衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第4号 平成19年2月7日(水曜日)

平成十九年二月七日(水曜日)

    午前九時開議 

 



---〔中 略〕---



本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 予算案に関し少子化その他について


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○金子委員長 これより会議を開きます。

 予算案の審査に入ります。




---〔中 略〕---



○枝野委員 民主党の枝野でございます。



---〔以降、途中まで略〕---



○枝野委員 産みたくても産めない、いろいろな理由があります。最後に、産みたくても経済的な理由で産めないという問題を取り上げたいというふうに思います。特に、その典型例として、いわゆる偽装請負の話を取り上げたいと思います。厚生労働省、どこまでお答えいただけるんでしょうか。

 キヤノンという精密機器メーカーがあります。例えば、二〇〇五年十二月二十九日の朝日新聞、「派遣社員を長期雇用 キヤノン行政指導」というのがあります。朝日新聞二〇〇六年七月三十一日、「偽装請負 製造業で横行」、キヤノンでも、「労働局が調査強化」という報道があります。最近ですと、二〇〇六年十月十八日、キヤノンの工場で働く人材会社の派遣労働者が、違法な偽装請負の状態で働かされていたとして、正社員として雇用するよう申し入れた。さらには、団交を拒否したので請負労働者が救済の申し立てをした、これはことしの二月二日の報道であります。

 なぜキヤノンという個社名を出すかといいますと、ここの会長は公務員であるからであります。つまり、経済財政諮問会議の委員、メンバーとして、皆さんの政府のつくる経済政策、雇用政策について一定の権限を持っておられます。ですから、単なる一民間企業であるとは私は思いません。

 したがって、お答えをいただきたい。厚生労働省として、このキヤノンあるいはキヤノン関連会社における偽装請負あるいは派遣労働法の違反、こうした事態について、どの程度把握をして、どういう指導を行ってきているのか、お答えください。

○柳澤国務大臣 請負における発注者が請負事業主の労働者に対して指揮命令を行って業務の処理を管理し進行させるということは、明らかに労働者派遣法に抵触しておりまして、これは違法行為ということになるわけでございます。

 今先生は個別の企業の名前を出されまして、これに対する労働監督上の諸措置の状況についてお尋ねでございますけれども、これにつきましては、やはり個別の企業の案件であるということから、お答えを差し控えざるを得ないということを申し上げます。

○枝野委員 違法な行為なんですよね、いわゆる偽装請負は。違法な行為をした企業で、すべてのことを公表するかどうかは、いろいろな議論があるでしょう。ですから、今新聞記事を読むときに、キヤノンや何々と、ほかの会社の名前は挙げませんでした。それは、キヤノンは、繰り返します、トップが皆さんの政府の一員なんです。皆さんの政府の一員として、皆さんの雇用、経済政策について影響力を持って発言をしておられるんです。

 それで、お認めにならないんですが、新聞記事が一〇〇%正しいかどうかわかりませんが、これだけ繰り返し、キヤノンにおける偽装請負や派遣法違反が新聞で報道されているという事実があります。それが事実であるのかどうかぐらいはお答えをいただきたいというふうに思いますし、その上で、こうした報道が事実で、キヤノンにおいて請負に絡んで違法な行為が行われているとすれば、この御手洗何がしという人は、皆さんの会議でとんでもないことをおっしゃっておられます。「法律を遵守するのは当然だが、これでは請負法制に無理があり過ぎる。」今の請負法制、偽装請負などに関連して、今の請負法制には無理があり過ぎる。いいですか。自分の会社は、無理があり過ぎるけれども一生懸命法律を守ってちゃんとやっています、だけれども、これじゃ無理があり過ぎるから何とかしないといけませんねというならば、これは一つの考え方、現場からの声としての考え方です。

 自分の足元で違法な行為をやっておいて、それで、そこのトップとして、うちでやっている違法な行為が合法になるように何とかしてくださいよだなんていうことを堂々とおっしゃっている。私はこれはむちゃくちゃだというふうに思うんですが、総理、そう思いませんか。

○安倍内閣総理大臣 御手洗氏は、法律を遵守するのは当たり前のことであるということも諮問会議において発言をしておられるわけでありまして、我々としては、個人としての識見をぜひ発揮してもらいたいということで諮問会議の議員に任命をしているわけであります。

○枝野委員 だったら、自分がトップを務めている会社で違法な行為がないようにまずするのが責任じゃないですか。その上で、いや、うちの会社はちゃんと守らせているけれども、これで守っている状況ではとても実態は回りません、だから何とかしましょうよ、こう提言するなら百歩譲って一つの見識だと思います。

 しかし、自分のところでも違法はやっておいて、それを放置しておいて、だけれども、いや、法は守るべきだと思いますが、今の法制度はおかしいと思いますと。そういうのは筋が通らないと思いませんか。総理は何か日本の伝統文化がお好きのようでございますが、まさに恥の文化に反する行為じゃないかと私は思うんですが、総理、違いますか。

