衆議院・参議院会議録情報 抜粋

参議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第166回国会 厚生労働委員会 第21号
平成十九年五月二十二日(火曜日)

    午前十時四分開会

・・・【中略】・・・

  本日の会議に付した案件
○連合審査会に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
  の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
  付)
     ─────────────
○委員長(鶴保庸介君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。

・・・【中略】・・・

○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
  最初に、昨日、規制改革会議が提案した労働法制の提案文書について、先ほどのちょっと議論もありましたので、お聞きをしたいと思うんです。
  先ほど室長は、この提案というのは一般論であって、特定の法案について言及したものではないというような趣旨で発言をされました。しかし、これを見ますと、最後のところにパートタイム労働法と明記してありまして、これについては、今国会へ提出されたところであるが、同法所定の通常の労働者と同視すべき短時間労働者であっても、通常の労働者との間には、賃金の決定方法等について、やはり大きな差異があるのが現状である。よって同法所定の対象をいたずらに拡大することには慎重であるべきであると。正にパート法そのものについて言及しているじゃないですか。先ほどの答弁との関係、いかがですか。
○政府参考人(田中孝文君) 誤解が生じたとしたらおわび申し上げますけれども。
  先ほどは、新聞で報道されている最低賃金の引上げに反対しているということに対して具体的に最賃法のことについて言及したものではないという、ここのところに関しては、先ほど御説明したように、不用意に最賃を引き上げるということに関しては、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人々の生活をかえって困窮化することにつながるという一般論を書いてあるというふうに御答弁したつもりでしたが、誤解を生じたようでしたらおわび申し上げます。
○小池晃君 しかし、今正にこれは、この法案は国会で審議されているわけですよ。しかも、その中で、野党としてはこれは問題点を指摘をしていますし、政府の方からは、厚生労働省の方からはできるだけこの均等の対象を拡大すべくやっていくんだという答弁されているわけですね。それは、我々としては是認していません、非常に不十分だと思うけれども、政府答弁としては拡大すると言っているときに、規制改革会議は全く百八十度異なる見解を出す。こういうことがまかり通っていいんですか。そんなことを承知でこれを提案されたんですか。
○政府参考人(田中孝文君) 本文書の性格について先ほど少し答弁いたしましたが、この文書につきましては、二月二十三日の第二回規制改革会議において設置が認められました労働タスクフォースという下部組織において、今後三年間に行うべき規制改革の課題を検討するという観点から、現段階の意見を取りまとめたということでございます。
  したがいまして、現段階では規制改革会議そのものの意見ではございませんが、いずれにしても、その報告書の最後のところに、労働分野においては、以上のような観点から、新しい時代にふさわしい労働システムの在り方について、今後三年間検討を進めていくことにするということを、その性格を明らかにしているところでございます。

