○宮澤委員長代理 次に、阿部知子君。
○阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
・・・〔以降、途中まで別問題の討論〕・・・
○阿部(知)委員 では、よろしくお願い申し上げます。
さて、既に予告してある質問に入らせていただきますが、一点目は、偽装請負問題でございます。
先ほど来、他の委員も御質疑でございましたので、私としては確認的に大臣にお伺いいたしたいのですが、いわゆる請負企業であるコラボレートという企業が業務停止という形で、この偽装請負問題では厚生労働省としての一定の厳しい取り締まりの方向を出されました。しかしながら、この偽装請負を受け入れているいわば派遣先の企業については、先ほどの大臣の御答弁では、手順を踏んでおると、簡単に言えば。
実は、指導して、勧告して、その後に企業名の公表がございます。しかしながら、私が思いますに、なぜ今に至っても一例も企業名の公表がないのか、これは一方で不思議でなりません。新聞等々メディアでは、松下だ、トヨタだ、キヤノンだ、もう国民はみんな知っておるわけです。これは取材の方が訪ね歩いて明らかにした部分もあります。しかし、私は、こうしたこともまた厚生労働行政の中で、問題が積み重なっておればきちんと企業名を公表される、これが原則であろうかと思いますが、なぜ一例もないのでしょうか、大臣。
○柳澤国務大臣 また後で事務方から補足の説明をしてもらいたい、このように思いますけれども、こういう制度の運営の場合は、法律の枠組みをつくるときから、ある程度事態の展開というものをパターン化して予測をしまして、そして、こういうときにはこういう措置に出るのが一番ベストである、こういうようなことでそれぞれの手順が書かれている、規定されているということでございます。
今、阿部委員お触れになりましたように、派遣先の問題については、まず第一に必要な指導助言を行うということがありまして、その指導助言に基づいて事態の改善を待つ、こういう仕組みなのでございます。そして、その指導助言がなかなかうまく効果を発揮しない場合に、次の行政手続として勧告というものが行われ、さらに、勧告に従わなかったときには公表と、今先生御指摘になられたような、そういう枠組みでこの制度ができ上がっている。
そして、こういう枠組みでこの手続を進行させていくことが最も事態の解決に適切である、こういう判断でこういう仕組みができ上がっておりますので、私ども法律を執行する立場といたしましては、この国会で御議決いただいたこの枠組みに従って手続を進行させている、こういうことでございます。
過去のことについては、もしあれでしたら補足をさせていただきます。
○阿部(知)委員 時間の関係で、事務方の方には申しわけありませんが。
大臣は障害者の雇用の促進法というのを御存じだと思います。障害者の法定雇用率を達成しない企業名は、既にこれまで十社公表されております。
もちろん、この障害者の雇用の促進法は昭和三十五年にできまして、年月があるとは思いますが、障害者雇用の未達成企業について公表されるようになったのはこの数年、極めて、私は、それは厚生労働行政としての取り組みの姿勢なんだと思います。
今おっしゃった手順、指導して勧告して公表、申しわけないけれども、指導した相手が今度は偽装の出向をさせるというようなことが続いている中で、一社も公表名がないというのは、やはりこの偽装問題に取り組む厚生労働行政の根本的な考え方のところに、私は覚悟が残念ながら見えない。本当にやっていただきたい。余りに不公正です。
もちろん、派遣した請負会社は問題です。しかし、それを受けているのが名立たる大企業の子会社だったりして、まして、子会社は公表されても、親方、大もと、親分は全く公表されません。本当に根絶を図るのであれば、コンプライアンス、ガバナンス、柳澤さん、いろいろな言葉でおっしゃいました。本当に私は、まずせめて公表という段階にしてほしい。
そして、では、これまで指導を受けたのが何社で、勧告を受けたのがどれくらいで、そこからもうすぐ公表になりそうなのがどれくらいあるかということを、実務サイド、教えてくださいますか。もしこの場で答えられなかったら、私の部屋に下さい。障害者の雇用促進法の場合はそれはいただきましたので。どうでしょう。
○高橋政府参考人 労働者派遣法に基づきまして、私ども、派遣事業の許可を受けた事業者のみならず、それを受け入れている派遣先、さらに、請負事業という形で事業を実施し、またそれを受け入れている事業所、それぞれに派遣法に基づく適正な受け入れということを前提にさまざま指導させていただいておるところでございます。
