第7号 平成22年2月8日(月曜日)
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
理事の補欠選任
政府参考人出頭要求に関する件
平成二十二年度一般会計予算
平成二十二年度特別会計予算
平成二十二年度政府関係機関予算
・・・【中略】・・・
○志位委員 日本共産党を代表して、鳩山総理に質問いたします。
・・・【以降、途中まで略】・・・
一つは、製造業への派遣の原則禁止についてであります。
・・・【以降、途中まで略】・・・
○志位委員 一年を超える見込みのないものは禁止するということは、一年以上の雇用の見込みがある、あるいは一年以上働いている、こういう場合は、短期契約の更新を続けている場合でも、これは禁止の例外にするんですか。
○長妻国務大臣 これについては、おっしゃられるように、製造業の現場の派遣というのが社会問題と言ってもいいほど大きな問題になったということにかんがみて、やはり、一日、二日、一カ月、二カ月というのではなくて、少なくとも一年を超える見込みがあるということ以外は禁止をする、こういうようなことで取り組むわけでありまして、それだけではなくて、マージン率も派遣会社に公表させる、どれだけ利益を得ているのか、あるいは、違法な派遣があったというふうに判断されたときは、派遣先が直接雇用の申し込みをしたものとみなすというようなことで、雇用者の利益を保護するということを考えております。
○志位委員 一年以上の雇用の見込みがあれば、禁止の例外だということをお認めになったと思います。
具体的にお聞きします。パナソニックが兵庫県姫路市に新たに液晶パネル工場を立ち上げるということで、労働者を募集しています。現地に伺って話を聞きますと、正社員の募集はゼロ、オープニングスタッフとして募集している百名はすべて派遣社員です。契約期間は三カ月、更新あり、最長三年という条件で募集しています。こうした短期雇用が反復継続される派遣社員の場合、これは製造業への派遣は禁止されることになるんでしょうか。
○長妻国務大臣 個別の案件にはお答えできませんけれども、先ほど申し上げましたように、一年を超える雇用が確保される、その見込みがあるということが今度の新しい法案の一つの骨子でございまして、この法案というのは我々が勝手につくった法案ではございませんで、これについては、労働側そして使用者側の両者がぎりぎりの中で、時には激しい言葉の応酬もありながら、我々が政治主導で出した諮問について、真摯にぎりぎりの中でお答えいただいた結論だということも御理解いただきたいと思います。
○志位委員 結局、一年を超える見込みがあれば禁止の例外ということになりますと、今言ったパナソニックのようなケースも常用型派遣ということになって、派遣法が改正されても使い続けられるということになるわけですよ。
あなた方は、常用型なら雇用の安定性が高い、だからこれは禁止の例外にするんだというふうに言われるけれども、どういう労働条件で働かされているのか。同じパナソニックで滋賀県に草津工場があります。冷蔵庫や自動販売機を製造している大規模工場です。ここで長期に働いている常用型派遣、政府が禁止の例外にしようとしている派遣労働者の方々からも話を聞きました。
給料は、時給千五十円の時給制で、全く上がらない。社会保険は本人が希望しなければ入れない。工場の生産計画に合わせて出勤日が決められ、月十二日とか十四日しか働けない月もある。時給制ですから、出勤日が減らされましたら、そのまま給料が下がるんですね。月二十日間働いても給料は十六万八千円、月十四日間なら十一万七千六百円、月十二日ならば十万八百円です。そこから、月五万五千円の寮費、寮といっても六畳一間、隣の部屋のせきまで聞こえてくる薄っぺらい仕切りしかない寮ですが、寮費が引かれ、さらに電気代一万円、水道代二千円、ガス代五千円が差し引かれる。手元に残るのは二万円から九万円ぐらいです。
派遣先大企業の都合で、ただでさえ低い給与が、月によって五万円から、ひどいときは七万円下がる。これが常用型派遣の実態ですよ。こうした働き方の一体どこが雇用の安定性が高いと言えますか。こんなものを例外としていいんですか。
○長妻国務大臣 これは志位委員も御存じのように、前の政権では今回のこの派遣法の改正すらできないわけでありまして、我々は、労働側そして使用者側、それがぎりぎりの中で御判断いただくような、かなりの諮問をお願いして、それにぎりぎり答えていただいたという案でございます。
