衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

平成二十一年二月九日(月曜日)

午前九時開議
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件

公聴会開会承認要求に関する件

政府参考人出頭要求に関する件

平成二十一年度一般会計予算

平成二十一年度特別会計予算

平成二十一年度政府関係機関予算
・・・【中略】・・・

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

・・・【中略】・・・

佐々木(憲)委員 この派遣切りに遭った労働者の多くは、工場の近くの寮に住んでおられるわけです。解雇されると同時に寮から追い出される。しかし、年収二百万前後という状態ですから、蓄えがありません。次の住居を確保したいけれども、それもできない。しばらくはネットカフェで寝泊まりをして職を探しているけれども、見つからない。そのうちに所持金を使い果たして、背広を着た若者が何日も食事をとることができずに相談に来られるわけです。

それが今名古屋に集中しておりまして、このパネルを見ていただきたいんですが、もともと名古屋市というのは、ほかの大きな市と同じようにシェルターがありまして、ホームレス対策を行っておりました。しかし、今回はその能力をはるかに超えまして、中村区役所だけ、区役所に毎日百人前後の相談者が押し寄せているわけでございます。これは本当に大変な事態でありまして、市外から来ている人が約半分。名古屋市内が四八・六%、市外がそのあと半分以上を占めておりまして、県外が三分の一を占めているわけです。

中村区役所には私も何度も足を運びましたけれども、ほかの区役所から応援も得て職員は必死になって相談に乗りまして、宿泊所を確保したり生活保護の手続に当たったりしているわけです。しかし、深夜まで仕事をしても書類が毎日積み上がっていく、こういう実態であります。

なぜ名古屋に集中するのか。周辺の自治体の姿勢にも私は問題があると思っております。もう職もない、住むところもない、それで自治体に相談に行くと、相談に来た労働者に自治体の側は電車の切符を渡して、名古屋に行きなさい、そういう事例があるわけですね。
・・・【中略】・・・

佐々木(憲)委員 私は、名古屋市の担当者の話を聞きました。市が単独でやっている緊急宿泊援護施設の費用は、昨年の予算の六倍に膨らんでおります。緊急事態なんですね。これらの費用に対して、国がやはり財政援助をすべきだというふうに私は思います。

舛添大臣にお聞きしますが、今まで派遣労働者が住んでいた寮は、追い出したらがらがらになっているわけですよ。その一方で、自治体が必死になって宿泊所、住居を確保している。大規模に派遣切りをした大企業は、それを見て涼しい顔をしている。非常におかしいと思うんですね。この寒空のもとに寮から追い出すのか。解雇されたからといって、すぐに出ていく必要がないと私は思いますが、労働者に向かって、はっきりこの点、寮からすぐ出ていく必要はないよと言っていただきたい。

舛添国務大臣 すべて基本的に、その企業と労働者の契約関係がどういうことになっているかということによりますけれども、しかしながら、まず我々がやっているのは、解雇したからすぐ出ていけと言わないで、社員寮にそのままとどまり続けられることをやる企業主に対しては、四万円から六万円の家賃の補てんをいたします。それから雇用促進住宅、もう三千八百件ぐらいのあっせんをいたしました。

それから、日比谷の場合もそうでしたけれども、五百人ぐらいの方々に対して、求人票、住み込みで、すぐ働いてすぐ住居もあります、これを四千人分持っていきました。

今、全国のハローワークで、住居の相談も含めて、昨年の十二月十五日から全面的に皆様方の御支援をしておりますので、どうか、問題あればすぐにハローワークにいらしていただければ、私たちが一生懸命お手伝いをさせていただきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 寮から追い出された後ハローワークに行く、あっちに行け、こっちに行け、これはなかなか大変なんですよ。寮にいる段階で、今後の仕事、住まい、生活保護、こういうものの相談に総合的に乗るということが今求められていると思うんです。

総理に聞きます。

二月から三月にかけまして深刻な事態が想定されております。緊急の宿泊施設を各地に設置する、各自治体に総合窓口を併設する、必要な資金と人は派遣切りをした大企業や国、自治体が責任を持つ、一人も路頭に迷わせない、この姿勢で私は取り組むべきだと思いますが、総理の決意を聞きたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今、厚生大臣からも御答弁をいたしましたとおり、雇いどめ等によって住居がいきなり喪失する、なくなるという離職者、退職者を支援することは、これは今お話がありましたように、昨年の末からハローワークなどなど、いろいろ今までにないような対応をずっとしてきていると思います。住居の入居あっせんとか雇用保険二事業、御存じのとおりで、ああいったものを活用して住宅政策支援の資金融資ということもやらせてきていただいておりますのは、先生よく御存じのとおりです。

一方、寄せられます相談の多くは、再就職の援助から住宅の確保、また福祉制度の利用などまで、実に幅広い問題にわたっておりまして、ここを担います地方自治体と連携をしないと、厚生労働省だけでどうにかできるものでもございませんので、今後とも、地方自治体との間の連絡をきちっとやっていかなければいかぬところだと思っております。

