衆議院・参議院会議録情報 抜粋

参議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第166回国会 予算委員会 第12号
平成十九年三月十九日(月曜日)
    午前十時一分開会

・・・【中略】・・・

  本日の会議に付した案件
○平成十九年度一般会計予算(内閣提出、衆議院
  送付)
○平成十九年度特別会計予算(内閣提出、衆議院
  送付)
○平成十九年度政府関係機関予算(内閣提出、衆
  議院送付)

・・・【中略】・・・

○小林正夫君 民主党・新緑風会の小林正夫です。

・・・【以降、途中まで略】・・・

 雇用問題の質問に戻します。
  私は、日本の労働問題の課題は幾つかあると思いますけれども、最大の課題は、まず一つは長時間労働であること、二つは非正規雇用が増大していること、三つ目に希望しても職に就けない、このことではないかと思います。日本は有数の長時間労働国家なんです。(資料提示)
  長時間労働によって過労死や過労自殺、それと精神障害になる人が非常に多い現実があります。労働組合の連合のシンクタンクである連合総研のアンケートでは、男性、三十歳代後半の男性の三五%の人が在社時間十二時間以上という結果が出ているんです。労働基準法では、一日八時間、週四十時間労働を決めている現行の労働基準法の下でも既に過労死だとか過労自殺あるいは精神障害が生まれている実態にあります。私は、明確な対策を打ち出すことが政府あるいは国の責任だと思うんです。
  長時間労働を解消する方策として、私たちは、仕事が終わった後、次の仕事へ就くまで十一時間の休息時間を設けろ、これをむしろ労働基準法の中で明確にしなさい、こういう考え方を持って今皆さんの前に提起をしております。これは、既にヨーロッパの国々でも実証されていることなんです。今の労働基準法があっても長時間労働がやまない、過労死が生まれる、ならば対策を打たなきゃ駄目なんですよ。これが一つです。
  もう一つですけども、非正規雇用労働の問題ですけども、私は、この非正規雇用は不安定な雇用だと思います。いつ首を切られるか分からない不安定雇用の下では、人生設計が描けないんです。結局、社会全体が活力のない不安定な社会になっていくんです。また、地域間格差の関係で先ほどお話も出ましたけども、有効求人倍率を見ても依然として地域間格差が広がっておりまして、長時間労働、非正規雇用の増、希望しても職に就けない、このような現実を総理はどのように受け止められているのか、お聞きをいたします。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今回、この国会に労働法制の整備のために六本の法案を提出をいたしているところでございまして、その中におきまして、割増し賃金率を上げる法律も出しております。そしてまた、パートタイマーの方々が均衡処遇を受けることができるようにするための法律も出しているわけでございます。
  全体としては、景気回復が続く中において、言わばフリーターと言われる方々も二百万人を切ったわけでありまして、一番多かったときよりも三十万人減っております。昨年一年間だけで十四万人減っているわけでありますから、こうした形で景気回復のこの軌道に乗りながら経済が成長していくことによってこうした方々が正規に移っていくという流れを強いものにしていくことは私はできると、このように思っております。
  そしてまた、いろいろな企業で言わばパートタイマーあるいは派遣といった方々を正規雇用に変える企業も出てまいりました。ある衣料品メーカーは、六千人の言わばパートタイマー雇用、派遣の方々を正規、五千名、希望者は正規に変えたという取組を行っている企業も出てまいりました。ということは、つまり、このように待遇を良くしていかないと人が集まらない状況がだんだん私は生まれつつあると。しかし、それを黙って見ているだけではなくて、その流れを一層強いものにするための我々仕組みをつくっていくことも重要であろうと思います。
  働き方については、人それぞれいろいろな働き方をしたいという人が近年増えてきているのも事実だろうと、このように思うわけでありますが、正規に移りたいという人にとって、正規に移っていく道をしっかりとつくっていくことも必要であろうし、また、そのために職業訓練等を受けたいという意欲のある人たちが受けられるような仕組みもつくっていきたいと、このように考えております。
○小林正夫君 柳澤厚生労働大臣にお尋ねをいたします。
  私は、非正規雇用を生み出している原因の、大きな原因の一つに、労働者派遣法があると思います。
  これは、昭和六十年に施行されて二十年以上経過しましたけども、当初の派遣法は、ソフトウエアの開発など十三の専門業務に限定して、社内では養成できない専門能力のある社外の人材を短期利用する例外的な雇用として労働者派遣法を位置付けたんです。
