○上田委員長 次に、塩川鉄也君。
○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。
きょうは、今、日本においてもトップの企業であり、自動車産業において世界のトップにも躍り出ようと言われているトヨタ自動車に関して、その下請構造の問題点などについて何点か指摘をさせていただきたいと思っております。
この間、自動車のリコールが急増しているということがよく取り上げられております。自動車の欠陥というのは、走る車ですから、命に直結をするものであり、深刻な事態につながりかねない大問題であります。過去三年間のリコールの台数の推移を見ても、〇四年度、おととしが過去最高七百五十六万台、昨年度というのは過去最高のおととしに次ぐ水準で五百六十六万台、今年度も三百九十八万台ということで、大変高い水準で推移をしているわけであります。
そこで、トヨタのリコールも急増していると言われておりますが、トヨタのリコール対象台数の推移について国土交通省からお答えいただきたいんですけれども、二〇〇一年度以降のトヨタのリコール対象台数の推移についてお示しください。
○松本政府参考人 お答え申し上げます。
二〇〇一年度からのトヨタ自動車のリコール対象台数でございますけれども、二〇〇一年度が五万台、二〇〇二年度が五十万台、二〇〇三年度が九十三万台、二〇〇四年度が百八十九万台、二〇〇五年度が百九十三万台となっておりまして、本年度は十一月末までで百三十万台となってございます。
○塩川委員 資料を配付させていただきましたけれども、上のグラフが今国土交通省で示してもらったリコールの届け出の対象台数で、ここ数年間急速に増加をしております。今年度も非常にたくさんの台数が出ておるわけです。下のグラフが、これは日経ビジネスで掲載されていたものですが、最大市場のアメリカにおいてもリコールが急増しているということで、もとはカラーで、白黒ですとちょっと見づらいんですが、左側がリコール台数で右側が販売台数ですから、〇五年の数字ではリコールの台数が販売台数を上回るという事態になっております。これは、国内の販売とリコールの台数においても同じようなことが言えるということにもなっております。
〇一年以降、リコールとなったふぐあいというのが人身事故にまでつながっているのは、トヨタ、日産、ホンダと言われる三大メーカーの中ではトヨタだけということも言われておりまして、その点でも安全の問題が問われてまいります。ことしの七月に国土交通省もトヨタに対して業務改善指示を出したということも大きく取り上げられました。
リコールがどういう原因で起きるのかというのを、原因別で分類したのを国土交通省も調べておりまして、全体的には、今、開発、設計段階に起因するリコールが多いということが言われております。ですから、開発、設計段階が七割で、それから生産、製造段階が三割というのが今のおおよその傾向だということが言われております。その点で、トヨタはどうかという問題があります。
これは、週刊東洋経済が過去五年間ぐらいのトヨタのリコールの件数を全部国土交通省のホームページから拾って原因別に整理をしましたら、開発、設計段階と生産の段階が、全体は七対三なんですけれども、トヨタの場合は五対五で、生産、製造現場に起因をするリコールが多いという傾向が出ているということが紹介をされておりました。
これは十一月十五日付の日本経済新聞でも、「きしむ品質」という特集記事の中で、「ここ三年のトヨタのリコールの原因は、半分は製造段階の問題による。」という点では、製造、生産段階における問題というのをトヨタの場合には特に懸念をする状況にあるのではないかと思っています。ですから、日本経済新聞の記事でも、その後に続いて、「半分は製造段階の問題による。その主因とされるのがラインを構成する人材の変容だ。」生産ラインにおける人材の変容、変化、ここに問題があるという指摘になっております。
私、この間トヨタの本社にも伺いましたし、また、下請関連メーカーの現地での調査も行ってまいりました。そういう中でお話を聞いた中でも、トヨタ本体そのものが、今、正社員が六万五千人、それに対して非正規、臨時が一万九千人と言われています。ですから、二割強が非正規となっております。これは当然事務方の数字も入っているでしょうけれども、生産現場では期間工、期間従業員というふうに言われていますが、それも一万人ということで、非常に高い水準になっているというのが今の状況だと思います。トヨタ本体に非正規がたくさん入っているという面とともに、トヨタの下請の企業に非正規が大変ふえているというのがあわせて実態としてあるんだと思います。