佐々木(憲)委員 次に、派遣労働の問題ですが、派遣というのは臨時的、一時的業務に限る、これが原則であります。最大三年を超えて同一業務をさせることは違法です。三年を超える場合、派遣先企業は労働者に直接雇用の申し出をしなければならない。ところが、実際はそれが守られていない。

具体的な例を挙げたいと思います。三菱電機名古屋製作所の例であります。

仮にCさんといたしますが、この方は、二〇〇三年十二月から五年間、偽装請負から派遣に変わったけれども、同一業務で仕事をしてまいりました。この方は母子家庭で、娘さんと二人暮らしであります。こういうふうに訴えているわけですね。

十二月十九日に突然担当者に呼び出され、解雇を通告されました。ついに私もかと、ショックと怒りでわけがわからなくなってしまいました。派遣会社が話した解雇の理由は、今後、自分の働いているラインは回復の見込みがないからというだけでした。十二月だけで、私の班だけで二十人ぐらい切られています。娘に電話で、お母さん来月から仕事がなくなっちゃったと伝えると、娘は電話口で無言になり、泣き出してしまった。本当につらかった。親子ともども首をつらないといけなくなる。こういう訴えであります。

契約期間途中の解雇なんです。この五年間必死に働いてきたのに、派遣先企業は労働者に直接雇用の申し入れを一度もしておりません。

同じ工場のMさんの場合ですけれども、二〇〇二年五月から偽装請負時代も含めて六年半、派遣が繰り返されてきました。この方は、低圧電気と高圧電気の免許を取り、正社員に仕事を教えるほど能力の高い方であります。契約更新が三十六回、この間の時給は千百円から千百二十円に、たった二十円上がっただけです。家族を抱えて頑張ってきました。この人は、四月三十日までの雇用契約があるにもかかわらず、十二月二日に十二月末で解雇だと言い渡され、本人は大変なショックで、このように訴えております。

解雇だと告げられ、目の前が真っ暗になった。三年以上働けば直接雇用じゃなかったのか。六年半も頑張って、いとも簡単に首か。五、六月が過去最高の利益だったのに、たった一回受注が減っただけで、なぜこの年末の十二月に全員解雇するのか。いろいろな感情が込み上げ、その後一カ月の仕事は本当につらいものだった。こんなつらい気持ちで残り期間働いているのに、その神経を逆なでするかのように、また正社員に仕事を教え、引き継ぎまで頼まれた。いいようにこき使われ、ほぼすべての作業を一生懸命覚えてやってきたことを利用され、裏切られたんだとはっきり気づいた。こういうふうに言っております。

このような声は今、多数寄せられております。私は三菱電機の本社に問い合わせました、一体どうなっているんですかと。しかし、それは答えないことにしていると、非常に冷たい対応でありました。全くこれはやみからやみに葬るようなものですね。

厚労大臣にお聞きしますけれども、三年を超えて働いていた労働者はすべて正社員にするというのが原則だと私は思います。実態を直ちに調査するということをぜひやってください。

舛添国務大臣 まず、個別の案件についてのお答えは差し控えますが、一般論として申し上げますと、この三年というのはいつから来るかということは、派遣元の会社が、派遣先と自分が抱えている労働者に対して、三年切りましたという、抵触日というふうにいうんですけれども、これの通知を受けたときからしかカウントできません。

それで、そういう問題があれば、各県の労働局に特別の窓口がありますから、ぜひそこに飛び込んできてくださって、こういうひどいことをやっているんだよと言ってくだされば、必ずこれは立ち入って必要な指導をやっていきますので、そういう制度があるということを、全国で働いている皆さん方にぜひお知りおきいただきたいと思いますし、そして、我々は、法律に基づいて厳格な指導をやり、正していきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 派遣労働者の多くは、職場の中でも差別的な扱いを受けております。賃金が低いだけではありません。社員食堂に行きますと、食費は正社員と比べて倍の値段を取られる。作業服代にも差別がありまして、作業用の帽子、正社員は十円、派遣社員は千円から二千円取られる。自転車置き場も違う。その上、危険な作業に従事させられることが多いわけです。

先ほど紹介した三菱電機のCさんの場合、有機溶剤を扱う部署だけれども、初めにつけていた防毒マスクを外すように言われて作業させられた。Mさんは、一日じゅうモーターのシンナーふき取りと塗装作業をし、終了後は噴霧器と作業室内の洗浄、掃除をさせられた。八月の猛暑の中、防毒マスクをつけ、暑さのせいで揮発の激しいシンナー、有機溶剤を毎日吸い込み、頭痛、のど、鼻の痛み、目まいなど、体調を悪化させた。このままではもたないと訴えたけれども取り合ってもらえず、二カ月も作業を続けた。

この作業は、正社員はやらないで、派遣社員に押しつけている。私は、安全衛生上も重大な問題だと思うんです。派遣先は、労働者を生きた人間としてではなく物のように扱う、物のように使い捨てていると言わざるを得ません。

