第174回国会 厚生労働委員会 第15号
平成二十二年四月二十日(火曜日)
午前十時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○社会保障及び労働問題等に関する調査
(年金記録問題及び新たな年金制度の設計に関
する件)
(医療安全及び死因究明制度に関する件)
(B型肝炎訴訟への国の対応に関する件)
(軽度外傷性脳損傷及び脳脊髄液減少症への対
応等に関する件)
(最低賃金の引上げの必要性に関する件)
(ディーセント・ワークの実現に向けた取組に
関する件)
○国民年金法等の一部を改正する法律案(衆議院
提出)
○厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の
支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等
の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○医療保険制度の安定的運営を図るための国民健
康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
○連合審査会に関する件
・・・【中略】・・・
○丸川珠代君 自由民主党の丸川珠代でございます。
社会保障及び労働問題等に関する調査ということで、まず皆様のお手元にお配りをしております専門二十六業務派遣適正化プランというものについて御質問をさせていただきたいと思います。
二月の八日に厚生労働省は、専門二十六業務派遣適正化プランというものを発表いたしました。これは、長妻厚生労働大臣の指示を受けて厚生労働省の職業安定局長から各団体に対して要請をするとともに、都道府県の労働局において、三月及び四月を集中的な期間とする派遣の専門二十六業務と言われるこの適正化のための指導監督を行うよう通達したものであります。この要請や通達は、専門二十六業務と称した違法な労働者派遣の適正化に向けた対応についてという題になっております。済みません、手元にはそれそのものはないんですが、その内容が職業安定局長の有する権限を逸脱したものであると私、とらえておりまして、極めて問題があるのではないかと思っております。
その内容もさることながら、まずちょっとこちらを御覧いただきたいんですが、手元の立入検査等に伴う対応についてということで、派遣の事業主の業界団体であります日本人材派遣協会というところから厚生労働省の職業安定局に対して出された要望でございます。これ見ていただきますと、この専門二十六業務派遣適正化プランの立入検査の内容が非常に、まあ何というんでしょうか、被疑者として決め付けるようなことがあったり、犯罪の捜査でもないのに身柄を長い時間押さえたりというようなことが書かれておりまして、これは本当に立入調査でできるようなことなのかというような調査の実態が指摘をされております。
そこで、ちょっとお伺いをしたいんですが、まずこの立入検査に伴う対応についてという要望の中の(2)の項目でございます。派遣先の方に担当官がアポなしで訪問をして、派遣先の責任者がいないので内勤の社員が調査協力をお断りすると、断るなら行政命令を発動するからそのつもりでいろと言われたので、急遽、社長が帰ってきて対応したと。担当官は、五号業務で電話一本取っても自由化業務だというふうに決め付けて派遣先に是正指導をすると言ってきたというような形で、たしかこの立入調査というのは任意であったかと思うんですが、これ任意の調査協力に断るなら行政命令を発動するというような、そういうことを言うのは強制と同じことではないかと思うんですが、長妻大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、条文がございまして、労働者派遣法の第五十一条第一項においては、「厚生労働大臣は、この法律を施行するために必要な限度において、所属の職員に、労働者派遣事業を行う事業主及び当該事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける者の事業所その他の施設に立ち入り、関係者に質問させ、又は帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。」と、こういう条文がまずあるということでございます。
その中で、今配付をしていただいた資料についての(2)ということでございますけれども、これについて、どこの場所でこういう話があったのかというのはお分かりになりますでしょうか。
これについて、この書面を受けたときに課長が聞いたところによると、一つの、その事業所の名前はいただけなかったようでございますけれども、ある地域をおぼろげながら教えてもらったということで、私どもとしてもその地域の労働局に問い合わせて、どこなのかというのがなかなか確定ができませんでしたけれども、恐らくここではないかというところがありまして、それはまだはっきりしておりませんが、そこの労働局にヒアリングしたところ、問題のあるような行動、発言は取っていないということを確認をしたということであります。
○丸川珠代君 それを調査とおっしゃるのは、今まで野党側にいて政府の態度を追及してこられた長妻大臣のおっしゃるべきことではないと思うんです。
