衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。


第14号 平成19年2月23日(金曜日)

平成十九年二月二十三日(金曜日)

    午前九時開議

・・・【中略】・・・

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成十九年度一般会計予算

 平成十九年度特別会計予算

 平成十九年度政府関係機関予算

・・・【中略】・・・

○糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

・・・【以降、途中まで略】・・・ 

 まず、総理にワーキングプアの認識についてお伺いしたいと思うんですが、現在、ワーキングプアや格差の拡大が大きな問題となっております。この予算委員会でも大変活発な議論をされておるわけでございます。ワーキングプアの定義は明確になっておらず、一般論的には、正社員並みに働いても生活保護水準以下、年収二百万円以下というんでしょうか、の収入しか得られない就業者のことというふうにされておるようでございますが、四百万世帯とも五百五十万人だとも、こういうふうにも言われておるわけでございます。

 このように、一生懸命働いてもなかなか貧困からはい上がることができない、こういう人たちがふえているこの現状について、政府の現状認識についてお伺いをしたいというふうに思います。

○安倍内閣総理大臣 いわゆるこのワーキングプアについては、その範囲や定義に関してはさまざまな議論があり、現在のところ、我が国では確立した概念はない、このように承知をしております。

 そしてまた、働いても働いてもなかなか賃金もふえていかないし、十分な生活に資する賃金を得ることができない、そういう状況に置かれている方々はいつの時代にもおられるんだろう、それは私はそのように思うわけでありますが、いわば今ワーキングプアと言われる方々でありますが、ワーキングプアや貧困と指摘をされた方々について言えば、これは、ワーキングプアのみならず、いわば貧困の中にあると言われている方々について言えば、フリーター等の非正規雇用の方々、あるいはまた母子世帯の方々、生活保護世帯の方々ではないか、このように思います。

 そういう方々に対しては、例えばフリーターの二十五万人常用雇用化プランを進めていく、そしてまた、パートタイム労働法の改正によって、非正規雇用から正規雇用への転換を促進していかなければならないと思います。

 そしてまた、母子世帯に対しましては、就労支援を初めとして、総合的な支援を推進していかなければなりません。母子世帯の中でも、既に職を持っておられる方々も、より高い収入の仕事に移っていけるようなそういう就労支援も行っていかなければならないと思います。

 また、生活保護世帯に対しては、福祉事務所とハローワークの連携等によって就労支援を推進していかなければならないと思っています。福祉は福祉、就労は就労と別々の取り組みではなかなか成果は出ないんですが、これを一緒に取り組んだところは、割と就労支援で大きな成果を出しているところもございます。

 こうしたさまざまな政策を進めることによって、働く人全体の所得や生活水準を引き上げながら格差の固定化を防いでいく、そのための成長力底上げ戦略に取り組んでいく考えであります。

○糸川委員 そこで、この成長力底上げ戦略というものをつくられて、塩崎官房長官を主査とされましてことしの二月一日に設置されました成長力底上げ戦略構想チーム、これは当初、ワーキングプアに正面から取り組むというふうに基本姿勢のところに書かれておるわけでございます。そこを期待しておりましたけれども、二月十五日に取りまとめられました成長力底上げ戦略の基本構想を見ますと、ワーキングプアという言葉、この文字はどこにも入っていないわけでございます。

 政府は今後、今総理がおっしゃられているような方向で取り組まれるのか、これは官房長官にお聞きしたいと思います。

○塩崎国務大臣 確かに当初、紙にも残っておりますけれども、いわゆる格差問題、いわゆるワーキングプア問題に正面から取り組むというふうに書かせていただいておりました。

 先ほど総理から答弁申し上げましたように、このワーキングプアというのは、ちょうど去年のNHKの番組で取り上げられて国民的な関心を呼んだもので、私もしっかり見ました。確かにいろいろ考えさせられる番組であったと思います。ただ、この定義が、アメリカの一九六〇年代に農務省がつくったもので、最低限の食費から換算してその三倍というような形でワーキングプアを定義してきて、それに後ずっと延長してきた。そういうことで、いろいろと国内でもアメリカでも問題を指摘されているような定義のようであります。

 私たちも、あのNHKの番組では四百万世帯、一〇%と言われていますけれども、その定義にこだわるよりは、さっき総理から申し上げたように、いわゆる格差問題、あるいはいわゆるワーキングプア問題の対象とされるような人たちというのは、例えば、さっきのフリーター、母子世帯、生活保護、障害者、そういった方々全体を包含するような政策対応を打っていくべきではないのか、そういう中で全体の生活の底上げをしていこうじゃないか、成長戦略の一環としてそれをやっていこう、こういうことで、我々としては、いろいろな統計を、実は、正直言って役所の中でもいろいろ調べてもらいました。

 しかし、そこで定義の議論に時間をかけるよりは、やはり全体が含まれるような、皆さんが取り上げているような方々全員が入るような政策を取り上げて、さっき申し上げたような、就労支援、それから人材能力開発、それから中小企業底上げ戦略ということで全体を底上げしていこうじゃないか、こんなことで、ワーキングプアという、定訳がないというか定義がはっきりしていない言葉を使うよりは、全体を対象にしていくきっちりした政策を組んだ方がいいだろうということで、こういうふうにさせていただいたところでございます。

