『判決』


(ケ)
平成10年8月
 
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 同月の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり(ただし、同月4日は出張先からの移動日)、夜勤は同月17日ないし19日、同月27日ないし29日の6日間であって、時間外労働は、同月12日に2時間、同月5日、11日、27日及び28日に各1時間であり、休日勤務は同月1日に9時間半、同月23日に8時間、同月3日に7時間半、同月14日に3時間半、同月2日に3時間であった。なお、同月10日から12日は本来シフトでは夜勤であったが、昼勤にシフト変更された(甲10の11、丙11の6)。
 

 亡勇士は、原告に対し、同期入社の同僚が全て解雇になったため不安である、昼夜交替勤務に戻ったので、眠気と疲れがある旨訴えた。亡勇士は、同月7日、パソコンを購入した(甲43、61)。
 亡勇士は、同月の給与振込から同年10月の給与振込まで、その振込口座から現金を引き出さなかった(甲48の4)。
(コ)
平成10年9月
 
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 同月の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤は同月7日から9日の3日間であって、時間外労働は、同月25日に1時間半、同月14日に1時間であり、休日勤務は同月13日に9時間あった。なお、同月17日から19日、同月28日から30日は本来のシフトでは夜勤であったが、昼勤にシフト変更された(甲10の12、丙11の7)。
 

 亡勇士は、同月11日、東京都内で原告及び寧実と会った。亡勇士は、原告に対し、昼勤であれば食事も規則正しくとれる、胃腸も落ち着いた旨を伝えた(甲61.原告は、亡勇士は付属パソコンのキーボード入力を1本指で行っていた旨を話したとしているが、亡勇士は、同月で付属パソコンを使用するステッパー検査を始めて10か月以上経つこと及び先月には自宅用のパソコンも購入していること並びにH証言に照らすと、前記原告の主張は採用できない。)。亡勇士は、同月、電気主任技術者(2種)資格試験の勉強のために、理論に関する書籍を購入した。
(サ)
平成10年10月
 
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 同月の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤はなく、時間外労働は、同月21日に1時間であった。なお、同月8日から10日、同月19日から21日、同月29日から31日は本来のシフトでは夜勤であったが、昼勤にシフト変更された(甲10の13、丙11の8)。
 

 原告は、子供たち全員が東京近辺に住んでいることから、東京都荒川区東尾久にアパート(以下「原告東京アパート」という。)を借り、そこで子供たちと会うことにした。亡勇士は、同月24日、前記原告の引越しを手伝い、原告東京アパートに泊まった。その際、亡勇士は、原告に対し、食事・トレーニングを工夫しているが、疲労感がとれない、リストラの空気がまだ残っている旨訴えた(甲61)。亡勇士は、同月、電気主任技術者(2種)資格試験の勉強のために、法規に関する書籍を購入した。
(シ)
平成10年11月
 
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 同月の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤は、同月9日から11日、同月19日から21日の6日間であって、時間外労働は、同月21日(夜勤)に2時間であった。なお、同月30日は本来のシフトでは夜勤であったが、昼勤にシフト変更された(甲10の14、丙11の9)。
 

 亡勇士は、原告に対し、出張がないので給料が減ると訴え、同月の後半から、記憶力が低下し、集中できない、激しい頭痛がある、胃痛が再発した旨訴えた。亡勇士は、電気主任技術者(2種)資格試験の勉強において集中力を高めるために、通信販売でα波発生装置を購入した(甲61。原告は、亡勇士が同月27に仕事が大変である、チーフに増員を願い出た旨述べていたとしているが、前記のとおり、同月の時間外労働は1日2時間だけであり、他の月の時間外労働時間と比較すると、前記原告の主張は採用できない。)。
(ス)
平成10年12月
 
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 同月の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤は同月10日ないし12日、同月21日ないし23日の6日間であって、時間外労働は、同月11日(夜勤)及び12日(夜勤)に1時間半、同月10日(夜勤)及び18日に1時間であり、休日勤務同月3日に11時間半、同月4日に8時間、同月30日に6時間半であった。
 亡勇士は、同月2日から5日まで、ステッパーの納入検査のため、台湾に出張していた(甲10の15、乙5の3、丙11の10)。
 

