衆議院・参議院会議録情報 抜粋 |
衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。 |
第11号 平成20年2月19日(火曜日) 午前九時四分開議 ・・・【中略】・・・ 本日の会議に付した案件 政府参考人出頭要求に関する件 平成二十年度一般会計予算 平成二十年度特別会計予算 平成二十年度政府関係機関予算 ・・・【中略】・・・ ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。 ・・・【以降、途中まで略】・・・ ○ 石井(郁)委員 やはり、小泉構造改革以降、大変、収入の格差、所得格差、そしてまた、いわば教育格差が開いているわけですから、私は、この実態というのは本当に政府としてしっかりつかんでほしいというのが一つあるんですね。 それで、私、日本私立学校振興・共済事業団というところが昨年の五月に中退者の調査をした結果を見ました。私立大学の全中退者の学生数が五万五千人だ。中退率として二・九%ですから、大変高いですよね。三%。その理由、経済的理由で中退する方が一万人なんですよ。多いじゃないですか。これは、私立学校の共済事業団として初めて調査した。こういう実態になっているということで、こういう種類の調査というのは、いろいろ民間の人たちも努力されていますけれども、私は、政府としてまずしっかり見てほしいということを一つ要望しておきます。 事態は極めて深刻でありまして、国立大学の初年度の納付金、平均で八十一万七千八百円です。私立大学の初年度納付金、平均百三十万二千百九十四円、こういう額になっているんですよ。町村官房長官からは、奨学資金でいろいろ手当てをしているというお話ございましたけれども、今、国民の家計実態で見ますと、よく言われるように、年収二百万円以下の世帯は一千万ですよ。年収二百万円、一千万。母子家庭の平均年収というのは二百十三万円です。一体、こうした世帯でどうしてこれの授業料を出せますか。もう、収入の半分が授業料になっちゃうじゃないですか。こういう実態ですよ。 そこで、では、文科大臣にお聞きします。 日本の授業料が非常に高い。私は世界一だと言ってきているんですけれども、非常に授業料が高い、高過ぎる。では、奨学金はどうかといえば、これは給付ではなくて貸与ですから、ずっと借金として背負わなくちゃいけない、こういうものになっているわけですね。 そこで、端的にお聞きしますけれども、一体、大学の授業料が有償で、奨学資金が貸与、こういう国はどこがありますか。 ○渡海国務大臣 教育の事情というのは、それぞれの国がいろいろな事情の中で制度設計を行っているというふうに承知をいたしております。 確かに一時期、高等教育は無償化しようというような流れもあったというふうに承知はいたしておりますが、例えばイギリスとかドイツとか、やはりある程度これは御負担をいただかないとというふうな流れに変わってきているという事実も実はあるわけでございます。 どこだというふうに言われますと、例えばアメリカやイギリスというのは、高等教育について、授業料も有償でありますし、それから貸与奨学金、これも実施をされているところでございます。お隣の韓国もそうだというふうに聞いております。 一概にこのことをもって比較をするというのはなかなか難しいとは考えておりますけれども、いずれにいたしましても、さまざまな国々のさまざまな制度により行われているというふうに考えておるところでございまして、我が国においても、今官房長官もお話しになったとおりでありますけれども、でき得る限り、教育の機会均等というものが損なわれないように、制度において努力をしていかなきゃいけないというふうに考えているところでございます。 ○石井(郁)委員 なかなかはっきりとこういう国というふうにはおっしゃいませんでした。 アメリカは本当に州立大学と私立とでいろいろ事情がありますから一概には言えない面もありますけれども、授業料が有償、奨学金が貸与という国、ちょっとはっきり見ていただきたいと思うんです。 きょう私は資料を配付させていただきましたが、OECD加盟国の大学授業料と給付奨学金の有無なんですね。