第3号 平成20年11月14日(金曜日)
午前九時七分開議
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
会計検査院当局者出頭要求に関する件
政府参考人出頭要求に関する件
児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)
厚生労働関係の基本施策に関する件
・・・【中略】・・・
○阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。
私は、本日、水曜日の山田委員と大臣との御審議、あるいは昨日の参議院の厚生労働委員会での私どもの党首福島みずほと大臣とのやりとりを聞きながら、実は大臣に冒頭お伺いしたいのです。
先ほどの答弁の中でも、大臣は国のセーフティーネット政策はしっかりやるんだというふうに御答弁でありますが、果たして、現下において、働く者の住宅の問題、よくワーキングプアという言葉が使われますが、今やその方たちは同時にハウジングプア、住まう場所がないというような事態に同時に直面せざるを得ない時代がやってきておると思うわけです。そうしたことに対しての大臣の御答弁が、いま一歩というか、もう少し深い認識に立っていただきたいなと私は思うので、そういう観点からお伺いをいたしたいと思います。
まず、もう皆さん御指摘ですから、この間、失業率の上昇あるいは有効求人倍率の低下によって、特に製造業現場、それも輸出関連の製造業現場では失業が相次ぐと。例えば、十一月一日の朝日新聞によれば、トヨタ自動車九州で、六月と八月の二回、計八百人の派遣の解約、あるいは、もう一つ、日産自動車九州でも千人の契約を更新しないという事態が起きております。この場合に、派遣で働く方たちは、同時に住居を失うということが発生しているわけです。
大臣にもう一度お伺いいたしますが、大臣にあっては、やはりこのさま変わりした働く者の風景というか、ワーキングプアとハウジングプアが同時並行的に起こってしまうということについて、どのような認識をお持ちであるか。そして、恐縮ですが、具体的には、大臣はこの間厚生労働省が出された「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」という報告、これは十月に中小企業をヒアリング調査したものですが、これをごらんになっているかどうか、二点お願いいたします。
〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕
○舛添国務大臣 アメリカ発の金融不安からきている経済危機は大変深刻なものがあるというふうに思っております。その中で、特に派遣の労働者に対しての、先ほど調整弁という言葉が高橋委員から出されましたけれども、そういう観点も含めて、極めて厳しい風が当たっているということも認識しております。そして、そういう雇用情勢の中で、とりわけ派遣労働者の場合は住居という面についても同様なことが起こっている。これは極めて深刻に認識しないといけないというふうに思っています。
これまでをずっと振り返りますと、高度経済成長時代がありました。そして、バブルの崩壊というのを我々は既に十年以上前に経験しています。しかし、そのときに比べてもさらに深刻になっているのかなという感じがします。それは、やはり派遣という形態、特に日雇い派遣、これがその後拡大したことが一因になっているという認識も持っております。
そういう中で、我が省でさまざまな統計調査、報告が出ておりますので、基本的には私は目を通してきております。
○阿部(知)委員 よく衣食足りて礼節を知ると申しますが、やはり住が足りませんと人は保護される場がないわけであります。
この住宅の喪失という問題を、大臣は先ほど「経済情勢の変動に伴う事業活動及び雇用面への影響について」という調査はごらんになっているということですので、私としてはこのヒアリングの中で、例えば、非常に大きな失業の数値が上がっております製造業や輸出型製造業現場、ここではすなわち雇いどめ等々の起こる比率が、製造輸出型では四三・六、そして製造業では二九・四、これは派遣の皆さんですが、パーセンテージです。この方たちの、実際どのくらいの方が同時に住居も失っているかという集計もぜひ、ヒアリングですからできるんですね。
私は、こういう厚労委員会等々で審議をいたしますときに、やはり厚労省がしっかりしたデータをお持ちになることというのが前提なんだと思うんです。