 亡勇士は、同月中ごろ、被告ネクスターより、寮として現在住んでいるアパートに従前一緒に住んでいた同僚が、退職に伴い、そのアパートから出ていったので、別の部屋に引っ越してほしい、次の寮として部屋代が月4万2000円から4万7000円程度の部屋を現在探しており、その中から選んでほしいといわれた。亡勇士は、被告ネクスターから引越し先の報告を待っていたが、その報告がないため、不満を持っていた。
 亡勇士は、テレビやビデオがあると電気主任技術者(2種)資格試験の勉強に集中できないとして、使っていたテレビとビデオを原告東京アパートに送った。
 亡勇士は、同月30日、原告東京アパートに行った。その際、原告に対し、寝ても疲れがとれない、頭が重いなどと体調不良を訴えた。
 亡勇士は、翌31日、原告からの外出の誘いを断り、風呂掃除をしていた。その際、原告は、亡勇士の嗅覚鈍麻に気づき、その後、味覚鈍麻があることも気づいた。原告は、亡勇士が無表情でぼんやりしていることが多くあり、また、甘えが出てきたと思った。亡勇士は、原告に対し、簡単な単語を打ち間違えると訴えた。亡勇士は、同日夜、α波発生装置を使いながら電気主任技術者(2種)資格試験に関する書籍を読んでいたが、その際、手や腕が痺れるといって、ダンベル体操をしていた。
(セ)
平成11年1月1日から同月13日まで
 
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 同期間の亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤はなく、時間外はなく、時間外労働は、同月12日に4時間、同月11日に1時間半、同月9日に1時間であった(甲10の16)。
 

 亡勇士は、同月5日に本件居室に引っ越したが、部屋が狭いこと、ガスコンロではなく電熱器であったこと等に不満を持っていた。
   亡勇士は、原告に対し、目が重苦しい、頭痛がひどい、電子メールに時間がかかると訴えた(甲61)。
(ソ)
ソフト検査実習開始(平成11年1月14日)から退職申出まで
 
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 平成11年1月14日から同年2月23日までの亡勇士の勤務時間は別紙就業週報記載のとおりであり、夜勤は、同月15日から17日及び25日であって、時間外労働は、同月6日に4時間、同年1月27日に及び同年2月1日に各3時間半、同年1月14日、同月15日及び同年2月5日に各3時間、同年1月25日に2時間半、同年2月2日に2時間、同年1月16日及び同年2月13日に各1時間半であり(時間外労働合計27時間半)、休日勤務は同年1月30日に14時間、同月31日及び同年2月3日に各10時間半、同年1月28日に10時間、同月17日及び29日に8時間、同年2月7日及び21日に7時間、同年1月24日に6時間半であった(休日労働合計81時間半)。なお、同月14日から16日、同月25日から27日、同年2月4日から6日は本来のシフトでは夜勤であったが、昼勤にシフト変更された(甲10の16及び17)。
 亡勇士は、同年1月14日から17日の4日間と、同月24日から同年2月7日までの連続15日間、ソフト検査実習に従事し、通常の社内検査と同様の主要検査項目に沿った数値の検証である精度取りを行っていた(乙49、55)。
 

 揚一は、同年1月23日、BMW購入費用として、亡勇士から50万円借り入れ、原告は、同年2月8日、パソコンの購入費用として、亡勇士から20万円借り入れた(甲48の5、61。原告は、亡勇士が、原告に対し、同年1月20日に予定通りお金が貯まったので短期で借りないかと言った、同年2月8日には再度原告に対し借りないかと尋ね、また、あげてもいいんだと言ったとしているが、亡勇士は、留学費用を貯めるために被告ネクスターに入社したこと、年末にはネクスターからの退職をほのめかしていたこと及びその当時の亡勇士の心労等に照らすと、たとえ家族ではあったとしても、前記のような借り入れの誘いをしたと認定することはできない。)。
 
