衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第5号 平成20年11月19日(水曜日)
午前九時開議
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件

政府参考人出頭要求に関する件

長期優良住宅の普及の促進に関する法律案(内閣提出、第百六十九回国会閣法第四四号)

国土交通行政の基本施策に関する件

・・・【中略】・・・

望月委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 ・・・【以降、途中まで略】・・・

 国交省として、ゼロゼロ物件にかかわるトラブルをどのように認識しているか。そして、あわせて、この間は局長は、社会問題化しておる事態を踏まえ、何らかの方法で実態をしっかり調査してまいりたいと答弁しました。社会問題化している事態について何らかの対策を立て対処すべきではないのかというあたりについて、まず報告していただきたい。

和泉政府参考人 お答えします。

今の御質問は、まず、ゼロゼロ物件についてちゃんと認識しているかという御指摘がまず一番目でございます。私どもの認識では、一部の不動産会社におきまして、敷金ゼロ、礼金ゼロというようなことをうたい文句として営業が行われておる。また、こうした物件の入居者が、家賃を滞納した場合に無断でかぎをかえられたり、あるいはちょっと支払いがおくれても法外な違約金を払わされたりなどして、損害賠償を求める訴えを提起している、そういったことがございます。これがいわゆるゼロゼロ物件をめぐってのトラブル、こう理解してございます。

加えて、二番目でございます。先週、何らかの方法で調査をすると言ったが、その結果に従って何らかの対策も検討すべきじゃないかと。それにつきましては、その調査の結果やるべきことがあれば、関係省庁とも連絡をとりながら、私どもとしてやれることについて検討してまいりたい、こう考えております。

穀田委員 やるべきことがあればという状態、そういう話ではないんですよね。

そこで、今お話ありましたけれども、ゼロゼロ物件によるトラブルというのはどんなものかということなんですね。報道その他や、また裁判になっている事例もありまして、不動産会社スマイルサービス、この社が一番この問題では有名ですよね。これは、家賃の支払いが一日でもおくれると無断でかぎを交換し、居住者を締め出すわけですね。新しいかぎを受け取るには家賃一割に当たる違約金と一万五千円を超える施設再利用料の支払いが求められる、こんなことがあるわけですね。

ある青年は、夜勤明けで寝ていたら突然スマイルの社員が土足で部屋の中に入ってきた、すぐに出て行ってくださいと有無を言わせず目の前でかぎを交換され、着のみ着のままでたたき出されたと。こんなことが十四回も続いて、十四回もかぎを交換されたと。こんなことまで起こっているわけですよね。

また、コンビニアルバイトの青年は、三年前に重病を患って服薬を一日たりとも欠かすことができない事情があるのに、仕事を終えてくたくたになってドアをあけようとしたら、かぎが交換されていたと。漫画喫茶で夜を明かした翌日、せめて薬だけでもとりに戻らせてほしいとスマイル社にかけ合ったが、けんもほろろだったと。さらにひどいのは、青年が消費生活センターを通して交渉したところ、スマイル社は、契約どおり荷物は撤去したと告げて、テレビ、冷蔵庫、洗濯機のような家具だけでなく実印、預金通帳、年金通帳などの貴重品も一切合財撤去されたと。こういう話なんですね。

だから、何か調査した結果やらなあきませんなんて悠長な話じゃなくて、事態は起きている、全くひどい話だと。だから、ゼロゼロ物件とは、今言いましたように、こんなトラブルが起きているんだということを私は言っているわけですね。

大臣にこの際お聞きしたいんですけれども、何とか対処しなければならぬと思いませんか。ちょっとその辺を大臣の方から少し聞きたいと思います。

金子国務大臣 何とかしなければいけないと思う気持ちはあるんですが、ただ一方で、局長からお話ありましたように、どういう実態なのかということも少し調べてもらいたいと思うんですよ、今とりあえず報道だけなものですから。

そういう意味で、状況を調べてもらって、きちっと状況を把握したい。まずはそこからスタートさせてください。

穀田委員 何でこんなことを言っているかというと、スタートは確かに現実を見なければできませんよ。だけれども、こういう問題が今突然起こったんじゃなくて、実はあなた方がやっている研究会なんかでも、これは危ないなということで、法律的な対策をとらなくちゃならぬということをずっと前から言っているから私は言っているんですよ。

現実はどうかといいますと、もう一つ言いますと、今これは裁判になって争われているんですね。だから慎重だということもあるのかもしれませんけれども、先ほど言ったスマイルという会社の契約は、施設つきかぎ利用契約というような契約をやっているんですよね。かぎを一時使用するだけで、部屋はですよ、部屋はかぎの附属物だから賃借権はない、居住権は認められないとまで記載した内容を契約しているわけですね。このため、少しでも家賃がおくれると違約金を取られたり、かぎを交換されたりして、入室すらできなくなると。こういう契約は借地借家法に違反しているし、かぎ交換や荷物撤去などは住居侵入罪や窃盗罪に当たるもので、そんな契約を結んでも公序良俗に反して無効だと私は思うんですね。違約金も年率計算すると数千%と暴利で違法だと。こんな無法な営業を行っている業者を放置すべきではないと私は考えるわけです。

