衆議院・参議院会議録情報 抜粋

参議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第168回国会 厚生労働委員会 第8号
平成十九年十一月二十七日(火曜日)

    午前十時一分開会

・・・【中略】・・・

  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○労働契約法案(第百六十六回国会内閣提出、第
  百六十八回国会衆議院送付)
○最低賃金法の一部を改正する法律案(第百六十
  六回国会内閣提出、第百六十八回国会衆議院送
  付)
○身体障害者補助犬法の一部を改正する法律案(
  衆議院提出)
○中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰
  国後の自立の支援に関する法律の一部を改正す
  る法律案(衆議院提出)
○社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正す
  る法律案(第百六十六回国会内閣提出、第百六
  十八回国会衆議院送付)

・・・【中略】・・・

○風間直樹君 民主党・新緑風会・日本の風間直樹でございます。よろしくお願いいたします。
  先般、この厚労委員会で今回の法改正にかかわる参考人招致が行われまして、五名の方に御出席をいただきましたが、私はあの招致が非常に胸に響きました。特に、生熊茂実さん、それから伊藤みどりさん、このお二人のお話を伺いまして、今労働の現場で特に非正規雇用を中心とする立場の弱い労働者の方々がどういう現状に直面しているか、そういう実態を伺いまして、非常に考えるところがございました。
  今日は、これまで多くの委員の皆さんから様々な切り口からの問題提起がなされてまいりましたが、私からは、今回の労働三法の改正が非正規労働者の労働条件の改善につながるのかどうかと、こういった視点からお尋ねをさせていただきたいと思います。また、舛添大臣には質問させていただきますのが初めてでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

・・・【中略】・・・

  今回の改正について私は思うんですが、その法案を作った皆さんも、それから我々委員も、この改正が労働者の皆さんにとって良かれと思ってするわけであります。しかし、例えば労働者派遣法、平成十一年、十五年に改正をされておりますが、この改正が果たして本当に良かったのかということを今考えてみますと、特に製造業で働く皆さんにとっては、かなり当初の意図とは反する結果を生んでいるんではないかという疑念も持ちます。

・・・【中略】・・・

○風間直樹君 ・・・【以降、途中まで略】・・・次に、この労働契約法の就業規則の不利益変更の部分につきましてお尋ねをしたいと思います。
  この不利益変更、そして労働契約法、これまでの議論の流れあるいは法案の中身を簡単に整理してみたいと思うんですが、まず、労働条件というのはあくまでも契約の当事者である労働者と使用者の合意で決定されるのが基本であると。就業規則の制定手続については、労働基準法第九十条で過半数労働組合か労働者の過半数を代表する者の意見を聴いて使用者が制定若しくは変更をすることができると。ただし、その変更するということも、使用者が一方的に労働条件を変更できるのは例外的な場合であると。今回の法改正では、それにかかわる判例法理を足し引きせずに法律にすると。この点は初日の審議で質疑があったところでございます。この例外的な場合でありますが、例外とは規則条項が合理的であると、このような趣旨の内容が今回の改正案の中に含まれているわけであります。