よく言われますように、自動車の完成品、完成車メーカーが手を加えるのは一割二割で、実際の製造コストの七割八割ぐらいは部品メーカーが担っているわけです。ですから、生産、製造現場のふぐあいということになりますと、完成車メーカーの組み立てのラインで起こると同時に、部品に起因をするようなふぐあいというのが実際に多いわけです。ですから、下請の仕事が品質に直結をしているということが自動車の場合には特に言えることだと思います。
そこで、今の下請の実態がどうなっているのかということについて、資料で二枚ほど新聞記事をつけさせていただきました。特に末端のレベルで違法行為が続いているという記事であります。二枚目に紹介しているのが新聞記事で、「トヨタ系が労災隠し」、トヨタの部品メーカーのトヨタ車体精工、そこにおいて偽装請負を背景にした労災隠しが行われていたという報道があります。愛知の労働局がトヨタ車体精工を是正指導も行っている。ここの高浜工場においては、派遣、請負などの非正規が半分以上だと言われております。
三枚目の新聞記事は、「トヨタ関連二十三社違法雇用」ということで、これはベトナム人の技能実習生についての記事ですけれども、ここでも、ベトナム人技能実習生に最低賃金や時間外の割り増し賃金を払わない、豊田の労働基準監督署から是正勧告が行われているという実態が挙げられています。
あと、新聞記事はつけておりませんけれども、当委員会でも私も取り上げました、トヨタのグループ企業のジェイテクトの子会社の光洋シーリングテクノにおいても偽装請負、違法派遣が行われていたという問題が現場の労働者から告発をされるという事態もありました。
ですから、紹介しましたように、外国人労働者を含みます非正規、派遣ですとか請負ですとか期間工など、この非正規雇用の拡大というのが下請の部品メーカーでも進んでおり、そこに違法行為もまかり通っている事態があります。
さきに紹介したトヨタ車体精工などでは、この偽装請負にかかわっていた請負会社が廃業するという時点で、その後、多くはトヨタ車体精工が直接雇用するような道につながったわけですけれども、しかし、告発をした労働者そのものは雇用から排除をされるような事態があるわけですから、こういう点については現場でも問題になっているわけで、厚生労働省としても是正に努めるべきであります。
さらに、中外と言われます、トヨタの車の防音材をつくっている会社があるんですけれども、これもトヨタの協力会社でつくる協豊会のメンバー企業でもあります。ここで、今よく問題になっている、外国人労働者の非正規雇用の実態が問題となっております。中外の三好工場というところで請負会社が入っていて、その請負会社が、外国人労働者、日系ブラジル人の方を雇用し、送っていたわけです。それ自身が偽装請負、違法派遣ということで現場としては告発がされているものです。
そういう中で、コストが厳しいものですから、個々の労働者を請負会社が雇用するのではなくて、一人一人の労働者を個人事業主扱いにするという形で、社会保険への加入などを逃れるという形での違法行為が行われていたということが現場で問題になっていました。健康保険も厚生年金も、あるいは労災、雇用保険、こういうものに加入させずに働かせていたという問題がありました。
こういう問題について、現場から不当労働行為の是正を求める声が上がっておりますけれども、厚生労働省としては、現状をどのように把握をしておられますか。
○中野政府参考人 御指摘の労使紛争につきましては、団体交渉を求めてきた者が個人請負であるということを理由に会社側が団体交渉に応じないことにつきまして、本年十月四日付で愛知県労働委員会に対しまして不当労働行為の救済命令の申し立てがありまして、現在審査中であると承知しております。
労働組合法上の労働者性等の本件申し立ての争点と考えられる点につきましては、愛知県労働委員会が今後適切に判断するものと考えております。
なお、一般論で申し上げれば、雇用契約によって使用される者のみならず、請負契約等によって労働に従事する者でありましても、使用従属の関係に立ち、その指揮監督のもとに労務に服し、その対価として報酬を受け、これによって生活する者と実態上判断されるものについては、労働組合法上の労働者に該当すると考えております。
○塩川委員 個人事業主という扱いで、請負契約だといいますけれども、実際には、その会社のもとで、タイムレコーダーで労働時間の管理なんかも行われていたと言われていますから、実態は労働者だということは明らかで、この点での是正、労働組合として認めて、団交、交渉に応ぜよというのは当然の要求でもあります。