  しかし、平成七年、旧日経連から、成果主義賃金、グローバル化を先取りする内容で、新時代の日本的経営、こういう施策が出され、派遣、パート、契約社員を増やすことを提言をされました。また、アメリカからも規制緩和を求められたんです。平成八年十一月の日本における規制緩和、行政改革及び競争政策に関する日本政府に対する米国政府の要望書、対日要望書ですけども、この中に、派遣業の従業員を直接経験を持つ職種だけに制限される規制は撤廃されるべきであると書いてあったと私は記憶しております。自民党政権は、この経営者団体の提言やアメリカからの要求を実現してきたと言っても過言ではないと思います。
  現に、平成十一年に、除外業務以外は派遣を認めることとして、さらに平成十五年の改正では、派遣対象業務を拡大して製造業への派遣を解禁をいたしました。この二十年間、適用範囲を拡大する方向で改正が繰り返されて、平成十六年三月一日からは港湾運送業務などの四職種を除いてすべてこの労働者を派遣できるようになってしまいました。私は、このことが非正規雇用労働者を大きく増加させた要因じゃないかと考えております。
  使用者にとって使い勝手の良い、いつでも雇用調整できる労働者を生み出している今の労働者派遣法を、もう一度例外的な雇用、この位置付けに戻す必要があると思いますけど、厚生労働大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 今、小林委員、いろいろ派遣労働法の改正につきまして経緯にお触れいただきました。私も当時、自民党の行政改革本部におりまして、そこで同時に規制緩和の問題も扱っている、そういう場所でございましたので、この労働法制の規制の緩和といったことについても若干知っていたわけですけれども、当時の議論というのはやはり日本の労働法制というのがきつ過ぎるんじゃないかということでございまして、これが、アメリカからの何か圧力があるからそれにどうこたえていこうかなどというような議論というのはもう私の記憶する限り全くなかったということでございますので、そこはもうまず御理解をいただいておきたいと、このように思います。
  それから、非正規雇用増大の理由の一つが労働者派遣法の規制緩和ではないかというようなことでございますけれども、これはもう何回も何回もお答え申し上げておりますけれども、経済産業構造の変化が他方ある、これは企業側、経営者側の理由としてあるということと同時に、今度は労働者側にも働き方の多様化を求める、そういう気持ちがあるということの中で、今回の、今回というか、そういう派遣法の制定なり、さらにその拡大が行われたということでございます。
  現に、現在、派遣労働者の意識でございますけれども、できるだけ早い時期に正社員として働きたいという者全体が二七・三%、今後も派遣労働者として働きたいと希望する者二七・二%と、まるで何というかつくった数字のようにも見えますけれども、そういうのが状況でございまして、やっぱり若者あるいはその他年齢を問わずいろんな理由からこうした派遣労働を選択したいという、そういう考え方も背景にあるわけでございまして、あながちこれが一方的に経営者側だけの意向を酌んだものであるというふうに断ずることは行き過ぎではないかと私は思います。
  もちろん、私どもといたしましても、正規雇用、特に希望しながら非正規にとどまっていらっしゃる方々、こういう方々について正規雇用にこれをできるだけ移行していこう、移行させていこう、こういうような考え方の下での法制の整備というものを進めているのは今総理がお答えしたとおりでございます。
○小林正夫君 私の手元に厚生労働省の資料があるんですけどね、正社員として働ける会社がなかったから、派遣労働者の皆さんにいろいろ調査をしたところ、その派遣労働者の皆さんの四〇%の人が正社員として働ける会社がなかったから、こう答えているんですよ。ですから、やはりこの派遣労働法の、今すべての業種に拡大してしまった、経営者にとっても、これは労働コストが安いからというふうに言われている経営者が圧倒的に多いんですよ。やっぱりこういうことの実態をきちんと踏まえて、この労働者派遣法については元に戻すと、このことを私は必要だということを強く指摘したいと思います。
  次に、今回政府から出されている法案について一、二点お聞きをしたいと思います。
  まず、残業代の割増し率についてですけれども、政府の提案では、一か月の残業が八十時間を超えたところの人たちに対して、この時間外割増し率を今の二五%から五〇%にするというんです。なぜ、八十時間という線にしたんでしょうか。労働者の人たちは、自分のプライベートな時間、本当にそこに業務命令が出されるわけですから、当然、時間外労働が発生した段階から国際基準的みたいな五〇%に上げるべきなんです。なぜ、八十時間、ここで線を切ったんでしょうか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) これは、週四十時間が労働基準法の基準の労働時間でございまして、八十時間というのは、これは週ではなくて月間ということでございますので、まずそこのところを押さえておかないと非常に議論が混乱するかと思うんです。
