だったり説明を求めたりした人達に対して、
「根性が足りない」とか「うるさい奴は雇えない」というレベルでは話になりません。
【海外のネットに情報と救いを求めて】
私も心ある人達も、日本国内のクリーンルーム内で働く労働者の、健康に関する情報を探しましたが、今の不安や疑問を解決させてもらうものはほとんど見当たりませんでした。国内にあるものはみなクリーンルームをいかに清浄環境に保つか、その為の技術が日々いかに進歩しているかという、自画自賛(私達にはそう映った)のような情報が主でした。
海外に目を転じて。やはり労働者に対する情報開示は、外国のほうが進んでいると思いました。
「電子立国日本」を自認してきた日本なので。国民の命を守る点においても海外に遅れをとることなく、リーダーシップを発揮してくださるようお願いしたいです。
英訳の必要なものもありました。それらに関しては、要約していただいたものを掲載しておきました。英語の得意な方は関連サイトをご自身で直接解読して下さい。
聞いてきた症状と似ているもの、やはりなぁと思えるものなど載っていました。ひそかに悩んでいた方、クリーンルーム情報としてしっかりと目を通してください。英文でないものにも、見出し程度に簡単な要約は掲載しておきました。
日本のクリーンルームの情報開示には、やはり監督官庁に申し出てくれるのが一番早いのではないかと思います。しかし、女性は言いにくいです。病名を知られるのショックです。知られるということより、自分自身が大変なショックを受けています。そんなものはこの会社のせいじゃない、などと叩かれるのはなおショックです。
この問題の解決に関係する方々の知恵と力をお借りしたいです。
関係ニュースや文献によると、海外では積極的に調査をしている所が出ています。長年かかるかもしれませんが、今のままの請負・派遣の労働形態で製造業の現場に子供達を、無防備で送り込むことを是正していただけませんか。
ネットからの情報
最初のものは日本のネットに詳細な情報を掲載している「オンライン・コンピューター用語辞書」からです。ここには外国で展開している日本企業の情報も別欄にたくさん出てきます。それらの会社の中には現地で裁判を起こされている会社もあります。クリーンルームの安全性に関して、日本企業が知らなかったということはまったくあり得ないことだとはっきり知りました。
(1)「オンライン・コンピューター用語辞書」
半導体工場の安全性
IBM の元従業員などが『工場で化学物質を吸い込んだ結,がんを発病した』と主張してメーカーを相手取った訴訟が相次いでいる。・・・・
2001年に英国安全衛生庁が発表したとされる調査レポートは,半導体製造工場の社員の間でガン発症率が高まっているのではないかと指摘。それによると,4,000人を超える同社の社員とガン発症率との関連を調査。結果には男女間の違いが見られれ,同社の女性社員の肺ガン発症率は一般的な水準よりも2〜3倍,胃ガンの発症率は4〜5倍,乳ガンの発症率は約1.3倍も高くなっていた。・・・・
(2)1999.10/11 WIRED NEWS
チップ工場は人体に有害か
業界大手の米IBM社と米ナショナルセミコンダクター社は、150人以上もの現役および元従業員たちから3件の集団訴訟を起こされている。従業員たちは、溶剤などの有毒な化学物質に長年さらされたことが、ガンや、子供の先天的障害を引き起こしたと主張している。
(3)2003.1/14 WIRED NEWS
半導体工場の発ガン性物質処理等の問題で、英政府が業務改善命令
スコットランド、エジンバラ発米モトローラ社をはじめ、他にも2つの大手半導体メーカーが、発ガン性物質を含む有害物質について、安全管理の手法に問題があることが発覚し、徹底した処理を行なうよう、イギリスの健康安全局(HSE)から改善命令を受けた。同国内でこうした調査が行なわれたのは初めてのこと。遵守しているという。
(4)2003.10/2 ITmedia News
IBM、元従業員から化学物質汚染によるがん発症で訴えられる
IBMを訴えている元社員4人のうち2人が10月14日から証言を開始する。この元社員らは、半導体およびハードディスクの製造に使われている化学物質の取り扱いに当たり、IBMがその危険性を警告していなかったとしてカリフォルニア州の裁判所に訴えている。原告の弁護士が9月30日、明らかにした。
