第171回国会 予算委員会 第4号
平成二十一年一月二十一日(水曜日)
午前十時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○平成二十年度一般会計補正予算(第2号)(内
閣提出、衆議院送付)
○平成二十年度特別会計補正予算(特第2号)(
内閣提出、衆議院送付)
○平成二十年度政府関係機関補正予算(機第2号
)(内閣提出、衆議院送付)
・・・【中略】・・・
○委員長(溝手顕正君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
平成二十年度第二次補正予算三案審査のため、本日の委員会に社団法人日本経済団体連合会常務理事川本裕康君、日本労働組合総連合会事務局長古賀伸明君及び学習院大学経済学部教授宮川努君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
・・・【中略】・・・
○委員長(溝手顕正君)
・・・【中略】・・・
それでは、川本参考人からお願いいたします。川本参考人。
○参考人(川本裕康君) ただいま御指名いただきました日本経団連で常務理事を務めております川本でございます。
本日は、雇用問題を中心に日本経団連の基本的な考え方を四点ほど申し上げたいと思っている次第でございます。
まず第一点目といたしまして、企業を取り巻く経済環境について申し上げたいと思います。
御承知のとおり、百年に一度と言われます世界同時不況の様相を呈している中で日本経済も例外なく厳しい状況に置かれており、景気は日を追うごとに悪化をしている状況でございます。特にこれまで経済を牽引してきました輸出産業は、海外経済の一段の減速とそれから急激な円高の影響を受けまして、需要が急速に落ち込んで大幅な減産を余儀なくされておるところでございます。当面はこうした状況に大きな変化が生じることは期待しにくいと考えられますので、輸出は引き続き大幅な減少が不可避な状況にあるのではないかと思っているところでございます。
また、内需につきましても、企業の設備投資というものは、企業の収益の急速な悪化を受けまして今後計画の下方修正が相次ぐのではないかと思われます。さらに、個人消費につきましても、雇用情勢の悪化あるいは将来不安の拡大などによって消費者マインドというものが冷え込んで、伸び悩むおそれが強いかと存じます。
このように、内需、外需両方を見渡しましても日本経済を牽引し得る材料を見付け難い状況ですので、景気後退が更に深刻になることも覚悟しなければいけないという状況にあるのではないかと思っている次第でございます。このように、今回の不況はこれまでの経験と想像をはるかに上回る規模とスピードで進行してございます。したがいまして、雇用情勢につきましても大変厳しい状況が続くことが避けられないのではないかというふうに思っている次第でございます。
そこで、二点目といたしまして、雇用安定に向けました企業の努力の重要性について申し上げたいと思います。
日本経団連では、例年、春季労使交渉・協議に向けました経営側のスタンスを示すということで、経営労働政策委員会報告というものを取りまとめております。昨年十二月十六日に公表いたしました二〇〇九年版の報告書におきましては、大変異例な形ではございましたけれども、通常、交渉・協議において、賃金あるいは賞与というものがメーン、あるいは人材育成の幅広いテーマということが話し合われるわけでございまして、それに対するスタンスを示すわけでございますが、今年はそのテーマに先んじて雇用の安定に努力するということが求められるという点を明記をいたしたところでございます。雇用情勢が悪化する中ではございますけれども、日本的経営の強みであります人的資本の蓄積あるいは労使の信頼関係の構築などにも言及しつつ、雇用の安定を重視した交渉・協議を基本とすべき点を強調したわけでございます。
私どもの御手洗会長も、会員企業に対しまして内定取消しの回避やあるいは法令遵守を始めとすることを、あらゆる機会を通してこの雇用の維持安定についても訴えるところでございます。昨今、雇い止めや解雇の問題が取りざたされておりますけれども、当然のことながら法令遵守は大前提ということでございまして、労働契約の終了に関するルールにつきましても、経営者始め企業の方々、改めて確認しておく必要があることを私どもといたしましても周知に努めているというところでございます。
