第174回国会 厚生労働委員会 第15号
平成二十二年四月二十日(火曜日)
午前十時開会
・・・【中略】・・・
本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○社会保障及び労働問題等に関する調査
(年金記録問題及び新たな年金制度の設計に関
する件)
(医療安全及び死因究明制度に関する件)
(B型肝炎訴訟への国の対応に関する件)
(軽度外傷性脳損傷及び脳脊髄液減少症への対
応等に関する件)
(最低賃金の引上げの必要性に関する件)
(ディーセント・ワークの実現に向けた取組に
関する件)
○国民年金法等の一部を改正する法律案(衆議院
提出)
○厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の
支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律等
の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○医療保険制度の安定的運営を図るための国民健
康保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出
、衆議院送付)
○連合審査会に関する件
・・・【中略】・・・
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道でございます。
有期雇用、そして派遣、請負などの間接雇用、これは小泉構造改革による労働法制の規制緩和によりまして、今や労働者の三人に一人までに増えてまいりました。デフレからの脱却、国内消費の立て直しのためにも小泉構造改革で破壊された雇用を再建してディーセントワーク、人間らしい働きがいのある仕事、労働、これを実現しなければならないというふうに思っています。
新成長戦略におきましても、このディーセントワークの実現に向けて同一価値労働同一賃金、そして均等・均衡待遇の推進がうたわれておりますし、鳩山総理も同一価値労働同一賃金に向けた均等・均衡待遇の推進に積極的に取り組んでいくと、こういう決意を今年の四月、衆議院の本会議でされておるわけであります。
ディーセントワークに向けては非正規労働者を正規化する、あるいは非正規のまま均等待遇を実現すると、この二つのやり方があるわけでありますが、その手法としては奨励金を払う、あるいは規制強化を行う、そしてメリット措置などの経済的インセンティブを与える、こういうやり方があるわけでございます。
今日はそのディーセントワークを実現する手法に沿って少し質問をしてみたいというふうに思っています。
まず、奨励金を使ってのやり方でございますけれども、政府は現在、派遣労働者やフリーターを正社員として雇い入れる企業に対して奨励金を交付している。派遣労働者雇用安定化特別奨励金とか、あるいは若年者等正規雇用化特別奨励金、こういう制度を使っておりますが、現場の声を聞きますとこれは非常に評価は余り良くない、これが現実でございます。
大臣も均等待遇に向けて取り組んでいきたいと、こういうふうに明言されているわけでありますが、いかにして均等化するかという政策手段以前に何を均等にするか、これを検討しなければ私はならないというふうに思うんです。そもそもどの程度正規労働者と非正規で格差が存在するのか、データが私はないんではないかと思うんです。データはあるんでしょうか。
少なくとも、企業ごとに非正規労働者を受け入れている割合及び一定以上非正規労働者を受け入れている企業においては、部署ごとあるいは勤続年数ごとの平均的な給与額を含む正規と非正規の労働条件の格差の情報開示を私は企業に求めるべきだというふうに思うんです。
こう言いますと、必ず同一労働同一賃金、この同一価値労働というものの概念が不明確だという話がすぐ出るんですが、私は少なくとも職務内容が基本的にほぼ同じだというものをやっぱり対象に置きながら、どういう不均衡あるいは格差があるのか、この情報をしっかりと公開をすると、これが同一価値労働同一賃金の、私はその作業の土台になるんではないかと、こういうふうに思っております。是非これをやっていただきたいというふうに思うんですが、御所見をお伺いいたします。
○国務大臣(長妻昭君) 実態把握ということは本当に重要でございまして、この有期労働契約研究会で昨年調査をいたしましたものは、正社員と比較した基本給の水準ということで、有期労働者がどのくらいの水準かということでございます。これ、一時間当たりの基本給の水準を比較をしたものでございますけれども、正社員に比べて、八割以上十割未満という方が二四・七%、六割以上八割未満という方が三一・八%、四割以上六割未満という方が一六・九%ということで、つまり一番多いのは、三割の方は正社員に比べて六割から八割の給与水準であるということでございまして、やはり格差というのは今のような状況であるということも一定の調査で分かったわけでございますので、この待遇にかかわるそういう論点も含めて、今、有期労働契約の研究会の中で議論をして、対策をまとめていきたいというふうに考えております。
○近藤正道君 次に、規制強化を通じてディーセントワークを実現するというルートでありますが、いよいよこの十六日から衆議院で労働者派遣法の改正案の審議がスタートをいたしました。まず、これを早期に成立をさせて規制強化の第一歩としていきたいと、こういうふうに思っております。