あわせて、この一人請負という形をとった偽装請負というのが今広がっているということも指摘をされております。これは、東京労働局などでも、偽装請負の類型、パターン化をした一つの事例として、一人請負型の偽装請負の問題なども指摘をしています。
その点について少し紹介もしていただきながら、こういった一人請負型の偽装請負の是正に対しても全力を挙げるべきだと思いますが、厚生労働省としてお答えください。
○鳥生政府参考人 お答え申し上げます。
一人請負と称しておりましても、就労等の実態から労働者性が認められる場合には使用者にほかならないということでございまして、この場合において、当該使用者がさらに他の事業主から業務を請け負い、労働者を他の事業主の指揮命令を受けて業務に従事させるといったケースは、労働者派遣法違反のいわゆる偽装請負に該当するものと考えております。
偽装請負につきましては、その防止、解消を図るために一層取り組みを強化いたしまして、本年九月四日に、偽装請負の解消に向けた当面の取り組みについて都道府県労働局長へ通達を発出したところでございまして、引き続き監督指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
○塩川委員 監督指導をしっかりやっていただきたいと思っています。
当委員会の委員派遣で、ことしの七月にトヨタ自動車九州の宮田工場を見学させていただきました。社長初め幹部の方とも懇談をさせていただきましたけれども、工場そのものはレクサスのような高級車をつくっているラインでありまして、そこでもリコールがあったということもございました。その質疑の中で、会社そのものは七千人の従業員で、そのうち派遣、請負などの非正規が二千二百人を占めるということでしたから、三割の比重であります。
そこで、トヨタ自動車九州の社長さんとのやりとりでも、こちらから、正規と非正規の職場での配置はどうなっていますかという聞き方をしたんですね。そうしましたら、正社員と派遣と請負、この三者の役割分担を整理しているところだ、要するに適材適所ということなんでしょうけれども、その上で、完全請負については試行錯誤をしていると。つまり、実態は完全な業務請負になっていないということを半ば表明をされているような言い方をされていたわけです。
例えば、先ほど紹介した中外の三好工場の工場長なども、本当の請負を目指したいという言い方をしているように、実態が業務請負になっていない、実態が違法派遣、偽装請負となっているようなことをはしなくも認めざるを得ないようなお話が出ました。こういった点でも、無法の一掃に全力を挙げるべきであります。
そこで、大臣に伺いますが、今ここで紹介をしましたように、トヨタ本体そのものに派遣や請負と言われる、間接雇用という形ではほとんど入っていないというのは私も聞いてまいりました。しかし、その下請には、今急速に非正規雇用、派遣、請負を含めて拡大をしているというのが実態だと思います。ですから、非熟練の、非正規の労働者の職場における拡大というのがリコールなどの製品の品質にも深刻な影響を与えているんじゃないのか、このことが懸念をされるわけです。
これは、おととし参議院の調査会の場で、我が党の井上議員に対して、経済産業省の答弁として、派遣はものづくりの強さが出ないという言い方をしているわけですね。非正規、短期雇用という点ではものづくりの強さが出ないという答弁だったわけですけれども、大臣としても、派遣のような非正規雇用ではものづくりの強さが出ないんじゃないのか、私は率直にそう思いますけれども、大臣のお考えをお聞かせください。
○甘利国務大臣 アメリカも、調べてみますと、ものづくりの中核人材というのは長期の雇用者なんですね。日本も、技能の中核的人材あるいはその伝承者、ものづくり現場の中核人材はやはり長期雇用の中ではぐくまれていくのだろうと思います。
リコールと非正規の関係、トヨタと他の自動車メーカーの非正規の比率とリコールの比率というのを、ちょっと私、比較してみたことがないものですから、一概にそれが直結しているかどうかは即答できないのでありますが、ただ、正規、非正規も、それぞれ企業側が抱える、あるいは働き手の方がそういう形態で働きたいという、それぞれのニーズがあることは否定できないと思っております。
グローバル化が進む中で、競争が激化してくると、製品のライフサイクルが短くなる、あるいは生産変動の見通しがつきづらくなるというときに、ある意味、生産のフレキシビリティーを図っていくために、一時的に、ある時期、非正規雇用を活用していくということは、一定の合理性はあると思います。
ただ、私はほかでも申しておるのでありますけれども、ただ安直に低廉な労働力を求めるということだけで非正規を拡大するということに関しては、仮にそういう考え方があるとするならば、製造業の競争力強化あるいは働く人々の福祉の両面から適切ではないというふうに考えております。
