衆議院・参議院会議録情報 抜粋

衆議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第5号 平成19年4月4日(水曜日)

平成十九年四月四日(水曜日)

    午前九時三十五分開議

・・・【中略】・・・

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海底資源開発推進法案(細野豪志君外三名提出、第百六十三回国会衆法第一五号)及び排他的経済水域等における天然資源の探査及び海洋の科学的調査に関する主権的権利その他の権利の行使に関する法律案(細野豪志君外三名提出、第百六十三回国会衆法第一六号)の撤回許可に関する件

 産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)

 中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律案(内閣提出第一四号)

 企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律案(内閣提出第一五号)

・・・【中略】・・・

○塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、産業活力再生法案、産活法案に関連して質問をしたいと思います。

・・・【以降、途中まで略】・・・

 その上で、サービス産業においての重点六分野、その一つとして、ビジネス支援サービスというのを挙げております。その中に派遣・請負業もあるわけですが、政府として、この派遣・請負業の拡大も重点六分野の一つの要素として支援をしていくということだと思いますけれども、派遣・請負業の拡大を支援するというお立場だと思うんですが、確認させてください。

○肥塚政府参考人 派遣・請負業も含んでおりますけれども、ビジネス支援サービスという場合には、私どもは、企業活動と密接にかかわる、企業活動を代替するサービスを行うという分野を指しておりまして、具体的には、極めて広いというふうに考えております。

 一つは、コンサルティングサービスでございますとか広告サービスのような経営支援サービス、あるいは、研究開発の受託ですとかデザイン受託、製造請負のような直接的に業務を実施するようなサービス、それから三番目に、ITサービスあるいは人事業務の代行、経理、財務の業務代行というような間接業務の支援サービス、こういうような三つの類型を考えておりますけれども、幅広い分野を含んでいるというふうに考えております。

 ユーザー企業は、こういうビジネス支援サービスを活用することで経営資源をコア業務に集中する、ビジネス支援サービスを提供する側は、専門性を高めて、単なる代替以上の生産性の高いサービスを提供するという可能性があるというふうに考えております。

 私ども、ビジネス支援サービスを含めまして、サービス分野においては、先ほど申し上げましたように、人材育成、あるいは科学的な、工学的なアプローチ、あるいは産学連携、製造ノウハウの活用といったようなことを通じて、サービスの効率性を高める取り組みですとか、あるいは付加価値を高めていく取り組みというのが必要だろうというふうに考えております。

○塩川委員 質問にお答えいただいていないんですが、派遣・請負業を含むビジネス支援サービスについて「サービス産業の革新に向けて 中間とりまとめ」でも例示しておりますけれども、直近で雇用規模が六百三十万、二〇一五年で六百八十一万人ですから、派遣・請負業を含むビジネス支援サービスが将来拡大をするものだということを前提に支援をするということは確かですね。

○肥塚政府参考人 ビジネス支援サービスは、先ほど申し上げましたように、企業活動の代替を行うサービスということでありますので、派遣サービスのようなものもビジネス支援サービスの一分野というふうに考えております。

 なお、一言申し上げますと、労働者派遣サービスなどの一部のサービス分野において労働力の大宗を非正規社員に依存しているというようなことで、自分の意に反して低所得の非正規社員にとどまるというような者が多く存在するような場合には、将来の格差の固定化につながらないように、非正規社員のスキルアップのための訓練あるいは正規社員への登用といったようなことを一層促進するというようなことを通じて生産性の向上を図っていくということも必要だろうと考えております。

○塩川委員 お答えにならないんですけれども、ここにありますように、ビジネス支援サービス全体に拡大するだろうということを前提に支援をされておるわけで、この間も拡大しているわけですね。この「中間とりまとめ」でも、労働者派遣サービスというのが九〇年から直近にかけて三倍にふえているということですから、今後についても拡大するということですし、最近の経産省の企業行動基本調査速報などにおきましても、正社員等は減りながら、派遣については、この一年間で一七・一%も急増するという形で実態としてはふえておりますし、将来さらに拡大することになるわけです。

 そこで、大企業の製造現場におきまして、今非正規の話がちょっと出ましたけれども、正社員から派遣、請負への雇用の置きかえが実際には行われてきた。正規雇用から非正規の派遣、請負などへの雇用の置きかえに産活法も使われてきたんだということを一つ指摘したいと思っております。

 例えば松下電器産業であります。〇一年の二月に経済産業省が松下電器の事業再構築計画を認定しました。これは、プラズマディスプレイ事業の生産性向上を目的としたものであります。今の松下のプラズマテレビですね。これの立ち上げのときの支援ということでした。その際に、子会社として松下プラズマディスプレイ社の設立ということがこの計画にも掲げられています。

