衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第28号 平成19年6月6日(水曜日)
平成十九年六月六日(水曜日)

    午前九時三分開議

・・・【中略】・・・

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 労働契約法案(内閣提出第八〇号)

 労働基準法の一部を改正する法律案(内閣提出第八一号)

 最低賃金法の一部を改正する法律案(内閣提出第八二号)

○細川委員 民主党の細川律夫であります。

・・・【以降、途中まで略】・・・

○細川委員 ・・・【中略】・・・ それでは次に、最低賃金法の改正案について伺ってまいります。

 まず、最低賃金決定の基準について伺いたいと思います。

 最低賃金の水準についてでございますけれども、我が国の現状は、全国加重平均で時間当たり六百七十三円、最低の地域で六百十円ということになっております。いろいろなところで既に指摘もされておりますとおり、先進国でも最低のレベルということになっております。今まで六百十一円ということで低かったアメリカ、ここも二年後には八百六十円に引き上げられるということになっております。イギリスは千百九十円、フランスは千二百三十八円、優に千円を超えております。これを見るだけでも、我が国の最低賃金は国際標準に近づけるべきだというのが結論になるわけでございます。

 したがって、この委員会で議論をすべきことは、どういう案であれば、ある程度の最低賃金の引き上げにつながるかということが大変重要でございます。民主党としては、全国平均で千円を目指すという政策を出しておりまして、これは、この法案に対して与党の皆さんがどういうふうにお考えになるかわかりませんけれども、一部では、余りにも高過ぎる、非常識だという意見も私は聞いております。しかし、もともとフランスやイギリスなんかはもう優に千円を超えているわけですから、仮に千円で年間二千時間働いたとしても、年収は二百万円にしかならない、決して私は大きい数字ではないというふうに思っております。

 政府から提案されました今回の改正案、中でも最も大事なのが九条三項で、「労働者の生計費を考慮するに当たつては、生活保護に係る施策との整合性に配慮するもの」、これが入ったところでございます。生計費を考慮するに当たっては、生活保護との整合性を配慮する、ここであります。今まではどうだったかというと、現行法第三条で、最賃は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金及び通常の事業の賃金支払い能力を考慮して決定しなければならない、こういうふうにされておりました。この規定は改正案の九条二項に引き継がれておりますけれども、この二項と、それから先ほど指摘をいたしました九条三項の生活保護との整合性、この関係について私はまず伺っていきたいと思います。

 最低賃金の決定基準は以前から三つありまして、一つは労働者の生計費、二つ目が類似の労働者の賃金、三つ目が通常の事業の賃金支払い能力、この三つの要素になっておりました。今回は、「地域における」という限定をつけておりますけれども、この三つの要素は原則変更はないわけでございます。

 そこでお伺いをいたしますけれども、労働者の生計費、類似の労働者の賃金、通常の事業の支払い能力、この三つの要素は対等な関係にあるのか。それとも、この三つのうちで一つはもっと重要性があるのか。この三つの要素それぞれ、そういう重さというのが異なるのか。これについてまず伺いたいと思います。

○青木政府参考人 地域別最低賃金についての委員の御質問でございますが、委員のおっしゃるように、三つの要素で決定されるということになっているわけですが、この三つの要素につきましては、軽重があるわけではなくて、いずれも地域別最低賃金の決定に当たって考慮されるべき要素であるというふうに考えております。

○細川委員 それでは、生活保護との比較についてお伺いをいたします。

 私は、憲法二十五条にも規定がありますように、労働者の最低限の生計費というのは、最低賃金のいわば下限でありまして、そしてまた一方で前提だというふうに思います。

 まず、最低賃金の基準は生活保護などの最低の生計費を上回る、これは当然でありまして、今まで生活保護以下の最低賃金の決定があったとすれば、それはもう憲法二十五条の健康で文化的な最低生活をする権利、こういう二十五条に違反するような疑いがあるというふうに思っております。

 類似の労働者の賃金、それから通常の事業の支払い能力、この要素も、マクロに見て最低の生計費を上回って支払い得る根拠とはなっても、それを下回る基準ではないだろう、こういうふうに思います。

 お伺いをいたしますが、労働者の生計費とは生活保護の水準を上回るべきだというふうに私は考えますが、法案の「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。」というこの規定の意味は、少なくとも生活保護の水準を上回る、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

○青木政府参考人 今委員が御質問になりましたように、生活保護との関係でございますけれども、地方最低賃金審議会における審議に当たって考慮すべき三つの決定基準のうち、この生計費につきましては、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」ということにおっしゃるとおりなっているわけでございますが、これは、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣旨でございます。

