衆議院・参議院会議録情報 抜粋 |
衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。 |
第14号 平成19年2月23日(金曜日) 平成十九年二月二十三日(金曜日) 午前九時開議 ・・・【中略】・・・ 本日の会議に付した案件 政府参考人出頭要求に関する件 平成十九年度一般会計予算 平成十九年度特別会計予算 平成十九年度政府関係機関予算 ・・・【中略】・・・ ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。 まず、安倍総理の基本的な認識をお聞きしたいと思います。 このパネルを見ていただきたいんですが、景気が回復したと言いますけれども、どうも実感がない。確かに大企業の方は、経常利益、非常に急速にふえておりますけれども、その反面で、労働者の所得はふえておらず、逆に減っております。労働者の年収ですね。私は、非正規雇用の存在というのがここにも影響しているのではないか。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託、これらの非正規雇用の方々の賃金というのは、正規雇用の方々と比べますと、半分とかあるいは七割とか、そういう水準と言われております。 したがいまして、賃金が低く雇用の不安定な非正規雇用の比率が高まれば平均賃金全体を押し下げる、そういう作用を及ぼすというふうに考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。 ○安倍内閣総理大臣 いわば派遣またパート等々のいろいろな働き方がふえてきたということは、これはまた経営者あるいは働く側のさまざまなニーズによる結果ではないか、このように思うわけであります。 しかし、その中で、非正規の方たちの中で正規雇用に移っていきたいと思われる方たちが正規雇用に移っていけるような、そういう仕組みを支援していきたい、このように思っているわけでありますし、また、非正規の方々が不安な中で仕事をしなくても済むように、どんな働き方を選んでも安心して仕事ができる、そのような労働法制を行っていきたい。そのための、今回、六本の労働法制を提出しているわけであります。 ○佐々木(憲)委員 私が質問したことに正面からお答えにならないんですが、つまり、非正規雇用の比率が高まれば平均賃金が下がるということについてお聞きしたんですが、まあ否定されなかったから肯定されたんだと思いますが。 例えば、政府のミニ経済白書、これは昨年の十二月に出された日本経済二〇〇六―二〇〇七、この中でも、非正規雇用者の賃金は正規雇用者に比較すると相対的に低い水準にあり、企業内でその比率が高まることは平均賃金を押し下げることになる、こう明確に言っているわけです。 これは内閣府ですので、大田大臣、このことは事実ですね。 ○大田国務大臣 御指摘のように述べております。 ○佐々木(憲)委員 そこで、なぜ非正規雇用というものがふえたのか。 これは、企業側から見ますと、非正規雇用を活用すると賃金が低いからコストの削減につながるということで、利益を上げるために、いわば人間を、先ほども議論がありましたが、物扱いする企業の側に責任があるというふうに私は思うんです。 同時に、それを後押しするような政府の政策があったのではないか。政府が進めた労働法制の主な規制緩和、これを図で示しますとこういうふうになります。これは全部ではありませんが、主なものでございます。結局、ここで、例えば派遣労働、これを認める法律をつくり、それを次々と緩和をする。それが、派遣労働、非正規雇用をふやしていく、そしてまた社会的な問題を引き起こす、そういう原因になったのではないかと思います。 これは柳澤大臣にお聞きしますけれども、これまでのこのような規制緩和というものが現在の非正規雇用を広げていく非常に大きな要因になった、その反省というものは多少なりともあるんでしょうか、お聞きしたいと思います。 ○柳澤国務大臣 我々の国の労働市場の中で、正規雇用、非正規雇用というものがそれぞれどういう推移をたどったか、それが政府の政策によってどの程度左右されたかということの御質問ですけれども、非正規雇用が徐々に増嵩してきてシェアを多くしているのは随分前からでございます、佐々木先生も御存じだと思いますが。 それでは、非正規雇用の派遣法の問題とか、あるいは派遣法へ、物の製造についての労働者についてこれを解禁したとかというのがどうであるかというと、それがあったから、グラフの目盛りにもよるでしょうけれども、急増している、急角度で伸びているということはなくて、なだらかに徐々に上昇したというのが、私が今手元に持っているグラフの示すところでございます。 ○佐々木(憲)委員 規制緩和をやったから、なだらかでも伸びてきているわけで、その責任が政府にあるということを言っているわけですよ。これがなければ、派遣労働なんというのは実際に生まれないわけです。 長い間と言いますが、八五年に初めて派遣労働というものが認められた。