・・・【中略】・・・

○小池晃君 ・・・【略】・・・これは「雇用融解」という最近出された本で、パート労働者の実態が出ているんで、ちょっとそこから今日、話をしたいんです。
  この本で紹介されている百円ショップの大手のザ・ダイソー、大創産業のパート労働者に対する解雇ルールの問題を取り上げられているんですが、ここでは一万人のパート労働者が働いて、正社員の店長が一人で複数店を統括していると。二千四百店舗というから一店舗当たりパート四、五人で運営しているわけです。このパート労働者の雇用契約書には、棚卸しの際に在庫の紛失率は一%を下回ることと、上回ったら雇用契約を解除できるという規則があるそうなんですね。実際に関東のある店舗の女性パートは、〇五年夏の棚卸しでロス率が一%を上回ったら、退職強要されて、抗弁したものの、その場で退職願を書かされて、表向き自己都合退職ですけれども、事実上解雇されたというんです。正社員の店長は常時いない状態なんですね。ところが、そのロス率一%を超えた損失責任を、その店舗で働くパート労働者に事実上の解雇という形で取らせているわけです。
  厚生労働省にお聞きしたいんですが、ロス率一%以上は解雇、雇い止め、こういうふうに業務上の成績を雇用契約の要件とするというのは、これ社会通念上からも認められないのではないですか。
○政府参考人(青木豊君) ちょっと具体的な事例について今この場で御質問がありましたけれども、労働契約においていかなる労働条件を定めるかは、これは、法令あるいは強行法規、あるいは公序良俗、そういったものに反しない限り当事者の合意にゆだねられているというふうに考えております。その中で、解雇事由として、成績が振るわない、能力が不足しているというようなものを解雇事由として定めている例というのはそう少なくないと思います。
  これについては、成績不振を解雇事由とすること自体は、それをもって直ちに公序良俗違反で無効だということにはならないというふうに思いますが、しかし一つは、今お示しになった例がちょっと、度数率一%というのがどの程度のところかちょっとにわかには判じかねますが、通常のロスが生ずるようなものであれば、そういったものが合理性があると言うのはなかなか難しいのではないかとも思いますが、それは具体的な事情を見てみないとなかなか分からないと思います。
  また、さらに、解雇事由が具体的に定められて、それが有効であるということでありましても、今度、その解雇事由に基づく解雇というのがすべて有効とされるというわけではないというふうに思っております。解雇については、今ほど申し上げましたように、個別具体的な事情、そういうものに照らしまして、現在、現行法の労働基準法十八条の二の規定によりまして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効とされておりますので、これに従って個々具体的な事情を勘案して判断されるということだというふうに思っております。
○小池晃君 百円ショップっていうのは、在庫管理は極めてラフなんですね。要するに、レジなんかも百円のものを何点買ったというような形でしかやっていませんから、いわゆるPOSシステムみたいなのはほとんど導入されていない。そういう中で一%のロス率というのは、かなりこれはもう当然ぐらいのことなんだというのが関係者の話なんですよね。万引きの問題なんかもあります。そういう中でそれが全部労働者の責になっているというのは、これは非常に重大だと私は思うんですが。
  法案に関連してお聞きしますが、この例えばダイソーというのは、正社員というのは幾つかの店舗を掛け持ちしている店長だけなんです。それ以外は全部パートなんですね。こういう職場のパート労働者というのは、今回の法案でいけば八条の要件にも九条の要件にも該当する労働者はいないということになってくるわけですね。
○政府参考人(大谷泰夫君) 今御指摘がありましたような事例につきましては、正社員である店長と従業員の職務がもう異なるという場合が多いと想定されますので、そのような場合は正社員と同視すべきパート労働者、あるいは職務と人材活用が同じパート労働者というものはこれは存在しないというふうになると思います。
○小池晃君 こういうダイソーのように同視する正社員がいないパート労働者というのは救われないわけで、一方で非常に無法な解雇、雇い止めなんていうのが行われているというのがこれが現実なんですよ。トラブルがあれば労働行政へというけれども、結局、現状では裁判で何年も掛かってということになるし、圧倒的なパート労働者は裁判などやっていられない。結局、泣き寝入りしている人が僕は本当にたくさんいらっしゃるんだと思うんです。これが現実だと思います。
  さらに、賃金の問題、九条にかかわって質問したいんですが、大臣の答弁では、この九条の賃金については正社員と同じ賃金表を適用するよう努力義務を課すというふうにしているんですが、同じ賃金表を適用するというのはどういう内容を指しているんでしょうか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 賃金の決定の関係でございますけれども、この改正法案の第九条第二項におきましては、職務内容と中期的な人材活用が通常の労働者と同じパート労働者について、正社員と同一の方法により賃金を決定するよう努めることを求めているわけであります。
