衆議院・参議院会議録情報 抜粋 |
衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。 |
第14号 平成19年2月23日(金曜日) 平成十九年二月二十三日(金曜日) 午前九時開議 ・・・【中略】・・・ 本日の会議に付した案件 政府参考人出頭要求に関する件 平成十九年度一般会計予算 平成十九年度特別会計予算 平成十九年度政府関係機関予算 ・・・【中略】・・・ ○原口委員 民主党の原口でございます。 ・・・【以降、途中まで略】・・・ 私は、きょう、労働の問題を少し長い時間軸あるいは広い空間軸で論じてみたいと思うんですが、ILO憲章となったベルサイユ条約、国際労働条項の一部にはこう書かれています。多くの人々に不正義、困苦、貧困をもたらす労働の条件が存在し、それによって引き起こされる紛争がしばしば世界の平和と調和を危うくする。多くの人々に不正義、困苦、貧困をもたらす労働の条件が存在し、これは、いわゆる第一次世界大戦の後にベルサイユに集まった人たちが、平和に対する脅威とは何かということを論じながら書いたものであります。 つまり、雇用、労働の問題というのは、人間の尊厳の問題であり、安全の問題であり、平和そのものの問題である、私はこのように考えるのですが、総理の御認識を伺いたいと思います。 ○安倍内閣総理大臣 雇用があって初めて人間の生活が成り立つわけであります。また、安定した雇用によって私たちは安心して日々を送ることができるわけであって、それは社会の安定にもつながっていくわけでありまして、ただいま委員の御指摘のとおりではないかと思います。 ○原口委員 共通の認識ができたと思います。 フィラデルフィア宣言においても、「労働は、商品ではない。」というふうに高々と掲げられています。なぜ、労働の問題は人間の尊厳であるのか、平和の問題であるのか。 先ほどまで同僚議員から、派遣労働や非正規雇用の問題、いろいろお話がありました。近年、安全の現場においても非正規の方々がおふえになって、そして、その方々が原因というわけではないのですけれども、爆発事故が起きてみたり、先日は、あれはカラオケ店でしたか、アルバイトの店員さんが失火をして、そして多くの命が失われるということになりました。 私は、雇用というものは、まさにすべての政治家、政治に携わる者が保障しなければいけない根本的な人間の尊厳、権利である、このように考えています。そして、あなたの不安は私の平和を脅かすという言葉があります。アマルティア・セン博士の、たしか「人間の安全保障」の中に出てきた言葉だったと思いますが、あなたの不安は私の平和を脅かす。私は総理にぜひ御認識いただきたいのは、今、日本の多くの国民の皆さんが何を不安に感じておられて、そして何を恐れておられるのか。 ・・・【以降、途中まで略】・・・ 労働者の権利の保障と団結権の保障、こういう政治的な責任について、私は、すべての政治家が労働者の権利を保障するという責務を持つと思っています。 格差という問題をずっと議論していて、格差を埋めるのを単に財政や税制だけでもって埋めようとすると、これは、かつてもあのナチス・ドイツが出てきたときにも起こりましたけれども、非常に無際限な、財政規律を欠いた格差の埋め方をやられてしまうと、ファシズムにもつながる非常に危険な部分を持っていると思います。あくまで、市場を整備する、つまり、働く側の権利が弱過ぎるとその経済というのは健全な経済とは言えない、健全な市場とは言えない。 総理にお尋ねをしますが、労働者の権利の保障、先ほどILOのお話をしましたけれども、これはすべての政治家の責務であるというふうに考えますが、御認識を伺いたいと思います。 ○安倍内閣総理大臣 働く人の、労働者の権利を保障する、これは当然のことであろうと思います。日本もILOに加盟をしているわけでありますから、その責務を果たしていくのは当然のことであろうと思いますし、そもそも、政治家として、また私は総理として、働く人たちの権利は守っていく、当然それは、その上において我々はそういう責務があると考えております。 ○原口委員 私たちと同じスタンスだという認識をいただきました。ありがとうございます。 そこで、これからの政治の役割は、労働者の集団にもさまざまな集団があります。例えば、正規雇用それから非正規雇用、あるいは労働者の所属するところ、働き方によって、官公労あるいは民間労組。 ここでもう一回伺いますが、私は労働者は分断されるべきではないんじゃないかと思っています。正規と非正規の間に何かくさびを打ち込んで、その人たちをお互いの権利を争わせてみたり、あるいは、この後、公務員制度改革についても柳澤大臣、渡辺大臣に伺いますが、民間労組そして官公労、その人たちをいたずらにくさびを打ち込んでやってみたり、むしろ、団結権を保障し、労働者の権利をきっちり守るために統合させる、そういう姿勢が必要なんではないか、私はこのように考えていますが、総理の御所見を伺いたいと思います。 ○安倍内閣総理大臣 ただいま原口委員が言及されました労働者の権利の保護や労働者の団結権の保護は、憲法や労働関係諸法制において規定されており、これを徹底することが政治の責務であると考えております。それは先ほど申し上げたとおりであります。労働者を分断するという考えは、もちろん全くないということは申し上げておきたいと思います。 このため、引き続き、労働委員会を通じて団結権の保障に取り組むことにより、労働者の労働条件の向上を図るため、働く人たちのための一連の労働関係法制の整備に取り組む考えでございます。 ○原口委員 やはりこれから私たちも、国民から審判を受けるときに多分問われると思います。この政治家は労働者を団結させる政治家なのか、それとも、この政治家は労働者の権利を損なうそういう政治家なのか、これは大事なことだと思います。 なぜか。それは、総理、各国の労働法制を私もいろいろ見ますと、労働教育、労働者の教育、労働組合の教育、これはアメリカも非常に力を入れています。それからスウェーデン、これは労働組合そのものが国民学校を持っています。なぜか。経済がグローバル化して、たくさんの外からの労働者が入ってくる。そうすると、仕事におけるいろいろなあつれきも出てくる。排外的なナショナリズムとこの雇用の問題が結びついてしまうと、そこにはファシズムが入ってくる危険がある。だから、多くの国は、殊さら労働教育、労働組合教育というものに力を入れている、私はそのように感じます。 日本も、これからさらに労働教育、なぜこんなことを申し上げるかというと、先ほど偽装請負のお話がありました。先日、ある民放の番組で、ちょうどそこには派遣労働の方々がお見えになっていました。派遣労働の方々、ちょうど二十代の後半から三十代の前半の方でしたけれども、自分たちの権利がいかに侵されているかということすらおわかりになっていない。もう四年目の派遣になるというにもかかわらず、正社員への道は一回も開かれたことがない。あるゲストが、それはあなたの努力不足ですよというようなことをおっしゃっていました。しかしそれは、その人の努力不足ではなくて、法律を違反して、まさに不当な労働の条件の中に自分がいることすらおわかりにならない、つまり……(発言する者あり)そうです、小野寺さんがおっしゃるように、これは学校で教えていないんですよ。 私は、健全な市場、日本は世界の経済大国で第二位です。これからきっちりとした市場をつくっていく上でも、社会を安定化させていく上でも、どんな労働法制をつくってみても、国民の皆さんがそれを理解し、そしてみずからの尊厳や権限について学ぶことがなければ、それは絵にかいたもちであるというふうに思いますが、総理の御見解を伺いたいと思います。 ○安倍内閣総理大臣 働く上において労働者が自分の権利について十分に認識をしているということも当然これは大切であろうし、市場経済を発展させていく上においてもそれは基本的なことではないか、私もそのように思います。 ○原口委員 その上で、私もいろいろな若者や就職に困った方々の御意見を聞きますと、就職の仕方がわからないとか、あるいは職業人としての教育がない、どのように社会にかかわっていいかわからない。例えばこれは、欧米の国の教育の中ではマイクロソサエティー・スクールというのがあって、いわゆる小学校のときに社会の枠組みを学ぶ、そういう学び方もございます。 ・・・【以降、途中まで略】・・・ ○原口委員 前向きの御答弁をいただきました。 ・・・【以降、途中まで略】・・・ 会社はだれのものかという話がありました。今は随分企業の経営者の行動も変わってきました。ちょっと前は、会社は株主のものであるというような考えのもとで、株主への配当、あるいは、従業員への給与ではなくて、役員給与、賞与といったものをふやす、こういうことが主流でありました。しかし、私どもの師は経営の神様と言われた松下幸之助さんでしたけれども、彼はどんなことがあっても首を切らなかった。労働組合をとても大切にし、働く人たちを大切にしました。正規雇用、労働者を大切にするということは、企業そのものを大切にする。 会社はだれのものかという議論がありますが、会社は公器であり社会のものであります。一部の株主のものではない、私はこのように考えますが、総理の基本的なお考えを伺いたいと思います。 ○安倍内閣総理大臣 会社というのは、存在として社会的責任を負っていると思います。もちろん、会社の成り立ちからいって、出資をしている株主に対しての責任というのも当然あるんだろうと思いますが、経営者は、そこで働いている人たち、また、その従業員の家族に対しても当然責任を負っているだろう、そして、企業が活動する地域や日本に対しても責任を負っている、このように思います。 そしてまた、今委員が御指摘になったように、経営者が働いている人たちを大切にしているという気持ちが従業員に伝わることによって、やはり従業員の人たちは安心感を持つし、この企業のために一生懸命頑張ろうという気持ちにつながっていく、結果として会社は伸びていくのではないかと思います。 ・・・<以下省略>・・・
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