IBMはカリフォルニア、ニューヨーク、ミネソタにおいて、IBMの工場で頻繁に使われていた化学物質の汚染によりがんを発病していることを知っていたにもかかわらず、従業員にその情報を明かさなかったとして、多数の罪を問われている。
(5)2003.11/04 CNET Japan
ガンにかかった元IBM従業員、同社を相手に法廷へ
IBMのハードディスク製造工場に勤務したために衰弱性のガンに罹った前従業員のAlida HernandezとJames Mooreは、同社が危険性を察知していたはずで、また日常業務で化学薬品にさらされることの危険性について従業員に警告すべきであったと主張している。カリフォルニア州サンノゼの上級裁判所で、陪審裁判に持ち込まれ、米国時間4日に冒頭陳述が行われるこの訴訟は、IBMを相手取って起こされた200件を超える訴訟の第1弾となる。
(6)2004.3/22 nikkei IT Pro
SIA, ウエーハ製造作業とがんとの因果関係について調査を開始
(リンクが切れているので)全文掲載
米国半導体工業会(SIA:Semiconductor Industry Association)は、ウエーハ製造作業とがんとの因果関係の有無を確認するため、過去にさかのぼって米国半導体メーカーの従業員を調査する。SIAが米国時間3月18日に明らかにしたもの。SIAは、ウエーハ製造担当者のがん発症率が、ほかの業務の従業員より高いかどうか調べる。
SIAは1999年に、半導体製造業務とがんの危険性との関係を調査するため、職場環境の健康について研究している独立系組織Scientific
Advisory Committeeに作業を依頼した。これに対し同組織は、「米国の半導体製造に関わる労働者に、がんの危険性が増す明確な証拠は存在しない」と結論付けたが、SIAに対し「化学的な検証が実施可能な過去のデータの存在について調査すべき」と勧告した。そこでSIAは、Johns
Hopkins University Bloomberg School of Public Health(JHU)の協力を得て、検討してきた。
JHUは11ヶ月間の検討作業を終え、本格的な調査が行えると判断。これを受けSIAは、本格調査に向け計画の作成を直ちに開始する。
米メディアの報道(CNET News.com)によると、米IBMの元従業員200人以上が半導体製造作業によりがんやその他健康上の障害が起ったと主張し、IBM社を訴える訴訟を起こしている。2003年に終わりには、こうした一連の訴訟の最初の審理が、カリフォルニア州サンノゼの連邦裁判所で始まった。
(7)2004.6/24 ITmedia
IBMに従業員の発がん責任問う訴訟が終結
・・・ 2月の判断を受けて、ロバート・ベインズ判事はIBMと原告の双方に対し、残る訴訟が審理に持ち込まれるのを避けるため、和解を勧告したとアンドリューズ氏は説明している。原告側弁護団長を務めるAlexander
Hawes & Audetのリチャード・アレクサンダー氏にもコメントを求めたが、今のところ返答は得られていない。・・・・・・
同様の訴訟はニューヨーク州でも起こされ、カリフォルニア州よりは原告側に有利と見られていたが、こちらの訴訟は3月に和解が成立、和解金額は公表されていない。
(8) 2004.8/23 WIRED NEUS
米業界団体、半導体工場の発がんリスク調査を開始
半導体メーカーの業界団体、米国半導体工業会(SIA)は19日(米国時間)、半導体工場の労働者はがんにかかりやすいとの指摘に対応して、本格的な調査に乗り出すと発表した。何年も前から調査を求める声があがっていたが、ようやく重い腰をあげる。・・・・・
・・SIAは1999年に、外部の専門家で構成する諮問委員会を設置したが、本格調査は延び延びになっていた。今回の調査も、結論が出るまでには3〜5年かかるとしている。
(9) 2006.5/8 共同通信
事業者に安全性の立証責任 EUが新しい化学物質規制
化学物質の安全性や環境への影響評価を製造、輸入業者に義務づける欧州連合(EU)の新しい化学物質規制策「REACH(リーチ)」が2007年春にも施行される見通しとなった。・・・EU域内で活動する日本企業もさまざまな対応を迫られる。
英文HP資料と要約
ここからは原文サイトです。日本訳したものを下に掲載しています。得意な方に、英訳と内容の要約をしていただきました。
