衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第3号 平成19年10月10日(水曜日)
     午前九時開議

・・・【中略】・・・

  本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件

・・・【中略】・・・

○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

・・・【以降、途中まで略】・・・

○佐々木(憲)委員 ・・・【中略】・・・そこで次に、先ほどのパネルでも、従業員の方の賃金がずっと下がってきているんですね。その背後には、正社員を減らしながら、パート、アルバイト、派遣、契約など、低賃金の非正規雇用にどんどん置きかえていった、そういう大企業の労務政策があったと思うんです。

 ある派遣労働者はこういうふうに訴えております。正社員と同じ内容で働いているのに、交通費が出ず、保険にも入れない、国民年金や健康保険は今のところ貯金をおろして払っています、全くぜいたくしておらず、最低限の生活を送っていますが、同じ仕事内容なのになぜ認められないのか、むなしくなります。

 厚労大臣に確認したいんですが、現在、非正規労働者、それはどのくらいの数いるのか、全労働者に占めるその比率、何%でしょうか。

○舛添国務大臣 お答えいたします。

 労働力調査によりましたら、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員等のいわゆる非正規労働者の人数は、最新の平成十九年四月から六月の四半期の数字で千七百三十一万人でございます。それで、この四月―六月の四半期の一番最新の数字ですと三三・二%。先生の御用意なさったのには三三・七となっていますが、これは一月―三月で。ただ、いずれにしても三人に一人、これが非正規労働者という比率でございます。

○佐々木(憲)委員 今御紹介いただきましたように、ことしは、一―三月期で三三・七、四―六月期で三三・二、こういうことですね、今の答弁。大変高いわけです。つまり、三人に一人が非正規雇用である。若者の場合は二人に一人なんです。一生懸命働いても年収二百万に満たない、そういう人々が、ワーキングプアですとか働く貧困層、こう言われているわけです。

 全労働者の三分の一が非正規で働いている中で、特に派遣、契約社員、この所得の統計があると思うんですが、総務大臣にお聞きしますが、労働力調査で、派遣社員、契約社員、嘱託の場合、年収二百万未満の人の割合はどうなっていますか、そのうち女性の場合はどうでしょうか。

○増田国務大臣 平成十八年の労働力調査の結果を申し上げますと、派遣社員に占める二百万円未満の者の割合、男女計で四九・六%、それから、契約社員、嘱託に占める割合でございますが、これは男女計で四四・八%、こういう数字に相なります。

 また、お尋ねの、女性についての割合でございますが、これは派遣社員に占める割合が五六・六%、そして、契約社員、嘱託に占める割合でございますが、こちらが五八・九%、こういう数字でございます。

○佐々木(憲)委員 つまり、ワーキングプアとも言われるような方々の比率が、派遣社員や契約社員に非常に高い。もう半分。あるいは、女性の場合は六割、こういう状況であります。

 先ほど見たように、大企業が大変な利益を上げる、その背景に、こういう低賃金の非正規雇用をふやしたり、正社員をリストラで減らしたり、そういうことをやってきた、そこに原因があるんじゃないか。

 総理にお聞きしますけれども、この非正規雇用の比率がどんどん高まってくるということは、平均の賃金水準を全体として押し下げていく、そういう作用を果たすと思うんですが、そういう認識はおありでしょうか。

○福田内閣総理大臣 一般的にはそういうことが言えると思います。しかし、正規雇用もふえているんですね、今。ふえているんです、わずかかも。ことしあたり随分ふえているんじゃないかと思いますけれども。ですから、そういうところで平均すると、まあ、そんなに下がっていないんじゃないかという感じはいたします。

○佐々木(憲)委員 若干正規雇用もふえていますが、非正規雇用のふえ方の方が多いんですよ。四―六月期でも、昨年比で二十九万人正規雇用がふえましたが、非正規雇用が八十四万人ふえているんですよ。ですから、当然、全体の水準が低下していくわけです。

 そこで、問題は、なぜそういうことが可能になったかということなんですね。企業側のニーズだとか労働者の働き方、いろいろ多様な働き方を求めたというようなことが言われますけれども、私はそれでは説明できないと思います、それだけでは。

 このパネルを見ていただきたいんですが、政府が労働法制の規制緩和をこの間次々に行ってきた、それが大変大きな要因になっていると思うんです。戦後は、仕事を紹介して賃金をピンはねするというような口入れ屋というのは中間搾取だということで禁止されました。職安法四十四条、直接雇用でなければならない、こう明記されたんですね。

 ところが、一九八五年、十六の専門業種に限定するという前提で、直接雇用ではなく労働者派遣というものを認めたわけです。それが最初なんです。九六年になりますと、その対象を十六から二十六専門業種に広げました。九九年になりますと、これは日本共産党だけが反対したんですけれども、それまでの二十六業種という限定を取り払って、派遣労働を原則自由というものにしてしまったわけであります。二〇〇三年になりますと、今度は製造業への派遣を解禁して、そして二〇〇四年から実施すると。

 総理、これらの一連の労働法制の規制緩和というものがなければ、現在のこれほど多くの低賃金の非正規労働者というのは発生しなかったと思うんですけれども、これはそのように思いませんか。総理の認識を聞いております。