・・・【中略】・・・

参考人招致などで多く出されました意見は、ここに最近の非正規雇用の増加という面を考慮してみると、なかなかその人々、非正規労働者の意見が反映されにくいんだと、こういう悲鳴にも似た訴えが出たわけでございますけれども、こうした方々の意見をどう反映すべきかというのが一つのポイントではないかと思いますが、その点、政府はどのように認識されていらっしゃいますか、伺います。
○政府参考人(青木豊君) 今回の労働契約法案におきまして、就業規則の変更による労働契約の内容の変更というところでは、その第十条で、もちろん原則はそれぞれ第九条で、使用者が労働者と合意することなく就業規則の変更により労働者の不利益に労働契約の内容を変更することはできない旨を明確に規定しているわけでありますが、第十条で、変更後の就業規則が労働者に周知されており、就業規則の変更が合理的なものである場合に、この労働契約の内容である労働条件は変更後の就業規則に定めるところによるものとするという旨を規定をいたしております。この際に、合理性の判断といたしまして、それぞれ労働者の受ける不利益の程度でありますとか、変更の必要性だとか内容の相当性でありますとか、労働組合等との交渉の状況というようなものを勘案するということにいたしておるわけであります。
  そういう意味で、今お尋ねになりました様々な労働者の方々の意見あるいはそういったものを十分お聴きをして、そしてこういった十条の適用を受けて合理性を担保して変更するということになるだろうというふうに思っております。
○風間直樹君 この部分が私は非常にあいまいさを残してしまって、将来問題が出てくる素地となりかねないと思っております。
  この法案改正の審議に先立ちまして、我々委員の下には全国から多くの要望あるいは陳情が寄せられました。その中で一つ、この就業規則に関する陳情書というものが今手元にあるんですが、中野布佐子さんという方の書いていらっしゃる内容です。労働基準監督署に届ける就業規則の労働者代表は、黙って判を押す人を会社が名指しして印を押させ提出しております。社員は、労働者代表が社員の選出によって選ばれなければならないということさえ知りませんし、労働者代表がだれなのかも知りません。したがって、労働者にとって不利益変更が次々と書き換えられております。会社が幾ら不当労働行為をしても、それに異議を唱えるということは即首ということですと、こういう御意見があります。
  それから、今のその合理性の部分ですが、これは働く女性の全国センター事務局から寄せられた中に記載をされていた私の一言というコメントなんですが、不利益変更を社長の一存で被った者です。一度だけでなく、過去数年の間に何度も持ち出され、正社員の身分変更以外はすべてのまざるを得ませんでした。私の会社には就業規則すらなく、労使が協議して合意すればよいではないかと議論されていることに非常に悲しい気持ちを覚えています。職場に自分の居場所を確保するためにきゅうきゅうとせざるを得ない人間にとって、それはちょっとと声を上げることがどんなに困難かお察しください。こういう現状があるわけですね。

・・・【中略】・・・

  労働者にしてみますと、二つの選択肢、紛争になった場合は二つの選択肢になるとは思うんですが、まずは裁判。ただ、これはコストと時間が掛かります。そして、もう一つは労働局の総合相談窓口に行くということでありますが、この相談窓口の問題点も、さきの参考人招致で伊藤みどりさんの方から御指摘がありました。当日、この委員会に伊藤さんから参考資料として出されたものがございます。出典は労働法律旬報千六百四十八号、五月下旬号ということになっておりますが、要は、相談に行くと、この相談窓口の方も相談に乗る方の人数が足りないために、できるだけ追い返そうと、こういう実態があるということですね。「追い返しおじさんの存在」というふうにこの資料にはありますけれども、確かにそうなんだろうと思うんです。