近畿の同じく大阪でも、今度は家賃保証会社、日本保証システムがほとんど同様の行為を行っていて、こんな張り紙までやっているんですね。「無断立入禁止 この部屋に御用の方は下記へ連絡下さい」といって、「連絡なき場合は居住権を放棄したものとみなし、当社にて残置物を処分し明渡しの手続きを執ります。」こういうのをばあんと張って、いかにもおどかしてやっているというようなことまでやり出しているわけですね。これで、結局、大阪でも裁判で争われているという現実です。

そこで、先週のこの間の局長の答弁で、住宅を貸すとか、あるいは住宅を借り上げて転貸するものについて業法的なものはないというお答えでした。そもそもなぜ業法がないのか。住宅賃貸を生業としている事業者は大手不動産業者を含めてたくさんあるじゃありませんか。だから、どこがどう違うのか、わかりやすく説明していただきたい。

小澤政府参考人 お答えいたします。

そういう事業者を監督する法律として、宅地建物取引業法という法律がございます。その法律の第二条におきまして、宅地建物取引業というのは、「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行なうものをいう。」というふうに定義されているわけでございます。

したがいまして、例えば、みずからがアパートを賃貸するといったような賃貸業とか、あるいは家主からの委託を受けましてアパートの共用部分の清掃業務を行うようないわゆる賃貸管理業、そういう行為に関しましては、宅地建物取引業法の規制の適用を受けておりません。

賃貸業や賃貸管理業につきましては、宅地建物取引業法以外の法令におきましても、そうした事業を営む者を規制する制度は現行法では存在していないという状態でございます。

穀田委員 簡単に言うと、賃貸住宅の仲介、あっせんを営む場合は宅地建物取引業、いわゆる宅建業法の網がかかるが、賃貸事業や賃貸管理業には何の網もないということですな。みずからじかにやる場合だけでなくて、他の家主から物件を借りて賃貸する場合や賃貸物件の管理委託を受けた場合も業法はないということだと判断していいわけですな。そういったお答えだと。

そうすると、賃貸住宅の仲介、あっせんというのは最初の一回だけなんですよね、話し合いをして紹介するわけですから。賃貸や賃貸管理というのは、契約を結べば解除して出ていくまでつき合う、こういう関係にあることはだれもがわかることです。したがって、賃借人との関係は長く深いわけですね。

その長いつき合いの中で今回のようなスマイルサービスのやり方でトラブルが発生しても、業者を規制する仕組みがない。賃借人を救済するには、裁判などで争うしかない。これは明らかに不備があるんじゃないのか。だから、多くの消費者や賃借人は泣き寝入りするしかない。

したがって、ここが問題で、私は賃貸事業や賃貸管理業、家賃保証協会に対して何らかの規制なり業法が要るんじゃないかと思うんですが、その辺はいかがですか。

小澤政府参考人 今委員が御指摘ございましたように、賃貸と申しますのは、賃貸が貸し主と借り主との間に継続的な法律関係を生ぜしめるということがございます。

現在、宅建業法の対象としておりますのは、売買といったようなものでございます、先ほど最初の一回とおっしゃいましたが。そういう意味では、いわゆる取引行為としてかなり短期間のことを想定しておるものでございますので、その性質を異にしているということがございます。

今回、委員が御指摘あったような案件については、これは賃貸にかかわるものと思われますが、こういう賃貸の場合に問題にされますのは、主として賃借人保護という観点から、家賃とか敷金の額とか契約条件とか、そういったものについて問題になることが多いわけでございます。そういうものは、宅地建物取引業法の問題というよりも、個別的な利害関係にかかわる民事上の問題といたしまして、今現行法では借地借家法がございます。したがいまして、その規制にゆだねているという状態にございます。

またさらに、一般的に営業行為に対して規制を設けたり参入規制を行うということにつきましては、これは憲法で保障されているようないろいろな権利上の保護の観点からも慎重な検討が必要というふうに考えておりますので、現在、賃貸に関して、新たに事業者に対してさらなる法規制を行うということについては、制度的にいろいろ課題が多いというふうに考えているところでございます。

