衆議院・参議院会議録情報 抜粋

参議院ホームページの会議録から一部抜粋したものを、こちらのホームページに転記致しました。

第166回国会 本会議 第26号
平成十九年五月十八日(金曜日)
    午前十時一分開議

・・・【中略】・・・ 

○本日の会議に付した案件
  一、雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部
   を改正する法律案(趣旨説明)
  以下 議事日程のとおり

・・・【中略】・・・

○議長(扇千景君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。津田弥太郎君。
    〔津田弥太郎君登壇、拍手〕
○津田弥太郎君 民主党の津田弥太郎でございます。
  現在の様々な社会不安をもたらした最大の要因は、一体何でしょうか。私は働き方のゆがみではないかと考えています。三人に一人が非正規雇用の労働者であること、若者を中心としたフリーターが平成十七年には二百一万人に達したこと、さらにはうつ病など精神疾患による労災認定が四年間で二倍以上に増加したことなど、正に小泉・安倍政権の雇用対策が根本から誤りであったことを物語るものであります。
  このような基本認識の下、私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま提案されました雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律案に対し、質問をいたします。
  冒頭、柳澤厚生労働大臣にお尋ねをいたします。
  政府が戦後最長の景気拡大を喧伝し、多くの企業が実際に最高益を更新する中で、なぜ日々の暮らしが豊かにならないのでしょうか。大多数の国民の素朴な疑問に対し、厚生労働大臣から明確な回答をいただきたい。
  さて、柳澤大臣はワーキングプアという言葉を御存じですね。かつて石川啄木は、「はたらけどはたらけど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る」と嘆きました。正社員並みにフルタイムで働いても生活保護水準並みの収入しか得られず、そのために結婚もできない現代の若者たちの姿を見るにつけ、私はこの歌に思いを致します。
  現代のワーキングプアは、労働法制における相次ぐ規制緩和に起因するところ大でありますが、このような規制緩和を主導した政府の一員として、柳澤大臣は現下の状況をどのように受け止めておられるのでしょうか。率直な感想をお聞かせをいただきたい。
  また、懸命に働いてもアパートの敷金や家賃さえ払えず、やむを得ず二十四時間営業のインターネットカフェなどで夜を明かし、日雇派遣で生活を維持するネットカフェ難民の急増は、もはや看過できない社会問題であります。こうしたネットカフェ難民の実情は、まさしく新たなホームレスにほかならず、直ちに適切な手だてを講ずる必要があります。
  去る四月六日、ホームレス自立支援法に基づく本年一月時点の全国の路上生活者の概数が公表されました。その数は一万八千五百六十四人と、四年前に比べおよそ七千人弱減少しています。一方で、ネットカフェ難民は全国でおよそ何人程度と政府は把握をされているのでしょうか。また、本法案が成立した場合、こうしたネットカフェ難民に対して新たにどのような具体的な対策が講じられるのでしょうか。厚生労働大臣より明快な答えをいただきたい。
  さて、景気の回復と団塊世代の大量退職などもあってか、今春の大学生の就職率は調査開始以来、最高を記録をいたしました。また、就職を希望した高校生の就職率も五年連続で上昇をしています。このことは率直に喜びたいと考えます。
  しかし一方で、いわゆる就職氷河期、つまりバブル崩壊後の長期にわたる不景気の時代に学校を卒業した人たちは、十分なキャリア形成をできないまま三十代後半に差し掛かっております。生まれた時期が何年間か異なるために生じたこのような悲劇的状況を解決することは政治に課せられた重要な使命であります。
  今回の法律案では、青少年の能力を正当に評価するための募集方法の改善などを事業主の努力義務とし、国は必要な指針を策定するとしておりますが、対象となる青少年の範囲は三十四歳以下というふうにされており、三十代後半がカバーをされておりません。三十五歳以降は無視していいのですかということであります。これらの年代についても具体的な対策をお示しいただくよう、厚生労働大臣に強く求めるものであります。
  また、単に事業主の努力義務にとどめるだけでなく、実効性をどのようにして企業に持たせるのでしょうか。あわせて、柳澤大臣に明快な答弁を求めます。