○細川委員 それでは、その生活保護に係る施策との整合性ということについて、さらに進んでお聞きをいたしますが、生活保護との比較をするのか、その生活保護の何と比較をするのか、それが大変大事だというふうに思います。

 そこで、厚労省で作成をいたしました「生活保護と最低賃金の比較」というのがございまして、これには四種類の表があって、事前に厚労省の方からお聞きをいたしましたところ、おおむね二の表が一つの基準となるということでございましたので、それを参考にしながら質問をしたいと思います。きょうは、委員の皆さん方にもお配りをいたしております。

 この表は、生活保護の方については、都道府県の生活扶助基準人口過重平均プラス都道府県の住宅扶助実績値で見るわけです。最低賃金額は、これは最低賃金額に百七十六、これは一カ月の働く分でございますが、働く時数、そして〇・八六七、これは収入から税金あるいは社会保険料などを引かれた分、いわゆる可処分所得の額でございます。そこで、これを比較いたしますと、およそ十一都道府県で最低賃金額が生活保護を下回っていることになります。

 そこでお尋ねをいたしますが、厚労省として、これら十一都道府県で修正を加える、九条三項ですね、つまり、生活保護に係る施策との整合性に配慮する、これをクリアすると厚労省は考えているのではないかというふうに思いますけれども、これについていかがでしょうか。

○青木政府参考人 生活保護と最低賃金の比較に当たりましては、例えば、地域別の最低賃金は都道府県単位で決定されておりますのに対し、生活保護は市町村を六階級に区分している。また、生活保護は、年齢や世帯構成によって基準額が異なるというようなこと。あるいは、生活保護では必要に応じた各種加算や住宅扶助、医療扶助などがある。そういったことをどういうふうに考慮するのかという問題が、御指摘のようにございます。

 しかしながら、最低賃金は労働者の最低限度の生活を保障するものであります。モラルハザードの観点から、少なくとも、最低賃金が生活保護を下回っている場合には問題となるだろうというふうに思っております。

 さらに、労働して賃金を得る場合には、単に今生活保護を受けている場合よりも必要とする経費が増加するという観点からすれば、最低賃金の水準は生活保護を一定程度以上上回るものとすべきであるという考え方もあり得るというふうに思っております。

 現在の最低賃金と生活保護の水準を見た場合に、衣食住という意味で、生活保護のうち、若年単身世帯の生活扶助基準の都道府県内人口加重平均値により住宅扶助を加えたものを手取り額で見た、先ほどの図でありますが、その最低賃金が下回っている地域、これが十一地域ということでございますが、まずはそういったケースについて、生活保護との整合性を考慮の上、その逆転を解消する。そして、その上でさらに、最低賃金と生活保護との整合性のあり方について考慮していくことが必要だというふうに考えております。今申し上げましたそういった考え方も、一つの考え方ではないかなというふうに思っております。

 いずれにしても、生活保護との整合性を具体的にどのように考慮するかということにつきましては、具体的な額の話になってまいりますので、中央最低賃金審議会及び地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるべきものというふうに考えております。

○細川委員 いろいろお聞きをいたしましたけれども、「生活保護に係る施策との整合性に配慮する」という意味が、今聞いただけではちょっとよく私は理解できませんでした。

 そこでもう一度お聞きをいたしますが、現在、最低賃金額が最も低い県、これは最低賃金額が六百十円の青森、岩手、秋田、沖縄、この四県のうち、生活保護の方が高いのはわずかに秋田県のみで、青森はほぼ同額、そのほかの二県は最低賃金の方が高い、こういうことになっております。逆に、生活保護の方が高い都道府県というのは、東京、神奈川、大阪、埼玉、千葉、京都、兵庫、広島、北海道、宮城、秋田、こういうことになっております。

 そこでお聞きをいたしますが、ちょっと秋田を除きまして、すべて大都市を擁する都道府県、先ほど申し上げましたこの十一都道府県については、仮にこの基準にいたしますと、大都市を抱えた都道府県は生活保護の方が高いので、最低賃金は上がるだろう、こういうことではないかと思いますけれども、そういうことでよろしゅうございますか。

