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ステッパー検査(乙49、54、55) |
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ア
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社内検査
社内検査は、次の手順に基づき、クリーンルーム内でステッパーの精度や外観(ごみ・汚れ、損傷、異常音等の有無を目視等により判定)を検査するものである。ステッパー1台に要する社内検査の期間は概ね2、3日間(特別仕様のものでも3ないし5日間)である。その社内検査は、被告ニコンが作成した検査マニュアルに従って、顧客のオーダーに応じて進められる。下記検査データの測定では待ち時間が生じるところ、検査員は、その時間に前記マニュアルの検討、下記検査チェックシート作成等の作業を行っている。社内検査の検査技能を修得するには概ね約3か月の実習期間を要する。 |
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(ア)
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検査員がステッパーの付属パソコンを操作して実際にステッパーを作動して、標準化された検査チェックシート(乙50)の項目ごとに検査データを測定し、そのシート所定欄に記入する。 |
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(イ)
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測定されたデータが検査チェックシートに決められた規格の範囲内にあるか否かを形式的に判定し、シート所定欄にチェックする。これによって得られたデータが前記規格の範囲内か否かを判定し、再計測しても適正値が得られないときはNGの判定をする。 |
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(ウ)
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前記判定結果を検査成績書(顧客に提出する成績書)及び検査報告書(不良項目を指摘し、再調整のため調整工程に提出する報告書)に記入し、調整工程に報告する。 |
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(エ)
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社内検査では、1台のステッパー検査を検査員が交替で担当するため、昼夜勤の交替の際の引継を、クリーンルーム内に設置されたパソコンの電子メールにより行っていた。 |
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イ
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納入検査
納入検査は、次のとおり行われており、その検査期間としては、通常2、3週間程度を要する。また、納入検査の検査技能を修得するには概ね6か月間の実習期間を要する。
顧客先にステッパーを搬入・据付後、調整者と検査員が1組になり、検査員が社内検査と同様の手順で検査を実施し、適正値か否か判定し、検査値が適正でなければ、納入報告書を作成して調整者に伝え、調整者が再調整をし、検査員が再度前記検査を行う。この工程を適正な検査値が出るまで繰り返し、適正と判定された場合には、検査成績書を作成し、それに基づき顧客に報告・説明を行い、製品を引き渡す。 |
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ウ
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ソフト検査
ソフト検査は、ステッパーの多彩・精密な機能を制御するために開発された数多くのソフトウェアが正しく機能するか否かをステッパーを実際に作動させて、正常な動作、信頼性、安定性、精度が達成できているか、一つ一つ確認していく検査である。ソフト検査の期間は、そのソフトウェアの開発規模にもよるが、一般的には1、2週間程度の期間を要する。その検査作業は、基本的には、次の(ア)ないし(エ)の4つの確認作業に分類できる。また、ソフト検査の検査技能を修得するには、その性質上、ステッパーに関する一定以上の知識・技能が要求され、概ね1年間の実習期間を要し、まずは(エ)の作業から実習し、その後にその他の作業の実習を行う。ソフト検査は、クリーンルーム内で行われる。検査員は設計者・技術者と電子メールで協議しながらソフト検査を行い、その協議に基づき、ソフト検査報告書を作成する。 |
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(ア)
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動作確認(開発されたソフトに従った正常な動作が行われるか、また、余計な動作がないかの検証) |
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(イ)
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信頼性確認(各機能の持続性、露光動作等の検証) |
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(ウ)
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安定性確認(主要精度の安定性の検証) |
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(エ)
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精度取り(通常の社内検査と同様の主要検査項目に沿った数値の検証) |
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クリーンルーム(甲78の2、乙10、21、25、49) |
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ア
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クリーンルームは、別紙図面記載の「6号館」の1階から3階にかけて2層で設けられており、その面積は下層から2576m2、2464m2、床から天井までの高さは約4mである。 |
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イ
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クリーンルーム内の清浄度は、クラス1000である。 |