ちょっと今手持ちがなくて大変恐縮でございますが、請負にかかわりましても、立ち入りを行いました場合、行った結果として、いわゆる文書指導、つまり法違反が認められて是正を求める文書指導の件数が相当な数に上っておることは事実でございます。
私ども、こうした指導を実施する中で、先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、法律に基づきますその次のプロセスとしての勧告並びに公表といったようなプロセスが用意されているわけでございますが、そのうち、指導をした件数でもうすぐ勧告なり公表なりというところまで来ている件数がどれくらいかというのは、ちょっとこの場ではお答えはしかねるところでございます。
○阿部(知)委員 私がいただきました限りは指導まででとまっているんですね。勧告についてはいただいていない。やはり取り組みが甘いんですよ、緩いんですよ。覚悟が問われているんだと思います。
大臣、一体幾つが指導を受けて、勧告になり次の公表になっているのか、私はきょうこれは予告していませんので、ぜひこの次、私の要請にこたえていただきたいと思います。
そしてあわせて、私は、もっともこれは大臣の方がもっともっと御存じですが、会社法という法律では、この間、いわゆる親会社の責任ということを明確にすべきである、これは親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保する体制の整備という法律の枠をとってございます。先ほど申しました、子会社が何か起こし、その親会社たるものがもっと隠れていて、本当の業界全体の是正がなされないとすれば日本にとって不幸でございますので、この点も一言御答弁をいただきたいと思います。
○柳澤国務大臣 今阿部委員がおっしゃったように、我々の社会に生きていく会社、あるいはいろいろな形態での法人、これらはすべてコンプライアンス、ガバナンスが目下一番大事だということで、いろいろな立法も行われておりますし、また事実、そうしたことに企業、法人等も心がけているというふうに考えております。
○阿部(知)委員 私は、その企業の行動形態ということについてもう一つ。
現在は、グローバル化した経済と、企業は国境を越えて多国籍企業になっております。そして、日本の代表的な自動車の王者であるトヨタという会社が、フィリピンでフィリピン・トヨタという子会社といいますか別会社を運営しておりますが、そこで労働争議がございました。細かい経緯は時間との関係で割愛させていただきますが、九八年に現地で労働組合を結成されて、フィリピンの方のいわゆる最高裁では、それを労働組合と認めてフィリピン・トヨタに交渉しなさいということをおっしゃいましたが、進捗しておらず、フィリピンから来られた労働者の方がこちらでも組合に加入されるという形式をとって、何とか雇用労働条件を適正にしてほしいということで、現在中労委にもかかっている案件でございます。
私は、先ほど大臣がおっしゃられたガバナンス、コンプライアンス、すなわち突き詰めれば企業の社会的責任ということがありますし、特に我が国を代表するような大きな企業が、外国でいろいろな争議のもとになり、それは直接の法関係はなくても、企業が担うべき、日本というブランドをしょって生きていただかねばならない企業の社会的責任のあり方として、やはり余りにも放置され過ぎているのではないかと思いますが、この点についてはどうでしょうか。
○柳澤国務大臣 今御指摘になられた企業、日本の代表的な企業でございますが、これが海外に出ていった現地法人の次元で労働争議が起こっているということで、それがいろいろな道筋をたどって我が国の労働争議の一つの形として今手続が進行中ということは、今御指摘いただきまして、私も承知をいたしたところでございます。
これについての考え方はどうか、こういうふうに言われましたら、私は別段会社を区別するつもりはありませんけれども、ああいうような立派な会社であれば、論拠がないままに争議の中に入っていくということは、私はないと思うわけでありまして、何らかの彼らにも主張すべき事由があって、そうした形で今争いが行われているということだろうと思います。したがいまして、私が今ここで阿部委員に向かって、その手続を差しおいて何らかコメントをするということはやはり差し控えるべきであろう、このように考えます。
○阿部(知)委員 法的な問題等々を考えればそうでありましょう。私が伺いたかったのは、これから日本が国際的な分野で活動、活躍していくときに、やはり本当に企業のあり方というのが問われているという意味で、大臣の御見識を伺いたかったものであります。
|