○青木政府参考人 生活保護との整合性だけで最低賃金額を決定するわけではありませんので、これによってこれだけしか上がらないという話ではないと思います。

 ただ、単純に、おっしゃるように、地域別最低賃金が、先ほどの基準で考えて、先ほどの方式、生活扶助基準、人口加重平均と都道府県の住宅扶助実績値の合計と賃金の可処分所得ベースとを比べてみますと、生活保護を下回っているのは十一都道府県でございます。確かにそうでありますけれども、具体的な額、水準につきましては、これは考慮の一要素ということでありますし、地域における労働者の生計費及び賃金、それから通常の事業の賃金支払い能力を考慮して、地方最低賃金審議会における審議を経て決定されるものでございますので、それによって適切な引き上げがなされていくというふうに思っております。

 さらに、成長力底上げ戦略推進円卓会議におきまして、生産性の向上を考慮した最低賃金の中長期的な引き上げ方針について政労使の合意形成を図りまして、その合意を踏まえて、最低賃金の中長期的な引き上げに関しまして、産業政策と雇用政策の一体運用を図って取り組んでいくということでありますので、こういった成果として、生産性の向上に見合った最低賃金の引き上げがなされるものというふうに考えております。

○細川委員 私が中心的に聞いているのは、今度の改正案で、今までの三つの要素にプラスして、生活保護の施策との整合性ということがプラスになったわけでしょう、そこが。だから、その関係で最賃がどういうふうになっていくかということに私は注目しているんですよ。これが大事なんですよ。そのほかは変わっていないんですから。いろいろなことを言われても、これは我々は理解できませんよ。大事なのは、この改正案で一体どうなっていくかですから。どういうふうに最賃が上がるかですから。

 それでは、ちょっとお聞きしますよ。まず、では、沖縄県の最賃というのは今度の法改正案で上がるんですか。上がるとすれば、どれくらい上がりますか。お聞きいたします。

○青木政府参考人 おしかりを受けるかもしれませんけれども、地域別最低賃金の具体的な水準については、これは先ほど来申し上げておりますような諸要素を勘案して、適切に地方最低賃金審議会の審議を経て決定されるということになりますので、具体的にどれが上がる、どのぐらい上がるということは今直ちにはお答えできないわけでありますが、今御質問にありました、先ほど来申し上げております生活保護の生活扶助基準の一定の方式、それと地域別最低賃金の可処分所得ベースをとる場合においては、おっしゃるように、沖縄県においては最低賃金が生活保護を上回っているわけでございます。

 したがって、ここの条項がまず、先ほども申し上げましたように、まずもってその観点の逆転を解消した上で、さらにその上で生活保護と最低賃金との整合性を考える必要があるというふうに先ほど申し上げましたように、そういった点を踏まえて、沖縄においても具体的な額が決まっていくだろうというふうに思っております。

○細川委員 具体的な数字というのは出てきませんから、しつこく聞くようですけれども、毎年毎年一円とか二円とかそういうものの額が上がっていく、その攻防を毎年やっているわけですね。だけれども、そんなことじゃいかぬ、思い切って国際水準に上げなきゃいかぬじゃないか、もっと最低賃金を上げて、そしてワーキングプアなどが発生するようなことがないようにしなきゃいかぬじゃないか、そういうようなことも含めてこれを提案されたわけでしょう。

 具体的に沖縄は、今六百十円だったらどの程度になるかというぐらいは、ある程度聞かせてくださいよ。

○青木政府参考人 何度も同じお答えで恐縮でございますけれども、具体的な額を定めるのは、地域の実情に応じて、それぞれの法律で定められた要素を具体的に勘案しながら地方の最低賃金審議会で決めるというスキームになっているわけでございます。その際に、どういう枠組みで物を考えるかということが法律で決定基準として決められているということでございます。その中にありまして、まずもって、生活保護との整合性というのは少なくとも従来の決定基準にさらに必要だろうということで、明確化を今回するわけでございます。

 したがって、具体的な額についてどうだというのは、今直ちにお答えできかねるわけでありますけれども、少なくとも、そういった考え方に基づいて具体的な額が決められるというふうに考えております。

○細川委員 今、沖縄は、最低賃金は六百十円ですね、六百十円。これが今度の法案、とりわけ生活保護との整合性ということで、どれぐらい上がるか。これまでは一円とか二円の上がったり下がったりでしょう。それと同じことなんですか、それとも、もっとぐっと上がるんですか。十円単位ですか、百円単位ですか。ちょっとそこを聞かせてくださいよ。何かよくわからないんですよ、その御説明では。

○青木政府参考人 先ほど申し上げましたように、生活保護につきましては、さまざまな決定の仕方がございます。したがって、どれをとるかということはこれからの議論だというふうに思っております。法律の枠組みとしては、生活保護との整合性をきちんととってくださいということだろうというふうに思っております。