私どもも、今お話しいただいたような窮状、これは鳩山総理と一緒に、ことしの元旦に公設の一時宿泊所へ参りました。ちょうどそこには、おととしの秋、製造業の派遣切りに遭った方がたくさんおられました。本当に普通の若者です。これは人ごとじゃありません、前の日まで公園で寝泊まりされておられるというようなことで。我々も、それについて本当に真摯に取り組みたいということで、まず今回、こういう対策を出させていただいた。
そして、今おっしゃられたことは、これは派遣のみならず、直接雇用でも、例えばアルバイトで雇われている方についても今大変な状況でありまして、今御指摘のことは、それは我々も、すべての方が正社員になるということは理想ではありますけれども、その理想を、何か法律ですぐにそれを措置するということもできないわけで、一歩一歩理想に近づいていくということであります。
○志位委員 一歩一歩理想に近づいていくということなんですけれども、さっき話したようなパナソニックみたいな例が野放しにされることを問題にしているわけですよ。
もう一つ具体的な例を示しましょう。
キヤノンがカメラの組み立て工場として設立した子会社が大分にあります。私は、一昨年の本委員会の質疑で、キヤノンで正社員から派遣社員への大規模な置きかえが行われている実態を取り上げました。その後、キヤノン本社は派遣労働者をゼロにすると表明しましたが、子会社ではいまだに多数の派遣労働者を使っています。
大分の子会社でも数百人規模で派遣労働者を使っていましたが、キヤノンの生産調整を理由にして、昨年秋以降採用された約百人の派遣労働者が今次々と解雇されています。時給わずか八百円で社会保険もなく働かされ、数カ月で解雇されていっています。
解雇された派遣労働者が派遣会社との間で交わした雇用契約書、見せてもらいました。ここに写しがあります。雇用期間の欄には、期間の定めなし、こう書いてありますよ。これも政府が禁止の例外としようとしている常用型派遣になるでしょう。しかし、派遣先企業がキヤノンの生産調整を理由にして受け入れる派遣労働者の数を減らせば、派遣会社との間で期間の定めのないこういう雇用契約を結んでいても、たちどころに解雇されている、これが実態なんですよ。安定性どころか、安定性など全くないのが実態なんです。これをわかっているのか。
これは、厚生労働省が昨年五月一日、派遣先企業が派遣会社との派遣契約を中途解除した場合、派遣労働者の雇用がどうなったかを調査し、発表したものです。それを表にしたものです。調査の対象となった約三万六千人の派遣労働者の大多数は、製造業で働いていた人たちです。
派遣先大企業が派遣会社との間の派遣契約を解除すれば、この表にありますように、政府が禁止の例外にしようとしている常用型派遣の場合でも、七六・七%もの労働者が解雇されています。登録型派遣の場合は解雇率七五・八%ですから、違いはありません。派遣先大企業が派遣会社との間の契約を解除すれば、派遣労働者が常用型派遣の契約を結んでいても何の役にも立ちません。四人に三人以上の人たちが直ちに職を失い、収入を失っている。
常用型派遣ならば雇用の安定性が高いなどという根拠はどこにもないはずです。これは一体根拠はどこにあるんですか。
○長妻国務大臣 先ほど個別の事例をおっしゃられましたけれども、個別の案件そのものにはお答えできませんが、一般論として、例えば数カ月で製造業の派遣で解雇されたということでありまして、それについて、今度の新しい法案では、先ほど来申し上げておりますように、一年を超えるということでありますので、それから見て合理的な理由がない場合は、これは違法な派遣だと仮にみなされた場合は、今度は、派遣先の事業主がその派遣の方に対して直接雇用を申し込んだものとみなすということで直接雇用を実質的に保障する、こういうような法案も入れさせていただいています。
そして、今おっしゃられたこの数字でございますけれども、確かに解雇率というのはこのような数字でございますが、ただ、この調査の時点というのは、リーマン・ショック等々あり、これは正社員の方も含め、あるいはアルバイトの直接雇用の方も含め、大変厳しい状況であるというふうに考えておりまして、私どもとしては、日雇い派遣とか、一カ月、二カ月の派遣とか、そういう製造業の派遣というのは基本的に禁止をする、こういうことで取り組んでいるところであります。
