○北側委員 それで、ちょっとさっき少し申し上げましたが、非正規の社員とか非正規の労働とか、また非正社員とか、こういう言い方というのは、私はもうやめた方がいいんじゃないのかなと実は思っているんですよ。何か、派遣労働の方やパートの方は、自分は非正社員かということでしょう。
麻生大臣、正社員というのは英語で何と言うんですかね。
○麻生国務大臣 何と言うでしょうね。オフィシャルスピーキングというんでしょう、何と言うんだか、エンプロイーと言うので、普通はエンプロイーになっているはずですけれども、それがオフィシャルエンプロイーかアンオフィシャルなのかという、そういうふうに分けているでしょうかね。ちょっとわかりません。
○北側委員 そうなんですよ。そんなオフィシャルエンプロイーなんて言わないんですよね、言わないんですよ。正社員という言葉は、これはどうも英語にはない。ほかの国でもどうもないようなんです。非常に日本的な言葉なんですよ、正社員、非正社員というのは。
なぜこういう正社員という言葉、概念が出てきたのか、もう我々は当たり前のように使っているんですけれども、なぜ出てきたのかというと、そこはやはり伝統的な日本型雇用のもとでこの言葉が生まれていると思うんですよ。新卒で一括採用する、年功序列で上げていく、そして終身雇用、こういう日本型の伝統的な雇用形態のもとでこの観念があるんじゃないのかなと私は思っているんですね。
それで、そういうのが普通の働き方でというのがまずあって、そういう観念が、そういうのが普通の働き方なんだ、典型的な働き方なんだというのがあって、そして、一時的に、臨時的に雇うのが非正規なんだと。多くの労働者は大半が正規で、ただ企業の都合、働く方の都合で一時的、臨時的な労働者が非正規、非正社員、多分こういう観念で我々は来たんだと思うんですね。
ところが、ちょっとそれがもうそういう時代と違ってきているんじゃないのかと私は思うんです。そういう観念にあるから、正社員には賃金をきちんと払い、社会保険に加入させ、福利厚生もやり、そして、先ほどからおっしゃっているように、能力開発、教育訓練も企業内でやる、これが正社員だ、こういうイメージなんですね。そのかわり、正社員には長時間労働もありますよ、転勤もありますよと。もっと言うと、家庭、地域よりも会社ですよ、こういう価値観にどうしてもなってくるわけですね。一方、非正社員というのはあくまで一時的な企業内の雇用調整だから、そのような正社員に対するような待遇というのは十分にはしていかないんだ、これがこれまでの日本型雇用の形態だったと思うんです。そこで、正社員、非正社員というような言葉が出てきているんですね。
厚生労働大臣、私、この言葉はもうやめた方が、日本型雇用形態そのものが今崩れつつあるわけですよ。その前提となっているのは、若い人たちが多い、経済はどんどん成長する、こういう中で初めて成り立ち得るこの雇用形態が今崩れ始めているわけですね。そして一方で、多様な雇用形態が増加してきている、先ほど申し上げたように。この多様な雇用形態というのは、企業にとっても、非正規の労働者の方々が、パートの方や派遣の方が、単に一時的な雇用ではなくて、企業を支えていく貴重な戦力として今はもう位置づけられてきているような、そういう時代になってきているんではないのかと。
そう考えると、雇用の形態いかんにかかわらず、仕事の内容に応じて公平な待遇、賃金であれ社会保険であれ、を図っていくというのがこれからのやはり時代の大きな流れなんだということを私はしっかりと認識していく必要があるのではないか。そのためにも、正社員、非正社員の言葉なんかもうやめてしまえというふうに私は思っているわけでございます。
正規と非正規の垣根を、今はまだあります、あるから正規の社員に移行せないけないとなるんですが、もちろんそれも現時点ではそういうことが大事だと思うんですが、これからの方向性としては、正規と非正規との垣根をやはり低くしていく努力を政府もしっかりと取り組まないといけないんではないのかと私は思っているところでございます。
また、先ほどのワーク・ライフ・バランスの話をとりましても、正規雇用でも、これから本当に、家庭生活、地域生活、趣味等々、多様な生活を送れるようにしていかないといけないわけでございまして、正社員のあり方もやはり変えていかないといけない。
というようなことを考えますと、正規、非正規の区別そのものの意味をやはり小さくしていく努力を我々はしないといけないんじゃないか。正規、非正規を通じた、正規、非正規にかかわらず、労働者の方々が安心して働けるようなルールの確立をしていくことが今重要なのではないかというふうに私は問題意識を持っているんです。
総理、厚生労働大臣、もし御意見があったら。
○安倍内閣総理大臣 まさに私どもが進めようとしているのが、ただいま北側委員が御指摘になったように、言葉としては正規、非正規でありますが、正規、非正規いかんにかかわらず、安心して、納得して働いていくことができるような環境をつくっていく。正規であれば安心して不安がない、非正規であれば不安で、どうも将来不安定だということではなくて、正規、非正規いかんにかかわらず、やはり安心して、納得して、仕事に生きがいを持って働いていくことができる環境整備をしていかなければならない、私も、全くそのとおりであろう、このように思うわけであります。