・・・【中略】・・・

この労働紛争の処理の体制が現状では著しく不十分ではないかと思いますが、その点に対する政府の御認識をお願いしたいと思います。
○政府参考人(青木豊君) 労働紛争の処理は様々な今お触れになりましたように窓口がございます。とりわけ、その中でも手軽く相談ができるということで、総合労働相談コーナーを全国都道府県労働局四十七か所のほか監督署や、あるいは主要都市の利便性の高い駅周辺などで全国で三百か所に設置をいたしております。約六百人の総合労働相談員が労働に関するあらゆる相談、情報の提供などのワンストップサービスを無料で実施をいたしているところでございます。
  私どもとしては、そういったところで具体的な、パンフレット等を備えていろいろな資料を活用しながら丁寧な相談に努めていきたいというふうに思っております。現在の判例法理あるいは実務に即したいろいろな裁判例等を始めとして集積をいたしておりますので、そういったものを分かりやすく集めまして、そういった資料も活用しながら事務を進めていきたいというふうに思っております。
○風間直樹君 大臣、二つ是非御検討をいただきたいと思うんです。
  まず一点は、この労働相談窓口に行かれる方も大変つらいと思うんですが、追い返す方もつらいと思うんですよ。いわゆる追い返しおじさんですね。かなり執拗に労働基準法違反で申告すると言わないと受理されないと。お互いが処理したくないので押し付け合っているようだ、しかし個人で窓口を訪ねてもまず追い返されてしまうと。こういう現状があるということを踏まえて、やはりこの増員なりを検討していただくべきだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  それからもう一点、この労働基準監督署が過半数代表選挙が民主的にやられているか、あるいは就業規則の周知徹底が本当になされているか、この指導をしていないという指摘がございます。やはりこれももっとしっかりやっていただかなければいけないと思いますが、その二点について御認識を伺います。
○国務大臣(舛添要一君) 窓口の相談体制含めてきちんとニーズに対応できるように、これは現状をしっかり分析した上で必要な措置をとりたいと思います。それから、労働基準監督業務につきましても法律に基づいて厳正に行うべきであると、そういう方向で指示をしていきたいと思います。
○風間直樹君 是非この法成立後、私は非常に良からぬ結果がもたらされないかと危惧をしておりますので、この法内容の周知徹底を図っていただきたい、それを念を押してお願いしたいと思います。
  それから、今申しましたように労働紛争処理の体制が著しく不十分であります。また、今回の法改正によって恐らく非正規雇用者の労働条件、雇用状況を改善することはなかなか厳しいのではないかと思います。ややもしますと、労働者派遣法のときのように、今回のこの法改正がなされた後で、やはり結果として悪い事態が多く発生したと、こういうことで、今回の法の内容をまた再度見直す必要も生じてくるのではないかと、このように思っております。私の疑念をこの労働契約法のお尋ねの最後に申し上げておきたいと思います。
  最後、わずかな時間ですが、労働者派遣法の今後の見直しについてお尋ねさせていただきます。
  平成十一年と十五年の改正によりまして大変な事態が生じました。特に十五年改正によりまして、製造業で働く方々の派遣が事実上無制限に解禁されたと言ってもいいと思います。
  今手元に資料がございますが、今、日本の労働人口六千三百八十四万人、これは二〇〇六年度の総務省が発行した労働力調査に基づく数字ですが、そのうち二百万円未満の所得、貧困層とこれはみなされる所得でありますが、その合計が二千百七十四万人いる。うち、いわゆる非正規雇用者、パート、アルバイト、派遣、契約、嘱託、その他で千二百八十四万人。恐るべき事態であります。
  この人たちがどういう生活をしているか。食生活が恐らく所得が一番反映される一つの指標だと思いますので調べてみましたら、今年の八月二十八日に出版されております週刊スパという雑誌、下流の食卓が危ないと、こういう特集があるんですね。読んでみてびっくりしました。お金がないので、どれだけ食材を安く上げるか大変な苦労をしていると。例えば、ペペロンチーノ風味スパゲッティ。スパゲッティをゆでて、そこにマーガリンを入れてペペロンチーノだと思って想像しながら食べると。一食分五十円だそうであります。こういう食生活が今非正規雇用の労働者の間に蔓延しております。
  こういうことを考えますと、やはり将来の日本社会のバランスというものを考慮した上でも放置できる問題ではない。そういう意味で、この労働者派遣法、再び見直しをして、特に製造業への派遣へ何らかの歯止めを掛けるべきではないかと思いますが、政府の認識を伺います。
○国務大臣(舛添要一君) 御指摘のような問題が様々指摘されるわけです。もちろん、若者の間にこういう派遣というような業種を選びたいといったニーズがあることも確かです。しかし、今委員が指摘されたような問題もございますので、この九月から労働政策審議会において具体的な見直しに着手したところでありますので、現状をきちんと分析した上で、しかるべき改革、改善の方向を取ってまいりたいと思います。
○風間直樹君 終わります。

・・・<以下省略>・・・




 

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