 そこで、経産省に確認でお聞きしますけれども、この〇一年二月の松下の事業再構築計画、認定を受けた計画の中で「事業再構築に伴い出向又は解雇される従業員数」についての記述があるんですが、これはどのように書かれているのか、紹介していただけますか。

○肥塚政府参考人 出向予定の従業員数、松下電器(株)から松下ディスプレイ(株)に五百八十一名の従業員の出向が予定されている。出向形態は在籍出向で、出向による雇用条件の変更はない。解雇予定の従業員数、解雇の予定はない。

 以上でございます。

○塩川委員 この松下の本体から子会社の松下ディスプレイに五百八十一名の従業員の出向があるわけですね。出向は在籍出向だ、転籍じゃないと。それから、出向による雇用条件の変更はないということです。これは計画にあるわけです。

 もう一点、同じ計画書で、事業再構築計画に伴って松下ディスプレイ社に新規採用される従業員数というのも書かれているんですけれども、この計画にあります松下ディスプレイ社に新規採用される従業員数は何人と書かれていますか。

○肥塚政府参考人 新規採用する従業員数、松下電器株式会社十名、松下プラズマディスプレイ株式会社ゼロ名でございます。

○塩川委員 今ありましたように、新しく立ち上がった子会社の松下ディスプレイ社への新規採用の従業員数はゼロなんです。新しく会社が立ち上がったけれども、新採用はゼロ。つまり、社員は在籍出向で本体から来るわけですね。それが今言った五百八十一名です。

 それだけで賄えるかというと、そうではなくて、そこには大量の請負労働者が入ってくるわけです。ですから、新規採用がなく、松下の正社員の在籍出向で立ち上げられて、それ以外の製造現場の労働者は請負労働者だったわけです。

 ですから、立ち上がって三年後の〇四年九月時点で、大阪の茨木工場は、プラズマディスプレイの工場ですけれども、P1、P2、第一、第二工場合わせて正社員が五百人。これは出向ですね。それ以外に、社外工、請負労働者が千四百人存在をするということでした。つまり、松下プラズマディスプレイ社に大量の派遣、請負労働者が働いているわけです。この間、松下は大リストラを行いまして、合わせてこの間に人員削減で二万二千人。結果として、正社員のリストラの他方で派遣、請負労働者が大量に雇用されるという形で、正社員を非正規に置きかえるということが行われたわけです。

 その請負労働の実態がどうかということについて、これは去年の八月一日付の朝日新聞で、「松下系社員 請負会社に大量出向 違法性回避策か」という見出しの記事があります。ここにもありますように、「「松下プラズマディスプレイ」が今年五月、」去年の五月ですね、「茨木工場内でパネル製造を委託する請負会社に、同工場勤務の松下社員を大量に出向させたことが分かった。同工場は昨年七月、請負労働者を直接指揮命令する「偽装請負」で行政指導を受けている。今回の出向は、これまでの労働実態を変えないまま、松下社員による指揮命令の違法性を形式的に回避したものだ」と指摘をしております。

 つまり、実質労働は請負会社がやっているんだけれども、請負会社だけでは仕事ができないから、指揮命令をするために請負会社に松下の社員が出向するという形をとって、いわば請負会社の一員になるわけですから指揮命令ができるようになる。つまり、偽装請負を回避するためにこういった偽装出向が行われていたということがありました。

 それで、結果として、去年の十月二十七日に厚生労働省は、松下の社員の請負会社への大量出向については、出向の実態というのが職業安定法に違反する労働者供給事業だ、出向型の偽装請負だとして是正指導を行っております。

 ですから、そこで聞きますけれども、この松下の認定計画にある「出向形態は在籍出向で、出向による雇用条件の変更はない」としていることに反して、現場の実態では、松下プラズマディスプレイ社に出向させた松下の社員をさらに請負会社に偽装出向させていたわけですね。認定計画にも反する違法な実態があったわけですけれども、こういう事態について、認定をした経済産業省としてどのように把握をしていたのか、どのように対応したのか、お聞かせください。

○肥塚政府参考人 私どもとしましては、出向予定の従業員数がその後増加しているという報告は受けておりますけれども、「出向形態は在籍出向で、出向による雇用条件の変更はない」、その部分については変更がないというふうに聞いております。

○塩川委員 そういう意味では、経産省に報告しているのと違う実態というのが松下の側にあったわけであります。こういったときにどうするのかということが問われるんじゃないでしょうか。