穀田委員 そこなんですよね。

そこで、大臣、調査の結果、まず調べさせてくれと言うので、私がさっき言ったように、実は賃貸管理業については、国交省が〇六年に不動産賃貸業、賃貸不動産管理業等のあり方に関する研究会というのをやっていまして、そこで「賃貸管理業の適正化を図るための法制度が必要との指摘もあるため、さらに業務やそこでの紛争の実態等を踏まえ、法的規制の要否について検討」するという報告書を出しているんですよね。

だから、大臣はよく調べてそういう実態をつかんで検討をすると言ったけれども、そういう検討は前に、〇六年に実はそういう問題についての指摘をして、急がなあかんということを言っているわけです。そこからやっているわけですね。今、何かきのうきょう起こった話で、調査をしてどうのこうのという話じゃない、みずからのところでやっているんじゃないのか、だから、そういう具体化をどないしてんねん、私はそういうふうに聞いたわけです。そうしたら、何か調べてとかよく検討してと言うから、それは違うと。前にそういうことを言っているんだから、それで大臣、どないやということを私は聞いたつもりだったんですけれども、どないですか。(小澤政府参考人「委員長、事実関係だけ」と呼ぶ)いや、大臣に聞いているわけです、さっき言わはったから。

小澤政府参考人 今委員御指摘ございました研究会の検討でございますが、これにつきましては、最近、賃貸住宅に関しまして、例えば退去時に原状回復の問題なんかとあわせて契約の更新とか、あるいは入居中に修理や修繕に関して苦情とか御相談事が非常にたくさん私どもに寄せられております。そういう意味では、賃貸不動産の管理業務の適正化ということを図る必要があるという観点から勉強してまいったところでございます。

この研究会では、先ほど御指摘ありましたように、確かに法規制の要否については御指摘をいただいておりますが、今回私どもは、賃貸管理業の業務の適正化がそういった意味では重要な政策課題であるということをとらえた上で、社会資本整備審議会の産業分科会の不動産部会といったところで賃貸管理業の制度のあり方についての検討は始めたところでございます。(穀田委員「わかった。大臣」と呼ぶ)

金子国務大臣 この問題、さまざまな分野があって、まだゼロゼロ物件のトラブル状況について、いずれにしても、出ていって実態の調査をやるよという話になったのはこの間の委員の御指摘をいただいてからですから、これまでの経緯は別としまして、これは調べていきましょうよ。

穀田委員 先ほどの研究会の報告はこう言っているんですね。念のために大臣にだけ言っておきます。「賃貸管理業は、宅建業法の対象とされていないため、賃貸管理業者に不適切な行為があった場合でも、法的規制をもって対応できない。」ということで、この事態について予測し、事実から、この対応がここの分野は穴になっているということを言っているんですよ。だから言っているわけなんですね。

あれこれの説明は何ぼでもできますよ、そういうことをやっているという。問題は、この事実とその当時の判断とがやはり具体化されていないということが問題だと私は指摘しているわけですよ。もちろん、大臣は、それは私が言うたから調べますと。それはええですよ。ただ、それは前からそういう問題が指摘されていて、これはあかんなということを言ってあったぜ、だから、今さら、今さらという言い方はあかんけれども、調査して対応しますじゃなく、今すぐ対応する必要があるのと違うかということを私は言いたい。

そこで、なぜこういうことを言っているかというと、深刻の度合いを増しているからなんですね。といいますのは、こういうトラブルを生む事業が繁盛しているという現実をどう見るかなんですよ。

このスマイル社が扱っている賃貸戸数は何と五千戸もあるんだそうですね。今でも空き室は五十戸もない状態。空き室となってもすぐに入居者が決まることが多いということが言われているぐらい、ある意味でははやっているんですね。

それで、地方から出てきた若者が仕事を得るにも会社に雇用してもらうにも住宅が要る。その住宅を借りようにも、敷金や礼金など初期投資が家賃の数カ月分必要だから、なかなか出ない。この初めに必要なお金がゼロ円なら、こんないいことはない。まとまった安定的な収入がない者ほどありがたいと思うわけです。

いわゆる貧困層を対象にした住宅貧困ビジネスの一つだが、なぜこういうビジネスが繁盛するのか、ここが私は問題だと思うんですね。だから、問題の深層といいますか深いところをしっかりえぐらなければあかんのと違うか、この認識はどないやということを少し大臣に聞いておきたいと思うんですが、いかがですか。

金子国務大臣 一点目としましては、アルバイト、派遣社員などの非正規の職員、従業員の比率が上昇してきたということが背景にあること。二点目、このような方々が敷金、礼金を準備できずに、通常の賃貸住宅への入居が困難になったために、そのような方々を対象としたいわゆるゼロゼロ物件と言われるような形式がふえてきていること。結果として、新聞報道で見られるように、関連のトラブルもふえてきているものと思っております。

決して、国民の居住の安定確保上、好ましいものだとは思っておりません。

・・・<以下省略>・・・




 

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