○安倍内閣総理大臣 当然、政府としては、偽装請負など法令違反に対しては徹底して監督指導を行っていく、これは当たり前のことでありますし、繰り返しになりますが、諮問会議の御手洗議員も、当然法令を遵守していく、これは当たり前のことである、このように発言をしておられるわけでございます。

 現在、経済がグローバル化する中において、経営者としての見識、そしてまたさらに国内においても雇用を確保しておられる、またその観点も常に忘れずに努力をしておられる、そういうことも含めて我々は議員に任命をしているということでございまして、今後とも、議員として見識を発揮していただきまして、経済財政運営においてエンジン役を果たしてもらいたい、このように考えております。

○枝野委員 だから、では、キヤノンは本当に守っているんですか。公表してくださいよ。キヤノンに対して、いつどういうふうに、どういう申し立てがあったりとか、どういう監督が行われて、どういうふうに改善されたのか。全部なんて言いませんよ。経済財政諮問会議でまさにいろいろな指摘をされている、自分の会社でやっているんじゃないかという、違法請負をやっていると指摘されているキヤノンについてだけでいいですから。

 現に、ことしの二月になってもキヤノンの請負労働者が、偽装請負だ、だから団体交渉しろと言っても応じない、それ自体が違法だといって労働委員会に申し立てしているんですよ。現に現在進行形なんですよ。昔あったけれども、悔い改めて今はやっていませんじゃないんですよ。

 だから、まずは実態、厚生労働省、明らかにしてください。これは、まさに今の政権の経済財政運営の基本にかかわる問題ですので、まず、このキヤノンにかかわる、厚生労働省として把握している偽装請負や派遣法に絡む違法な行為、監督事例、申し立て事例、全部資料として公表してください。

 それから、欠席裁判は不公平だと思いますので、この予算委員会に、委員長、御手洗何がし、経済財政諮問会議の委員、参考人として来ていただいて、御本人の釈明を聞きたいと思いますので、ぜひお計らいをください。

○金子委員長 ただいまのお申し出の件は、理事会で協議をさせていただきます。

○枝野委員 この会社は、派遣とか請負、つまり正社員以外の比率の非常に高い企業であるということが言われている。その上で、経済財政諮問会議で先ほどの発言に続けてこんなことを言っているんですね。「今の派遣法のように三年経ったら正社員にしろと硬直的にすると、たちまち日本のコストは硬直的になってしまう。それは空洞化に結びつくことになる。」大体いつもこういう理屈を言うんですね。

 確かに、国際的な輸出産業は、コストの競争をしているわけですから、それはコストを抑えなきゃいけないですけれども、私は、日本の伝統的経営者というのは、会社が苦しい、コストを下げなきゃならないときは、まず社長が自分の給料を削って、自分が我慢をして、それでも足りないときに、従業員の皆さん、我慢をしてください、これが日本の企業経営者の伝統的な価値観だったというふうに思っています。今でも、多くの日本の中小零細企業の経営者の皆さんはこういう経営をされている。

 実際にきょうはそこまで示しませんが、統計数字で出てきていますよ。大企業においては、役員賞与がぐうっと伸びているけれども従業員給与は伸びていない。中小零細企業については、従業員の給与の所得の下がり方以上に役員の所得の下がり方が大きい。

 これが日本の伝統的経営者で、国際競争のコストというんだったら、まず経営者のところが我慢をして頑張って、従業員の皆さん、それでも足りないんだから我慢してください、これが物事の筋だと思うんですが、今の経済財政諮問会議で、「今の派遣法のように三年経ったら正社員にしろ」、今の派遣の実態、請負の実態、こういう実態、年収二百万円以下、たくさんいる。社会保険なども事実上空洞化をしている。いつ首になるかわからない。家庭を持って子供を産め、冗談じゃない、どこの世界の話だという人がたくさんいる状況を放置して、そうじゃないとやっていけませんですよと言っているキヤノンの財務諸表を見ると、例えば、百二期、平成十五年の株主総会で決議されている取締役賞与金一億三千九百万、それが翌年には一億八千九百万、さらにその翌年には一億九千九百万、そして、十八年三月三十日株主総会決議では二億二千二百万。取締役、役員賞与だけはぐんぐん伸ばしているんですよ。

 だけれども、コストが大変だから、請負で、派遣で、いつでも首が切れて、不安定で、所得も生活保護以下ぐらいの収入で仕方がないですね、こういう人が経済財政諮問会議の委員として、総理、ふさわしいと思っているんですね。