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ウ
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クリーンルーム内の温度及び湿度は摂氏23度前後・湿度40%台を保つように配慮されている。 |
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エ
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クリーンルーム内の照明は、ウェハへの感光を避けるため、通常IC製造工程で用いられるものと同様の黄色の蛍光灯を用い、照度は、40から600ルクス程度である。 |
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オ
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クリーンルーム内は、極力塵埃が生じないように、摩擦・摺動部分をできるだけ除去した構造になっている。 |
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カ
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亡勇士が勤務していた当時のクリーンルーム内の作業においては、クリーン着(防塵服)、帽子、クリーン靴の着用は義務付けられていたが、手袋・マスクの着用義務はなかった。
クリーンルームへの入室には、前記のクリーン着(防塵服)、帽子及びクリーン靴の着用のほかに、塵埃を払うために数十秒エアーシャワーを浴びる必要があった。 |
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キ
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クリーンルーム内には、トイレ・休憩施設はなかった。 |
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請負社員・派遣社員の退社(乙4の1ないし5、49)
被告ニコンは、平成10年春先から、前年からのIC市場の不況が長期化するとの見通しに対応し、請負社員・派遣社員の縮小方針を打ち出した。
平成10年当初、亡勇士が所属していた本件製作所第二品質保証課成検係には、請負社員・派遣社員が約50名程いたが、同年1月から同年6月にかけて請負社員・派遣社員7名が自ら退職し、また、被告ニコンは、同年7月末に1名、同年8月末に2名(Fを含む)、同年9月末に3名及び同年12月末に6名の請負社員・派遣社員を契約終了とした〔同部署所属の請負社員・派遣社員の員数は、平成10年7月27日には47名(うち被告ネクスターの社員は亡勇士及びFのみ)、同年10月1日及び11月1日には41名(うち被告ネクスター社員は亡勇士のみ)、平成11年1月15日には35名であった(うち被告ネクスター社員は亡勇士のみ)。〕。 |
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甲61及び67号証並びに原告の供述の信用性
以上の事実認定における亡勇士の原告に対する言動は、主に原告が提出した甲61号証の陳述書、甲67号証の就業週報に記載されたメモ及び原告本人尋問の結果に基づき認定した事実であるが、被告らは、原告が、前記証拠のもとになるとする原告作成のメモを、本件について原告代理人に依頼した後に廃棄している、甲67号証には甲61号証に記載されたような詳細な発言内容が記載されていないなどとして、前記証拠につき、信用性がない旨主張する。
しかし、原告の陳述書及び原告の当審における供述内容は、詳細であり、いずれも不自然・不合理であるとまではいえない。さらに、甲101号証による原告の教師・編集という職業から原告がメモを作成するようになったというメモの作成経緯、家族の日々の出来事を毎日メモ用紙に記載して家族の話題事項にしていたというメモの作成状況及び亡勇士に関するメモについては台紙に貼付したり、内容を記載したりし、不要となったメモは原告代理人への依頼以前の平成11年3月に廃棄し、その台紙の内容を文書にしたため、同年9月ころにはその台紙を廃棄したというメモの廃棄状況は、原告が法律の専門家ではないことに照らせば、いずれも不自然・不合理とはいえないことからすると、前記認定に用いる限度では、甲61号証の陳述書、甲67号証の就業週報に記載されたメモ及び原告本人尋問の結果はいずれも信用できる(もっとも、亡勇士自身の残した記録その他の客観的な裏付けが十分でないことから、控え目な認定をすべきである。)。 |
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争点1(亡勇士の業務の過重性)について |
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亡勇士の業務に関する前記認定事実をもとにその過重性を検討するに当たっては、本件証拠上、次の業務の過重性に関する基礎的な事実を認めることができる。 |
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ア
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本件労働省通達
甲86及び95号証、乙20号証並びに丙21号証によれば、本件労働省通達の概容は次のとおりである(なお、本件は民事上の損害賠償請求であり、労働基準監督署長の労災認定処分を求めるものではないが、両者には共通するところもあるので、検討しておくこととする。)。 |
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(ア)
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基本的考え方について
労災請求事案の処理に当たっては、まず、精神障害の発病の有無等を明らかにした上で、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び固体側要因の各項について具体的に検討し、それらと当該労働者に発病した精神障害との関連性について総合的に判断する必要がある。 |
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(イ)
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対象疾病について
本判断指針で対象とする疾病は、原則としてICD-10第5章「精神及び行動の障害」に分類される精神障害とする。 |
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(ウ)
