第3号 平成21年10月29日(木曜日)
平成二十一年十月二十九日(木曜日)
・・・【中略】・・・
○本日の会議に付した案件
国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)
・・・【中略】・・・
○議長(横路孝弘君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。志位和夫君。
〔志位和夫君登壇〕
○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、鳩山総理に質問します。(拍手)
・・・【以降、途中まで略】・・・
人間らしい雇用の破壊は、旧来の政治がつくり出した最も大きな害悪の一つです。私は、新政権が次の二つの喫緊の課題に真正面から取り組むことができるかどうか、ここに旧来の政治からの転換のかなめがあると考えます。
第一は、失業者とその家族をホームレスにしないための本腰の取り組みです。
今、失業率は史上最悪の水準となり、失業給付が切れたり雇用保険に未加入なために生活の糧を奪われ、ホームレスになってしまう失業者が続出しています。ところが、政府がさきに策定した緊急雇用対策は、自公政権の対策の延長線上にとどまるもので、これでは、昨年末の年越し派遣村にあらわれたような事態の再来を防ぐことは到底できません。
私は、旧来の延長線上の対策から抜け出して、次の三つの対策を実行することを緊急に求めるものです。
一つは、失業給付の緊急延長です。現行の九十日間の失業給付では、多くの失業者は再就職を果たせません。緊急措置として給付期間を半年以上に延長すべきです。
二つ目に、失業者の七割以上が、失業給付が切れたり、もともと対象外で、生活の糧が奪われた状態です。求職活動中で生活に困窮しているすべての失業者に生活と住居の支援を行う制度への抜本拡充が必要です。
三つ目は、中小企業への雇用調整助成金の抜本的な拡充です。雇用の七割を支える中小企業での雇用維持のための経営努力は限界を超えています。給付期間の延長、助成額の引き上げは待ったなしの課題であります。
これらの緊急対策は、どれも法律の改正を必要としない、政府の決断ですぐにでも取り組めるものです。総理の答弁を求めます。
第二は、大企業の横暴を抑え、人間らしい労働のルールを再構築することです。
今、トヨタを初め自動車、電機などの大企業で、期間工や派遣など非正規雇用を復活させる動きが広がっています。ところが、契約雇用期間は四カ月から六カ月という極めて短期で、それが切れたら再び非正規切りを行うことをあらかじめ予定しているものです。エコカー減税などでの増産の対応を非正規で行い、減税が切れたら再び非正規切り、こんな大企業の横暴勝手を放置していいでしょうか。増産で人員が必要なら、正社員をこそふやすべきではありませんか。
総理、大企業に雇用への社会的責任を果たさせるために、政府として強力な指導を行うべきではありませんか。
同時に、労働法制の抜本的転換が必要です。
総理は、所信表明演説で、働くことのとうとさについて力説されましたが、それを大もとから奪っているのが、派遣労働に象徴される使い捨て労働です。ところが、総理は、演説で、労働者派遣法の改正について一言も述べられませんでした。これは一体どういうわけでしょう。
政府は、貧困の指標の一つである相対的貧困率を初めて正式に公表し、一九九七年以降貧困が拡大していることを明らかにしました。総理は、日本で貧困が拡大している最大の原因が派遣労働の自由化を中心とした労働法制の規制緩和であり、その抜本的な転換が必要だという認識をお持ちでないのでしょうか。
労働者派遣法は、究極の不安定雇用である登録型派遣の原則禁止、製造業への派遣の禁止、違法行為があった場合には派遣先企業に直接雇用義務を課すみなし雇用の導入など、抜本改正に踏み出すべきであります。雇用は正社員が当たり前の社会を目指すべきだと考えますが、総理の見解を伺います。
・・・【以降、途中まで略】・・・
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 志位委員長の御質問にお答えいたします。
まず、雇用保険制度についてのお尋ねでございます。
平成二十一年の改正雇用保険法により、特に再就職が困難な方に対して、給付日数が六十日分延長されております。すなわち、九十プラス六十イコール百五十日ということになっております。これによりまして、本年四月から八月までで約二十四万人の受給者に対して延長が行われています。
したがいまして、今後とも、こうした延長給付の活用などによって、雇用のセーフティーネットを整備して、国民の安心感を高めてまいりたいと思っております。