一方で、この間、急速に増えました有期雇用でございますけれども、これは民主党、社民党、国民新党の三党が、〇八年の十二月に、有期労働契約の締結、更新、終了のルールを明らかにした有期労働契約遵守法案、これを共同提案をいたしました。これは結局通らなかったわけでありますけれども、長妻大臣も当時、民主党の担当者として打合せなどにお見えになっていた、こういう経過もございます。
現在、有期雇用につきましては、今ほど来話が出ております有期労働契約研究会、これで検討が進められているわけでありますが、この研究会の検討事項の中に、さきの有期労働契約遵守法案、この内容は盛り込まれているんでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 今御指摘の点でありますけれども、有期労働契約研究会の論点の中で、このいわゆる三党案に盛り込まれていた事項も含む論点として、一つは契約締結に関するルールはいかにあるべきか、二番目としては公正な待遇を実現するためのルールはいかにあるべきか、三番目は雇い止めにかかわるルールはいかにあるべきかという論点も盛り込んで議論を進めているということであります。
○近藤正道君 派遣切りとか請負切り、これは今も大変深刻な状態にあると、こういうふうに私は認識しております。これらの間接雇用においては、派遣先や発注者といった就労先企業との派遣契約や請負契約の解除などを理由に、派遣会社や請負会社の有期労働者だけではなくて常用労働者も解雇されている、こういう実態がございます。
労働契約法の第十七条の一項では、使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することはできないと、こういうふうに規定されております。にもかかわらず、派遣先や発注者から契約が中途解除されたという理由だけでやむを得ない理由があると認められるものではない、こういうことで解雇されるケースが非常に今も後を絶たない。
やむを得ない事由があると認められるケースというのはそういうことを言うのではないんだということをもっと徹底して厚労省としては周知をする私は必要があるのではないか。多分皆さんはやっているというふうに思うんだけれども、とにかくこれ後を絶たないですよ。もっと徹底して私は周知をしていただきたいと、これは要望的な質問でございますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 今御指摘いただいたのは、労働契約法の第十七条第一項にやむを得ない事由というのがありますが、その解釈であります。
今おっしゃっていただいたように、派遣元が派遣先との間の労働者派遣契約を中途解除されたことをもって派遣元が雇用している派遣労働者を解雇することは、直ちに労働契約第十七条第一項のやむを得ない事由があるものとは認められないということであります。
○近藤正道君 確かにそうなんですけれども、しかし現にこのことによって、こういうことを口実にした解雇が依然としてやっぱり後を絶たない。だから、皆さんの周知徹底がまだ不十分なんではないか、だからここをもっとしっかりとやっていただきたいという質問をしているわけでございます。どうぞ、もう一度。
○国務大臣(長妻昭君) 今の点、よく私も労働基準監督署等に再度確認をして、不十分な点があれば、さらにそういう対象者にどういうふうに告知するのが一番適切なのか、これをよく話を聞いて、適切な広報の強化ということについても進めていきたいと思います。
○近藤正道君 是非徹底していただきたいというふうに思っています。
次に、メリット措置によるインセンティブを働かせて何とかディーセントワークを実現すると、このやり方、手法でございますが、国の機関が民間に仕事を発注するいわゆる公共調達というのは、国民の貴重な税金を民間企業に支払うわけでありますので、非正規の正規化あるいは均等待遇という望ましい雇用秩序の実現に向け取り組んでいる企業を優遇するというのは、私は企業間の競争環境の公平、公正を保障するためにも私は望ましいことだと、是非やるべきことだと、こういうふうに思っております。
この点について、内閣府におきましては、男女共同参画あるいはワーク・ライフ・バランス実現のための公共調達のためのポジティブアクション、この制度を始めました。
質問でありますけれども、厚労省の調達におきましても非正規の正規化あるいは均等待遇に取り組んでいる企業に公共調達において加算措置をとるなど優遇する制度を是非導入すべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(長妻昭君) 内閣府ではそういう取組があるということで、今ここに入札公告を持っておりますけれども、これは、購入等の件名、何を発注するかというと「「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査」ということでありまして、その中のこの技術評価ポイントの中で百点中七ポイントをワーク・ライフ・バランス実現のための取組の状況というのに入れていると、こういうなかなか興味深い取組をされておられるということでございます。
その中で、こういう取組を厚生労働行政の中でどういう位置付けでできるのか。その一方で、国民の皆様から要請があるのは、やはり安いお金でいい仕事をしてもらうという要請もコストの問題もありますので、そういうバランスの中で、内閣府と同様の取組かどうかは別にいたしまして、今御指摘いただいた点をどう位置付ければいいかというのは一度省内でも発注部局に検討させてみたいと思います。
