衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第4号 平成19年2月7日(水曜日)

平成十九年二月七日(水曜日)

    午前九時開議 

 



---〔中略〕---



○川内委員 民主党の川内博史でございます。



---〔以降、途中まで略〕---



○川内委員 きょうは柳澤大臣にちょっと集中的にお聞きをすることになってしまうわけですけれども、柳澤大臣は、一連の発言以外にも、大変昨今話題になりましたホワイトカラーエグゼンプション法案についても、最後まで、提出したい、あるいは提出すべきであるというようなことを繰り返し御発言されていらっしゃいました。
 このホワイトカラーエグゼンプションについて、柳澤大臣の諮問機関であります労働政策審議会の労働条件分科会の使用者側委員のある方が、ことし一月のある週刊誌で物すごい発言をしていらっしゃいます。昨日、質問レクをさせていただくときに、大臣にあらかじめこの記事を読んでおいていただけますかということで御担当の方にお渡しをさせていただいて、読んでいただいているものという理解で質問をさせていただきます。

 この方はこのようなことをおっしゃっていらっしゃいます。「自己管理しつつ自分で能力開発をしていけないような人たちは、ハッキリ言って、それなりの処遇でしかない。格差社会と言いますけれど、格差なんて当然出てきます。仕方がないでしょう、能力には差があるのだから。」「下流社会だの何だの、言葉遊びですよ。そう言って甘やかすのはいかがなものか、ということです。」さらに、「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います。」「ハッキリ言って、何でもお上に決めてもらわないとできないという、今までの風土がおかしい。たとえば、祝日もいっさいなくすべきです。二十四時間三百六十五日を自主的に判断して、まとめて働いたらまとめて休むというように、個別に決めていく社会に変わっていくべきだと思いますよ。」「労働基準監督署も不要です。個別企業の労使が契約で決めていけばいい」、このようなことを、労働政策審議会の労働条件分科会、ホワイトカラーエグゼンプションを議論していた使用者側の委員の方が雑誌のインタビューに答えておっしゃっていらっしゃるわけですね。

 この考え方とホワイトカラーエグゼンプションの導入を、この方は当然ホワイトカラーエグゼンプション制度の導入推進派なんですね。推進派のこの方の見解と柳澤大臣の見解は一緒なんですか。あるいは安倍総理も、ホワイトカラーエグゼンプション制度を導入すれば少子化対策に資するんだというようなことを記者会見などでおっしゃっていらっしゃるやに私は新聞の記事で読んでおりますが、同じような御見解をお持ちなのかということをお尋ねさせていただきたいと思います。

○柳澤国務大臣 私、今、川内委員が御指摘になられた雑誌の記事は、読んだとまでは、見ました。ただ、真っ黒でございますからそう克明に読んだわけじゃないんですが、この雑誌の記事について論評するということは差し控えたい、このように思います。

 ただ、そこで述べられていること、記されていることについておまえどう思うかといえば、それはもう全く私どもの考え方ではございません。

○川内委員 雑誌の記事については論評しないということでございますから、では、労働政策審議会労働条件分科会の議事録をコピーしてまいりましたので、それを読み上げさせていただきます。

 労働条件分科会の議事録がまだ昨年の九月の分までしかアップされていないので、早いところアップしていただくようにお願いをしておきたいというふうに思いますが、これは、このインタビューに答えていらっしゃる方の御意見です。

 「過労死まで行くというのは、やはり本人の自己管理ですよ。」「はっきり言って、労働者を甘やかしすぎだと思います。」このようなことをおっしゃって、議事録にこれははっきりと出ています。過労死は自己管理、要するに自己責任だとおっしゃっていらっしゃるわけですが、この方は、労働政策審議会の労働条件分科会の委員として発言をするときは特別職の国家公務員ですよね。

○柳澤国務大臣 これは、単純な諮問機関の委員でございますので、公務員であるとか特別職の公務員であるとかということはないと思います。――私は、必ずしも、今申し上げましたように、非常勤の一般職の公務員、こういうこと。

○川内委員 日本国憲法の九十九条に公務員の憲法遵守擁護義務というのがございます。日本国憲法二十七条を受けて労働基準法は制定をされ、日本国憲法二十八条で労働基本権というものが定められております。この方のこういう御発言というのは、僕は、柳澤大臣の一連の発言は辞任に値すると思います。辞任しなければならぬと思いますよ。しかし、経済財政諮問会議で柳澤大臣が、労働者というのは経営者よりも弱い立場にあるのだから、だから労働法制があるんだということを御発言されていらっしゃることに関しては評価します。そういう柳澤大臣が諮問する機関に、日本国憲法を無視して御発言をされる方が委員としていらっしゃる、しかもホワイトカラーエグゼンプションを推進されていらっしゃるということに関して、問題があるというふうにはお思いになられませんか。

○柳澤国務大臣 私は、その発言自体が、もし執行者であれば大変な問題だと思います。ただ、諮問委員ということでございますので、余り御発言についてこれは憲法との関係でいかがかというような議論をわきでいたしますと、これはまた諮問機関の機能というものに対して果たしていい影響があるだろうかということについて私はかなり疑問を持ちますので、諮問委員の発言というのを余り縛りたくないという気持ちがございます。

○川内委員 いや、私は、余りの暴論なので問題を提起しているわけです。基本的に私は発言は自由だと思いますよ。どんな発言であろうと、自由の国においてはその発言は保障をされなければならないと思います。しかし、ここは居酒屋じゃないんですからね。あるいは床屋さんでもない。労働政策審議会の労働条件分科会という、国の大事な政策を議論する場なんですね。その場でこのような暴論をおっしゃる方が、何を言っても自由なのよと、よとつけたことで女性だということがわかってしまったかもしれませんが、それを、いや問題ないのではないかとおっしゃるのは、私はちょっと違うのではないかというふうに思います。