私どもはもちろんホットラインとかやりますし、そうしたところには、この前、山田先生が御指摘の、要するに住居も追い出されてしまった派遣労働者の例とか、たくさんホットラインが来るわけです。ところが、いざこの場で審議しようとなると、厚労省の方がしっかりしたデータをお持ちじゃないわけです。
大臣にきょう約束してほしいんです。今度、この厚生労働省の職業安定局雇用政策課で行っている、七月にも行った、十月にも行った、残念ながらこれからますます雇用情勢が悪化していくこともあり得ると思います。そうしたときに、実際この方たちで、寮とかにお住まいで、同時に失業がすなわち住宅を失うことになる方たちがどの程度おられるのか、実態調査の中に加えていただきたいですが、いかがでしょうか。
○舛添国務大臣 例えば派遣会社に対する調査を含めて、それはやってみたいと思います。具体的にどういう形で進めるかについては、局長の方がもし答えられれば答えてください。
○阿部(知)委員 済みません、大臣の明確な御答弁をいただければ。
例えば、日雇いの派遣の方でも六十一万人失業状態にあるという報告がありました。同時に住居もないという方がどのくらい発生するのか。これは、先ほど言いましたワーキングプアとハウジングプアが合体した形になりますから、極めて重要ですから、私は、やり方についてはもちろん現場に任せます。ただ、そういう視点を持って、住宅というところを切り口にやっていただきたい。
そうやっていただくと、恐らくこの間の大臣の御答弁は、例えばホームレスの皆さんについては福祉的側面から、旧厚生省の担当でいろいろな施策があったと。この前のチャレンジネットのお話、これは昔の労働省分野の皆さんがチャレンジネットというのをつくって、そして、でも実は、大臣御存じだと思いますが、住宅部門は東京都に丸投げしているんですよね、厚労省みずからやっているんじゃないんです。国のセーフティーネットとしての住宅政策は、今度は国土交通省。これは三分割なんです。
旧厚生省の福祉分野、ホームレス分野、そして労働省分野のこのたび細々始まっているチャレンジネットは、実は住宅部分は自治体任せ、そして国土交通省の方がもう一つのセーフティーネット政策をやる。こういうばらばらにしていたのでは、今急速に拡大している、家を失う、路頭に迷う若者たちにとても対策できないと私は思うんです。
そういう問題意識できょうは大臣にお願いいたしましたし、また、その意味から、チャレンジネットの住宅政策はあくまでも東京都がお金を出してやるわけです。では、大臣の手のうちでできる政策はないか。これは、与党の方も聞かれましたが、雇用促進住宅です。間違いなく厚労省が管轄しておられます。そして、ホームレス支援やチャレンジネット支援でやれる数と、膨大に発生する実際に住まいを失う失業の方の数は、もう十倍、二十倍のオーダーに違うんです。
ぜひ大臣、きょうは清水委員も御質疑でありました、この雇用促進住宅のいわば売り払い政策を、緊急的な、期限を定めてでもいいです、凍結するなり見直すなり、とにかく住宅を保障していただきたい。どうでしょうか。
○舛添国務大臣 まず、先ほど委員がおっしゃいましたように、住居に困っておられる方、こういう方の実態について早急に調査をしたいと思います。
その上で、やはり住むところというのは基本的に、その方の住む自治体、これがきめ細かい手当てができるわけですから、実施主体がそこであることの方がいいのではないかと私は思っております。そういう中で、都道府県がどういう形でそれを支援できるか。これは先ほどの、東京都にお願いしている、NPOなんかを使ってやっている窓口もそうであります。
雇用促進住宅につきましては、先ほど来申し上げていますように、確かに、行政の合理化ということで平成三十三年までに処理ということが行われております。ただ、ここも一定の家賃は払わないといけません。私の記憶が正しければ、やはり年額で百二十万ぐらいないと家賃を払える水準にないと思いますから、そういうことも含めてどういうことが可能か、仮に雇用促進住宅を一定の期限を定めてでもそういうことに転用するときの問題点、課題、そういうことについては検討してみたいと思います。
しかし、片一方で、大きな行政の合理化という面もあります。ただ、まさに実態調査が必要だというのは、さま変わりしているという状況がどういうことなのか。あれは御承知のように、雇用促進住宅は、例えば、もともと今の機構自体が石炭から石油へという大きなエネルギー革命の過程において生まれてきた諸政策、それが残ってきているわけですから、そのときに比べて相当状況が変わってきて、ついこの間まで、住居ということに対して、それほど深刻な問題に実はなっていなかったと私は思っております。