○舛添国務大臣 簡単に背景について御説明申し上げたいと思います。

 おっしゃるように、この先生のグラフのような御指摘もございますけれども、いろいろな、今先生みずからおっしゃいましたように、企業のニーズとか労働者側のニーズとかもあります。それからバブル崩壊後これがふえている。それで、必ずしも、労働法制が変わったときに有意義に変わったかどうか、これはもっと検証する必要があると思います。

 ただ、やはりこういう形で、三人に一人がフリーター、非正規というのを固定してはいけないと思いますので、派遣法制も厳しく見直して、偽装派遣がないように、例えばこれを今厳しく監督をいたしておりますし、それから二十五万人フリーターを常用雇用する、このプランを精力的に政府としても推し進めていっております。

○佐々木(憲)委員 今までできなかった分野、あるいは今までできなかった派遣が可能になったのは、法律が変わったからなんですよ。法改正がなければ、これだけの非正規雇用は生まれないんですよ。そこはもう明確なんです。

 今、一番派遣労働者の中で問題になっているのは、あらかじめ派遣会社に登録しておいて、派遣された期間だけ労働契約を締結するという登録型派遣、これがあらゆる業種に今広がっているわけです。

 登録型派遣というのは、現在何人いますか。

○舛添国務大臣 細かい説明は避けますが、約百九十三万人でございます。

○佐々木(憲)委員 その登録型派遣の中でも、一日単位で派遣される日雇い派遣というのが大変大きな社会問題になっております。

 登録した派遣会社から、朝早くメールで仕事内容と集合場所が送られてくる。一日働いても数千円、一カ月間必死に働いても十万円台という低賃金であります。こういう方々は、その日仕事がなかったり、あるいは体調を崩して休む、その場合は収入はもちろんゼロになるわけですね。アパートの家賃も払えなくなる。そうなると、ホームレスになったり、あるいはネットカフェなどで寝泊まりせざるを得ない。一度そうなると、なかなかこれは抜け出せないという状況であります。

 元気な愛知と言われている愛知県でも、ネットカフェや漫画喫茶というものがふえております。トヨタ自動車などの関連企業の多い三河地方、製造、流通関係の事業所が多い小牧市など尾張中部地方にもふえておりまして、どんな状況かといいますと、朝早く、トヨタ系の下請会社が、バンでネットカフェを回って若者を迎えに来るというんですね。それで、日雇い派遣、スポット派遣の短期派遣労働者の宿舎がわりにこれが使われている。

 私は労働者の話を聞きました。青森から来たが、賃金が安く、アパートを借りるお金がない、通勤の交通費も大変なので仕事場近くのネットカフェに寝泊まりしている、こう言っているんです。こういう状況をほうっておいていいのかというのが問われているわけです。

 総理、住居のないこういう人たちですね、直ちに、私は、家賃補助ですとかあるいは生活資金を貸し付けるとか、せめて何らかのこういう手を打たなければならぬと思うんですが、どうでしょう。

○福田内閣総理大臣 そもそもそういう雇用が発生するということは、やはり、社会の価値観の多様化というか、また働き方の多様化とかいったようなこともあるわけですね。何もそういうことを推奨しているわけではないんだし。しかし、そういうものが結果として発生しているということについてはどういうような対応をしていくか、これはいろいろな角度で施策を進めていく必要もあろうかと思っております。

 生活資金だとかそういったような貸し付け、そんなことをしたらどうかというふうな話もございますけれども、これは、既に自治体でもって実施しているところもあるというふうに聞いております。資金を貸し付けるということになりますと、保証人の確保が難しいとかいったようなことがありますので、困難なこともあるというようにも聞いております。

 ですから、例えば、ハローワークにおいて寮つきの求人を確保して、これを対象者に職業紹介するというようなことなど、住居と安定的な就労機会の双方が確保できるような、きめ細かな情報提供と相談支援を進めていきたい、こう考えております。

○佐々木(憲)委員 それは、実際に効果があるのは極めてまだ部分的でありまして、ほとんど、先ほどの百九十三万人は登録型なんですね。これ全部がネットカフェだとは言いませんけれども。

 しかし、そういう状況の中で、総理は働く人を大切にするということを所信表明で言われましたね。それから、正規雇用に転換するとも言われました。それなら、私は雇用の原則というものをもう一度考える必要があると思うんです。

 期間の定めのない直接雇用を基本にする、そういう原則に今立ち戻るべきだと思うんです。そういう意味で、例えば、非人間的な日雇い派遣は禁止する、登録型派遣についても原則禁止、こういう道に踏み出すべきだと思うんですけれども、総理、どうですか。

○舛添国務大臣 非正規の労働者にちょっとアンケートをやってみますと、正社員になりたいというのは三割、ところが、今のままでおれはいいよというのが五割、それから、今後も派遣労働者のままの方がいいというのも三割いて、なかなかこれはニーズが一概に言えません。

