衆議院・参議院会議録情報 抜粋

参議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第168回国会 本会議 第5号
平成十九年十月五日(金曜日)

    午前十時一分開議

・・・【中略】・・・

○本日の会議に付した案件
  一、日程第一
  一、調査会設置の件
  一、裁判官弾劾裁判所裁判員、裁判官訴追委員
   及び同予備員辞任の件
  一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員の選挙
  一、事務総長辞任の件
  一、事務総長の選挙

・・・【中略】・・・

○相原久美子君 民主党・新緑風会・日本の相原久美子です。

・・・【以降、途中まで略】・・・

 今、構造改革の結果、人が当たり前に暮らすことが難しくなってきています。
  昨年、NHKで放映され大きな反響を呼んだ番組の単行本が「ワーキングプア 日本を蝕む病」として発刊され、版を重ねています。格差社会の象徴ともいうべきワーキングプアとは、怠けているから貧しいのではなく、懸命に働き続けても生活保護水準以下の収入しか得られない人々です。ワーキングプアから抜け出せず路上生活を続ける若者たち、景気回復から取り残された中小の商店主や農家の人、睡眠時間を削って二つの仕事をこなすシングルマザー、年金だけでは暮らしていけず、空き缶拾いで日々を送るお年寄り夫婦などが取材班の目を通してレポートされています。
  民間団体の調査やマスコミの報道任せにせず、行政としてワーキングプア解消のための施策に速やかに着手するために、全国調査による実態把握をすべきだと考えますが、総理はいかがお考えでしょう。
    〔副議長退席、議長着席〕
  そこで、これらの国民の不安の声の中から何点かについて現状認識と今後の対応をお伺いしたいと思います。
  第一は、生計費である賃金の下支えを行う最低賃金制度についてです。憲法第二十五条に保障されている健康で文化的生活を営むための根幹の部分であるとしてお聞きください。
  八月に中央最低賃金審議会が答申した今年度の上げ幅目安は全国平均で十四円です。これでいくと、時給六百八十七円程度、従来に比べれば引上げ幅は上がっているというものの、一か月、所定内時間どおり働いても十二万円ほどにしかなりません。そして、このような状況で働いている労働者の多くは短期雇用を繰り返す派遣や臨時であったりと、時間給以外に諸手当が出ない、交通費すら出ないことが多いことを御存じでしょうか。年収わずか二百万円に満たないのですよ。総理は、これで安心して憲法で保障された生活ができるとお考えでしょうか。御認識を伺います。
  最低賃金を語るとき、中小企業への圧迫が懸念されています。イザナギ超えの景気と言われても、それを実感できる中小企業はほとんどないでしょう。生産性を高めるには、労働力の増加と設備投資、技術力の革新だと言われています。労働者の賃金改善のためにも企業規模間格差を解消するためにも特別な施策が必要だと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  第二は、雇用における格差が大きく見られるパート、派遣労働者の問題です。
  私自身、自治体におけるパート労働者として勤めた経験があります。現在、パート労働者は約一千二百万人で、雇用労働者全体の二三%を占めています。就業形態は多様化し、選択の幅が広がったのだと言う方がおりますが、選択できるのではなく、選択せざるを得ない状況にあることを御認識ください。
  さきの通常国会で改正されたパート労働法で差別禁止の要件に該当する対象者数は、パート労働者全体のたった四、五%にとどまります。また、所定内労働時間が通常労働者と同じであるフルタイムパートについては法の対象にすらなっていませんし、公務労働分野も対象外です。再度、抜本的な法制度改正が必要であると考えますが、総理の認識を伺います。
  継続審議となっている被用者年金制度一元化法案には、再チャレンジ施策の一つの柱であるパート労働者への社会保険の適用拡大が盛り込まれました。しかし、適用拡大は、週二十時間以上、月収九万八千円以上、勤務期間一年以上、中小零細企業を除くといった要件をすべて満たしている対象者に限られます。結果、週に二十時間以上三十時間未満で働くパート労働者三百十万人のうち、対象者はたった十万から二十万人です。残る九割のパート労働者は再チャレンジのスタートラインにさえ立つ資格がないというのでしょうか。総理、答弁を求めます。
  派遣労働について伺います。
  厚生労働省の二〇〇五年の調査では、派遣労働者の平均年収は三百万円に達していない状況にありますが、今日は、特に日雇派遣、スポット派遣についてお考えをいただければと思います。
  御存じかと思いますが、派遣会社から携帯電話やメールによる一日単位の仕事の紹介がされ、私も駅前等でよく見掛けますが、時間集合で現場に行き、業務終了後、その日の日当が支払われるケースです。さきに述べましたワーキングプアの報道にもありました。
  今、働く意欲があるのにもかかわらず、このような働き方をせざるを得ない若者が多くなってきている、このことに私たちは真剣にとらえなくてはならないのではないでしょうか。昨今は、使用者側のコンプライアンスが問われる問題も出てきております。
  このような働き方では、結婚をする選択、子供を産み育てるという選択もできません。社会保障制度の維持、少子高齢化への対策のためにも雇用施策は重要です。働く意欲と将来の生活設計が可能な質の良い雇用が必要なのではありませんか。総理の御認識を伺います。

