第171回国会 予算委員会 第4号
平成二十一年一月二十一日(水曜日)
午前十時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○平成二十年度一般会計補正予算(第2号)(内
閣提出、衆議院送付)
○平成二十年度特別会計補正予算(特第2号)(
内閣提出、衆議院送付)
○平成二十年度政府関係機関補正予算(機第2号
)(内閣提出、衆議院送付)
・・・【中略】・・・
○委員長(溝手顕正君) ただいまから予算委員会を開会いたします。
参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
平成二十年度第二次補正予算三案審査のため、本日の委員会に社団法人日本経済団体連合会常務理事川本裕康君、日本労働組合総連合会事務局長古賀伸明君及び学習院大学経済学部教授宮川努君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
・・・【中略】・・・
○委員長(溝手顕正君)
・・・【中略】・・・
次に、古賀参考人にお願いいたします。古賀参考人。
○参考人(古賀伸明君) 皆さん、おはようございます。御紹介をいただきました連合で事務局長を務めております古賀でございます。
本日は、短時間ではございますけれども、雇用失業状況に関する認識及び必要な政策について私どもの考え方を述べさせていただく場を設けていただきまして、誠にありがとうございます。
もう私が言うまでもなく、現在、日本経済は極めて厳しい状況にあります。輸出、生産共に減少、企業収益も悪化、そして雇用失業情勢はますます深刻化しています。
連合が昨年十一月に緊急雇用実態調査を実施をいたしました。その結果でもそれらの状況は明白であり、過去三か月に何らかの雇用調整を実施した企業は対象企業の三五・一%と、三社に一社強の割合でございました。そして、今後三か月間に雇用調整が実施される見通しがある企業は約四割近くに上ります。
このように雇用失業情勢は一層深刻化することが懸念され、国民の間には雇用不安が広がっているのが実態だと思います。この不安を払拭するためには、緊急の雇用対策と雇用の安定・創出策に向けて政治のリーダーシップが極めて重要だということをこの場で訴えておきたいというふうに思います。
私どもは既に、昨年の十一月中旬、厚生労働大臣に、十二月の上旬には総理大臣に緊急雇用対策について要請をいたしました。その要請内容のポイントは大きく六点でございます。
一つは派遣労働者等の住居を喪失した労働者に対する住宅支援、二つ目に雇用調整助成金の支給要件緩和や対象労働者の拡大など企業の雇用維持に対する支援策、三点目には雇用就業形態の多様化に対応した雇用保険制度の改革、四点目に新規学卒者の採用内定取消し問題への迅速な対応、そして五点目に職業訓練の拡充、最後に雇用の創出策でございます。
政府の施策や予算案に既に盛り込まれたものもありますけれども、残された課題もございますので、数点指摘しておきたいと思います。
まず、雇用保険については、昨年十一月以降、労働政策審議会において議論し、おおむね私ども連合の考え方、提起した内容が反映されたと思っています。
しかし、実質的にはかなり検討期間が短期であり、例えばマルチジョブホルダーへの雇用保険の適用など、手付かずのまま残っている課題もあります。また、六か月以上の雇用見込みがなく短期の雇用契約の場合は、雇用保険の加入対象とならず、当然のことながら支給の対象となりません。
雇用保険制度と生活保護制度との間をつなぐ就労・生活支援給付制度を創設すべきであると私どもは考えています。政府の緊急雇用対策の中に、条件付ですけれども、事実上の給付制度もできました。こうした制度をベースに雇用保険ではカバーできない労働者の生活就労支援を行っていくことが必要だと思います。
さらに、今回の改正案では、二〇〇九年度に限りということでございますけれども、雇用保険料率を引き下げることになっています。私どもは、雇用失業情勢がこれだけ厳しくなるときに料率を引き下げるということにはやはり疑問が残ります。失業給付を手厚くするなど雇用対策に有効に活用する、そのことが本筋ではないかというふうに考えます。
なお、今回の改正案は、雇用保険の被保険者となる加入要件として、一年以上の雇用見込みが六か月以上の雇用見込みと緩和、我々としては前進したものと受け止めています。改正法の速やかな施行が必要だと考えていることも申し添えておきたいと思います。
次に、有期労働契約の課題、問題についてです。
派遣労働者や期間従業員の契約期間の労働契約の解除や雇い止めが問題になっていますが、そもそもこの有期労働契約に関してのルールが周知されていないこと、また、法が未整備であることに問題があると私たちは考えています。
有期労働契約については、労働契約法第十七条において、使用者は、期間途中の解約はやむを得ない事由がある場合でなければ行うことができないとしており、この場合のやむを得ない事由というのは、解雇が有効とされる客観的に合理的な理由よりも限定的に解釈されるものです。こうした規定があるにもかかわらず、安易に何の保障もなく中途解除が行われていることがまず問題です。さらに、有期労働契約については、労働基準法において上限期間が設定をされているだけです。これらの働き方の入口、出口の規制と均等待遇原則が必要だと考えます。
雇用の原則から見て、有期労働契約がどうあるべきなのかということを抜本的に検討してこなかった、そのことが今日の問題につながっていると考えています。
次に、職業訓練についてです。
特に、非正規労働者は、能力開発の機会が乏しく、スキルアップができない状況です。加えて、非正規労働者の能力開発はコストが伴います。したがって、能力開発はやはり国が責任を持って整備することが必要です。特に、短期間のメニューだけではなくて、訓練期間の生活保障もきちっと受けながら技術、技能を身に付ける長期の訓練メニューが必要だと考えます。もちろん、職業訓練、能力開発を行いスキルアップするだけではなくて、雇用の受皿、すなわち職を失ってしまった失業者を、社会が必要としていながら人材が不足している分野での雇用につなげることが必要です。
私どもは、このような観点から、百八十万人の雇用創出プランを策定をいたしました。その中では、介護、医療、保育、教育、環境、治山治水、農業などの分野での雇用創出を掲げております。国民の安心、安定の点から、各省庁、地方自治体とが連携して雇用創出プランを練り上げて、早期に実行に移していただきたいと思います。
最後に、今回のこの雇用失業問題の特徴は、その速さにあり、特に非正規労働者を直撃したことにあります。この要因の一つは、やはり非正規労働者を増やし過ぎてしまったことにあると思います。日本企業は、バブル崩壊後の九〇年代後半以降、業績回復の過程でも正社員を増やさず、有期雇用労働や派遣労働、そして請負労働などの活用で対応し、その結果、雇用労働者の三人に一人が非正規労働者となっています。労働者派遣法の相次ぐ規制緩和や有期雇用労働の上限の延長などの労働基準法の緩和もこうした動きを後押ししました。
しかし、雇用の原則は、私どもは期間の定めのない直接雇用であるべきだと考えます。そして、そのような原則に立って、その原則から外れることが容認されるのはどんな場合なのか、どのように労働者を保護できるのかという視点で労働法を見直すべきだと考えています。労働者保護が不十分なままに行ってきた労働分野の規制緩和が日本社会に今何をもたらしているのか、これこそ検証をされなければならないことだというふうに考えているところでございます。
以上をもちまして、私の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
|