ご自身、英語が得意な方は原文サイトに直接いって、解読してみて下さい。
以下の原文サイトのうち(2)と(3)はリンク切れとなりました。(要約のみです)
(1)
Motherjones
The Clean Room’s Dirty Secret
「クリーンルームの汚い秘密」
「アスベストよりも被害は深刻である」と書いてある記事
脳腫瘍になる確率も高く、WHOや政府機関も深刻に対応せざる終えない状況
訴訟も起きている。(ここの要約はここまで)
(2) ICRT(International Campaign for Responsible Technology)
(CRT List Serve Letter #5, January, 1998)
ハイテク対安全性の避けられない衝突
―半導体メーカーにおける安全性と利益の衝突―
アイダホ州にあるジログ(Zilog)の半導体工場で有害物質の流出が始まったのは1993年からである。工場のクリーンルームに勤務する従業員が顔面の火膨れや口腔からの出血を起こした。その他、ひどい咳や吐血、失神、記憶喪失、下痢、頭痛、吐き気を伴う水泡、化学物質誘発性の喘息、又流産を患う者もいた。
1990年代のほぼ全般にわたり、ジログの罹病・傷害率は業界最高であった。
ジログは、1993年と1994年に同工場において約900件もの従業員の事故報告を受けておきながら、これらに対し公的に責任をとらなかった。
その後、半導体産業の最盛期にジログは半導体生産の増加を行っており、クリーンルームに勤務する従業員は、有毒ガス等の漏れ、化学物質の監視不良、警報機の不設置や動作不良、排気不良等の設備の整備不良により有害化学物質にさらされたことが明らかになっている。又、化学物質過敏症の従業員を複数の装置が作動していない場所に配置して、化学物質の監視をするという非人道的な行為を行っていたこともわかっている。
行政の指導も徹底していなかった。政府監督機関であるOSHAはジログに検査員を派遣して工場内の検査を行っていたが、検査対象は非常に限られたものであり、1994年からは検査員の派遣を停止し、工場をジログの自己管理に任せた。
ジログは1992年から1994年に有害廃棄物に関する虚偽の報告を行い、後に報告書の修正を行うということが度々あった。問題が多発していた1993年〜1994年の時期に、監督機関が工場増設により砒素の排出制限を超えると予測していたにもかかわらず、ジログは州政府より2億ドルの工場増設許可を得ている。
ジログは、化学物質による障害を訴えた従業員に対する医療費の支払いを拒否し、処遇に不服を申し立てた従業員の多くを解雇した。職場復帰後、隔離され、他の従業員に事故の件を話さないよう言われた者もいた。
ジログの事件の様々な隠蔽工作等を行って、従業員による訴訟に対応して来た。1994年に従業員30人がジログを相手取り起こした訴訟では、1996年に原告側弁護人の説得により和解が成立し、各人に6ヶ月分の給与に相当する15,000ドルが支払われた、しかし、ジログはその数ヶ月以内にそれら原告従業員の大多数を解雇又は辞職させた。殆んどの場合、工場における人員削減をその理由にしている。
ジログは他社に買収されることになり、会社に留まる工場従業員にはボーナスが支給される予定だが、既に多くの従業員が犠牲になっており、従業員の勝利というわけではない。
(3)ECES(THE EGYPTIAN CENTER FOR ECONOMIC STUDIES)
July 30, 2001
「クリーン」であるはずのハイテク産業の裏側
―シリコンバレー29施設で、癌、流産、出生異常が他の製造業の2.5〜4倍
シリコンバレーのニューアルマデン鉱山は、一世紀以上もの間水銀による金や銀の抽出が行われていた為、サンフランシスコベイエリアにおける最大かつ唯一の水銀汚染源である。精錬所から排出される煙で、付近の樹木が枯れて牛が死に、精錬所従業員にも短期間で中毒症状が現れた為、水銀中毒を見極めるのは比較的容易であった。しかし、現在ハイテク産業で問題となっている化学物質の健康への影響が顕著に現れるには長年かかり、又、技術も急速に進歩していることから、公衆衛生の専門家や企業経営者が20年前に起こっていたことを知った時には、新たな一連の脅威が明らかにされるであろう。