・・・【中略】・・・

  次に、募集・採用における年齢差別禁止の問題についてお伺いいたします。
  年齢を問わない求人が増えれば、就職氷河期に希望の職に就けなかった若年層のみならず、子育てを終えた女性や働く意欲のある高齢者など、多くの人が就職できる機会が広がることが期待をされるところであります。今回、年齢差別について現行法の努力義務規定を義務規定にする改正が盛り込まれていることは、この問題を大きくリードしてきた民主党としても評価をすることにやぶさかではありません。
  しかし、政府案の大きな問題は、差別禁止の適用範囲が厚生労働省令で定められることにあります。例外規定、排除規定ばかり増やされ、結局はざる法になることが強く危惧をされております。本来、法案の実効性を大きく左右する差別禁止の適用範囲については、法案に明記し、国会の場で徹底した審議を行うべきと考えますが、厚労大臣の御所見を賜りたい。
  ところで、この年齢制限の禁止については、公務員は適用除外にされています。民間の事業主には厳しい義務化を押し付けて、なぜ公務員だけ例外にするのですか。これでは余りにも不公平であり、大変強い怒りを覚えるわけであります。
  国家公務員法におきまして平等取扱いの原則が定められていながら、実際の採用試験では受験資格としておおむね二十七歳から三十三歳の上限が定められているのはいかなる理由によるものでしょうか。来月から募集する国家公務員V種と同程度の限定的な再チャレンジ試験にとどまらず、そもそも優秀な人材を集めるためには、公務員の採用試験を年齢不問とし、募集職種もT、U種を含めて多様な中途採用の在り方を検討すべきです。公務員の募集・採用に関する年齢制限はいつまでに禁止されるのでしょうか。それとも、現在の政府・与党の下では永遠に不可能なのでしょうか。総務大臣の明快な答弁を求めます。
  次に、外国人雇用状況の届出に関しお尋ねをいたします。
  今回の法案では、雇用主に対し、外国人労働者の雇入れ及び離職時に雇用状況の届出を義務化いたしましたが、こうした雇用管理の在り方の議論に先んじて、本来ならば、政府自身が外国人労働者に関する今後の我が国のビジョンを提示をしなければなりません。ところが、日系外国人の問題と並んで現下の最重要課題である外国人研修・技能実習制度の見直しの方向性に関し、法案が既に衆議院を通過したこの時期になって立て続けに厚生労働省そして経済産業省の研究会から取りまとめが公表をされましたことは、甚だ遺憾であります。
  この制度については、政府部内では遅くとも平成二十一年通常国会までに関係法案の提出などの措置をすることとされておりますが、両省の基本的姿勢が大きく異なる状況で、果たしてどのような法案を目指していくのでしょうか。厚生労働大臣、経済産業──いない、大臣よりお答えをいただきたい。
  また、同制度については、今週の火曜日に長勢法務大臣が独自の私案を発表をしております。そもそも、私案とはどのような位置付けを有しているのでしょうか。また、厚生労働省、経済産業省、それぞれの取りまとめのどこに問題があるからこうした私案を発表せざるを得なかったのでしょうか。法務大臣から率直な答弁をいただきたいと思います。
  最後に、地域雇用の問題についてお尋ねをいたします。
  有効求人倍率や完全失業率、あるいは賃金構造基本統計調査における給与額、いずれの統計を見ましても、一部の地域と東京など大都市圏との地域格差は年々拡大をいたしております。厚生労働省に求めたいのは、若者が東京などの大都市に移らなくても、生まれ育ったふるさとに住み続けたくなる働き方モデルを地域公共団体と協議をして一日も早く提示をすることであります。本法案により、そのような働き方モデルが実際に提示できるようになるのでしょうか。端的にお答えをいただきたい。
  さて、この法律案をめぐりまして、民主党は衆議院において雇用基本法案など独自の対案を提出しました。
○議長(扇千景君) 津田君、時間が超過しております。簡単に願います。
○津田弥太郎君(続) 我が党の対案は、自由民主党の首相経験者二名が採決の際に起立してしまうほどのすばらしい内容でありましたが、残念ながら、多勢に無勢、政権党でないゆえの悲しさ、いずれも廃案になりました。しかし、これらの法案の中で提起した内容は、いずれ政府案に採用しなければならなくなる重要なポイントを押さえたものと確信をしております。
  働き方のゆがみを是正し、雇用対策に文字どおり万全を期すためには、一日も早い政権交代の実現が不可欠であり、そのために民主党は……
○議長(扇千景君) 簡単に願います。
○津田弥太郎君(続) 結束して邁進することをお誓いし、私の質問を終わります。(拍手)
    〔国務大臣柳澤伯夫君登壇、拍手〕
○国務大臣(柳澤伯夫君) 津田弥太郎議員からいただきました御質問にお答え申し上げます。
  経済社会の現状に対する認識につきまして、まずお尋ねがございました。
  現在、日本経済は、平成十四年一月以降、長期にわたる景気回復の過程にございますが、今回の景気回復は、企業が抱える債務、設備、雇用の三つの過剰が克服される中での回復でありましたために、正規、非正規雇用の問題や地域間で回復にばらつきが見られるといった課題が残されております。しかし、今後は企業部門の好調さが家計部門へと波及していくものと考えられ、また、政府の施策におきましてもその方向を促進していくべきものと考えております。