 なぜかならば、二〇〇〇年の最高裁の判例によれば、過労が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務が使用者側にはあるということを最高裁は判示しているわけですね。経営側が職場の環境を整えなければならないということを言っている。たとえそれは取締役であっても、過労死の責任が会社にあるんだということを判示している判決もあるわけですね。

 そういう中で、過労死は自己管理の問題だ、労働者は甘え過ぎだと。このインタビューの最後に、何でこんなくだらないことを一々議論しなければならないのか、ホワイトカラーエグゼンプションの導入は当然だ、何でそんなことに一々目くじらを立てるんだということをこの方はおっしゃっていらっしゃる。私は、議論の公正さを欠くのではないかというふうに思います。



---〔以降、途中まで略〕---



○ 川内委員 いや、本当に私の質問などはもう早く終われとお思いになられているかもしれませんが、もうちょっとで終わりますので、もうしばらくお聞きをいただきたいというふうに思います。

 要するに、私がなぜ働く側の思いというか、働く側の要望なり考え方というのが大事だと申し上げるかというと、先ほど申し上げたキヤノンの偽装請負、これを御手洗さんは、経済財政諮問会議の中で、労働者派遣法が悪いんだ、法を改正すべきだということを御発言していらっしゃる。

 さらに、昨年十一月三十日の第二十七回経済財政諮問会議で甘利経済産業大臣が、さらにそれを裏づけるかのごとくに、「現在の派遣・請負制度は製造現場の実態と乖離しており、製造業の国内回帰に水を差しかねない。発注者から請負労働者に対する指揮命令については、以前も話が出たが、製造現場の実態を十分に踏まえた上で、安全を確保する責任を発注者が負うことを前提に検討を行うべきではないか。」という御発言をされていらっしゃいます。

 派遣法にのっとってきちんと派遣していれば、現場で指示、命令できるわけです。現場で指示、命令できるわけです、派遣法にのっとっていれば。それを、長期雇用にしたくないから、請負で偽装請負をするからおかしな話になるのであって、この甘利大臣の発言は、私はちょっと適切さを欠く発言ではないかというふうに思います。

 このような形で、やはり使用者側というのは力が強いですから、法律を変える力を持っているわけですよね。そういう方たちの意見に余り流されてしまうと、かえって国全体の公正さを欠くことになるのではないかというふうに思うんですが、ちょっと甘利大臣の御見解を聞きたいと思います。

○甘利国務大臣 経済財政諮問会議の議事録は公開されていますから、お読みになった上でのお話だと思います。

 お読みになっていらっしゃらない方もいらっしゃると思いますが、これは、前段にキヤノンの御手洗さんからどういう問題提起があったかといいますと、派遣は、指揮監督権がこちらにあるから問題はないと。請負のことについておっしゃっていますね。請負は受け入れた先で指揮命令してはいけないとされている、これにより仕事を教えることも禁止されていると。例えば何か突発的な事故があったり難しいことがあったりすると、その現場で雇っている方が教えるというのは当たり前で自然の流れだけれども、今の勧告ではできないということをおっしゃったわけなんです。

 それで、私はどう申し上げたかといいますと、そのさっきの発言の前段で、フレキシビリティーを確保する、つまり、生産が乱高下する部分について正規社員で対応できない部分については、派遣、請負を活用するということは国際競争力を担保する上でも合理性がある、ただし、安直に低廉な労働力を求めることのみを動機とする派遣や請負の拡大は不適当と思えると私は言っているのであります。

 その後段は、先生がおっしゃったとおり言っておりますが、乖離というのは、つまり、この前の段に、何か突発的な事故があったり難しいことがあったりすると、それすらできない。しかし、安全管理の施設整備については義務を負うんです。ところが、働き方については、これは請負の話ですけれども、先方が管理責任を負っていますから、そうすると、こうした方が安全であると言うことすらできないということであれば、私は危険ではないかという思いで言っております。

 それから、派遣については、つまりフレキシビリティーとモチベーション、これを両方維持することが大事なんです。ところが、現場で派遣の人に監督者がいろいろモチベーションを上げようとしても、いつまでここにいるかわからないというのでは上がりません。そういう意味で、派遣の方は、乖離というよりも課題がある。片や課題があって、片や、現場で安全管理その他でやろうとしてもシュリンクしてしまう。これは問題があるのじゃないかと。

 その後言っているのは、ただし、いいとこ取りはだめですよとくぎを刺しているつもりです。つまり、指揮監督権だけをもらって責任は残ったままよというのじゃなくて、一緒に責任もついてきますよと。だから、指揮監督権をこっちに持ってくるんだったら、それに関連する責任も一緒に来ますからねということでくぎを刺しているつもりであります。

○川内委員 今、随分丁寧に詳しく御発言についての御説明をいただいたわけでございますが、一言で申し上げれば、要するに、派遣にすれば何も問題ないわけで、それを請負という形で安直にやろうとするから偽装請負だという指摘につながっていくわけで、私は、都合の悪いことは法律を変えればいいのだ、あるいは法律を変えるんだというような経済界の要望に、そんなに政府が簡単に乗ることはないというふうに信じておりますけれども、ぜひぜひこの経済財政諮問会議での議論というものには気をつけていただきたいというふうに思います。



---<以下省略>---




 

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