IBMのCottle Road工場は、1980年代初頭に有機溶媒等の有害物質を大量にシリコンバレーの地下水に垂れ流していた。その後の州政府の調査で、汚染された飲料水を飲んでいた妊婦の流産や出生異常の確率が通常の2.5倍から3倍であることがわかり、1986年に250人以上を原告とする訴訟が提起され、数百万ドルの和解金が支払われるに至った。
1998年にIBM従業員により提起された訴訟によると、IBMとその化学製品サプライヤーは、製造工程で使用される化学物質が従業員に与える健康上の悪影響を不正に隠匿していた。2001年にも、約200人のIBM現職及び元従業員による訴訟で和解が成立しているが、IBMは過ちを認めなかった。健康障害と仕事に因果関係を認めようとしないのが、半導体産業の一般的姿勢である。当該産業は、有害物質がもたらす長期健康障害を把握するのに熱心ではない。実態が明らかになればなるほど、法的責任が重くなるからである。
IBMの従業員の癌の罹患率は一般人よりも高いことが明らかになっているが、工場では絶えず複数の化学物質、新たな化学物質が様々な組み合わせで使用され、又、新技術が次々に導入されていることなどから、安全性を正確に評価するのは困難である。しかし、多くの研究で半導体製造に使用される特定の化学物質が、生殖系疾患及び様々な癌の高罹患率と統計的な関連性があるということが確認されている。
政府の統計によると、半導体産業の1992年から1998年における有害物質暴露に起因する労働損失に至る傷害・疾病率は、常に製造業全体の3倍から4倍である。しかし、労災補償にかかる報告制度は、職業病というものがまだ認定されていない時代のものであり、疾病よりも傷害の補償に重点をおく制度である。従って、実際の疾病率はこれよりもかなり高いと思われる。
シリコンバレーの中でも、従業員が多種の化学物質に直接接する「クリーンルーム」における汚染は、特に有名なものである。これまで、手袋や保護眼鏡の着用、作業の一部機械化等、労働環境の改善はなされてきたが、従業員に対する安全対策は十分であるとは言えない。クリーンルームで働く従業員が着用する作業着は有機溶媒等が皮膚に付着するのを防ぐには全く用をなさないし、喚起装置は空気中への新たな塵の混入を防ぐ為、室内の空気を再循環させるようになっており、そこで働く従業員は化学物質を含んだ空気に1日中さらされることになる。更に、空気監視装置は、重大な危険を察知する為のものであり、許容暴露レベル以下の低レベル化学物質暴露の監視を目的とするものではない。
大量に生産される2,800種類もの化学物質の43パーセントには基礎的な毒性試験が行われておらず、7パーセントは予備試験等は行われているものの、当該試験で問題が指摘されても、それだけを理由に業務上の使用が禁止されるわけではない。
ダブルスタンダードの問題もある。様々な政府機関が異なる産業部門の許容基準を定める権限を有する。その為、職場の汚染レベルを監督する職業安全衛生管理局と自然環境の汚染レベルを監督する環境保護庁を比べると、前者の規制の方が後者の規制よりもかなり緩やかなものとなっている。
ハイテクブームは世界経済を活性化させたが、半導体産業が従業員に与えた影響についての教訓は真摯に受け止めるべきである。何事も代償はつきものだが、問題はそれだけの代償を払う価値があるかどうかということである。
(4)OEM ONLINE (Occupational and Environmental Medicine)
OLIGINAL ARTICLE
台湾の半導体製造労働者、白血球が減少
1995年に半導体工場の926人の従業員を対象に検査を行ったところ、半導体産業の男性製造従業員は白血球の減少をきたすおそれがあることがわかった。男性が行う多くの作業(加工、保守、機器エンジニアリング)が、グリコールエーテル、電離放射線、砒素等の有害物にさらされる可能性が高いからである。
半導体の製造過程で従業員は、様々な化学物質、放射線等の物理的因子、不自然な姿勢や反復動作等の人間工学的有害因子にさらされる。特に、クリーンルームの従業員は通常複数の因子にさらされており、神経学的、呼吸器系、肝臓、腎臓、生殖系等の健康障害を起こす危険性がある。