○糸川委員 それはぜひ定義をしていただかないと、ちまたではやはりワーキングプアという言葉が使われているわけでございます、マスコミの間でもどこでもこのワーキングプアという言葉が使われておるわけでございますから、ぜひそれは定義をしていただきたいなと。

 もし、この底上げ戦略の中の、「「ワーキングプア」の問題に正面から取り組む。」というふうに書いてしまっている以上、この言葉を使わないのであれば、ここになぜ使わなくなったのかということの説明を入れていただいた方が理解しやすいんじゃないかな。これを全部含んでいるんですよということではなくて、そのように気を使っていただくというのも、思いやりのある政府になるんではないでしょうか。

 そこで、ワーキングプアのこの問題の原因としまして、パートタイマー、フリーター、派遣労働者、こういう非正規雇用者の増加が挙げられるわけでございます。そして、この問題を解決するためには、これら非正規雇用者の賃金の底上げが必要であるわけでございます。これも、さまざまもうこの予算委員会でも議論されておりますけれども、その手段として最低賃金の引き上げが必要であるというふうにももう我々は考えているわけでございます。

 しかし、この最低賃金の現状を見ていますと、青森ですとか岩手、秋田、沖縄、この四県は時給が六百十円でございます。最高は東京の七百十九円でしょうか。仮に、この六百十円で一日八時間、そして一カ月二十二日間働いたとしましても、月に十万七千そこそこしか得られないわけです。これでは、一生懸命働いても貧困から抜け出すことができない。これは、働いても働いてもいつの時代にもそういう人がいるのは仕方ないとおっしゃられるかもしれませんが、これはやはり何とかしなければならないわけですね。

 そこで政府は、今国会に最低賃金法、これを提出され、地域別最低賃金の決定に際し、生活保護との整合性も考慮する、そういう決定基準を明確にするんだというふうにしておりますけれども、この最低賃金法の改正案というのは、最低賃金を引き上げることを念頭に置いたものというふうに考えてよろしいんでしょうか。

○安倍内閣総理大臣 詳しくは厚生労働大臣からお答えをいたしますが、先ほど私が申し上げたのは、いわば、働いてもなかなか厳しい状況の方々がおられるのはいつの時代もそうだ。その方々がおられるのは仕方がないということは申し上げていない。そういう方々に光を当てていくというのは、これは当然政治の使命だ、こう思っています。

 その中で、今、糸川委員が指摘をされたように、最低賃金、セーフティーネットとして十分に機能しているかどうかということで見ますと、生活保護との水準、これが逆転をしているところもあるわけでございまして、そこはやはり、働きがいがある最低賃金にしていく必要も当然あるのではないかということにかんがみ、私は、四十年ぶりのこれはいわば大改正をしなければいけないと思っております。

○柳澤国務大臣 具体的なことを補足申し上げますと、最低賃金の具体的な水準については、公労使三者構成の地方最低賃金審議会における、地域の実情を踏まえた審議を経て決定されるものでございます。

 今回の法案が成立した暁には、それぞれの都道府県の今申した地方最低賃金審議会において法の改正の趣旨に沿った議論が行われて、現下の雇用、経済情勢を踏まえて適切な措置が講ぜられるものと思いますが、その方向は引き上げだということであると私は思っています。

○糸川委員 大臣、私は思っていますということは、では、引き上げの方向ということでよろしいわけですね。

 日本の最低賃金がイギリスやフランスと比較しても低いということですから、そうすると、今のこの最低賃金額というのが適正ではないという認識だということでもよろしいんでしょうか。

 例えば、日本の最低賃金の全国加重平均は六百七十三円でございます。イギリスやフランスの最低賃金は時給千円を超えておるわけでございます。アメリカにおきましても、この引き上げ法案が下院で可決しておるわけでございます。

 ですから、そういう観点からも、今のこの日本の最低賃金という額が適正であると逆にでは思っていらっしゃるのかどうか、再度御答弁いただけますでしょうか。

○柳澤国務大臣 大体ほかの国においても同様でございますけれども、最低賃金の決定は審議会の議を経る方式を採用しておられる、そういう国が多いわけでございます。我が国におきましても、公労使の三者により構成される地方最低賃金審議会の調査審議を経て決定する、こういう方式が採用されているわけでございます。

 したがって、このような最低賃金を、それぞれの国において労使も参加して決めたことでございますので、その具体的な水準を高いとか低いとかというふうに評価することはやはり適切でないと私どもは考えるわけでございます。

 なお、今国会に提出する改正法案におきましては、最低賃金制度が安全網として十分に機能するよう、地域別最低賃金について生活保護との整合性も考慮することを明確にすることといたしているところでございまして、これによって最賃制度が安全網として一層適切に機能することとなる、このように考えている次第です。

○糸川委員 それが適正かどうかということを判断することが適当ではないということでしょうけれども、先ほど大臣は、この最低賃金を上げる方向だということでございますので、おのずから何を言いたいのかということはわかってくるんじゃないかなというふうに思います。

・・・<以下省略>・・・





 

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