  私といたしましては、本日御審議いただいている雇用対策法及び地域雇用開発促進法を始め、働く人たちのための一連の労働法制の整備に全力で取り組むことによりまして、正規雇用者数の四四半期連続の増加や新規学卒者の就職内定率の改善などといった雇用面におきます改善の動きを確実なものとし、国民の働き方と暮らしをより良くしてまいりたいと考えております。
  ワーキングプアと労働法制の規制緩和についてのお尋ねがございました。
  労働者派遣法など労働法制に関する規制改革は、経済・産業構造の変化や価値観の多様化などによりまして企業や労働者が多様な働き方を求めるようになったことを背景として、働き方の選択肢を拡大するために必要な改革を行ったものと認識をいたしております。しかしながら、フリーターなど若年者を中心とした非正規雇用の増加は将来の格差拡大や少子化につながるおそれもあり、十分に注意をしていく必要があると考えております。
  政府といたしましては、長期雇用を希望する者ができる限りそうした形の雇用に移行し、また、どのような雇用形態であっても納得して働ける環境の整備に向けまして各般にわたる対策を推進してまいりたいと考えております。
  住居を失い、終夜営業の喫茶店等で寝起きをしている労働者についてお尋ねがございました。
  この問題に的確に対応するためには、まずその実態を把握することが重要であると考えておりますが、これらの労働者はその外見から一般の利用者と区別が付かないことなどから、把握が困難な面がございます。このため、関係者と調整を図りながら、的確な把握方法を見付け出しまして、早急に実態把握を行ってまいりたい、このように考えております。
  これらの者に対する対策につきましては、把握された実態を踏まえて具体的に検討する予定でございますが、これらの者には、まず住居を確保するための相談支援とともに、より安定的な就労機会を確保するための支援を行っていくことが政策の中心課題であると考えております。
  次に、青少年の応募機会拡大の努力義務の対象についてお尋ねがございました。
  青少年につきましては、今回、特に応募機会の拡大の努力義務を設けたのは、青少年については有効求人倍率が良好であるにもかかわらず、完全失業率が高い状態にあることなどを考慮したものでございます。一方、三十五歳から四十四歳の層につきましては、有効求人倍率は比較的良好であり、完全失業率も全体の平均と比べて必ずしも高くない状況にございます。このため、現時点での法的な措置については、三十四歳までの青少年を重視したというものでございます。
  三十五歳以上の年齢層につきましては、個々の求職者の状況を踏まえ、ハローワークにおいてきめ細かな支援を行ってまいりたいと、このように考えております。
  あわせて、青少年の応募機会拡大の努力義務の実効性の確保についてお尋ねをいただきました。
  御指摘の努力義務の履行に関しては、事業主が適切に対処するために必要な指針を大臣告示として策定いたしますとともに、これに基づき、ハローワークが事業主に対し強力に助言、指導を行うことにより、青少年の雇用機会の確保を実効あるものとしてまいりたい、このように考えております。
  平成十三年の雇用対策法の改正による募集・採用時の年齢制限緩和に係る事業主の努力義務導入が、その後、大きな成果につながったことから、今回の改正につきましても相当の効果が期待できるものと考えております。
  ワーク・ライフ・バランスについてお尋ねがございました。
  少子化が進む我が国におきまして、だれもが仕事と生活の調和が取れた働き方ができる社会を実現することは重要な課題であると考えております。雇用対策法は、就職の促進、雇用の継続等を内容とするものでございまして、今回の改正では国の講ずべき施策として、ワーク・ライフ・バランスに近いものとして雇用管理の改善に触れるにとどまっておりますが、ワーク・ライフ・バランスは、むしろ、労働時間、労働条件といった観点が重要であると考えることから、これを直接規定することはこの法律の上ではなじまないと考えたところであります。
  厚生労働省といたしましては、労働時間等設定改善法に基づく労使の自主的な取組を通じた所定外労働の削減等を進めるとともに、今国会に長時間労働の抑制などを図るための労働基準法改正案を提出いたしておりまして、これらを通じまして具体的にワーク・ライフ・バランスを実現するための方策、施策を講じていきたいと考えております。
  募集・採用における年齢制限禁止の例外事由の定め方についてお尋ねがございました。
  政府案では、募集・採用における年齢制限禁止を義務化するに当たりまして、合理的な理由があって例外的に年齢制限が認められる場合を厚生労働省令で規定させていただくことといたしております。これは、社会経済情勢の変化に応じて機動的に見直しを行えるよう、法律ではなく省令で定めることとしているものであります。