その中で、先ほど申し上げましたパートタイム労働法の改正、また最低賃金制度の改定、そしてまた労働契約全般に関するルールを明確化するための新法の制定など、まさに正規、非正規にかかわらず、安心して働ける環境を整備してまいる考えでございます。
○北側委員 今、厚生労働大臣に答えていただきますが、従来は、日本的な、伝統的な雇用形態のもとで正社員が多かった、大半だった、それが普通であった。その人たちの立場をしっかりと守っていくのが労働組合だったわけですよ。ところが、先ほどの図のように非正規の方がどんどんふえてきた。最近は労働組合の方々もそちらの方を意識していらっしゃいますけれども、やはり正規の社員の人たちの立場を守るのが労働組合ですね。
そうでない人たちがどんどん今ふえてきている。多様な働き方がふえてきている。そういう方々の働きやすい環境とか、将来に本当に不安を持たないような、社会保険の加入の問題も含めて、そういうことをやっていかないといけない、これはやはり政府がしっかりやっていかないといけないと私は思うんです。どうしても、労働組合の皆さんは、どちらかというと正社員が組合員の多くの方ですから、その方々の立場を守ろうとするわけですから。
だから、そういう意味では、非正規の立場の方々の働く環境をしっかり改善していく。また、そこにいろいろな規定もあります。それがちゃんと守られているのかどうかしっかり監視をする、そういうことは非常に大事だと思うんですね。
先ほどの正規、非正規の区別、こういう名前をやめましょうと私は申し上げました。正社員とか非正社員、少なくとも厚生労働省も使うのをやめたらどうですか、厚生労働大臣。
○柳澤国務大臣 非常に興味深い御議論だというふうに思います。
まず第一に、労働力の減少は、これはもう避けられないわけですが、それを補うために、二〇三〇年ころまでは、とにかく、少し年をとった男性の人たち、またM字型カーブで、通常だったら、今の現状だったら労働力率がおっこってしまう、そういう年齢層の女性の方々に、労働力として現実に働いてもらわなきゃならない、そういうことが実態としてあるわけです。
そういうことを考えますと、では、その人たちは、今のいわゆる正社員のよ
うな形でそういう労働の形態が期待できるかといったら、期待できないだろうと思います。ここはかなり弾力的にいろいろな形の労働形態を選んでいただくということはもう必至だろう、必要だろう、こういうふうに思うんです。
ただ、さはさりながらというところを、大変恐縮ですが、我々は現実に着目して、正規、非正規を分け、そして、正規の人たちにはどういう問題があるんだ。長時間労働が問題ではないか。非正規の人たちにはどういう問題があるんだ。正規に行きたい、正社員になりたいという人たちの希望をかなえられなくていいのか。あるいは、非正社員を選ぶんだけれども、それはえらく労働条件が違う。これはやはり同じような、均衡のとれた待遇をかち取っていくべきではないか。
こういうような、それぞれに、今、労働の形態によって、必要な手だて、施策の手だてというものが違うわけでございまして、今のところは、しばらく私どもは、名前はともかくとして、そういうカテゴリーというか範囲を決めて、それぞれの労働形態に応じた必要な施策を打ってまいりたい、このように考えております。
○北側委員 私が言いたいのは、そっちの方向に向かって行かないよということ、そこにしっかり定めた上で、当然今の現状があるわけですから、いろいろな対策が出てくるんだろうというふうに思います。
きょうは、もう時間がないので、派遣労働の問題について本当はやりたかったんですよ。派遣労働の現場では、いろいろな問題が今起こっております。
もともと派遣労働というのは、働いている場所の企業との雇用契約関係ないんですね。派遣先とは雇用契約ありません。だから、もともと不安定な地位、地位の不安定さをはらんでいるんです、もともと。さらに、現場では違法行為、脱法行為が指摘をされている事例も目につきます。例えば、派遣先の社員の恒常的な代替になっている事例だとか、違法な事前面接がなされているだとか、それから、いわゆる偽装請負の問題だとか、さらには、派遣はまず労働者派遣契約というのを交わすんですね、派遣先と派遣元の企業の間で。そこでの労働者派遣の対価というのが本当に適正なのか。これは、労働力を供給する、ある意味では労働力の売買になるわけですよね。その対価、それが本当に適正なのか。さらには、派遣元と派遣労働者との間の労働契約が交わされるわけですが、そこでの賃金が、派遣労働者に支払われる賃金が本当に適正なものになっているのかどうか、こうした問題もいろいろある。
御承知のとおり、派遣労働については、一連の規制緩和をずっとやってきたんですね。もともとは職安法で禁止されていたものを、ずっと緩和してきている流れの中で、私は、ちょっと、派遣労働を否定しているわけではありません、派遣労働という働き方は大事だと思います。しかし、この規制緩和の流れの中でさまざま問題が指摘されているわけですから、ぜひ派遣労働の実態について検証をしていただきたい、特にこの労働現場について。そこをちょっと意識していただきたい。これはお願いとして聞いていただければ結構でございます。
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