衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第8号 平成21年1月30日(金曜日)
・・・【中略】・・・

本日の会議に付した案件

国務大臣の演説に対する質疑  (前会の続)
・・・【中略】・・・

議長(河野洋平君) 志位和夫君。

〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、麻生総理に質問します。(拍手)

・・・【以降、途中まで略】・・・

政治災害であるならば、政治の責任で解決すべきです。私は、政府が次の三つの仕事に同時並行で取り組むことを強く求めるものです。

第一は、派遣切り、期間工切りによって職を失ったすべての人々に、住居、生活、再就職の支援を行うことです。

派遣村は、政府の失業者対策がまともに機能していない実態を明るみに出しました。寒空のもとにほうり出され、命の危険にさらされている人々を救済するために、全国に一時避難所を開設し総合相談窓口を設置すること、再就職を支援する緊急小口貸付資金を思い切って拡充すること、住所不定状態に突き落とされた人々も含めて再就職に向けた緊急避難として生活保護を行うことを強く求めます。

雇用保険の受給者の割合が失業者の二〇%台に落ち込み、多くが生活保護によってしか救済できないというのは異常な事態です。雇用保険の六兆円を超える積立金を活用し、未加入者も含めたすべての失業者に雇用保険による支援が行き渡るよう制度の抜本的拡充を行うことも急務であります。

以上の諸点について、総理の見解を求めます。

第二は、これ以上の大量解雇による被害者を出さないために、大企業への本腰を入れた監督指導を行うことです。

今、大企業が進めている大量解雇は、やむを得ないものでは決してありません。昨年末、共同通信社が、トヨタやキヤノンなど日本を代表する大手製造業十六社が、四万人を超える人員削減を進めながら、この六年半で内部留保、ため込み金を十七兆円から三十三兆六千億円へと過去最高にまでふやしている事実を報じました。このわずか〇・四%を取り崩しただけで、四万人を超える人員削減計画は撤回できます。

大体、だれのおかげでこれだけのため込み金が積み上がったのか。正社員を減らし、派遣や期間工に置きかえ、それらの人々の血と汗と涙の上にため込んだお金ではありませんか。そのごく一部を雇用を守るために充てることは企業の当然の社会的責任だと考えますが、総理の見解を問うものです。

さらに、共同通信社の調査では、この不況下でも、大手十六社のうち五社が株主への配当をふやし、五社は配当を維持しています。残る六社は未定で、配当を減らす企業は一社もありません。大株主への配当をふやしながら、労働者の首を切る。私は、資本主義のあり方としてもこれは堕落だと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。

大企業による非正規労働者の大量解雇の多くが現行法のもとでも違法なものであることも、極めて重大です。

例えば、政府の調査でも、非正規社員の解雇計画の四四%が契約途中の解雇となっています。しかし、労働契約法では、派遣社員であれ、期間社員であれ、有期労働の契約途中の解雇は正社員の解雇よりも厳しい条件のもとでしか許されないとされており、その多くが違法解雇だと考えられます。契約途中の解雇のうち、政府が違法解雇として是正を求めたもの、解雇を撤回したものが何件あるのか、明らかにされたい。

さらに、自動車、電機などの大企業で雇いどめにされた派遣労働者から私たちに寄せられている訴えでは、偽装請負で働かされていた期間なども合わせますと、四年から五年という長期にわたって同じ仕事で働かされていたケースが少なくありません。

現行法では、派遣労働は最長でも三年までと決められ、その期間を超えたら、受け入れ企業は直接雇用を申し出る義務が課せられています。とうの昔に直接雇用、正社員にするべき労働者を、派遣のまま働かせたあげく、最後は一片の紙切れで解雇する、これは違法な雇いどめの濫用以外の何物でもありません。政府が雇いどめの濫用として是正を求めたものが何件あるのか、明らかにされたい。

今、必要なのは、非正規切りをやめさせるために、まず現行法を最大限に活用した大企業への強力な監督指導を行い、実効ある措置をとることであります。総理にその意思があるかどうか、答弁を求めます。

第三は、二度とこうした政治災害を起こさないための抜本的な法改正であります。

今、政府の中からも、製造業の派遣の禁止という声が上がっています。製造業の派遣禁止は当然ですが、では、サービス業の派遣はいいのか、物流の派遣はいいのか。どんな業種であれ、使い捨て自由の労働は許さない法改正こそ必要ではないでしょうか。

そのためには、労働者派遣法を一九九九年の原則自由化前に戻し、不安定な登録型派遣は原則禁止する抜本改正がどうしても必要です。その際、今の派遣労働の大部分が現行法でも禁止されているはずの常用雇用の代替であるという実態を踏まえ、派遣として働いている労働者が職を失わず、直接雇用に移行する経過措置を設けることを提案するものであります。

未来ある若者が、懸命に働きながら、ある日突然、仕事も住居も奪われてしまうような社会に未来はありません。人間を人間として大切にする経済社会をつくるために、政治が責任を果たすときです。総理の見解を求めます。

・・・【以降、途中まで略】・・・

内閣総理大臣(麻生太郎君) 志位議員から二十七問、質問をちょうだいいたしました。

まず最初に、労働法制の規制緩和についてのお尋ねがあっております。

これまでの労働者派遣法の改正は、厳しい雇用情勢の中で、雇用の場を確保することや、労働者の多様な働き方に対するニーズに対応することなどを目的とし、労働者の保護に欠けることのないよう留意しつつ行われてきたものと認識をいたしております。

しかしながら、今回の急激な雇用情勢の悪化は、金融経済危機に端を発したものであり、これまでの改正時の想定をはるかに上回るものでありました。

したがって、労働者の雇用や生活の安定に向けて、これまでにない規模、内容の雇用対策を講じるほか、現在国会に提出させていただいております労働者派遣法の見直しなど、さまざまな取り組みが必要だと考えております。

