第174回国会 厚生労働委員会 第10号
平成二十二年三月三十日(火曜日)
午前十時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
○介護保険法施行法の一部を改正する法律案(内
閣提出、衆議院送付)
・・・【中略】・・・
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日はおなじみの小池議員に代わりまして私から質問をさせていただきたいと思うんですが。
雇用情勢は依然深刻なまま推移をしておりまして、とりわけ失業の長期化も進んでいるわけでございます。共産党は本来すべての労働者が雇用保険の対象となるようにということを強く求めてまいりましたけれども、そうした方向で今回の適用の拡大は当然だと考えますし、改善であるというふうに評価をしております。
・・・【以降、途中まで略】・・・
○仁比聡平君 つまり、生活を支えるために必死で働いていても、雇用保険の今回の改定によっても対象にならないというマルチジョブホルダーの方々が現実に出てしまうわけです。
二つの仕事を合わせて二十時間を超えていても、片方が二十時間を超えなければ適用にならないと。主な方の仕事をリストラされても、これがもし雇用保険の対象になったとしても、もう一つの仕事の副収入というのは、これは失業給付の算定に当たって減額をされてしまうというふうにも伺いました。こうなると、実際に必死で生活を支えて二つも三つも仕事を掛け持ちしている、そのうちの一つ、二つが失業してしまうと生活が成り立たないわけですよ。こうした、生活が成り立たないというようなことができるだけなくするようにというのが雇用保険の存在意義なんだと思うんですけれども。
私は、二つの仕事の労働時間を合わせて二十時間以上というその適用基準を超えたら適用をすると、あるいは、そうしたマルチジョブホルダーの方々が、うち幾つかの仕事を失業したときにも生計が成り立つ給付が受けられるようにすると、そういう改定に向けて早急な検討をすべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) この件については、二つの事業所の時間を合算する、あるいは片方が失業したときにどう考えるのかなど、いろいろな論点があるというふうに承知しておりますので、これについては労使の代表の場である会議体、労働政策審議会で議論をして検討するということであります。
○仁比聡平君 前政権のときからずっと検討課題のままになっているんですよね。このマルチジョブホルダーの方々が大変急増していると私言っていいと思うんだけれども、その実態をやっぱり政府としてしっかり調査をして、速やかに検討をするべきだということを強く求めておきたいと思います。
関連しまして、この失業給付の特定受給資格者の認定が、労働の実態によってきちんと判断をされて、その実態に見合った手厚い給付がなされるべきだと私は思います。
その点で、私は、広島そして山口のマツダ自動車が、派遣労働者を元々派遣元に戻すということにしていながら、いったん生産サポート社員というふうに呼ぶ直接工に三か月と一日だけ付け替えまして、その期間が過ぎたら派遣元に戻すという、いわゆるクーリング期間を偽装して、派遣法の最大でも三年という上限規制をクリアしたように見せかけてきた、これは明白な違法ではないかと何度も、特に前の政権に対してですが、この実態を違法だと認めて、一つは直接雇用を指導すべきだということを求めてきました。この派遣法違反あるいは職業安定法四十四条違反については、是正指導がなされたわけです。
ここにかかわって、雇用保険の失業給付がどうなのかと。そうした違法な働かせ方で、通算すれば四年も五年も雇用保険に加入して正社員と同じように働いて、しかも雇用保険の保険料も労働者は払っている。最低でも半年は失業給付を受けられるはずなのに、これが直近の派遣元との雇用期間だけで判断されて九十日で切られてしまう、これは余りにも理不尽じゃないかと、このことを私は改善を求めてきました。
この点について、今年の二月の十日に労働保険審査会の裁決が出されまして、私が求めてきたものと基本的に同じ方向での判断がなされたわけですね。少し紹介をしますと、生産サポート社員への切替えと派遣労働者への復帰は、実質的には派遣元の管理下で行われていたことが認められる。すなわち、法律上の義務に形式的に対応するため、派遣労働者の雇用関係を派遣元から派遣先へ一時的に付け替えるための制度にすぎないものと考えられ、ランク制度の運用実態や有給休暇の取扱い等を見ても、たとえ派遣先と雇用関係を結んだとしても、派遣元との契約更新を繰り返したと実質的に異ならない状況にあったものと認められる。したがって、労働契約の更新と同等の状態にあったものとみなし、期間についてはこれを通算して評価すべきであり、請求人、労働者の側は特定受給資格者に該当すると判断するのが相当であると。ちょっと飛び飛びに紹介しましたが、要旨こういう裁決がなされているわけです。