○安倍内閣総理大臣 先ほど答弁をいたしましたが、グローバル化が進む中において、競争力を持っていかなければ、競争を勝ち抜いていくこともできないわけであります。

 その中で、競争力を持ちながら、グローバルな経済の中で業績を伸ばしているのは事実であります。そして、それと同時に、やはり日本の国内においても雇用を確保しなければならない、なるべく日本にも工場等生産施設をつくっていこうという考え方も持っておられるわけであります。そして、その中でさまざまな努力をしておられるわけでございますが、しかし、と同時に、いろいろと委員は御指摘をなされたわけでありますが、雇用を確保し、そしてまた、日本において税金もしっかりと払っておられるわけでございます。

 また、国際社会の中において活躍をしている個人の見識に着目をして、我々は、その見識を生かしてもらいたい、今後、成長戦略を着実に実行していく上においても、その見識を私は生かしていただきたい、このように思っております。

○枝野委員 私は、国際競争の中でコストの削減はしていかないと競争に負けていくケースがあり得る、そのことはよく認めていますよ。でも、そのときに、まさに企業経営者のモラル、まさに道徳、その一番として、厳しいときにはまず経営者がみずから身を削って、それで、それでもどうしても足りないとき、従業員の皆さん、申しわけないんだけれども給料を下げますよとか、リストラしますよとか、これで日本の戦後経営、日本の戦後経済というのは私は伸びてきたと思っています。

 これこそが日本の伝統的よさだったんじゃないですか、日本経済の強さだったんじゃないですか。だから、企業のために、会社のために一生懸命みんな頑張ったんですよ。いつでも首にできます、便利に使えます、それで本当に金がないならいいですよ。自分たちのはがんがん上げているんですよ、この御手洗さんは、自分たちの賞与は。

 この役員賞与の分を、従業員とか請負の人を正社員に回すためには少しかもしれない、でも、自分たちのところをふやす金があったら、まず、請負の人たち、派遣の人たち、せめて偽装を解消する、その上で、少しでも正社員化していって、安心して家庭を持ち、子供を生み育てられるようにする、そっちに回していくような企業経営者を見識ある人だというんじゃないですか。違いますか。

○安倍内閣総理大臣 先ほど、偽装について、今後もやり続けるということでは全くないわけでありまして、それについては、御手洗氏もおっしゃっているように、法令違反はあってはならない、こういうことでありますし、我々はしっかりと法令違反を徹底して取り締まっていく、これは当たり前のことではないか、このように思います。

 そして、その中で、我々は経済成長を目指していかなければこの活力を維持できない、そして雇用も確保することができないわけであります。そして、国民の生活を向上させていく上においても経済成長が必要である、これは当然のことであると思います。その中で、やはりグローバルな経済の中でいかに競争力を持っていくかということではないかと思います。その中でまさに勝ち抜いている企業がキヤノンであり、その経営手腕にも我々着目をしているわけでありますし、また、国際的な視野にも着目をしているわけであります。

 そして、先ほど申し上げましたように、国内においても何とか雇用を確保しようという努力をしておられるのも事実であります。そういうことを全部横に置いて、一部だけを見て、全く資格がないと言うことはおかしいのではないか、このように思うわけであります。いかにその会社が成長をしていく、発展をしていくというインセンティブをどう持っていこうかというのはそれぞれの経営者の判断ではないか、このように思います。

○枝野委員 ですから、その偽装がどの程度どうあってどう改善されているのか、ちゃんと厚生労働省、出してくださいとまずは申し上げているんですよ。それで、本人を呼んでどうなっているのかちゃんと聞かせてください、そういうことを申し上げているんですよ。ですから、それは必ずやっていただきたい。ことし、この国会で、予算委員会で経済運営についてこれからやっていきたいと思いますが、まさにここが私たちと皆さんとの決定的な違いだと思います。

 確かに、企業は経営をよくして国際競争力を持って、そして稼いでくれる、これは大事なことです。私たちも、それは必要なことだ、その足を引っ張るつもりは全くありません。しかし、昔、まさに戦後レジームのときは、ほうっておいても、国際競争力を持った企業が出てきて稼いでくれたら、それが世の中全体に行き渡るような社会構造だったんです。ところが、今は、ほうっておいたら、国際競争力を持って稼いでも、株を持っている人とか経営者とか一部の人たちと海外にだけどんどん出ていって、そして国際競争力を持つためには、雇用の数をふやしたって、生活保護以下で家族を持つ、あるいは子供を生み育てる、とてもこんな収入で、あしたはどうなるかわからない、そんな状況の人たちをどんどんどんどんふやしていくということになるんです。

 だから、今の社会状況においては、もちろん競争力を持った企業はもっと競争力をつけてもらうことも大事だけれども、それと同じぐらいのウエートで、その稼いだ金が国内にちゃんと循環するためにどうするか、こちらのことに同じぐらいのウエートをかけないと、国は何か立派だけれども、まさに個々の生活はどんどんだめになっていく、それが安倍内閣の姿勢である。これからそのことについて十分な議論をさせていただきたいということを申し上げて、あとの時間帯は同僚議員に譲りたいと思います。

 ありがとうございました。



---<以下省略>---




 

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