 少なくとも、先ほど来申し上げていますように、単身世帯の一類、二類の扶助基準と、それから住宅扶助、それといわば手取り額、そういったものを加えたものは、そこをスタートラインとして、少なくともそこをまずもって解消し、さらに、その上で生活保護との整合性をさらにどうするのか、どのような水準に持っていくのかというのは地方審議会で議論をしていただきたい。

 少なくとも、参考に申し上げますが、先ほど申し上げました、委員がお触れになっている十一都道府県分でありますけれども、これだけで逆転解消を機械的に算定いたしますと十一都道府県で四十九円、全国加重平均で二十五円の引き上げとなります。しかし、これが最低賃金の額の引き上げ水準ということではないというふうに思っております。

○細川委員 だから、先ほどの十一のところは大都市を含む都道府県であって、それは生活保護の方が上なわけですね。最賃がずっと下だ。だから、これに合わせるように、生活保護に合わせるように高くなるというのはわかりますよ。では、そうじゃない沖縄はどうですかと聞いているんですよ。上がりますか、上がりませんかということです。

○青木政府参考人 先ほど来申し上げていますように、この法律上の枠組みは、生活保護との整合性をきちんと考慮して三つの要素を十分考慮した上で具体的な額を決めろという枠組みでございます。具体的な額の決め方としては、労使も交えた地方の最低賃金審議会で十分審議をした上で、地方の実情なども考えながら決定をして、しっかり遵守をしてもらいたい、こういうことになっているわけであります。したがって、法律上、具体的な額が直ちに出てくるという枠組みになっているものではありません。

 したがって、今回お願いをしております法律によって、少なくとも生活保護との整合性との観点でいえば、最低限といいますか、まずもって十一都道府県については、これはまず解消されるでしょう、さらに、それでおしまいというわけではなくて、生活保護との水準というのはさまざまありますから、水準との整合性はさまざまありますので、それはこれから議論をして、何が適当かというものをきちんと、具体的な額を決めるに当たって十分審議をした上で決定がされるというふうに思っております。

○細川委員 何度聞いてもちょっとよくわからないですね。仕組みも今までと同じでしょう。仕組みは今までどおりですね、地方最低賃金審議会で決める。そして、その三つの要素も同じですね、最初から話しました三つの要素。今度プラスされた生活保護との整合性を加味して決めるというわけですね。

 だから、いいですよ、十一の都道府県についてはわかるんです。生活保護の方が上ですから、それに最賃を合わせるというのは。上がりますよ、それが今言われた二十五円ですか。そうしたら、沖縄はその場合、今度は上がるんですか、生活保護を考慮して上がりますかということを聞いているんですよ。

 今までの仕組みで具体的にやるからなかなか具体的なことは言えませんというんですけれども、生活保護より最賃の方がちょっと上だったり、あるいはそれが同じだったりしたら、生活保護を考慮したって変わらないんじゃないですか。今までどおりになるんじゃないですか。一円二円の……

○櫻田委員長 細川律夫君に申し上げます。

 申し合わせの時間が経過しておりますので、御協力願います。

○細川委員 ちょっと、今の質問だけ許してください。

 今までどおりの一円二円の値上げの問題になるんではないですかと私は聞いているんです。上がるんだったら上がるとちゃんと言ってくださいよ。もっと、どれぐらい上がるか。沖縄の人も心配だと思いますよ。

○青木政府参考人 先ほども申し上げましたように、生活保護は年齢や世帯構成によって基準額も異なりますし、必要に応じた各種加算、住宅扶助や医療扶助や勤労控除とか、そういったものがあるわけです。先ほど来お話がなされておりますのは、そのうちの若年単身世帯の生活扶助基準に住宅扶助の実績値のみをやった場合に十一だ、単純に機械的に比べると十一だということを申し上げているわけで、では何を比べるのか、少なくともそれは解消してもらわなくちゃいけないと思いますが、何を比べるというのは、さらにそれに乗っかってくるものが考え得るわけですね。それは具体的な額を決めるに当たって十分議論をしながら考えるべき話だというふうに思っております。

 こういった仕組みは世界的にも、額を法定しているアメリカを除けば……

○櫻田委員長 答弁は簡潔にお願いします。

○青木政府参考人 労使で十分話をして額を具体的に決めていくというやり方がいわば世界の趨勢でありますので、そういった枠組みに基づいて日本の最低賃金法もなっているということでございます。

○細川委員 ありがとうございました。

○櫻田委員長 以上をもちまして細川律夫君の質疑を終了いたします。

・・・<以下省略>・・・




 

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