多くの西欧諸国のクリーンルームにおける汚染化学物質濃度は、1ppmをはるかに下回っている。以前、台湾の4つの半導体工場で行われた調査も同様の結果を示しており、台湾の許容暴露限界の100ppmを下回っていた。従って、半導体製造従業員の健康障害は、許容暴露限界以下の化学物質汚染環境で起こった可能性があり、有害物質の被害を防ぐには、この許容暴露限界をもっと低くする必要があるということになる。又、クリーンルームが正常に機能している状態では室内の汚染化学物質は低濃度だが、機器の保守の際には、短時間暴露限界をはるかに超える高濃度の塩化水素が流出する等、化学物質の濃度が高くなる可能性がある。
更に、清掃、予防保守、化学物質の混合等を行う男性従業員の殆んどは、カートリッジマスクやエアーマスクではなく綿のマスクをしており、呼吸器の保護対策が不十分であることも問題である。
(5)OEM ONLINE (Occupational and Environmental Medicine)
WORLD AT WORK
職場の危険: エレクトロニクス産業
エレクトロニクス産業では、加工工程より組立工程の労働者が多く、男女別にみると、男性労働者は、加工・保守関連の作業に、女性労働者は組立作業に多く従事している。又、各製造工程で多種の化学物質や機器が使用されており、従事する作業により様々な健康障害が発生する可能性がある。
『化学的危害』
化学物質は閉鎖された環境で使用されるのが普通であるが、保守・修繕作業の際や突発的な流出などにより化学物質にさらされる可能性がある。クリーンルーム内でも、溶剤や化学物質のガス・蒸気が再循環されて室内に排気されるおそれがある。
組立工程で使用される化学物質は通常毒性が低いが、閉鎖された環境又は機械化が行われていない環境で使用されることがある為、日常的に接する機会が多い。
エレクトロニクス産業で使用される化学物質は、皮膚、呼吸器系、中枢神経系に影響を及ぼす。又、半導体製造労働者は生殖系疾患も罹患率が高いとも言われている。発癌性の高い化学物質も多く使用されているが、新しい産業であることから、当該産業の従業員の癌発生率が高いとしても、因果関係が明らかになるには何年もかかる。
『物理的危害』
エレクトロニクス産業における主な物理的危害は、騒音、放射線である。その他、クリーンルーム内の低い湿度、反復的作業、目視検査作業により皮膚障害、筋肉障害、眼精疲労が発生する。ただ、組立作業及び目視検査産業は機械化が進められており、これらの作業に従事する労働者数は減少するだろう。
『その他の危害』
生物学的危害はエレクトロニクス産業では通常みられないが、発展途上国においては、組立工程における労働者の過密な配置、過密状態にある寄宿舎、衛生設備の共有等から、伝染病が簡単に広まる可能性がある。
その他、発展途上国の地方出身者で学歴の低い女性労働者に、ヒステリーが多発している。家族から離れ、一定の速度での作業が要求される組立ラインの仕事に適応出来ないのが原因とみられる。
(6)NCBI(National Center for Biotechnology Information)
Neurotoxicology. 1991 Spring: 12
元マイクロエレクトロニクス従業員にみられる神経心理学的障害
マイクロエレクトロニクス製品の製造工場の元従業員と、居住地域、年齢、性別、民族、学歴、子供の数が各々同じ一般人との比較調査を行った。マイクロエレクトロニクス産業の工場従業員は様々な溶剤に触れており、慢性の神経疾患を引き起こす可能性があるにもかかわらず、組織的な研究が行われてこなかったからである。
California Neuropsychological Screening Battery-Revisedの検査の結果、元従業員は、集中力、言語能力、記憶機能、視空間機能、視覚運動速度、認識の柔軟性、精神運動速度、反応時間において、著しく能力が低かった。精神状態、視覚再現、触覚機能及び学習においては、大差は見られなかった。この機能障害の全般的傾向は、有機溶剤に起因する慢性中毒性脳症及び認知症の初期段階のものと一致する。
(7)NCBI(National Center for Biotechnology Information)
Women Health 2002:35
タイ北部のエレクトロニクス工場における雇用、管理、労働衛生