○近藤正道君 厚労省ぐらいは是非私はやっていただきたいと思うんです。厚労省の会計課とかあるいは財務省の法令解釈、いろいろ聞いてみましたけれども、少なくとも非正規の正規化あるいは均等待遇に関連した事業であればこういうことをやるということは全然構わないと、こういう私は答えもいただいておりますので。
内閣府が、男女共同参画の部署がそういうことを始めたんですから、次は厚労省がその後を追っかけると、こういう是非体制を取っていただきたい、そしてその政治的な意思を明確にしていただきたいと、こういうふうに思っています。今ほど大臣の御答弁、前向きの私は答弁だというふうに評価をさせていただきますので、是非これを具体化させ、スピードアップをしていただきたいと、お願いをしたいというふうに思っています。
先日、セーフティーネットを強化する方向で雇用保険法が改正をされました。一般に、保険制度では、保険事故を引き起こした者の掛金、保険料は高くなります。現在の日本の雇用保険制度では、体力があるにもかかわらず解雇や有期の雇い止めを繰り返す会社が長期の正規雇用を維持して頑張っている優良な企業の保険料を食いつぶしながら堂々と利益を上げるという一種のモラルハザードが私は発生しているんではないか、起きているんではないかと、私自身はそういうふうに見ているわけであります。
アメリカの雇用保険では経験料率という制度が取られておりまして、解雇権を濫用する事業主の保険料が上がる仕組みになっているんです。また、日本の労災保険でも、事業所ごとの労災の件数に応じて保険料率を上下させる、そういうメリットの制度を採用しております。
厚労省、これは〇八年の六月でありますけれども、第七回の今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会というところで、雇用保険のメリット制度は議論されたことはあるけれども理論的、技術的に難しいと、こういうことを当時の職業安定局長が発言しているわけでございます。私は、この発言がちょっと腑に落ちないわけでございまして、こういう雇用保険制度のメリット制度、理論的あるいは技術的に難しいという、その断定は一体どういう根拠に基づいてこういう断定のされ方をしているのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
○国務大臣(長妻昭君) 私が報告を受けましたのは、アメリカに今言われたようなメリット制というものがあるということでございますけれども、それについて日本ではどうかということでありますが、一つは、アメリカの雇用保険というのは自己都合の退職は出ないと、こういう扱いになっているということでございまして、つまり会社都合の解雇だけしか失業保険制度が適用されないと、そして原則として事業主負担のみであると、こういうようなことからかんがみてそういうメリット制の導入というのはあろうかという、アメリカではですね。
ただ、日本では、この自己都合退社というのが、それはすべて会社の責に負わすことがいいのかどうか、自己都合の退社がですね、そういうような議論もあり、広く社会全体で雇用を支えるという趣旨でそういう一定の意見が出たというふうに聞いております。
○近藤正道君 私は、この議論は是非一度、一度というか、これから徹底的にやっぱりやっていただきたいなと、こういうふうに思っています。自己都合解雇についてはいろんな意見が、今大臣もおっしゃったけれども、いろんな意見があるということはよく分かるけれども、少なくとも、会社都合の解雇だとかあるいは非自発的な失業を生み出した後にも事業を継続するような事業者、事業主の負担部分については雇用保険のメリット制度をやっぱり検討すべきではないかと。
そして、そういう解雇をたくさん出すような会社にはやっぱりその後、保険料が高くなる、頑張る企業は保険料を抑えていただく、そういうインセンティブを働かせる、この議論の是非について私は審議会等で是非これから議論をしていただきたい、こういうふうに思っているわけでございまして、こういう制度はスウェーデンにもあると。頑張る企業は保険料を安くしていただける、簡単に労働者の首を切るような企業については保険料は高くなる、こういう形でインセンティブを働かせると。こういうやっぱり制度は是非私は議論して今後いただきたいと、こういうふうに思うんですが、ディーセントワークを実現するという立場で、是非大臣、どういうふうにお考えなのか、お考えを最後に聞かせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。
○国務大臣(長妻昭君) これはせっかくの御指摘なんですけれども、慎重な対応が私は必要だと考えておりまして、一つは、まず失業は国全体の経済状況の影響も受けるということで、当然その会社だけの責に負わせることは難しい。あるいは、これは例えばの話でありますけれども、そういう形になりますと、企業によっては有期雇用を増やして、それが期間が来ればそのまま解雇ということが増えるのか増えないのか。あるいは自己都合に対する日本は給付もありますので、これについて労働者負担も日本はあると、事業主負担だけではなくて。そういうことからかんがみて、今の時点ではこれは慎重な対応が必要だということで、直ちに議論をしていくということにはならないというふうに思います。
○近藤正道君 今日の段階ではそれだけにしておきたいというふうに思いますが、更にいろいろ私も勉強してまた質問させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
終わります。
・・・<以下省略>・・・
|