  他方、現実には、正社員は年功賃金である一方、パート労働者は地域相場によって設定した採用時の賃金のままであるなど、賃金の決定方法が全く異なっていると、こういった場合も少なくないと。したがいまして、第九条第二項の措置で考えておりますのは、例えば正社員の職能給体系に合わせてパート労働者も職能給による支払とするとか、また、正社員が歩合制であった場合には正社員の歩合制に合わせてパート労働者にも歩合制を導入する、こういった措置から始め、賃金表の体系を正社員に適用されているものに近づけていく、これが一つであります。また、正社員と同じ賃金表を適用することにより、時間の短いパート労働者であっても正社員の時間比例賃金としていく、こういったことを考えているところでございます。
○小池晃君 同一労働同一賃金じゃなくて、同一方法あるいは同じ賃金表ということで、何の目安も設けないで比例で適用するということになると、結局、事業主の判断によって正社員とパートの格差というのは付けることが可能になってくるわけです。
  丸子警報器の判例では、パートと正社員の労働内容は同一なのに賃金格差を設けているのは均等待遇の理念に違反するもので公序良俗違反だと、正社員と比較して八割以下は裁量の範囲を超える、こう断罪したわけですが、九条の規定からすれば、少なくともこの丸子警報器判決の八割を最低基準とするなどもう最低限の歯止めとなるものがなければ、幾ら同じ方法、同じ賃金表といっても格差はどんどん広がるだけなんで、やっぱりそういう最低限の歯止めは必要なんじゃないですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) この賃金の決定につきまして、今回、九条二項の考え方は、その職務内容とそれから中期的な人材活用、これを併せてみて考えていくようになるわけでありますが、この最低賃金制度につきましては、制度がセーフティーネットとして十分機能するように最低賃金法の改正案を今国会に提出しているところでありますが、そもそもこの最低賃金法はパート労働者に対しても当然適用になるものでありますので、既にパート労働者について適用されるこの最低賃金法が形成されているところであります。
  今回の、今のお尋ねの関係について特に申し上げますと、パート労働者の就業の実態が極めて多様であるという我が国の現状におきましては、パート労働者の賃金の決定について、最低賃金を上回る一定の水準を定めて強制するといった手法によりましては、かえってその働きや貢献に見合った公正な待遇とはならなくなるおそれが大きく、そうした方法によることは考えていないわけでありますが。
  例えば、パート労働者は正社員の何割の賃金とすべきか。つまり、どの程度の働き方の違いに応じてどの程度の待遇差が認められるかにつきましては、平成五年にパート労働法を制定して以降、有識者による検討を行ってきたわけでありますけれども、我が国における雇用管理の実態に見合った、いわゆる現実味のある水準についてなかなか合意が得られているという段階ではないということでございます。
○小池晃君 いろいろとおっしゃったけれども、結局、合意がないんでできなかったというだけの話ですよね。最低賃金の問題で言っているんじゃないんですよ。正社員との賃金格差の問題でやっぱり一定の歯止めが必要じゃないかと言っているんですよ。
  私、やっぱり八条の対象が極めて限定されるだけじゃなくて、九条の要件についても非常に限定的であり、実効性に乏しいということを改めて今お話を聞いても感じるわけです。
  特に、この勘案すべき点に意欲というのがあるわけですね。これは事業主側の恣意的判断にゆだねられる、単なる評価基準じゃないわけです。九条が適用になるかどうかという要件に意欲というのが入ってくれば、残業、休日出勤あるいは配転に応じるのかどうか、ここまで判断要素となりかねない。一層過酷な労働条件を強いることになることは明白ではないかと思うんです。
  この意欲ということについては、これは削除すべきじゃないですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 改正法の第九条におきまして、パート労働者の職務の内容、それから成果、意欲、経験、能力等を勘案して賃金を決定するよう努めるべきこととしているわけであります。
  このうちの今御指摘のありました意欲につきましては、これは事業主の主観に基づくものではなくて、総合的かつ客観的な判断がなされるべきものでありまして、評価の要素、基準等については客観的な説明ができるということが求められております。例えば、あるスーパーで短時間労働者が遅刻、欠勤がなく勤続した場合に、当該労働者の意欲を勘案して精皆勤手当を支給すると、こういったことが想定されるわけであります。

・・・<以下省略>・・・




 

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