 ただ、今おっしゃるように、日雇い派遣とか登録派遣というのが今のままでいいのかなというのは、先生のおっしゃるような御指摘もございますので、この九月から労働政策審議会でこの見直しの検討を開始させたところであります。今後、日雇い派遣それから登録型派遣のあり方を踏まえて、この審議会の審議を中心にして、その結果に基づいて適切に対応していきたいと考えております。

○佐々木(憲)委員 働いている人がそういうことを要求しているかのようなことを言いますけれども、とんでもない話でありまして、だれもワーキングプアになりたい人はいませんよ。

 内閣府の多様な働き方に関する意識調査というのによりますと、現在、そういう形で働いている二十代の男性のうち八五%が十年後に正社員として働きたいという調査もあるんじゃありませんか。このままずっとこれでいいなんて、だれもいません。

 九月から検討していると言いますけれども、例えば一般業務については登録型派遣は明確に禁止する、そういう方向で検討しているのかどうか、それを確認したい。

○舛添国務大臣 まず、さまざまなアンケートがございます。それで、若者の中でも非常に、いわゆる自由にやりたいという方がおられたり、派遣型でいいという方がおられることは確かであります。

 そこで今、審議会においては、先生のような御意見も含めてあらゆる角度から検討して、これは適切に、見直しも含めて検討する、そういう踏み込んだところで検討作業を行っているところで、その結果を踏まえて政府としてもきちんと対応していきたいと思っています。

○佐々木(憲)委員 一番焦点になって緊急に対策が必要な問題について、やはり方向を明確にするということが必要だと思うんですね。

 労働政策審議会の中で、登録型派遣を禁止する方向というのに抵抗している人はだれですか。

○舛添国務大臣 多様な意見がございますので、どの委員がどういう意見をおっしゃっているかは、私はつまびらかにいたしません。

○佐々木(憲)委員 私が聞いておりますのは、これは経営者側の委員であります。その言い分を見ますと、登録型派遣は現状維持でいいとか、あるいは対象業務は原則自由化なんだ、こういう勝手なことを言っているわけで、私はここに日本経団連が発表した二〇〇七年の優先政策事項というのを持っておりますけれども、この中では、雇用労働分野における規制改革を一層推進すると書かれております。経営者側の委員は、この立場に立って登録型派遣の原則禁止に真っ向から抵抗している。

 日本経団連の御手洗会長は、政府の政策を事実上決定する経済財政諮問会議の中で、財界、大企業の代表としていろいろな発言をしております。違法な偽装請負を指摘されると、法律に無理があるから変えろと。法律の方を変えろと言っているんです。とんでもない話です。国会のチェックは全く入らないんですか、そういうところに。

 委員長、日本経団連の御手洗会長を参考人として呼んで、雇用政策についての考えをただしたいと思いますが、検討していただけますか。

○逢沢委員長 理事会で協議いたします。

○佐々木(憲)委員 日本経団連になかなか頭が上がらない状況がどうもあるのではないか。総理も何か奥歯に物が挟まったような言い方しかしないので、どうもその裏に、自民党が大企業から政治献金を受け取っているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

○福田内閣総理大臣 政治献金を受け取ったからその業界、団体に有利にしようということを考えるほど、我々は貧しくはありません、まず。

 そして、企業経営者、財界も、やはり日本経済、社会が健全に発展していくことが自分たちの企業のためにもなるんだ、こういう意識を持っていただかなきゃいかぬわけですね。そういう意識は十分に持っているんじゃないかというふうに思っております。そういう意識を持っていないというふうに言われるかもしれませんけれども、私たちはそういうふうな考え方をしております。

○佐々木(憲)委員 影響を受けないと言われますけれども、今から五年前の二〇〇二年、旧経団連と日経連が合併して日本経団連がつくられる、その次の年から新しい方式で献金が行われるようになったんです。それまで十年間は、経団連が集めて自民党に献金するということはやめておりました。しかし、二〇〇四年になって、経団連が自民党と民主党に政策評価という通信簿をつけて、その点数を目安に大企業が献金を行う。

 例えばこういう形になっておりまして、この通信簿はA、B、C、D、Eの五段階になっております。それは模範解答があって、日本経団連が発表する優先政策事項というものがあるんです。それに沿って政策を出せばよい点がとれる。こういうことで、私もこれは余りにもひどいんじゃないかと思って分析をしました。「変貌する財界」、こういう本に私も分析をして書きましたけれども、ともかく、こういう政策……

○逢沢委員長 佐々木君、予定の時間が来ておりますので、簡潔に結論を導いていただきたいと思います。

○佐々木(憲)委員 はい、わかりました。

 こういうやり方が私は非常に政治をゆがめていると思いますが、このやり方をもうそろそろやめるという決意は総理におありかどうか、最後にお聞きしたいと思います。

○福田内閣総理大臣 私は、この経団連で評価していることについてどういう経緯でそういうふうにされているかはわかりませんけれども、私どもからお願いしてやっていただいているということではないと思っております。

○佐々木(憲)委員 企業・団体献金というものが政治全体をゆがめるということですから、きっぱりと禁止をする、このことを最後に主張して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

○逢沢委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。

・・・<以下省略>・・・




 

目次へ