  現行法に基づく年齢指針では、例外事由として、特定年齢層の就業が法令により禁止されている場合など十項目を定めておることは議員も御案内のとおりでございますが、新たに定める省令におきましては、企業の雇用管理の実態も踏まえまして、必要最小限の場合に限定してまいる考えであります。
  研修・技能実習制度の見直しにつきましてのお尋ねがありました。
  研修・技能実習制度の見直しにつきましては、厚生労働省の制度研究会の中間報告におきまして、技術移転を通じた国際協力という目的は今後とも維持した上で、一部に見られる劣悪な労働環境、実習環境の改善を図るとされております。厚生労働省といたしましては、この方針を基本として、今後、関係各省と幅広く意見交換を行い、見直しを行ってまいる考えでございます。
  地域雇用の問題について最後にお尋ねがございました。
  若者が生まれ育ったふるさとに住み続けられるためには、その地域に働く場が確保されることが不可欠であります。このため、雇用情勢に地域差が見られることを踏まえ、地域雇用開発促進法を改正し、雇用情勢の厳しい地域を重点に働く場をつくり出すための支援をしていくことといたしております。その際、特に地方公共団体が地域の関係者と協議会を組織し、その協議に基づき自発的に新しい雇用を創出する計画とその実行に対し、強力な支援を行う措置を盛り込んでいるところでございます。
  以上でございます。(拍手)
    〔国務大臣菅義偉君登壇、拍手〕
○国務大臣(菅義偉君) 国家公務員の採用試験の年齢要件等についてお尋ねがありました。
  公務員の募集及び採用に関しては、国家公務員法及び地方公務員法の平等取扱いの原則の下、合理的理由のない差別は禁止されているところであります。
  国家公務員採用試験における年齢要件については、採用試験を所管する人事院において、民間の状況や公務における人材の採用及び育成の在り方などを踏まえながら、必要かつ合理的な理由に基づき設定をされていると承知をいたしております。
  なお、国家公務員に優秀な人材を確保する観点からは、試験採用のみならず、選考による中途採用や官民交流等も活用しつつ、多様で有為な人材を確保していくことが重要であると考えております。(拍手)
    〔国務大臣山本有二君登壇、拍手〕
○国務大臣(山本有二君) 外国人研修・技能実習制度につきまして、経済産業大臣に対するお尋ねがございました。経済産業大臣臨時代理としてお答えを申し上げます。
  本制度は、製造業を始めとする中小企業を中心に幅広く活用されており、経済産業省といたしましても、本制度の適正化と、それを前提とした制度の高度化を図る観点から、今後の議論のたたき台として、有識者、実務者から成る研究会で議論し、報告書を取りまとめました。
  今後、厚生労働省の報告書等も十分に参考にさせていただきまして、より良い制度を構築すべく、関係省庁と議論を深めてまいりたいと存じております。(拍手)
    〔国務大臣長勢甚遠君登壇、拍手〕
○国務大臣(長勢甚遠君) 津田弥太郎議員にお答え申し上げます。
  外国人研修・技能実習制度に関する私案についてのお尋ねがありました。
  外国人労働者の受入れをめぐっては、専門的、技術的分野以外の分野については原則として受入れが認められていないことについて種々の意見があること、研修・技能実習制度の運用の実態について種々の意見があること、経済の国際化、人口減少社会の到来から内外の流入圧力が高まっていること、一方で外国人労働者が治安や地域の負担の増大をもたらしていることなどから、各方面で多くの議論があるところであります。
  この問題を考えるに当たっては、まず、外国人労働者受入れに関するいかなる制度も、入国・在留制度、雇用管理制度の整備なしには円滑、安定的な実施はできないものであり、受入れ制度はこれらの制度の整備に応じたものとして検討されるべきものであると考えております。
  現在、政府において入国・在留管理体制の整備について検討を進めており、これらを踏まえた受入れ制度の見直しの議論を進める時期に来ていると考えます。その場合、外国人労働者受入れ制度をどう考えるかは国の在り方の将来にもかかわる問題であり、多岐な観点からの検討が必要であると考えております。
  今回、公表されました厚生労働省及び経済産業省の報告は、現在の研修・技能実習制度を基本とするものと思いますが、研修・技能実習制度は国際技能移転を目的としているものであることから、必ずしも実態と合致していないのではないか、そのことが種々の問題の原因となっているのではないかという意見もあるところであります。そこで、制度の目的を国際技能移転に限定しない制度とする場合にはどういうことになるのか、我が国の雇用失業に対する悪影響、あるいは外国人労働者の長期滞在、定住化、劣悪・低賃金労働などの問題を生じないでどういう制度設計を考えることができるかを検討したいと考えているところであります。
  これに対しては御批判の向きもあろうかと思いますが、この検討が厚生労働省及び経済産業省など政府全体としてのより深められた議論につながり、良い結論を見いだすことに資することができると考えております。(拍手)
○議長(扇千景君) これにて質疑は終了いたしました。





 

目次へ