圧倒的に、圧倒的と言うのはちょっとあれかもしれませんけれども、奨学資金でいいますと給付ですよ。授業料が無償という国が半分です。三十カ国のうち十五カ国は無償です。ここで両方とも、いわば授業料が有償で、そして給付奨学金がない国というのは、この表では日本と韓国とメキシコ、三カ国があるだけなんです。つまり、奨学金もいわば公的な給付となっていないというところでございます。 さて、それでは、その奨学資金についてもう少しお聞きをしたいと思いますけれども、やはりこれだけの授業料が高い中では、私は奨学資金というのは本当に命綱だと思います。学業を続けるまさに命綱だと思うんですね。文科大臣はどうか知りませんけれども、私どもも、奨学資金を得てやっと大学を出ることができたということがあります。しかし、貸与という、世界にないやり方ですから、しかも、これは多くは有利子なんですよね。 それで、文科省にお聞きしますけれども、学部生の返還額、これは卒業したときに総額幾ら負うのか、そして月々幾ら払うのか。それから、大学院を出た場合、これは博士課程を修了すると一体幾らになるのか。博士課程の場合は、学部から博士課程、五年間ですから、この期間の終了時の総額返済額、そして月々幾らか。それから、学部生の場合はいろいろ、八万円、十万円というのがあるんですけれども、ちょっとそれぞれでお示しいただきたいと思います。 ○清水政府参考人 お答え申し上げます。 有利子奨学金の返還例についてのお尋ねでございますが、学生方が変動型金利を選択して、〇・九%ということで試算しますと、学部四年間、まず、毎月八万円貸与を受けるとすると、貸与総額は三百八十四万円、返還総額は四百二十一万円、毎月約一万八千円の返還を二十年間というような試算になります。また、十万円貸与を受けるとしますと、貸与総額は四百八十万円、返還総額は五百二十七万円、毎月約二万二千円の返還を二十年間というような例に相なります。 また、お尋ねのありました、学部のみならず、修士課程、博士課程を通じて毎月十万円の貸与を受けるとすれば、貸与総額は一千八十万円、返還総額は一千百八十万円、毎月五万三千円の返還を二十年間続ける、このような試算に相なります。 ○石井(郁)委員 お聞きになって、大臣、いかがでしょう。学部を卒業して、大体五百万円を超える返済総額を払い続けなければいけない。大学院の場合は一千万円を超えているわけですよ。こういう返済額を背負わされる。私は、本当にこれはちょっと大変な事態ではないのかと。 ですから、今、学生の間には、奨学金をもらって大学に行けるんじゃないかと言われるけれども、返済のことを考えたらとても自信がないと。そうするともう行く足がとまってしまうわけですよ。こういう声がたくさんございます、まさに教育ローンを背負っているわけですから。私は、これは本当に返済できる額かと言わざるを得ないと思います。 実際、今、若い人たちは、大学を出ても二人に一人が非正規の労働ですよね。派遣労働という、本当に低い賃金と不安定な雇用の中に投げ込まれているわけでありますから、とても払い切れない。これは、月々二万二千円払うというのは大変なことですよ。大体、十数万円ぐらいの、あるいは十万前後ぐらいの給料の中では、本当に払えない。 それで、私は驚いたんですけれども、教職員の中でも、文科省なんかは教職員もなかなかふやしてくれませんから、臨時教員という方で現場は回している。臨時教員になりますと、月十万円ぐらいだというんですね。どうやってこれを払っていくんですかという問題もあります。 そして、もう一つの問題が、博士課程を修了した方なんですね。一千万円の返済額というのは、私は、余りにも異常な額というか、本当にひどいと思うんです。 ここに持ってきましたけれども、今読まれている「高学歴ワーキングプア」という本があるんですけれども、博士の就職難ということが社会問題になっていますよ。つまり、博士課程を出た、博士号を取ったけれども就職先がないという問題ですよね。研究員として転々とするけれども、ずっと定職にはつけない、こういう問題なんですよ。この方々は非常勤講師などをしながらやっと研究と生活をしているけれども、年収が二百万から二百五十万ぐらいですよね。