 大臣に伺いますけれども、大臣は、九九年に産業活力再生法ができた際に、当時労働大臣でいらっしゃいました。委員会でも連合審査がありまして、経済産業委員会と労働委員会の連合審査の場で大臣も答弁に立たれております。

 そこで伺いますけれども、そもそも産業活力再生法に基づいて国が認定をする、そういった認定を受けた企業が登録免許税などの減税も受けているわけですね。今回の松下の場合でいえば五千九百万ぐらいだそうですけれども、そういう意味での恩恵を受けているわけです。しかし、そのやっている中身が、計画で出しているのと違うようなことを生み出している。偽装出向、偽装請負のような事態が生まれているということが実態であります。そこで計画と異なることが行われているのに、現状では、経産省として把握もしていないということでした。

 当時、九九年の議論の際にも、もともと法案の中に、従業員の地位を不当に害するものではないことという一文も当然入っておりますし、それからあと、衆議院の商工委員会の附帯決議においても、関連中小企業等の労働者を含めた雇用の安定に最大限の努力を払うという点では、ある意味では、関連中小企業という点では、この下請の請負会社なども当然そういうものに含まれるわけです。

 そういう意味でも、雇用の安定についてしっかりとした責任を、偽装請負や偽装出向などの事態はまかり間違ってもあってはならないということが前提だと思うんですけれども、こういった事態についてどう考えるのか。こういうものについてきちっとチェックをする必要がそもそもあるんじゃないのか。大臣のお考えをお聞かせください。

○甘利国務大臣 偽装請負等、法令に反するようなことがあれば、これは直ちに改善をさせていくというのは当然のことであります。

○塩川委員 産業活力再生法に基づいて認定を受けた計画で、雇用の問題についてきちんと記述をしている、それと違うような実態になっているということについて何も言わなくていいのか、そういう実態についてチェックをする必要があるんじゃないのか、その点をお聞きしているんですが。

○甘利国務大臣 これは企業の事業再編を促す仕組みでありましたけれども、それがきちんと法律どおりにやっておらないというのであるならば、それは当然正していくべきだと思いますし、当時どこまで通産省が把握できたのか、ちょっと私も確認をしておりませんけれども、法の施行を担当する役所としては、きちんと法律の規定どおりに事がなされていくよう注意を払うべきだということは当然であります。

○塩川委員 そういう意味では、済んだ話、計画は立てて、それによっていろいろな恩典、特典を受けるけれども、それが過ぎた後、実際にリストラですとか偽装請負のようないろいろな違法行為が行われていても、それについてチェックもしないということでは、これはやはりバランスを欠く問題ではないかというのは率直に思います。

 現実に、〇一年以降、松下が計画の認定を受けて以降〇五年までに、グループ全体で労働者の削減数が二万七千人に上ります。ですから、実際に把握している数字と違ってくるわけですよ。

 そういう意味でも、一方で正社員を減らして、他方で松下プラズマディスプレイのように大量の派遣、請負労働者に置きかえる、こういうやり方はやはり許すわけにはいかない。偽装請負を告発した非正規の労働者が現場で解雇されるような、労働者の雇用が奪われるような事態もあるわけですから、産活法が非正規雇用、不安定雇用を拡大するツールとして使われる懸念というのはぬぐえないということは重ねて申し上げたいと思います。

 その上で、派遣・請負業の話を進めたいのですが、派遣・請負業を活用する大手ユーザー側の実態がどうなっているのかということを、前回も紹介しましたキヤノンを例にお聞きしたいと思っています。

 大臣に伺いたいんですが、この間の答弁で、生産のフレキシビリティー確保の観点から派遣はあり得るという話をされておりました。季節調整などもあるだろう、そういうお話があったんですけれども、このキヤノンの製造現場は今はどうなっているか。

 例えば読売新聞などでも、キヤノングループの製造部門では、従業員の七五%に当たる約二万一千四百人が間接雇用、派遣が一万三千、請負が八千四百人であります。これを直すと、つまり、キヤノングループの製造部門には二万八千五百人ぐらいの人がいて、そのうち二万一千四百人が間接雇用の派遣や請負だ、残りの七千百人が直接雇用ですけれども、直接雇用の中には期間工、期間従業員も含まれているんですね。ですから、いわゆる正規雇用、正社員というのは、この七千百人よりもっと小さい数字というのが実態だと思います。

 そういう点でも、職場の圧倒的多数が非正規、期間工、派遣、請負と言われる状況になっている。私が現場に行きました大分キヤノンでも、キヤノンの方の説明では八五%が外部人材を活用しているという話ですから、そういう意味では非常に高い比率になっているわけです。