・・・【中略】・・・

  質問を締めくくるに当たり、重ねて申し上げます。
  国民の生活を支える労働の対価の根幹にあるのは、同一価値労働同一賃金の原則であり、公正な労働基準の確立です。これ以上、労働分野での規制緩和を進めず、今明らかになっている格差に対する早急な施策が必要です。また、高齢者、障害者を始め社会的に弱い立場に置かれている方々に対する施策は、決して当事者の声なくして決めるべきではありません。
  今、この国の国民の多くは、明日は我が身の不安を背負っています。私がこの選挙期間中にお会いした高齢の方がこうおっしゃいました。あなたが当選したら、国会の議論は国民の目線で、生活感のある議論をしてくれと。正に、我が民主党小沢代表の言う、政治は生活、生活を第一に政治は考えるべきです。
  終わります。(拍手)
    〔内閣総理大臣福田康夫君登壇、拍手〕
○内閣総理大臣(福田康夫君) 相原議員にお答えを申し上げます。
  まず、改革の方向性と格差問題への対応策としての所得再配分政策でございます。
  我が国の経済社会を取り巻く環境が変化する中で、格差と言われる様々な問題が生じております。私は、景気回復の恩恵を受けていない人々や困っている方々がいらっしゃる実態を認識することが政治家の役割だと考えております。このため、改革の方向性は変えずに、生じた問題には一つ一つきちんと処方せんを講じていくことに全力を注ぎたいと思っております。
  その取組の中で、所得再配分の在り方については、税制及び社会保障制度などの政策全体でどのような機能を発揮すべきかを考えていく必要があると思います。将来のあるべき日本の姿を見据え、どのようにその姿に近づけるかを常に念頭に置きながら、国民の皆様方の目線に立って改革を続行してまいる所存でございます。

・・・【中略】・・・

  あるべき労働と生産の在り方についてのお尋ねがございました。
  非正規の労働者の増加など、雇用環境の変化の中でワーキングプアが生じているという指摘も見られるところでございます。だれもが自らの能力を生かし、安定した仕事に就いて将来に希望を持って暮らせるようにすることが重要であり、労働条件の改善などに取り組んで、働く人たちの雇用の安定と所得の向上を図ってまいります。
  ワーキングプアの実態調査についてでございますが、いわゆるワーキングプアについては、その範囲や定義に関して様々な議論があり、現在のところ我が国では確立した概念はないと承知しております。これまでにいわゆるワーキングプアと指摘された方々は、フリーター等の非正規雇用、母子世帯、生活保護世帯等であり、このような方々の状況については、既存の統計等によりその把握に努めるとともに、働く人全体の所得や生活水準を引き上げつつ、格差の固定化を防ぐため、成長力底上げ戦略に取り組むなど、対応を図ってまいっているところでございます。
  次に、最低賃金の水準でございますが、継続審議となっている最低賃金法改正法案においては、最低賃金制度がセーフティーネットとしてより適切に機能するよう、地域別最低賃金について、生活保護との整合性も考慮して水準を決定することを明確にしたところでございまして、早期に法案を成立させていただきたいと考えております。また、成長力底上げ戦略推進円卓会議において、中長期的な引上げ方針につきまして政労使の合意形成を図ることにより、最低賃金の引上げの環境整備を進めてまいります。

・・・【中略】・・・ 

 パート労働法についてお尋ねがございました。
  さきの通常国会で成立した改正法では、正社員と同視できるもの以外のパートタイム労働者についても、その就労実態に応じて均衡待遇の規定が適用されるため、すべてのパートタイム労働者についてきめ細かな待遇の改善が図られることとなっております。
  他方、いわゆるフルタイムパート、すなわち有期契約で通常の労働者と同じ労働時間で働く労働者の取扱いについては、今後の課題と認識しております。しかしながら、今回の法改正の趣旨を踏まえ、当然改正法の考え方が考慮されるべきでございまして、都道府県労働局においても事業主にその旨を周知し、理解を求めております。
  なお、公務労働分野については、そもそも勤務条件が法令等により定められているために、事業主が自主的に雇用管理を行うことを前提としたパート労働法の適用はなじまないものであると思っております。
  いずれにしても、平成二十年四月から改正法を着実に施行することを通じて、パート労働者の待遇の改善に努めてまいります。
  パート労働者への社会保険の適用拡大でございますが、被用者年金制度一元化法案では、正社員に近いパート労働者に適用を拡大するという考え方の下で、二十七年前に定めた現在の厚生年金の適用基準を初めて見直すことになりました。これにより、就職氷河期に直面したフリーター等に対しましては、正社員化に向けた道が広がるほか、被扶養配偶者にとっては、いわゆる百三十万円の壁にとらわれず、本人の意欲と能力を発揮できるようになります。ということなど、パート労働者の年金保障の充実を図る上で大きな第一歩と考えております。
  日雇派遣、スポット派遣についてのお尋ねがございました。
  日雇派遣については、厚生労働省が行った調査によりますと、労働者の側からも一定のニーズがあるものの、雇用が不安定な働き方であり、様々な問題が指摘をされているところでございます。若者を中心として低所得の非正規雇用が増加、固定化するということには、結果として少子化につながるという指摘もございまして、十分な注意が必要と考えております。このため、フリーター二十五万人常用雇用化プランの推進など、正規雇用化の支援等に取り組んでいるところでございまして、こうした取組を通じて働く人たちの雇用の安定と向上を図ってまいります。
  また、労働者派遣制度については、その施行状況、関係者の意見、現場の実態を踏まえて、日雇派遣の在り方も含め、本年九月から具体的な見直しの検討を開始しておりまして、その結果を踏まえ、適切に対応してまいります。

・・・<以下省略>・・・




 

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