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判断要件について
次にa、b及びcの要件のいずれも満たす精神障害は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する疾病として取り扱う。 |
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a
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対象疾病に該当する精神障害を発病していること。 |
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b
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対象疾病の発病前概ね6か月間の間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること。。 |
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c
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業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと。 |
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(エ)
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判断要件の運用について
労災請求事案における業務上外の判断は、まず、精神障害の発病の有無を明らかにし、業務による心理的負荷の強度の評価、業務以外の心理的負荷の強度の評価及び個体側要因の検討を行い、それらと当該精神障害の発病との関係について総合的に判断する。
すなわち、業務以外の心理的不可、個体側要因が認められない場合で、業務による心理的負荷が「職場における心理的負荷評価表」(以下「本件評価表1」という。)の総合評価が「強」と認められるときは、業務起因性があると判断して差し支えない。業務以外の心理的負荷、個体側要因が認められる場合で、業務による心理的負荷が本件評価表1の総合評価が「強」と認められるときでも、前記b及びcの要件をいずれも満たすか総合評価して判断する〔業務以外の心理的負荷が「職務以外の心理的負荷評価表」(以下「本件評価表2」という。)による心理的負荷の強度が「V」(日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題とならない程度の心理的負荷である強度は「T」、人生の中でまれに経験することもある強い心理的負荷である強度は「V」、その中間に位置する強度は「U」とする。)に該当する出来事がある場合では、その心理的負荷が極端に大きかったり、その出来事が複数認められるなど業務以外の心理的負荷が精神障害の発病の有力な原因となったと認められる状況がなければ業務起因性があると判断して差し支えない。個体側要因に問題が認められる場合には、精神障害の既往症や生活史、アルコール等の依存状況、性格傾向に顕著な問題が認められ、その内容、程度から個体側要因が精神障害発病の有力な原因となったと認められる状況がなければ業務起因性があると判断して差し支えない。〕。 |
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(オ)
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業務による心理的負荷の強度の評価について |
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a
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本件評価表1を指標として、当該心理的負荷の原因となった出来事及びその出来事に伴う変化等について総合的に検討する。本件評価表1は、出来事が一般的にどの程度の強さの心理的負荷と認められるかを判断する「平均的な心理的負荷の強度」欄、出来事の個別状況を斟酌し、その内容等に即して心理的負荷の強度を修正するための「心理的負荷の強度を修正する視点」欄及び出来事に伴う変化等はその後どの程度持続、拡大あるいは改善したかについて評価するための「出来事に伴う変化等を検討する視点」欄からなっている。 |
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b
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本件評価表1の「平均的な心理的負荷の強度」欄の「具体的出来事」は、職場において通常起こり得る多種多様な出来事を一般化したものであり、その中には、「仕事内容・仕事量の大きな変化があった」(心理的負荷の強度U)、「勤務・拘束時間が長時間化した」(心理的負荷の強度U)、「勤務形態に変化があった」(心理的負荷の強度T、ただし、修正視点として「交代勤務、深夜勤務等変化の程度等」がある。)、「退職を強要された」(心理的負荷の強度V、ただし、修正視点として「解雇または退職強要の経過等、強要の程度、代替措置の内容等」がある。)という事項がある。 |
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c
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「出来事に伴う変化等を検討する視点」欄には、「仕事の量(労働時間等)の変化」、「職場の物的、人的環境の変化」「支援・協力等の有無」がある。 |
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d
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本件評価表1の総合評価が「強」と認められる場合は、(1)「平均的な心理的負荷の強度」が「心理的負荷の強度を修正する視点」に基づく修正後の評価が「V」であり、かつ、「出来事に伴う変化等を検討する視点」による評価が相当程度過重である場合、(2)「平均的な心理的負荷の強度」が「心理的負荷の強度を修正する視点」に基づく修正後の評価が「U」であり、かつ、「出来事に伴う変化等を検討する視点」による評価が特に過重である場合、(3)「平均的な心理的負荷の強度」が「心理的負荷の強度を修正する視点」に基づく修正後の評価が「V」とされた出来事のうち、生死に関わる事故への遭遇等心理的負荷が極度の場合、(4)業務上の疾病により6か月を超えて療養中の者に発病した精神障害の場合、(5)極度の長時間労働の場合(例えば数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働により、心身の極度の疲弊、消耗を来し、それ自体がうつ病等の発病原因となるおそれのある場合)とされている。 |