マイクロチップ部品の組立に従事する女性は、下層労働力の大部分を占める。16ヶ月に及ぶ労働者の調査を基にして、物理的労働環境に起因する健康障害と労働環境における組織的・社会的圧力に関連する健康障害を特定し、ジェンダー関係がエレクトロニクス産業の企業や労働の要であることについて考察する。
※ 原文サイトはここまで
【最先端技術の現場で】
なんとしても知りたいと思って調べたものでしたが。クリーンルームの情報は大変ショッキングなものでした。それでも調べて良かった、これから改善に向けて進んでいただこう、そう心をなぐさめたところに、もう一つ、ショックが加わりました。これがほんとにすごくて。
新たなショックはある日、突然やってきました。
オレはもう「かぶりもの」の現場にはいきません
(かぶりものは、この方の話の前後からして、クリーンウェアのような防護服のこと)
「クリーンルームの経験者です。1年も経たずに解雇になりました。しかし、解雇までに身体は絶不調でした。クリーンルームはろくな所じゃありません。
同じ頃、すぐ金になると聞いて行った別の場所で、友人は本当の地獄を見ました。友人は苦しんで亡くなりました。こんな請負の仕事知っていますか?見て下さい」
以下はこのとき教えてもらった2つのサイトです。
● 原発で働く人々
下請け労働者 (図6)
原発で働く労働者は下請け、孫請け・・・と8代も下の会社に雇われている場合も少なくありません。そのため劣悪な労働条件下、安い賃金で働かされます。例えば電力会社から労働者一人当たり1日15,000円支払われたとしても、中間にいる親方がピンハネするために、実際に労働者が受け取る賃金はそれよりずっと少なくなってしまいます。さらに、被ばくしたり、ケガをした場合は下請け業者が、上の業者や電力会社に気兼ねして握りつぶしてしまい、表に出さないことが通常です。被ばく労働の実態が社会に知られていない原因がここにあります。
● 2003.6/8
エル・ムンド 〔EL MUNDO:スペインの新聞〕
調査報告
/ 原子力発電所における秘密 日本の原発奴隷
日本の企業は、原子力発電所の清掃のために生活困窮者を募っている。 多くが癌で亡くなっている。・・・福島第一原発には、常に、もう失うものを何も持たない者達のための仕事がある。・・・日本の原子力発電所における最も危険な仕事のために、下請け労働者、ホームレス、非行少年、放浪者や貧困者を募ることは、30年以上もの間、習慣的に行われてきた。・・・そして、今日も続いている。・・この間、700人から1000人の下請け労働者が亡くなり、さらに何千人もが癌にかかっている・・原発奴隷は、日本で最も良く守られている秘密の一つである・・・
裕福な日本社会が消費するエネルギーが、貧困者の犠牲に依存しているということが、いつまで許されるのだろうか」。
政府と企業は、誰も原発で働くことを義務付けてはおらず、また、どの雇用者も好きな時に立ち去ることができる、と確認することで、自己弁護をする。日本の労働省の広報官は、ついに次のように言った。「人々を放射線にさらす仕事があるが、電力供給を維持するには必要な仕事である」。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
言葉がありません。
日本の「使い捨て思想」「必要悪思想」は根が深く陰湿です。“これで良し”とするから、それ以上の知恵も考えもストップしてしまうのではないですか。一番追い詰められた層に有無を言わせずさせる、逃げたらいいでしょう、強制はしてない、その言い方はまさしく請負・派遣が言われ続けてきた言葉です。学者の方の中には、これらリスクの多い仕事でも、同一の人達に集中させずに工夫することはできると力説している方がいらっしゃいました。このままでは、今日明日の食費に困っている人の足元を見た方法です。これは「究極のいじめ」そのものではないですか。
こんな時こそ、日本人の底力に期待したいです。関係する方々、自分の家族に起こったら本当に悲しいです。問題の解決に向かって、大きな力を貸してくださいますようお願いします。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これは全て本当のことなんですね。偽装請負と同じ、うすうす知っていてさせていたんですね。いえ、記事によると原発のほうは確信犯のようですね。頭痛がしてきます。
これを勇気を持って報じてくれたのが、外国のマスコミだということがなおショックです。
|