それ以外に手段がないのかもしれませんが、これ何で労働局を特定されるようなことを人材派遣協会なり個別の企業が言いたがらないか。結局、後で仕返しされるのを恐れているんですよ。
それ以外にも、私に、ある団体から、登録型派遣の禁止反対ですというような御意見をお持ちなのに、じゃデータを出してくださいと、アンケート取られたデータ出してくださいと言ったら、いや、我々、民主党からいじめられるから出せませんと言われました。
非常に問題だと思いますよ、これは。大臣の知らないところで起きているとしたらこれ大変な問題ですので、是非そういう後々の嫌がらせが起きないようにということに目を配っていただきたいと思います。
で、この(2)は確かに必要な限度においてというのが一体どの程度なのかという問題がありますし、それから(1)あるいは(3)、(1)見ていただきますと、突然派遣先にアポイントもなく指導官が訪れ、派遣先担当者が不在であっても派遣スタッフを拘束し、被疑者でもないのに、あなたのやっていることは違法なことだと分かっていると、違法であると決め付けて尋問をした。あるいは、定期調査等に伴い、派遣スタッフは派遣先の個別の部屋で午前九時から六時まで八時間拘束を受けたと。これですね、果たしてこれが必要な限度においてなのかと。
ここにわざわざ、派遣法の第五十一条、今し方大臣が触れられたこの法律には、わざわざその三項に、「第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」とわざわざ書いてあるのに、こういう立入調査のやり方が認められるんでしょうか。
私、こういう個人の意思を制圧するというようなこと、あるいは体や財産に制約を加えるということは、強制処分、つまり強制捜査のときに行われる強制処分というものと同じだと思いますけれども、大臣、いかがですか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、国会でございますので、今、民主党にいじめられたから出せないということが、役所から発言があったということでありますけれども、これ具体的に、いつ、どの人物が発言したのか、これは、私はそういうことが一切ないと言うつもりはありませんけれども、国会でございますので、今のこのお話も全部事実に基づいて確認をされた上で言われておられるのか。
確かに、この課長に出した文書には、私も今持っておりまして、こういうことが書いてありますので、これが本当に事実かどうかということを、我々は事業所名が分からない中で、おぼろげながら地域を教えていただいたわけでございまして、この五つについて確認をさせていただいたところ、問題のあるものはなかったという今の時点の報告を受けているということでございまして、更に具体的な中身を御指摘いただければ我々は調査をしないと言っているわけではないということも御理解いただきたいと思います。
○丸川珠代君 役人の方がおっしゃったのではなくて、この業界団体の関係者の方、そしてもう一つ、先ほどデータを出してくれないという話をしたのは、ある労働者の派遣労働者の関係団体の方でございます。いずれも、その自分たちの存在さえ明かせないほど、この立入検査のありようについて非常に恐れておられる、あるいはその後、更に厳しい追及が来るのではないかということを非常に恐れておられます。どうか大臣、まずここは、そういう弱い者いじめになるようなこと、あるいはグレーゾーンを徹底的に自分たちの恣意的な解釈で追及するようなことはしないということを明言いただかなければ、とてもじゃないですけれども、派遣先の方あるいは派遣元の方はその自分たちの存在を明らかにできないのではないかと思います。
この専門二十六業務派遣適正化プランというものの中身について申し上げたいのですが、この二十六業務をこの専門二十六業務派遣適正化プランの中で決めているこの内容と、もう一個、労働者派遣法第四十条の二の第一項の第一号に従った政令ですね、施行令に定められているこの二十六業務の在り方というのがどうも随分ずれているのではないかと。これは政令を局長通達が超えることになっておかしいのではないかということが業界の方から上がってきております。
二十六業務を定める法的な根拠というのは、労働者派遣法第四十条の二の第一項第一号にございます。資料にも付けさせていただきました。二枚目と申しますか、この要望書の次に掲げているものでございますが、御覧のとおり、この同号はまず、「その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務」、又は、(2)「その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務」のいずれかに該当する「政令で定める業務」と規定してあります。したがって、派遣可能期間の制限を受けない二十六業務というものについては、政令、つまり政治家である大臣が構成員として組織している内閣が閣議決定して定めていることにしているんですね。決して、所管であり、あるいは政治家である厚生労働大臣が単独で定めるという権限を与えていない、まして職業安定局長にそのような業務を定める権限を与えていないと考えますが、まず見解はいかがですか。