やはり、ものづくりの強さはどこにあるか、それぞれ企業がしっかり検証していく中で長期雇用ということを考えてもらいたいというふうに思っています。
○塩川委員 低廉な労働力ということで非正規を求めるというのは問題だという点は、本当にそのとおりだと思います。
しかし、実態はどうかという問題があるわけですね。もちろん、フレキシビリティーというお話がありまして、現場では生産調整という形で一定の非正規の雇用というのはあるのかもしれませんけれども、しかし、今現場で、特に下請などで起こっているのは、いわば中核的な、ものづくりの中心になる、それも常用雇用に近いような形での労働者が非正規、請負形態になっているというところに問題があるんじゃないでしょうか。
ですから、ここは、例えば先ほども紹介した光洋シーリングテクノというような会社でも、オイルシールをつくっている工程では、大体生産現場の半分ぐらいは非正規の方なんですよ。こういう方が五年とか八年とか勤めているわけですね。ですから、どちらかというと、新しい新人の正社員の人よりも非正規の請負の人の方が技術が上で、その人に教えてもらって新人が学ぶなんという事態も起こっているわけで、これはやはり当然問題になってくるんじゃないのか。
先ほどのトヨタ自動車九州でも、役員の方との懇談の中で、社員の方のモチベーションはどうですかという質問をこちらの委員の方がされた際にも、正社員はもちろんこちらが責任を負うけれども、派遣会社あるいは請負会社の社員についてのモチベーションの維持が課題だということを言っておりました。
やはり、短期雇用という形というのがモチベーションの維持という点でも問題が起こり、その上でさらに、実態は短期雇用ではなくて、実質的には常用雇用を代替するような長期雇用に派遣、請負が使われているという事態というのは、ものづくりの強さが出ない大きな要因となるんじゃないでしょうか。改めて、いかがでしょうか。
○甘利国務大臣 いい物ができないような事態になれば、当然その会社は衰退をしていくわけであります。優秀な企業であればあるほど、そういう場面に遭遇したときには危機感を持って、人材の育成はどうあるべきか、競争力の源泉たるものづくりの現場の技術の維持はどうあるべきか、当然、企業経営者としては考えていく話だと思います。
このフレキシビリティーと中核的な人材の技術力の維持、伝承ということをどううまくコンビネーションをしていくか、経営判断が問われていくところだと思っております。
○塩川委員 コンビネーションといいましても、本来中核的であるべき人材を非正規にせざるを得ないような環境のもとにある。それというのは、元請、下請との関係の中で、単価のコストダウンの要請というのが実際には長期的な人材の確保を困難にするような事態を生んでいるのではないか。今みたいな違法行為がまかり通っているというのも、末端のところでそういう事態が広がっているという点で、やはりこの間の下請単価の切り下げのような事態というのがそういう原因につながっているんじゃないのか、このことが改めて問われているんだと思うんです。
その点で、大臣に御存じかどうかお聞きしたいんですけれども、トヨタに行きました際に、トヨタの中で元請が下請に対して下請通信簿というのをつくっているという話を聞きまして、つまり、トヨタ本体が一次の取引先に対してそういうものを示し、一次が二次、二次が三次、三次が四次という形のものがあるんですね。
そこでは、元請が取引先の評価表のようなものをつくって、経営、品質、納期、コスト、こういう四つぐらいの課題について目標を示して、それに対して半年とか一年で達成状況を評価して、それぞれランクづけをするというようなことがあって、問題があれば改善指導を入れるという形で、実際には、職場において一連の下請通信簿というのが行われている。トヨタの役員の方も、そういう言い方では表現しませんでしたけれども、期待値制度というような言い方で、この取引先の評価表の存在というのは否定をされませんでした。
こういうトヨタ通信簿と言われているようなものがあるということは、御存じでしょうか。
○甘利国務大臣 間もなく自動車生産世界一になるであろうトヨタは、あらゆる面で非常に厳しい経営方針であるということは承知をいたしております。しかし、今おっしゃった通信簿が具体的にどのようなものであるかということまでは承知をしておりません。