 こういった七五%とか八五%という間接雇用、非正規雇用の活用というのは、大臣もおっしゃっているフレキシビリティーの範囲を大きく逸脱するものになっているんじゃないのかと率直に思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

○甘利国務大臣 今、具体的な数字に言及をされましたが、私の考え方は、ベース労働になる雇用者、労働者は極力正規雇用であってほしいと思いますし、フレキシビリティーの部分は、なかなか正規ですと、その人の労働力が要らないときも抱えていなきゃならないということがありますから、非正規を活用するというのは選択肢としてあり得ると思います。

 私が申し上げているのは、安直に調達コストが安いから非正規を使うという発想であってはいけないんじゃないでしょうかと。生産のフレキシビリティーとか、あるいは特殊な、特異な技術力が一時的に必要となるというようなときに効力を発揮するということであります。

 今の全体の数と、正規、非正規の分類でいうと、非正規が随分多いんですねという印象であります。ただ、基本は、競争の中で企業が生き残ってくれなきゃいけない、大もとの雇用まで失われちゃいけないというのがまず第一の選択でありますから、会社が根こそぎ倒れちゃったら、もともとある正規雇用まで全部倒れてしまう、そういうことは避けなきゃならない。そういう避けなきゃならない範囲で、できるだけ正規の雇用を、ベース労働としての雇用をふやしてもらいたいというのが私の思いであります。

○塩川委員 キヤノンは過去最高の収益を更新しておりまして、株主の配当もふやして、役員の報酬もふやしているわけですよ。それで現場がこれだというのは、やり過ぎなんじゃないかと率直に思うわけです。

 それで、大臣も繰り返しおっしゃるように、安直に低廉な労働を求めることのみを動機とする派遣や請負の拡大は適当ではないと、そうだと思います。

 では、キヤノンの場合はどうかということなんです。

 資料を配付したんですけれども、済みません、ちょっと順番が逆で、一番後ろ、三枚目に、これはキヤノンの内部文書なんですが、「外部要員適正管理の手引き」、去年の二月ぐらいにまとめたものだと思いますけれども、キヤノン株式会社の人事本部がつくったものであります。現場に、外部要員活用の際にこれを参考にしろということで出しているものですけれども、2の「請負の拡大と問題点」で、二つ目の段落、つまり五行目を見てほしいんです。「キヤノンにおいても一九九〇年代前半までは、生産現場において多くの期間従業員を直接雇用していましたが、コスト面や管理負荷の軽減といったメリットから、期間従業員から請負労働者へのシフトが起こり、多数の請負労働者を活用するようになりました。」こういうふうに述べております。

 つまり、キヤノンにおいては、以前は期間従業員、これ自身も低廉な労働力に当たると思いますけれども、それよりもコスト面でメリットのある請負労働者に切りかえてきたというわけですよ。そういう点では、まさに大臣がおっしゃるように、安直に低廉な労働を求めることのみを動機とする請負の拡大がキヤノンにおいて行われているということじゃないでしょうか。こういうことについて、率直にどうお考えになりますか。

○甘利国務大臣 派遣や請負の労働の方が圧倒的にコストが安いということであると、企業側にとってはそういう思いに駆られるというのは当然起こり得ることだと思います。

 そこで、安倍内閣では、同一労働、均衡待遇ということを掲げています。同一労働を同一としないのはなぜかというと、正規には正規の責務、ロイヤリティーとか、あるいは業務命令に対応する責任であるとか、あるいは残業の要請があるとか転勤とか、いろいろなことがあると思いますが、そういうところの部分は考慮して、それらを除いた対等待遇ということに同一労働、均衡待遇というのはなっているわけでありますが、それを進めていくということが抜本的な策になろうかと思います。

 つまり、安直に低廉な労働力を求めるということではなくて、事業のフレキシビリティーへの対応とか特殊技能への一時的な対応とか、そういうことの選択肢をふやす、あるいは働く側の、一時的に働くけれどもそれから先はちょっとやりたいことがあるとか、そういう双方のニーズにこたえられるという仕組みとして健全に機能していくことが大切かと思っております。

○塩川委員 私の質問に改めてお答えいただきたいんですが、こういった安直に低廉な労働を求めることのみを動機とする請負の拡大が行われているというキヤノンに対して、一言申し上げることはありませんか。

○甘利国務大臣 企業の競争力と、そして働く者の待遇の改善に向けて、我々も努力をしていきますし、企業側もしっかりと対処していただきたいと思っております。

○塩川委員 終わります。

○上田委員長 次回は、来る十日火曜日午前九時十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会




 

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