その後どんどんどんどん拡大して、すべての産業に今広がっているでしょう。そういうことが政府の政策によって行われたということなんですよ。 問題は、労働者の中には非正規でもいいという人もいるでしょう、しかし、非正規で働いている若者の多くは、正規雇用者になりたい、正社員になりたいという方々がかなり多いわけです。政府の経済財政白書の中でも、若者のほとんどが正規雇用にかわりたいと、この白書はきちっと政府自身が分析をして書いているわけです。実際に、その希望のかなりの部分が閉ざされているのが実態なんです。 私は、去年、ちょうど今ごろ、トヨタの偽装請負問題というのをこの場で取り上げました。参議院では日本共産党の市田書記局長も質問をいたしました。シャープ、松下、さらにキヤノンなど日本の名立たる企業が請負労働者、派遣などによって支えられている、こういう実態も明らかになり、次々と違法状態も指摘され、社会的な問題になりました。 総理は、昨年十月のこの市田書記局長の質問に対しまして、このようにお答えになりました。ワーキングプアと言われている若い方々が非正規雇用から正規雇用に移っていく可能性をもっと拡大をしていく環境をつくらなければならない。なかなかいいことを言ったと思うんですね。 そこでお聞きしたいけれども、その後、総理は、請負、派遣労働者が正規雇用に移れるように、企業、財界にどのような指導をされましたか。 ○柳澤国務大臣 簡単に事実を申し上げますと、そういうことの取り組みではなくて、我々は、この国会に対して新しい法制を御提案して、ぜひそれを成立させてもらいたい、その法制を通じて、今言ったように、非正規雇用の状況のもとにある若い方々を中心とする人たちが正規の雇用に移行、転換するように、そういう仕組みをつくりたい、こう思って努力をしているわけでございます。 もう時間があれですから、中身は、もしお尋ねであれば御説明申し上げます。 ○佐々木(憲)委員 総理にお聞きしたいんですが、そういう環境をつくらなきゃならぬとお答えになったわけですから。 具体的に、これは先ほど言いましたように、企業側は、コストを削減するために非正規雇用をどんどんふやそうとするわけです。できるだけ非正規雇用でいきたい、正規雇用に転換するのはできるだけさせない、させたくないというのが利益を考えると出てくるわけです。それに対して政府の側は、非正規雇用を正規にしようとすれば、そういう企業に対して何らかのアプローチをしなきゃいかぬ。その具体的なアプローチを何かやられましたかというのを聞いているんです。 ○安倍内閣総理大臣 私どもが民間企業に命令して正規をふやすということはもちろんできません。ですから、そういう仕組みをつくっていくことが大切であって、一つは、なるべく、パートの方たちを含めて、正規、非正規の方たちの均衡の処遇を制度化していくということが大切でしょうし、また、最低賃金を改正することによって、いわば安心を確保するためのセーフティーネットとしての機能を生かしていかなければならない、このように思っております。 そしてまた、再チャレンジ支援策を進めていく中にあって、ニート、フリーター対策、五十九施策を行っているわけでありますが、いわば非正規の方たちが正規に移っていけるように、自分のキャリアをアップしていけるような、努力が可能になる、努力をすることもしやすくなるし、それが報われる環境もつくっていきたい、こう思っています。 そして、それと同時に、私としては、これは各企業に対しても、まだもちろん指示とか命令なんかはできませんが、そういう努力をしている企業の方たちに集まっていただいて、そういう方々が頑張っているということをもっと多くの方たちに知っていただきたい、このように思います。 こういう中でも、そういう努力をしている企業はたくさんあるわけでありまして、東京のある衣料品メーカーは、契約社員六千名のうち、何と五千人を正社員に採用するわけであります。これは昨年の四月ですね。そのような努力をしているところもたくさんあるわけでありますので、こういう動きを広げていきたいと思っております。 ○佐々木(憲)委員 個別の企業の中で、努力をされている企業もあるということは認めましょう。しかしながら、全体として非正規雇用がこれだけふえて、社会的に非常に大きな問題になっているわけですから、そういう全体としての状況をどう改善するか。これはやはり政府自身が、企業団体なりあるいは財界団体なり、そういうところにしっかりとしたリーダーシップを発揮して申し入れを行う、あるいは法的改正を行う、こういうことで規制を強化していかないと、労働者の要求は守れないわけであります。 実際に、経団連会長のキヤノンの例が先ほどから出ていますけれども、昨年の九月に、このキヤノンは、請負や派遣労働者を正社員化する方針を決めたというんです。ところが、昨日の公聴会で、労働組合キヤノンユニオン・宇都宮支部長の大野さんがこういう証言をされました。