○志位委員 聞いていることに答えていないですね。常用型派遣だったらどうして雇用の安定性が高いとあなた方は言うのかと聞いているわけですよ。
これは経済危機のときの数字だと言われました。しかし、危機のときこそ雇用の安定を保障する仕組みが必要なんじゃないですか。そのために議論を始めているんじゃないですか。
では、私は大臣に聞きたい。平時ならば常用型は雇用が安定するということを示すデータをあなたは持っているんですか。持っているか持っていないかだけでいいです。
○長妻国務大臣 データとして、今、志位委員が示されたデータは解雇率だけでありますけれども、これは自己都合とか解雇でない形でやめた率でいうと、登録型派遣は九一・一%、常用型派遣は八七・二%ということになっておりまして、登録型派遣というのは、これはよく御存じだと思いますけれども、派遣先の仕事がなくなれば即解雇されるというものであります。この常用型派遣というのは、派遣先の仕事がなくなっても派遣元の会社が雇わなければいけない、一年を超える期間までは、こういうようなものでありまして、前政権ではできないぎりぎりの労使の中で合意ができた案ということでございまして、これをぜひ御理解いただきたいと思います。
○志位委員 結局、常用型雇用の方が安定するというデータはないんですよ。それで、常用型だったら派遣会社が常時雇用しているからなかなか切られないだろうというふうに言うけれども、派遣先企業から解除された途端に解雇されているというのが実態なんですよ。
ですから、この問題、総理にこれは問いたいと思います。
製造業の派遣を原則禁止にするとあなたはおっしゃった。そういうふうに言いますけれども、禁止の例外として製造業への常用型派遣を残したら一体どうなるか。大企業は、今までどおり派遣労働者を使える、今までどおり要らなくなったら使い捨てにできる。大企業の横暴勝手は何らの制約も受けることはありません。一方で、労働者はどうか。常用型といってもまさに名ばかりで、ワーキングプアと言われる低賃金から抜け出せない。いつ首にされるかという先の見えない不安定な状態からも一歩も抜け出すことはできません。
総理、これでは、製造業の派遣の原則禁止じゃなくて原則容認じゃありませんか。これは見直すべきだと思います。総理、いかがでしょう。今度は、総理、答えてください。
○鳩山内閣総理大臣 先ほどから長妻大臣が答弁申し上げておりますように、私ども、製造業のいわゆる派遣は原則禁止をする、これを公労使、特に労使がぎりぎりの交渉の中で決めてきた。
そこで、一年という状況をどのように判断するかという議論はあると思いますが、いわゆる常時雇用される者の労働者派遣は、やはりこれは例外とするということにしながら、しかしながら、極力、いわゆる大企業のある意味での力関係の中で簡単に派遣切りされていかれないように、すなわち解雇されないような状況というものを見守っていくということが大事であって、そのために、例えばきょうの議論なども大変私は参考になる話だと思っております。
むしろ、志位委員長からこのようなことを御指摘されることによって、大企業としても節度を持って臨むと私は理解をされますし、そのような状況を我々としてもつくり上げていくことが大事なんじゃないんでしょうか。大事なことは、やはり法案を、提出したものをしっかりとまずは上げて、一歩、二歩前進の状況をつくり上げていくことが大事なんじゃないか、そのように私は考えます。
○志位委員 ぎりぎりの合意だ、公労使の合意だと言われますけれども、私は率直に言って、財界のごり押しに屈したものだと言わなければならないと思います。原則禁止と言われますけれども、製造業で働く派遣五十六万のうち、常用型は六三%ですよ。こういう方を禁止の例外にしちゃったら、これは原則容認になります。私たちは、例外なしの全面禁止に製造業の場合は踏み切るべきだということを強く要求したいと思います。
いま一つ、総理は登録型派遣の原則禁止とも言われました。ところが、労政審の答申を見ますと、事務用機器操作業務などいわゆる専門二十六業務については禁止の例外としてしまっています。専門二十六業務とは、派遣労働者三百九十九万人のうち百万人を占め、その多くは事務系の派遣労働者です。専門業務は、三年を超えたら直接雇用にしなければならないという派遣期間の制限がなく、いつまでも派遣のまま使い続けることができるとされています。
