第168回国会 厚生労働委員会 第7号
平成十九年十一月二十二日(木曜日)
午後一時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○労働契約法案(第百六十六回国会内閣提出、第
百六十八回国会衆議院送付)
○最低賃金法の一部を改正する法律案(第百六十
六回国会内閣提出、第百六十八回国会衆議院送
付)
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○委員長(岩本司君) ただいまから厚生労働委員会を開会いたします。
・・・【中略】・・・
○委員長(岩本司君) 労働契約法案及び最低賃金法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、五名の参考人から御意見を伺います。
本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介申し上げます。
日本労働組合総連合会総合労働局長の長谷川裕子参考人でございます。
社団法人日本経済団体連合会専務理事の紀陸孝参考人でございます。
東京大学大学院法学政治学研究科教授の荒木尚志参考人でございます。
全国労働組合総連合副議長・全日本金属情報機器労働組合(JMIU)中央執行委員長の生熊茂実参考人でございます。
働く女性の全国センター(ACW2)代表の伊藤みどり参考人でございます。
・・・【以降、途中まで略】・・・
なお、参考人、質疑者ともに発言は着席のままで結構でございます。
・・・【中略】・・・
○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
・・・【以降、途中まで略】・・・
○小池晃君 それから、続いて生熊参考人にまたお聞きしたいんですが、就業規則の取り扱われ方、周知という話がありますが、伊藤参考人からリアルな実例かなり示されたんですけれども、これが実態どうなっているのか。せめて文書配付義務のようなものがあるべきではないかというふうに思うんですが、その現状の実態とあるべき姿についてお考えをお聞かせください。
○参考人(生熊茂実君) まず、入社のときに就業規則を渡されるというのはごく一部にしかないんじゃないでしょうか。実際には労働条件の明示についても、それを文書で渡されるということもほとんどなくて、口頭で行われるということが多いと思います。就業規則は、その後職場に入ったとしても、とりわけ中小企業などでは、先ほど申し上げましたように、大体職場に一冊置いてあるのがいい方だというふうに思います。本当に見えないような状況も実際にあるわけですけれども、あってもぶら下げられているということで、ほとんど見る機会がないというのが実態だと思います。
そういう面では、先ほど他の参考人からもお話ありましたように、当然入社のときには、すべて入社する労働者には文書で就業規則を配付する、これがやっぱり最低望まれることであり、そして初めて周知ということが言えるんではないだろうか、このように考えています。
○小池晃君 労働契約法についてはいろんな問題点があると思うんですが、やっぱり格差と貧困、格差社会急激に広がっているというときに労働条件を一方的に変更できるような仕組みを立法化するということが、何でこんなことをやらなきゃいけないのかという、根本的に私疑問に思います。そのことを申し上げたいと思います。
それから、最賃の問題、ちょっと一点追加して生熊参考人にお伺いしたいんですが、全労連の方では最賃の決定の手続の問題について、労働者委員の問題で、労働団体から広く公募して民主的手続によって毎年改選されるようにという要請も出していらっしゃいますけれども、この問題での実態と改善すべき点、あったら教えてください。
○参考人(生熊茂実君) 私たち全労連には、商業サービス関係とか中小零細企業の労働組合がかなり多いところがあります。そういう面でいうと、本当にやっぱり最低賃金を必要としている、あるいは最低賃金の改善を本当に望んでいる、そういう仲間たちの声を何とか代表したいということで、私たちは最低賃金の審議会に私たち全労連の組合員の任命を求めているわけですけれども、いまだに一人として任命されておりません。
私は、そういう面でいいますと、やはり本当に多くの労働者の実態を反映する、そしてその声を聞きながらこれを改善させていく、そういう行政の流れの中ではそういう公正な任命ということが必要なんではないか、このように考えています。
○小池晃君 ありがとうございました。
それから、労働契約法、今回問題になっているわけですけれども、労働契約と言われる以前に今の労働者の置かれている実態といいますか、私も偽装請負の問題なんかを国会で取り上げてきて、偽装請負をただして正社員化を求めるという闘いを応援してきているんですが、現場ではちょっと信じられないようなことが起こっているというふうに思っているんですね。
その点で、生熊参考人もいろんな闘いに取り組んでおられると思うんですが、ちょっとこの機会にそういった現状と問題について是非お話をしていただきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いします。
○参考人(生熊茂実君) 先ほどからワーキングプアあるいは貧困と格差という言葉の中で、これは非正規労働者の増大がその要因なのではないか、こういう議論がされておって、私もそうだと思うんです。
そういう中で、とりわけ、偽装請負という違法な働かされ方をされていた労働者が多くの大企業の製造現場を始めとして多くありました。私たち、その問題に取り組みまして、昨年、光洋シーリングテクノという、徳島にあるんですが、これはトヨタの孫会社になります。そこで、労働局に告発をして、その上で交渉をしながら直接雇用を実現することができました。
私は、その中で思ったことですが、第一次の直接雇用、その次に第二次の直接雇用を求めたんですが、経営者との団体交渉の場ではこういう話を聞きました。経営者としても、よく相談した結果、技術の継承をちゃんとしていくためにはやっぱり直接雇用の方がいいという結論に達したということで、第二次直接雇用に踏み切っていただきました。私は、これは日本の企業に、とりわけものづくり企業にとって非常に大事な考え方だというふうに思っています。私たちは第二次の直接雇用もしながら、正社員化の今直前に来ている、こういう状況をやってまいりました。
一方、そういう中で、この近くにあります日亜化学という同じ徳島の工場があるんですが、いわゆる青色発光ダイオードの発明で有名になった会社です。会社としては非常に大きな利益を上げているところですが、ここでも偽装請負がありました。
私たちはこの問題についても、徳島県の仲介の下で日亜化学と交渉いたしました。そして、その場で、私自身がその交渉に出た当事者でありますけれども、これまで三年間働いてきた労働者については直接雇用を図っていくと、しかも、学校を出て何年もたっているんだから筆記試験零点ということもあるだろうと。言ってみれば、よほどのことがない限り直接雇用をする、こういう約束をして私たちは合意をいたしました。
ところが、その合意が踏みにじられて今大きな問題になっています。その仲間たちは、本当に直接雇用になることができる、そのときに本当に喜んで、一生懸命仕事をやろう、物すごいモチベーションを上げて、会社のためにも自分の生活のためにも頑張ろうというふうな気持ちを持っていたわけですが、それを裏切られたことによって本当に愕然として、それでも今頑張っておりますけれども、そういう実態があります。
私は、こういう本当に非正規雇用の仲間たちが安定して働いて、労働条件についても将来展望が持てるという働き方が、独り労働者の問題だけではなくて、企業の経営にとっても、企業の活力を生む上でも大変大事な問題じゃないかと、このように考えて取り組んでいるところです。
○小池晃君 ありがとうございました。
私も実際、徳島の阿南市まで行って労働者等の話聞きましたけれども、本当にひどい。朝日新聞の一面で大々的に正社員化、直接雇用って出たんですが、それが裏切られるというような事態が起こっていて、本当にその非正規雇用の労働者の不安定さというのはもうとても大変な状況にある。その上、今度労働契約法で正社員の労働条件も一方的に不利益変更できるような仕組みが盛り込まれてくるということに対しては、やはり重大な懸念を持たざるを得ないというふうに改めて今日のお話もお聞きして思っております。
以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○委員長(岩本司君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後三時五十二分散会
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