求職活動中の生活と住居の支援についての御質問でございます。
これまで、雇用保険を受給できない失業者の方々に対する第二のセーフティーネットとして、生活支援の融資や職業訓練期間中の生活保障、住宅手当の支給などを実施してまいったわけでありますが、さらに、今般決定いたしました緊急雇用対策の中で、住居を失った生活困窮者の方に住宅を確保する取り組みを行うということになっております。きめ細やかな対策をそこで展開いたすことにしておりまして、仕事や住居を失った方の再就職をこれによって支援してまいります。
雇用調整助成金についての御質問でございます。
雇用調整助成金については、雇用の維持に取り組む非常に多くの事業主に活用いただいておるところでございまして、これまで、中小企業向けの助成率の引き上げ、支給要件の緩和等の拡充を行ってまいりましたが、今般決定をいたしました緊急雇用対策において、さらなる支給要件の緩和を行ったところでございます。
したがいまして、今後の経済雇用情勢の推移を踏まえて、雇用調整助成金による雇用の維持の支援に機動的に取り組んでまいります。
それから、非正規労働者の正社員化についてのお尋ねであります。
雇用、生活の安定を図るため、正規雇用を希望する非正規の労働者の方々に対して、正規雇用に向けて積極的に支援をすることは極めて重要だと認識をしております。
したがいまして、非正規労働者に対するワンストップによる就労支援あるいは事業主への助成制度の活用などによって、非正規労働者の正社員としての就職を支援してまいりますし、また、企業に対しても、安易な解雇などが行われないよう、労働関係法令遵守の指導をこれから徹底してまいりたいと思います。
あわせて、新しい公共あるいは支え合い、この精神によりまして、国だけではなく、企業を含め社会全体で雇用確保に向け努力をしていくことを期待しているところでございます。
労働者派遣法の改正についてであります。
派遣切りに象徴される派遣労働者をめぐる雇用環境を含めて、非正規雇用全体の労働条件の改善への取り組みは、内閣の最重要課題の一つだと認識をしております。一人一人が、安全、安心、生きがいを実感しながら働くことのできる社会、こういったものをいかにつくり上げていくか、この実現に向けて、緊急雇用対策に加えて、労働者派遣法の改正に向けて取り組みを既に開始いたしております。
演説の中では、本件に限らず、今後取り組むべき法案については逐一触れてはおりませんが、重要性に関しては十分に認識をしております。したがいまして、今月の七日、労働政策審議会における調査審議を諮問しているところでございます。年内に結論が出ることを期待しております。
労働法制の規制緩和についてのお尋ねであります。
雇用にかかわる行き過ぎた規制緩和を適正化し、労働者の生活の安定を図ることは重要であります。貧困の原因は、それはいろいろあると思いますが、労働法制の規制緩和もあり、派遣労働者がふえ、今般の経済危機においていわゆる派遣切りの対象になったことも、これも事実だと理解をしております。
したがいまして、このような情勢に対応するため、三党連立合意を踏まえ、労働者の保護を強化する方向での労働法制の整備をしていく所存でございます。
その労働法制の中での、労働者派遣法の改正内容についてのお尋ねであります。
民主党のマニフェスト及び三党の連立合意には、登録型派遣の原則禁止、製造業派遣の原則禁止、さらに、違法派遣の場合の直接雇用みなし制度の創設などが盛り込まれているところでございまして、労働者派遣法の具体的な改正内容については、今申し上げたことを踏まえて、通常国会への法案提出を目指して、現在、厚生労働省の労働政策審議会で検討を既にスタートしているところでございます。
正社員雇用についての御質問でございます。
すべての労働者が生涯にわたって生きがいを持って働き、暮らしを豊かで安心してできるように社会づくりをすること、そのことに向けて取り組んでいるところでございます。
我が国の非正規雇用の比率は、御案内のとおり、近年高まっており、現在、三人に一人が非正規の労働者であることは皆様方御承知のとおりでございます。そこで、正規雇用を促すための雇用者への奨励金制度の創設など、正規雇用に向けての支援に積極的に取り組んでおります。
雇用確保については、これも前から申し上げておりますように、国だけではなく、地方公共団体、さらに企業、さらに労働組合、NPOなど、社会全体で支え合いの精神によって努力をして解決に向けていくことが重要だと思っておりまして、正社員化に向けて私ども一丸として頑張っていきたい、そのように考えております。
・・・<以下省略>・・・
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