求職、住居確保などの総合相談窓口を設置するべきとのお尋ねがありました。

雇いどめなどにより住居を喪失した離職者に対する支援といたしましては、昨年末より、ハローワークにおいて、雇用促進住宅への入居のあっせん、住宅・生活支援の資金融資の相談などを既に実施いたしております。

今後、福祉施策を担う地方自治体とも緊密に連携しながら、離職者の方々の状況に応じた支援を総合的に実施できるよう、迅速かつ適切に対応してまいりたいと考えております。
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緊急小口資金の貸し付けについてお尋ねがありました。

地域の社会福祉協議会が行っております緊急小口資金は、連帯保証人を不要とするなど、職を失った方などへの一時的な生活支援策として利用しやすい仕組みとなっておりますのは御存じのとおりです。

また、ハローワークなどでも、仕事とともに住居を失った離職者に対し、住宅・生活支援の資金融資の相談などを実施いたしております。

これらの支援を通じて、失業した方々の置かれた状況に応じた、きめ細かな支援を行ってまいりたいと考えております。

再就職に向けた緊急避難として生活保護を行うべきとのお尋ねがありました。

職と住居を失い、生活に困窮する方々については、雇用施策や福祉施策により、就職、住居、生活などの支援を全力で行っているところであります。

これらの支援を行ってもなお困窮する方々につきましては、住居のない方も含め、引き続き、最後のセーフティーネットであります生活保護によって適切に支援をすることといたしております。

雇用保険についてお尋ねがありました。

現下の厳しい雇用情勢を踏まえ、雇用保険制度につきまして、非正規労働者が給付を受けやすくなるよう、雇用見込みが六カ月の方に対しましても適用を拡大するといったような見直しを行うなど、セーフティーネットの機能の充実を図ることといたしております。

また、雇用保険二事業を効果的に活用し、雇用保険の対象とならない離職者につきましても、雇用促進住宅への入居や住宅・生活資金の融資、職業訓練の実施や、また訓練期間中の生活保護のための給付を行うことといたしております。

企業の内部留保についてお尋ねがありました。

企業にとって内部留保は、企業の存続や長期的な発展の可能性を確保するものであり、その活用につきましては、企業がそれぞれの状況に応じて最善の経営判断を下すべきものである、基本的にそう考えております。

その上で、人を大切にするのが日本的経営のよさでもあります。こういう非常時こそ、労働者の雇用と生活をしっかり守るよう、最大限の努力をしていただきたいものだと考えております。

大手製造各社の経営のあり方についてのお尋ねがあっておりました。

企業の経営者は、株主のみならず、消費者や、従業員やその家族、さらには地域社会に対しても責任を負っていると考えております。経営者が従業員を大切にし意欲を引き出すような経営が、結果として企業価値の向上につながるものと考えております。

こうしたことが、まさに日本的経営のよさであります。こういう非常時こそ、労働者の雇用と生活をしっかり守るよう、最大限の努力をしていただきたいものだと考えております。

有期雇用の契約途中の解雇についてお尋ねがありました。

労働契約法は、民事ルールを定めたものでありまして、政府が、直接、契約の内容に介入し、是正を求めることはできません。労働契約法の規定に従った適切な取り扱いが行われるよう、啓発指導を行ってまいります。

昨年十二月九日から本年一月二十三日までに、五百九十八事業場に対して啓発指導を行いました。引き続き指導に努めてまいりたいと考えております。

偽装請負についてお尋ねがありました。

現行の労働者派遣法では、派遣元から派遣停止の通知があって初めて派遣先に直接雇用を申し出る義務が生じるということになっております。労働者派遣との認識がない偽装請負では、通常、この要件が満たされません。派遣先に直接雇用の申し込み義務が生じているとすることは困難であります。

そこで、現在継続審議となっている労働者派遣法の改正案におきましては、御指摘のような事実上の期間制限違反の事例を含め、違法派遣の場合には、派遣先に対し、労働者への労働契約の申し込みを行うよう行政が勧告できる制度を創設することとしております。

なお、有期労働契約の更新を拒否する雇いどめが濫用に当たるか否かは、民事上の問題でもあり、政府として判断することはできません。しかし、労働契約法の規定や裁判例に従った適切な取り扱いが行われるよう、これまでに八百十六の派遣元事業所に対し啓発指導を行ったところであります。

非正規切りについての監督指導に関するお尋ねがあっております。

非正規労働者の雇いどめや解雇が発生していることについては、大変憂慮をいたしております。

このため、労働契約法に関する啓発指導や、労働者派遣法などに違反する事業主に対する指導監督を徹底してまいります。

あわせて、労働者の雇用や生活の向上に向けて、雇用の維持に努力する企業を支援するため、雇用調整助成金の拡充など、これまでにない規模、内容の雇用対策を講じてまいります。

労働者派遣法についてのお尋ねがありました。

私は、雇用のあり方としては、業種によって確かに事情は異なりますが、基本的には常用雇用が望ましいと考えております。

このため、現在継続審議になっております政府の派遣法改正案におきましても、派遣元に対し登録型の労働者の常用化に努めるよう義務を課す、違法派遣を行った派遣先に対しその労働者の雇用を勧告する制度を創設するといたしております。

他方、現在、登録型派遣は二百八十万人もの方に利用されております。その中には直接雇用よりも派遣労働を好む方もおられ、これらを禁止することはかえって労働者の不利益になるため、平成十一年の原則自由化以前に戻すことは適切でないと考えております。

いずれにせよ、国会の場でよく議論をしていただきたいと考えております。

・・・<以下省略>・・・




 

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