だから、どうして月々五万五千円というのが払えるんですか、何とかしてほしいという声になるわけですよ。 私のところに、あるメールが届きました。この方は、三十三歳になった、研究員を続けてきたけれども、ことしの三月で任期切れです、進路が決まりませんと。だって、三十三歳ですから、多くの友人たちは結婚もし、子供だっているかもしれない。しかし、就職が決まらない。だけれども、その奨学金の返済を考えると、家を借りるどころか生活できないということで、収入のかなりの部分を奨学金返済に使ってしまうだろうということをおっしゃっていまして、これは私に死ねと言っているようなものですと、ここまで書いていらっしゃるんですよ。 そういう声というのが本当にあるんですよ。だから、博士課程を修了して、行方不明者の方が出てきているということも聞いています。深刻な事態ではないのかと私は認識をしていただきたいと思うんです。 そこで、財務大臣にきょうはぜひ伺いたい。 進学を断念するこういう実態が広がっているし、また、これは日本社会の発展あるいは知の発展の基盤を崩すことにもなる、また、博士号を取りながら社会に生かせる道がない、こういうことでいいのかという問題、この御認識を伺いたいのが一つ。 あわせて、その上で、では政府として本当にできることはないのかという問題なんですよ。 先ほど来、奨学資金の拡大ということを言われましたけれども、今日は、その奨学資金は有利子奨学資金ですから、利息がついて、それで返済総額が大きくなる。来年度の予算でもこの有利子の奨学金を七万四千人ふやしています。しかし、無利子の部分というのは千人しかふやしていないんですよ。無利子の部分、千人です。私はきょう、もう一枚の表を配付しておりますけれども、有利子の奨学金がうんとふえまして、無利子の部分は横ばいなんですね。ごらんのとおりです。ふえていないでしょう。 そこで、私は、こういう予算を、財務省がお決めになっているわけですから、ぜひ、その無利子のことについても申し上げますと、所得水準で一定枠があるようですが、それにはちゃんと該当している、満たしている、しかし対象になっていない。この枠が狭いからです。一千人しかふやしていない。こういう子供たちは二万四千人あります。そのために、少なくともこういう部分というのは手当てをすべきじゃないのかというふうに思いますし、もう一つは、もう少し先を見て、こういうローン、貸与の奨学金ではなくて、やはり公的な奨学金給付制、こういうものを考えるときではないのかということで、財務大臣の御見解を伺います。 ○額賀国務大臣 私も、経済的な理由で若い人たちが教育を受けることができないなんということはあってはならないことであると思っております。私も大学時代、奨学金をいただいて学びました。だから、それだけに余計思います。 と同時に、今、奨学金を貸与されて学んでいる方々は、何人ぐらいと言いましたか、三百万人ぐらいおるんですかね。それから、無利子でやられている方々も一割ぐらいはおられると聞いております。だから、そういう方々が社会人になられてどの程度負担をしていくかということについては、ちょっと考えてみる必要があると思うんです。 ただ、私は、このデータを見まして、例えばデンマークだとかフィンランドだとか、みんな大体国民的な負担が多い国ですよね。そういう中でこういう奨学金の無償とか貸与をなされているんだと思いますけれども、我が国はなぜと。 基本的には、自己責任というか、そういうことの基本的な考え方のもとに社会の仕組みが成り立っているわけでありますから、勉強の場は開放する、できるだけそういう奨学金とか体制はしっかりさせる、しかし、公の国民の税金を使わせてもらっているんですから、それはやはり自分が働ける間は返済していく、そういう自己責任も必要なのではないのか。その、程度の問題だと思いますけれども、先生のおっしゃるようなことも踏まえて、日本の教育がどうあるべきかということを考えていかなければならない。特に少子化社会でありますから、子供が少なくなっていく中で全般的にどういうふうにしていくのか、小中高校と今言った高等教育とのバランスとか、いろいろなことを考えながらいい形をつくっていくことが望ましいと思います。 ○石井(郁)委員 図らずも財務大臣が、日本は自己責任だと言われましたけれども、ずっと長い間、政府は、やはり教育を受けるのはその個人が利益を得るんだという考え方でしてきたと思うんですよ、受益者負担ですね。しかし、ここは、各国を見てももう転換をしなきゃいけないと思うんです。学生、院生ともに学術や科学や文化を担っているわけでしょう。そのもとで社会が発展していくわけですから、利益を受けるのは社会全体なんですよ、国民全体なんですよ。だから、公的な負担でそういう保障をするというのが世界各国の流れになっているじゃないですか。それは私は大変重要な点だというふうに思います。 先ほどの博士課程について言いますと、もう非常勤講師で本当に十万、十五万ぐらいの収入しかなくて研究している、こういうところは本当に免除枠なんかも広げるべきですよね。これは、免除枠も政府はうんと削減をしてきた。ほとんどなくなってしまいました。だから、みんな返済義務を負うということになっています。 私は、特に返済滞納者という方々を見ますと、滞納理由に、無職とか失業とか、経済的理由が圧倒的に高くなっている。これは、〇一年には六・五%でしたけれども、〇五年には二〇%になっています。そして、その理由のトップが低所得ですということで、この教育の格差が広がる中で、返すに返せない状況もある。そういう低所得者には、やはり学業の機会を保障するという意味で、給付制あるいは授業料の免除、こういう制度はぜひ必要だということを強く申し上げたいと思います。 あと、最後の時間、もう一点ですが、高い授業料等がそもそも問題なんですよ、国立大学で八十一万円ですから。町村長官、御自身のことをお考えになってもおわかりのとおりだと思います。もう何十倍じゃないですか。 それで、そもそもこんなふうに引き上げてきたことが問題ですから、私はこの授業料を本当に下げなきゃいけないと思うんですけれども、今、こういう事態を憂慮して、大学の自主的な取り組みが始まりまして、東京大学では、年収四百万以下の方からは授業料を徴収しない、免除する、こういうことに踏み切っているんですよ。なかなか英断だと思います。 これはぜひ、これを東大だけにしないで、全国の制度化にしてはいかがでしょうか。地方大学は運営交付金を削られて、やはり力のない大学はできないわけですから、こういうことを政府としてやるべきだということを私は強く申し上げたいと思いますが、文科大臣、いかがでしょう。 ○渡海国務大臣 委員も御承知のように、大学改革ということで、今、独立行政法人という組織になっております。そして、おのおのの大学の運営については、もちろん我々の方でそのことをしっかりとチェックはさせていただくわけでありますけれども、基本的には、各大学が中期計画をつくっていただいて、その中で経営をやっていただくという形になっておるわけでございます。 今の先生の御提案、東大でそういうことが今考えられているというのは我々も聞いておりますけれども、各大学がどういうふうな運営をやられるかということについて一律的な制度設計を、例えば親の所得が年収四百万以下の方々は授業料を免除するといったようなことについても、果たしてそれは国がそういったルールをつくるのがいいのかどうか、ここはやはりこれからまだ議論のあるところだというふうに私は思っております。 ○石井(郁)委員 私は、もっと前向きに、こういう問題にも文科省としてぜひ取り組んでいただきたいということを強く申し上げたいと思います。子供たちは親の収入に本当に胸を痛めながら、でも学びたいと言っているんですよね。私は、こういうところに本当に日本社会の希望があると思うんですよ。 それで、公的負担、支出、日本はOECDの中での平均よりも少なくて、平均一%、日本は〇・五%ですから、やはり公的支出をきちんと政府として保障するということを強く求めて、質問を終わります。 ○逢沢委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。 ・・・<以下省略>・・・
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