この二十六の専門業務なるものの中身が問題です。専門二十六業務で働く百万人のうち四十五万人は事務用機器操作業務です。
これは、厚生労働大臣、事実だけ答えてくれればいいですよ。これを専門業務と決めたのはいつで、ここで言う事務用機器とは一体どういうものですか。厚生労働省の労働者派遣事業関係業務取扱要領で事務用機器として例示されているものを答えていただきたい。
○長妻国務大臣 この専門二十六業務という、今御指摘の事務用機器というのが定められましたのが昭和六十年の派遣法制定時でございます。その定めの中に書いてございますのは、電子計算機、タイプライター、テレックス等ということでありますが、当然今の時代はこれはもうそぐいませんので、今の定義というのは、我々としては、オフィス用のコンピューターなどを用いて、ソフトウエア操作に関する専門的技術を活用して、入力、集計、グラフ化等の作業を一体として行う、こういう形で今指導をさせていただいているところであります。
○志位委員 オフィス用コンピューターというのは、要するにパソコンのことでしょう。そのどこが専門ですか。これは一九八五年に定められたということです。一九八五年だったらそういうコンピューターは専門業務だったかもしれない。しかし、今やパソコンは普通にだれでも使っています。パソコンを使う仕事がすべて専門業務となれば、事務系の仕事はほとんど専門業務となってしまい、派遣への置きかえが天下御免になってしまうことになります。
これは総理に伺いたいのですが、現に、専門業務なるものを抜け穴にして、直接雇用から派遣への大規模な置きかえが起こっています。NTT東日本北海道は、ことし一月付で、それまで直接雇用にしていた契約社員全員に対して、同じグループの人材派遣会社への転籍を強要し、派遣社員に変えて働かせています。NTTは、派遣会社にかえた六百四十五人は専門二十六業務だ、だから派遣に置きかえても問題はないと言っています。専門業務だからという名のもとに、本来正社員にすべき契約社員を一層不安定な派遣労働者にするという逆の流れが起こっているわけであります。
総理は、労働者を生産過程の歯車としてしかとらえない派遣労働を抜本的に見直すと言われました。それならば、この専門二十六業務、これは二十五年前に決めたものもあるんですよ、そういうものを抜本的に見直して、規制を強化する方向にかじを切るべきじゃありませんか。これは総理に伺います。
○長妻国務大臣 この専門二十六業務については、私も非常に緩い定義だな、こういう感覚を持っております。
それで、先ほど申し上げました事務用機器操作につきましても、全く無関係の業務を少しでも行っているケースは、これはもう認めない、あるいは付随的に行う業務の割合が一割を超えているケースは認めないなど、実は、きょうこれから通知を全国に出そうというふうに考えております。これは、全国の労働局あるいは社団法人日本人材派遣協会、経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会に出させていただいて、この二十六業務の中にはファイリングというものもありますので、そういうものも本来の趣旨の定義を厳密に守るということを徹底させるということで、改めて本日通知を出させていただくところです。
○鳩山内閣総理大臣 今、志位委員とのやりとりを伺いながら、やはり二十六業務、この中に、それはそれなりのものもあると思いますが、余りにも幅広く、事務用機器操作、パソコンはだれでも使えるような状況になっていると思います。果たしてこういうものをそのままにしておいてよいのかというのはやはりしっかりと検討する必要があるのではないか、私はそのように考えました。
○志位委員 大事な答弁が得られました。検討するということですので、ぜひ規制強化の方向で検討をお願いしたいと思います。
労働者派遣法の抜本改正というなら、製造業派遣は全面禁止にする、専門二十六業務の抜本的な見直しを図るなど、労働者保護法として真に実効あるものとし、その実施を先送りするのではなくて、三年、五年の先送りでなくて、速やかに行うべきだと考えます。それを第一歩にして、雇用は正社員が当たり前という社会をつくる、働く人の所得をふやす、そうしてこそ日本経済の健全な発展の道が開かれるということを強く主張しておきたいと思います。
・・・<以下省略>・・・
|