  それから、我々の今回の法定割増し賃金率の引上げにつきましては、その八十時間の前に限度基準というのを設けております。これは、これも月間ですけれども、月間四十五時間ということになるわけですけれども、その四十五時間以上の割増し賃金率については、これはもう労使の協議に任せておりますけれども、できるだけこれは高い率にして、そうして、しかもその四十五時間を超えるような時間外の労働というものについてはできるだけこれを少なくするように、そういうことを義務化をしているわけでございまして、実は八十時間というところに主なねらいがあるというよりも、むしろ私どもとしては四十五時間以上のところの努力義務、ここのところに大きなウエートを置いてこの長時間労働の抑制に資していこうと、こういう考え方をしているということを是非御理解をお願いしたいと思います。
○小林正夫君 今のこの時代において企業に努力義務といっても、本当にそれを実施できる企業は少ないと思いますよ。
  私は、八十時間、一か月の労働時間が八十時間を超えたところに線引きしたということは、実は、平成十七年十一月に労働安全衛生法を改正したんです。そのときの論議は、一か月当たり八十時間を超える場合には医師による面接指導を実施するということの内容だったんです、改正内容は。どうしてそうなったかというと、労働時間が一か月八十時間を超える状態が数か月続くと過労死や過労自殺、精神障害になることが明らかになったから、この間、労働安全法を改正したんですよ。ですから、八十時間をもって時間外の割増し率を五〇%に上げるなんということは、私から言わせれば過労死手当、過労死手当ですよ、これは。だから、とんでもないということだけ指摘をしておきたいと思います。
  もう一つ、最低賃金の話をしたいと思います。
  これは、私は、これだけ非正規雇用が多くなって、時間給で働いている人たちも自分たちの生活のための生計費、このようになっている人が非常に多いんだと思うんですね。十八歳の単身という人じゃなくて、やはりこの最低賃金は労働者とその家族の生計費、これをベースに置いて考える時代に来ているんだと思うんですよ。
  これが、実は表がありますけれども、日本の最低賃金というのは、ここに書きましたけれども、大変、アメリカ、フランス、イギリスと比べて低いんです。アメリカはこれから、日本が一〇〇とするならば一四五の位置まで上げようということが既に決まっておりますから、これを見ていただいただけでも本当に最低賃金というのが低いのが分かると思います。
  そこで、総理は成長力底上げ戦略、こういう施策を打ち出していますけれども、私は、最低賃金こそ底上げしないと、働いても働いても生活保護以下にとどまってしまう。仮にですよ、仮に一時間千円として年間二千時間働いたとしても、その方の年収というのは二百万ですよ。総理は、日本の最低賃金は幾らぐらいが適当だとお思いでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 最低賃金について申し上げれば、近年、最低賃金制度が言わば生活保護と比べても、ある意味セーフティーネットとしての機能を十分に果たしていないと、こういう観点から見直しを行うことにいたしたわけでございます。
  そしてさらに、我々としては、この成長力底上げ戦略を進めていくことによって、将来、中小企業等々においても生産性を引き上げていくという中において、当然それに倣ってこの最低賃金も上がっていくような仕組みをつくっていきたいという中において、円卓会議をつくって、その議論を各地域における最低賃金の審議会における議論のこれは正にベースにしていきたいと、このように考えているところでございます。
○小林正夫君 今回政府が出された中身と、私たち民主党が考えている労働政策の違いについて一覧表にまとめてみました。時間の関係で逐一説明ができませんけれども、やはり長時間労働の是正には、残業の割増し率を労働時間、時間外が発生した段階から五〇%に上げる、そして十一時間の休息時間という制度を設ける、これが必要だと思います。さらに私たちは、最低賃金の関係も、労働者とその家族が生活ができるような最低賃金を目指すべきだと思います。
  是非、自民党の私この案では、今私たちは国際競争に勝てるような国になったかもしれませんけれども、本当にそこに働いている労働者が過酷な労働をしてきて今日に至ったわけですから、今の時代、これからの時代はその過酷に働かした労働者の労働条件を回復する、この私は時代に入っているんだと思います。今の政府の提案を見ていても、全くそういうものが改善できるとは私は思えません。そのことを指摘して、私の質問を終わります。

・・・<以下省略>・・・




 

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