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 亡勇士は、同月18日、原告東京アパートへ行った。亡勇士は、原告に対し、臭いも味も分からない、疲れてキーボードがかすむ、簡単な単語を何度も打ち間違えると訴えていた(甲61)。
亡勇士は、翌19日、原告に対し、理科の簡単な問題が解けなくなったと訴えた。亡勇士が体重を量ると52kgに減少していたので、原告は驚いた。その後、亡勇士は、原告に対し、被告ネクスターを退職する旨を伝えた(甲61)。
亡勇士は、翌20日、原告と一緒に映画を見て、その後、本件居室に帰った(甲61)。
亡勇士は、翌21日、原告に対し、野菜を摂るためにホットプレートを購入した旨報告した(甲61)。
 

 亡勇士は、同月22日及び23日は、被告ニコンに連絡した上で欠勤した。
(3)
退職申出から亡勇士の自殺までの状況

 亡勇士は、平成11年2月23日、給与振込銀行口座変更の依頼のため電話してきたEに対し、退職したい旨を告げ、その後、原告に対し、その退職申出につき話した。
 亡勇士は、翌24日、前記銀行口座変更の手続きを取るため本件居室に来たEに対し、国家資格及び運転免許取得のために同月末には退職したい旨の申出をした。それに対し、Eは、退職についての契約上の定めもあるので今月末の退職は難しいと思う、被告ニコンとの打合せも必要なので、その退職申出について即答はできない旨答えた(乙65。Eは、同月24日に初めて亡勇士からは退職の申出を受けたと証言し、甲73にもその旨の記載がある。しかし、甲61、乙65及び原告の尋問結果によれば、前記のように同月23日には退職の申出をしていたことが認められ、前記Eの証言は採用できない。)。
 亡勇士は、原告に対し、退職申出に対して被告ネクスターがはっきりしない、明日の夜勤で被告ニコンから退職についての話があると思われるので、自分の気持をはっきり言うつもりである、次の仕事は就職雑誌でよく研究する旨を電話で告げた(甲61)。

 亡勇士は、翌25日夜勤前に、原告に対し、退職したら部屋の荷物を兄のところに送る、運転免許を取る、雇用保険の関係も問い合わせる旨電話で伝えた(甲61)。
 亡勇士は、同日、別紙就業週報記載のとおり、夜勤に就いたが、被告ニコンから、前記退職申出に対する回答を受けなかった。亡勇士は、原告に対し、その旨を電話で伝えた(甲10の17、61)。

 亡勇士は、同月26日から無断欠勤を続けた(甲10の17、乙65)。
 亡勇士は、翌27日及び28日、原告と電話で話した。原告は、同月27日の電話では、亡勇士の声に元気がなく、翌28日の電話では、亡勇士の声に感情がないように感じた(甲61)。

 被告ニコンは、亡勇士が無断欠勤したため、同人に電話をかけたが、つながらなかった(乙65)。
 Eは、同年3月3日、Nに対し、亡勇士の退職申出を伝えた、Nは、その退職申出に対し、Oと打ち合わせた結果、同年4月15日までは勤務してほしい旨の回答をし、また、Eに対し、亡勇士が無断欠勤していることを伝えた(甲73、乙65)
 Eは、同年3月3日及び同月5日に、亡勇士と連絡を取ろうと、同人の留守番電話にメッセージを残したが、同人からの連絡はなかった(甲73)。

 原告は、同月7日、亡勇士の留守番電話に昨日が自分の誕生日であった旨のメッセージを残した(甲61)。
 原告は、同月10日、亡勇士から連絡がないので、被告ネクスターにその旨を伝えた(甲61、73、乙65)。
 Eとその上司は、前記原告の連絡を受け、本件居室に訪れたところ、亡勇士の遺体を発見し、室内のホワイトボードに「無駄な時間を過ごした。」と記載されていることに気づいた(甲73)。

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