総理、これは余りにもひどい扱いだと思いませんか。総理の見解を。

麻生内閣総理大臣 重ねて申し上げますが、今の話がすべて事実かどうかを確認することができないので、佐々木先生の話だけをもとにして、それがいいとか悪いとか言うのは極めて、私の立場として言える立場にありませんということをまず大前提で聞いておいていただいた上で、今のような状況がもし事実であるとするならば、甚だ遺憾、ちょっと労働基準法の点から問題かなという感じがします。

佐々木(憲)委員 三菱電機では、労働者に対して、五年たっても六年たっても、正社員になりませんかということは一度も言っていないんです。

トヨタ車体は、この予算委員会でも志位委員長が取り上げて問題になりました。私は、直接その会社に行きました。話を聞いたところ、派遣労働者をまず期間社員にしたい、こう言っていました。ところが、その後何をやっているかというと、一人一人派遣労働者を呼び出してふるいにかけ、どんどん派遣切りをやっているんです。問い合わせに対してもまともに答えがない。こういうやり方が蔓延しているんですよ、今。

舛添大臣にお伺いしますけれども、厳正に対処する、すべての会社の実態を調査して、根絶するというのを明確に答えて、やっていただきたいと私は思います。

舛添国務大臣 原則一年、そして最大三年という派遣期間を超えた労働者派遣を続ける派遣先は、直接雇用ということの申し込みをする義務が生じているわけです。まずそれをしっかりした上で、そして、やはり偽装請負とか今の派遣期間制限で違反したこういうものに対して、今申し上げたような直接雇用の申し込みをしなさいというようなことを勧告できる、しかも、それは賃金を下げたりするともっとひどい状況になりますから、賃金を下げないでということ、このことをまさに含んでいるのが今の労働者派遣法の改正案でございます。一刻も早くこれを成立させていただくと、私にとってももっと強い武器が出てくると思います。

佐々木(憲)委員 法律の話がありましたけれども、何百万人という労働者を無権利状態に陥れたのは、労働法制の規制緩和に根本問題があります。

ここにパネルがありますけれども、もともと労働者を派遣して上前をはねるような労働者供給というのは、職安法四十四条、労働基準法六条によって禁止されていたわけです。この上の部分ですね。ところが、下のように、一九八五年にできた労働者派遣法、この法律に例外を設けて、この上の関係に穴をあけたわけです。一九九九年には、我が党だけが反対しましたが、これを原則自由にし、二〇〇四年からは製造業にまで広げた。これは、労働者が望んだのではなくて、財界がこういうことをやれという要望を出したからです。

派遣先の会社は、自分の会社の指揮命令下で実際には働かせているわけですね。しかし、労働契約は結んでおりません、派遣元である派遣会社と民事上の契約を結んでいるだけで。だから、これは物件費扱いなんですね。

総理に聞きますけれども、先日、解雇通告を受けた派遣、請負労働者が十二月に大分キヤノンに交渉に行ったんですけれども、門前払い。キヤノンの言い分は、生産台数で発注しているだけだ、雇用関係にないから話す必要はない、こういうことで、けんもほろろであります。みずから失業の前提、原因をつくっておきながら、労働者とは一切関係ありませんと。しかし、そこの会社の中で働いているんですよ、この人たちは。これはおかしいと思いませんか、総理。

麻生内閣総理大臣 派遣先と派遣元、わかった上で聞いておられるんだと存じます。その方の雇い主は基本的に派遣元であります。その派遣元が派遣先の会社と契約をしておられる、そういう契約なんだと理解しております。したがって、派遣先の大企業が、派遣元との関係がどういったような契約になっておるのかというのが一番肝心なところ、これが一つです。

二つ目、その派遣されている方は派遣元の会社にどういった形で雇用されているのか。常用雇用なのか。そこから派遣されているわけですから、もとはこっちですよ。

だから、そこのところをきちんとされておかないとなかなか難しいので、感情論だけで言っても、なかなかさようなわけにはいかない。したがって、相手側にしてみれば、派遣元が言ってくるならともかくもという形になったんだ、今そういうような感じがいたしますので、感情論としてはいろいろ申し上げたいことはありますけれども、ただ、そこのところは、派遣元と派遣先と混線されたような話をされるとちょっといかがな、難しくなっちゃうんじゃないでしょうかね。

佐々木(憲)委員 これは全くキヤノンの説明と同じですよ。自分で契約を切って、雇用を喪失させるような状況をつくっておいて、その労働者が申し込んだ交渉に対しては一切受けない。大体、そういう関係にあるというこの法律が私は問題があると思います。今は、派遣先の大企業は労働者に対して直接指揮命令下で働かせているわけです。実態はそうなっているわけですから、雇用に対する責任も当然負うべきなんですね。当面、少なくとも、三年以上同一業務で働かせたら全員正社員に切りかえるよう指導する、これは当然であります。

私は、戦前、小林多喜二が「蟹工船」で描いたあの労働者の奴隷的な実態、そういう状況というのは現在の新しい派遣法のもとで繰り返されている、それに対して多くの労働者が怒っている、こういう状況を直してほしい、ともかく今の法制でできることは全部やってほしい、すべて救済してくれ、抜本的な法改正も私は当然必要である、こういうことを申し上げまして、時間が参りましたので、以上で終わります。

・・・<以下省略>・・・




 

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