○塩川委員 資料の四枚目に示しましたが、自動車産業、同附属品製造業における規模別の賃金格差ですけれども、一九九〇年、千人以上を一〇〇とした場合に、それ以下の従業員数の賃金がどうなっていくのか。これを見ていただけばわかりますように、バブルのはじけるぐらいまでは若干格差が縮小していますけれども、その後は大きく拡大をして、二〇〇四年の数字を見ていただいてわかるように、その格差というのは大変大きくなっています。
その背景に、下にあります、これは中小企業庁の調査ですけれども、下請受注単価推移ということで、これは前年同期比の平均ですから、要するに、バブルのころは一〇〇・六とか一〇〇・〇があったにしても、それ以降は毎年のように単価が削減をされていく。これが現場における低賃金や労働者の労働条件の悪化、また結果としての違法行為につながるような事態につながっているんじゃないでしょうか。
ですから、トヨタが示しているような下請通信簿のようなやり方でコストダウンを継続的に要求するというのが、職場における、下請中小企業における違法行為をまかり通らせていく、同時に、非正規雇用を拡大させる、労働条件の悪化を生み出す原因になっていると率直に思いますけれども、大臣の御認識をぜひ伺います。
○甘利国務大臣 半導体に象徴されますように、新しいものが開発されて、世にデビューをしたときにつけた価格、それがずっと維持できるかというと、実はそうではないわけでありまして、技術革新、量産体制、あるいは高効率生産、そういうもの、初年度と五年後も全く変わらないということはない。下請中小企業、部品企業といえども生産性向上に最善の努力を果たすわけでありますから、そういう部分は見込んで発注価格に恐らくなるんだろうと思います。
ただ、法外なコストダウンについては、下請関連法を通じて私からも適正に対処するようにという要請、指示はいたしております。
○塩川委員 示したような違法行為が行われている、末端においてそういう実態にあるということをどう改善するのかといった際に、ふさわしくやはり、この労働者の労働条件の悪化を防ぐような、改善につながるような単価の改善というのが求められているわけであります。
資料の最後につけましたように、自動車産業全体の収益そのものも大きくふえているわけです。二〇〇五年で三兆円ですけれども、その経常利益のうち二兆円がトヨタですから、トヨタが圧倒的な大もうけを上げているわけです。ですから、そういった大もうけをやはり還元すべきだ、下請企業への還元、それがひいては下請の労働者にも還元をされる、そういうことこそ今は求められていると思います。
その点で、下請振興法の振興基準におきましても、対価の決定方法の改善ということで、取引対価においては合理的な算定方式に基づいて決定をする、そういう中には労務費も当然入るわけであります。この労務費には、当たり前のことですけれども、労働者の社会保険の加入、その費用も含まれての労務費だということで掲げられていると思いますが、確認させてもらえますか。
○石毛政府参考人 御指摘のとおり、労務費の中にはそういった社会保険的な費用も含まれているというふうに理解をしております。
○塩川委員 大臣、最後に伺いますけれども、今言った社会保険の加入を含めて、労務費が適正に単価に反映をされるといった指導が今求められているわけです。ですから、元請、トヨタが一次、一次が二次、二次が三次と下押しをするようなコストダウン要請の中で、労働者の社会保険の未加入がまかり通るような、違法行為がまかり通るような事態を是正するという立場で、この下請振興基準に基づいた指導というのを、頂点のトヨタを初めとしてきちんとやっていただきたい。その点をお答えください。
○甘利国務大臣 今の景気の回復を確かなものにするためには、高い利益を上げている大企業から、つまり企業から家計への所得の移転、そして下請中小企業に対する適正な利潤の配分、それが消費を喚起するということは、私は諮問会議等でも発言をしているところであります。タイムラグがあって、景気が回復する際には労働分配率が一時的に悪化するということも経済学者から言われているところでありますが、この景気を確かなものにするために、そして中小企業が引き続き優秀な部品、製品を供給していくためにも、適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。
○塩川委員 従業員給与全体はここ数年連続的に後退をしているわけであります。そういう点でも、必要な法制度などを活用してこの是正を図るという点で政府が全力を挙げるべきだということを申し述べて、質問を終わります。
○上田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時十二分散会
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