さらに、企業としましては、新たな雇用の創出を通じて雇用の安定を図ることも重要であると思っております。そのためには、新たな付加価値を生み出すイノベーションの推進、ビジネスモデルの構築といったことに積極的に取り組まなければなりません。激動の時代であるがゆえに、消費者のニーズを迅速にかつ的確にとらえることも求められております。まさに経営者にとって、企業労使にとって知恵の出しどころでもあり、その真価が問われていると言っても過言ではないと思っております。
三点目といたしまして、雇用のセーフティーネットの強化についてでございます。
現在のようなグローバル化が一層進む経済の中にありまして、個々の企業が存続、発展していくというためには、いかに競争力の維持強化を図っていくかということが大変重要な経営課題となってございます。雇用の維持安定というものは、この国際競争力の維持強化があってこそ成り立つものであります。実際に経営者はこの二つのバランスに日々心を砕いているのが実情だと思っております。しかしながら、現状のようなだれもが予想し得ないような経営環境の悪化の中で、やむを得ず雇用調整に踏み切らざるを得ない状況にもございます。
もちろん雇用調整の方法についてはあらゆる選択肢を検討して慎重に進めていくべきものであると考えておりますが、今回のような非常事態の中で厳しい判断を迫られている企業があることも事実でございます。このようなときにこそ、官民が一体となってセーフティーネットを充実させていくことが非常に重要だと思っております。
昨年来、政府は矢継ぎ早に経済政策をまとめておりますけれども、国民の安心のためにはこれらの対策の早急かつ着実な実施が求められますので、第二次補正予算、それから平成二十一年度予算の早期成立を是非お願いをしたいと思っております。
また、失業給付の拡充を始めといたします雇用保険法の改正につきましても今後審議が行われるということになろうかと存じますけれども、一刻も早く雇用のセーフティーネットを強固に張り巡らせることが不可避であると考えますので、是非、改正法案につきまして速やかな成立というのをお願いしたいと思っているわけでございます。
四点目は、雇用創出についてでございます。
私ども、この今月十五日でございましたけれども、日本経団連と連合で雇用安定・創出に向けた労使共同宣言というものを取りまとめ、発表いたしたところでございます。
共同宣言では、雇用の安定と創出に向けまして労使が真摯に向き合っていくことを確認するとともに、政府に対してセーフティーネットの拡充と新たな雇用創出に向けた対策の実行を求めさせていただいたところでございます。農林水産業や介護、保育などを中心に、社会が必要とする分野における雇用創出策を公的支出も拡大しつつ推進していくことを盛り込んでいる次第でございます。
当面の厳しい経済状況に対処していくことの必要性は申すまでもありませんけれども、今後、中期的に持続的な経済成長へつなげていくという視点も重要でありまして、そのためには今後の成長と生産性向上につながる分野、あるいは雇用を創出する分野に対して集中的に政府支出というものを大幅に拡大していくということも非常に重要であると思っております。
無論、政府だけではなく、労使といたしましても、この雇用安定と創出に向けた諸課題について今後も連合との間で協議や研究等も行っていきたいと思っている次第でございます。
なお、新たな雇用創出の推進に当たりましては、実は産業間をまたがった労働移動というものも円滑にしなければなりません。その意味では、必要な能力開発や資格の取得といった問題もございますので、公的職業訓練を充実させていくということが非常に重要な課題だと思っておるところでございます。
また、あわせまして、訓練だけでなく実際に人をつないでいくハローワーク等のそういう機能の充実、あるいは相談、あるいはカウンセリングといった、そういうものも非常に重要になっていくのではないかと思っております。
最後になりましたけど、本日は予算委員会という場に意見を申し上げる機会をいただきましたので、本当に感謝している次第でございます。一刻も早い景気回復に向けた取組について改めてお願いを申し上げたいと思っている次第でございます。補正予算等一日も早い成立をお願いいたしまして、私の説明とさせていただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。
・・・<以下省略>・・・
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