まず大臣、派遣切りに遭ってハローワークに行きます、そのときに、あなたは特定受給資格者には該当しませんというふうに判断をされたということについて、労働者の側には何の責任もないと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(長妻昭君) 今、個別の例を出されましたけれども、一般論として申し上げると、今言われた特定受給資格者というのは、倒産、解雇等により再就職の準備をする時間的余裕がない形で離職を余儀なくされたという方で、同一の事業主の下で三年以上引き続き雇用されていた場合というような要件もあるということで、今おっしゃられた案件については労働保険審査会で個別の事情を考慮して裁決を行ったということで、同じような就業形態の労働者について特定受給資格者と認められたケースもあれば認められなかったケースもあるわけで、実態に即してということでございます。
ただ、こういう例が、こういう裁決が出たということについて、私自身も、同一の事業主の下で三年以上引き続き雇用というものについての解釈について、派遣労働者の場合はどういうふうに考えればいいのか。これについては、しゃくし定規に考える一方ではなくて、どういう考え方が取れるのかということについては今後とも検討していきたいと思います。
○仁比聡平君 そのしゃくし定規に考えてはならないということは、この裁決や、あるいは、とりわけリーマン・ショック以降の凶暴な派遣切りの中で、そして、現行法さえ踏み破って、いつまでも派遣として働かせ続けるために名立たる大企業がこうした違法派遣を行ってきたというその実態によって私は明らかになっていると思うんです。
元々、この特定受給資格者の認定というのは、これは実質を見なければ判断ができないものだと思うんですね。この判断を、最初の処分をすることになるハローワークのところでは労働の実態をきちんと踏み込んで見た上での判断にはならなかったと。結果であるかもしれませんが、今回の裁決というのはそのことを示しているのではないかと思います。
もう一度大臣に、重ねて恐縮ですけれども、特定受給資格者と扱われなかったと、派遣切りで一番最初にハローワークに行った時点、あるいは失業給付が九十日で切られる時点、扱われなかったということについて労働者の側には責められるべき事由というのは全くないと思いますが、いかがです。
○国務大臣(長妻昭君) そういう角度の御質問で個別の案件になかなか答えるということはできませんけれども、現実として労働保険審査会で個別の事情を考慮した裁決というのが出ているということもございますので、これについては、先ほども申し上げましたとおり、しゃくし定規に一定の規律で判断をするんではなくて、やはり実態も踏まえた判断というのがどうあるべきなのか、派遣労働者の場合の解釈についてこれは真剣に検討していきたいということです。
○仁比聡平君 であれば、一般論として、大臣、お尋ねします。特定受給資格者に当たるか否かの判断は、これは職業安定所が行うものですから、これは労働者が判断するものではない。そうした意味では、職業安定所が判断するものであるという意味で、労働者の側に、これは一般論として帰責事由はないと。いかがでしょう。
○国務大臣(長妻昭君) 基本的に、この特定受給資格者か否かというのは労働局の判断がありますので、これは労働者の方が何かそれについて責任といいますか、その方の何か働き方のルールが、その方が何か頑張れば変わるというものではございませんので、そういう意味では、これはルールとして労働者の方の個人の事情とは関係なく働き方を見ていくということだと思います。
○仁比聡平君 そうした中で、この裁決によって当初の認定というのはこれは取り消されているわけですから、そういう意味で、実態や基準の趣旨に照らして、言わば誤った扱いだったということがはっきりしたということだと思います。
私は、それである以上、行政の裁量で、さかのぼって今回の裁決に基づいた運用がきちんとなされていくべきではないか。とりわけ、この処分があった日から六十日以内に不服審査を申し立てなきゃいけないというふうになっているんですけれども、現場では、なぜそんな短いものしかもらえないんですかという質問に対して、窓口では、これ以上はどうにもなりませんというような職員の説明がなされているようなケースが多々あるわけです。こうした裁決が出た以上、しっかりと救済をされる、適正な本来もらえるべき失業保険がもらえるようにするというふうにすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
○国務大臣(長妻昭君) 今おっしゃられたように、この審査請求の期限については、これは法令で、処分のあったことを知った日の翌日から起算して六十日以内にしなければならない、ただ、正当な理由によりこの期間内に審査請求をすることができなかったときはこの限りではないと、こういうような規定がありますけれども、この正当な理由に該当するかどうかについては、労働保険審査官及び労働保険審査会法にのっとって適正に判断されるというふうに考えておりますので、その判断ということであります。
○委員長(柳田稔君) 時間だから。
○仁比聡平君 そうした正当な理由の判断が労働者の立場に立ってきちんと行われるように是非強くお願いして、私の質問を終わります。
・・・<以下省略>・・・
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