○国務大臣(長妻昭君) 今のお尋ねは、この通知を出させていただいたわけでございまして、これが今年の二月の通知でございます。これについてのお尋ねだと思いますけれども、これについて専門の二十六業務の解釈を逸脱しているのではないかというお尋ねでありますけれども、これは逸脱をしているものではございませんで、例えば事務用機器操作とかファイリングなどについては具体的な考え方を示させていただいたということであります。
第一に例示を最新のものとした、例えばタイプライターやテレックスなど現在使われなくなった機器ではなくて、オフィス用コンピューター等で文字作成ソフトを用いる業務などを例示に用いることとした、あるいは第二に明確に示していなかった解釈を明確化したという点でありまして、例えばこれまでも単純に数値をキー入力するだけでは事務用機器操作に該当しないと運用してきましたけれども、これを通知に明記することとしたなどでございまして、これはその法解釈を逸脱しているものではありません。
○丸川珠代君 今の話、二点ございます。
まず、二月に通達を出して三月、四月に強化をやるというので、今まで明確になっていなかった基準が突然示されたわけですよね、これが私たちの解釈ですと。そういってもう三月には立入検査するというのが果たして合理的なのかどうか。派遣の期間というのが一般的にどのくらいかということをお考えいただいたら、それは余りにも唐突だと現場は受け止めても仕方がないのではないでしょうか。
それからもう一点、この政令として、まず労働者派遣法の施行令の第四条があって、その第五号が電子計算機、タイプライター、テレックス又はこれに準ずる事務用機器の操作というふうに書いておりますよね。一方の今おっしゃった、大臣がおっしゃった通達の方ですけれども、こちらには、事務用機器操作については、オフィス用コンピューター等を用いてソフトウエア操作に関する専門的技術を活用して、入力、集計、グラフ化等の作業を一体として行うものとされ、迅速、的確な操作に習熟を要するものに限られると。
これ見ていただいたら分かるように、五号では専門的とか何か能力が限られるということは全く規定をしていないわけですよ。それを、通達になったら途端に、「習熟を要するものに限られる。」というのが入っているわけです。
これは操作方法を、これ政令で定めているものを超えて、局長通達が「限られる。」というふうに規定しているわけであって、おかしいんじゃないかと思うんですけど、普通に考えたら。何でこれが労働者派遣法第四十条の二の第一項の第一号の違反ではないと言えるんですか。
○国務大臣(長妻昭君) まず、そもそもこの専門業務というものについては、今お配りいただいたところにもあるようでありますけれども、労働者派遣法第四十条の二で、「その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務」と規定をしておりまして、すなわち、事務用機器を操作する業務であったとしても、専門的な知識、専門的な技術、専門的な経験を必要としないものはそもそも専門業務には該当しないというのは、従来から一貫して取っているこれは解釈であります。
○丸川珠代君 しかしながら、これ施行令の方では、専門的な能力を要するということに限られるということをちゃんと書き分けしてあるんですよ。
例えば、施行令の四条の八号業務、十二号業務、二十二号業務においては、高度の専門的な知識、技術又は経験を要するものとわざわざ書いてある。一方で、第五号にはそういう技術や知識、経験を要するものという規定は入っていないんですよ。ちゃんと八号、十二号、二十二号と五号は書き分けをしてあるんですよ。にもかかわらず、五号にその拡大解釈を局長通達で加えるというのは、現場にとってグレーゾーンを極端に超えてきたと、そういうふうに解釈されても仕方がないことだと思いませんか。
○国務大臣(長妻昭君) 先ほども申し上げましたように、まず大前提にあるのが、この条文の規定でも専門業務とは何かということが言われているところでございまして、そういう意味では、専門的な知識、専門的な技術、専門的な経験を必要としないものはそもそも専門業務には該当しないというのが大前提にありまして、こういう例示があるということでございます。
○丸川珠代君 今回のように、突然通達で政令を覆す、乗り越えていくというようなことをやった上に、一か月後にはもう調査ですよというようなことをすると、現場の予測不可能性というのが非常に高くなるんですね。今までどこにも書いていなかった解釈や政令にも書いていないことが、突然ルールですといってまかり通るようになると、現場は、ただでさえコンプライアンスリスクは派遣にとって非常に大きいと考えている派遣先、派遣元が多い中で、ルールを守りたくても守れないと、仕方がないから切るか、雇用を切るかと、派遣先から返してくるかと、そういうことにもつながりかねないということを十分御認識をいただきたいと思います。
こういうことを度々なさいますと、現場のコンプライアンスリスクが増大して、労働者、使用者双方にとって新たなコストになる。コストというのは何もお金の話だけではありません、自分たちの雇用を懸けたコストでございます。こういうことになってまいりますので、十分こういうものはまず周知徹底をして、理解を得てからルールを守っていただくということをやっていただきたいと思います。
・・・<以下省略>・・・
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