しかし、ここに来て極めて深刻な状況になっているので、その認識の確認から始めて、今言った案についても検討を加えさせていただきたいと思います。
○阿部(知)委員 ことしになってからも、いわゆるビデオカフェというんでしょうか、インターネットカフェじゃなくて、ビデオを見るようなところの火事が起きて、たくさんの方がお亡くなりになった。
あの事案を見ても、大臣、若い人たちだけじゃなくて、もう私たちくらいの年齢でも実際住む場所に、路頭に迷う方というか、その日その日で違う場所に泊まらねばならない方がふえているんだという、やはり産業構造の変化と同時に、雇用労働情勢も大きく変わっています。そして、その一部は人為的です、派遣労働等を引き入れましたから。そこに、現状に立ってしっかりやっていただきたい。
特に、与党が、この三年は全面的に景気回復に向けるんだ、集中期間だと言うからには、その中で生きる人が支えられなければ何の意味もないわけです。大臣はもうおわかりと思いますから、ぜひ前向きにお願いしたいと思います。
さてもう一つ、雇用促進住宅もそうですが、いわゆる雇用保険絡みのことでお伺いしたいと思います。
きょう、長妻委員の御質疑にも出ましたが、現状で雇用保険漏れが、多く見積もって一千六万人いる、非正規の場合は六割に上るんじゃないかという大臣の御答弁もありました。すなわち、雇用保険はセーフティーネットであって、本来は持っていなきゃいけないものが、一千万人近くが漏れているかもしれない深刻な状況です。
そして、ここに四兆、五兆のお金が積み上がったといっても、私は、まず使い方は、漏れている、本来であればセーフティーネットを張ってもらえて当然な人に使うということ、やはり雇用のセーフティーネットに使うという原則を大臣にもう一度確認したいというのと、もう一点、その記事のそば、きょうは読売新聞ですが、すぐそばに「失業給付 国負担ゼロに」と書いてあります。こんなに雇用情勢が悪くなって、雇用保険に漏れている人が一千万人もいるという記事のすぐ横に、国庫負担ゼロにというのは、私はやはり真っ逆さまの政策なんだと思うんです。
国庫負担をゼロにする前に、きちんと皆さんに雇用保険が行き渡る状況をつくってこそ、初めて国のセーフティーネットと思います。大臣、この点についてお考えをお聞かせください。
○舛添国務大臣 読売新聞に報道された国庫負担ゼロというのは、私は雇用保険を担当する大臣ですから、全くあずかり知らないところで、私がかかわっていないところで決定はあり得ません。
私は、何度も申し上げていますように、何のために労働省があって、労働大臣がいるのか。それは、労働政策、雇用政策について国がかかわることが近代国家の基本的な要件だ、そういうように思っておりますから、そういうことについて軽々にゼロにするなどというのが、そういう話が政府の中あるいは与党の中であれば、体を張って抵抗いたします。
それから、四兆九千億円の積立金は最後のとりで、最後のセーフティーネットですから、これを安易にほかのところに流用するというようなことがあってはならないと思っております。
〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕
○阿部(知)委員 私のお願いの雇用対策にしっかり使っていただくということと、近代国家の最後のとりでだとおっしゃっていただきましたので、しっかり頑張っていただきたいと思います。もう、そういうお言葉をいただけば。
大臣のお手元の一枚目の私の資料は、先ほどは雇用保険の加入者で一千万人近くが漏れているというお話でしたが、今度は、実際の失業者の中で一体どれくらいの失業給付があるかという逆さの側面。
給付の側面から見ても、上のグラフを見ていただければわかりますように、現下、非正規雇用の比率がふえるほどに、失業していても失業給付がないという方がどんどんふえているというのが上のグラフです。今、二二%、五人に一人しかない。一九九三年に比べれば半分になってしまった。
私は、やはりまず、こうやって失業していく方に、きちんと何度も大臣にセーフティーネットを張っていただきたいし、その下には、これは上川委員の御質疑と一緒ですが、景気が低迷すれば、たまっている失業給付のお金もどどっと急速に減っていくものですから、ここはしっかりと見定めていただきたいというお願いであります。
・・・<以下省略>・・・
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