喜びもつかの間、請負会社から突然、五月に派遣契約から請負契約に変更されたばかりの契約を、再度派遣契約に戻すと通告されました、会社側の詳しい説明は一切なく、請負から派遣、そして請負、そしてまた派遣契約にと、ころころと契約形態を変えられただけだった、同僚がキヤノンで中途採用をしていると聞いて、自分も受けようとしたら、求人広告には、キヤノンで働いている派遣、請負社員は正社員の採用試験を受けられないと明記されていた、こう言っているんですね。 こういう具体的な事例があるわけですから、これは経団連の会長さんの企業であります、こういうところに対して、こういうことは事実ですか、もしあったら直してください、こういうことをおっしゃるのが総理として当然のことではないかと思いますが、その意思はありますか。 ○安倍内閣総理大臣 この場で個々の企業の状況について申し上げることは差し控えさせていただきたい、このように思うわけでありますが、当然、私どもが目指している働き方の改善等は十分に御理解をしておられると思います。その中で、正規雇用をふやしていく努力もしていかれるでしょうし、また、派遣で雇っておられた方々がいわば正規社員になっていくという道についても当然考えていかれる、私はこのように思っております。 ○佐々木(憲)委員 理解しているならこんなことはしないわけですから。現実に企業の中でこんなことが行われているんですから。そんなことも具体的にできないようで、再チャレンジと幾ら言っても、どうも、中身がないばかりか、私は、こういうことをやっているキヤノンをかばっているとしか思えませんね。 総理がかばうから、御手洗会長は言いたい放題で、経済財政諮問会議でこんなことまで言っているんですね。偽装請負問題を指摘されて、請負制度に無理があると。偽装請負を告発された側が、法律の方が悪いと居直っているわけですよ。とんでもない話でありまして、それだけじゃなくて、今の派遣法のように三年たったら正社員にしろというのは硬直的だとか、派遣法を見直してもらいたいと、格差を固定化するような、再チャレンジを妨害するような発言をしているんですよ。残業代ゼロのホワイトカラーエグゼンプションをあくまでも国会で通せ、こういうことまで言っている。こういう言いたい放題をたしなめもせず、ただ聞いているだけじゃないのか。 経済財政諮問会議というのは財界の言い分を実行する司令塔になっていると言われても仕方がない、そう思いませんか。 ○安倍内閣総理大臣 そこは共産党とは見解が違うところでございますが、先ほど、派遣法についての言及の中においては、いわば突発の事故があったとき等々において指示ができないというのはおかしいじゃないかということでおっしゃったんだろうと私は記憶しているわけでございますが、いずれにせよ、法律を遵守していくのは当たり前のことでありますし、また、非正規の正規雇用化を目指していただかなければならない。 私は、このようなことはもう既に、今までお目にかかったときには何回か御本人には申し上げているということは、この場ではっきりさせておきたいと思います。 ○佐々木(憲)委員 それなら効果が具体的にあらわれなければならないのに、全然あらわれてないですよ。 私は、重大なことは、この裏で政治献金があるということなんですね。日本経団連は、自民党など政党の政策評価というのをしていまして、政党にAからEまでの五段階で通信簿をつけて、経団連は、その通信簿でいい点をとった政党に献金を集中するようにと企業に呼びかけているわけです。いわば経団連の言いなりになる政党に献金せよということであります。これはまさに通信簿方式による政策買収というものだと思うんです。 例えば、具体的な数字をいいますと、こうなっているんですね。(パネルを示す)自民党の点数A、これは五段階のAです。これは二〇〇四年のとき三個だった、二〇〇五年のとき四個だった。二十二・六億円、これが二十五億円にふえた。九個になったらもっとふえるんじゃないか。こういうふうに、いわば通信簿でいい点をとることが献金をふやすということで、いわば言いなりになればなるほど献金がふえる。 こういう仕組み自身を、これは癒着ですよ、断ち切る意思はありませんか。 ○安倍内閣総理大臣 政策を評価するのは、これはもう経団連が独自に評価をしていただいているわけでありまして、私どもが評価してくださいと言っていることは全く……(佐々木(憲)委員「当たり前だ」と呼ぶ)それは当たり前のことでございます。 そして、大切なことは、私たちは常に国民のためになる政策を考えています。それ以外のことは全く考えていないということをはっきり申し上げておきたい。つまり、その結果として経団連がどのように評価して献金をするか、こういうことではないかと思います。 ○佐々木(憲)委員 大体、経団連の御手洗さんに一言も物が言えないような状況で、お金をもらい、献金をもらい、そして、政策そのものも経団連の言いなりの政策を実行する、そういう癒着体制、まさにこれは、官邸が経団連によって直接支配されていると言わざるを得ないですよ、そんな状況は。 私は、日本の働く人々のためにも、また日本の経済のためにも政治のためにも、このような経団連による政治支配を一刻も早く脱却すべきだ、このことを指摘して終わらせていただきます。 ・・・<以下省略>・・・
|