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リストラ
被告ニコンは、平成10年3月の決算で約100億円の赤字を出した。そのため、大規模なリストラを行った。そのため、外部労働者である派遣社員は、真っ先に人員削減の対象となった。
前述のとおり、被告ニコン熊谷製作所においては、平成10年7月頃に大規模なリストラが行われた。勇士が、平成10年7月の仙台出張から戻ってみると、同期の被告ネクスターのニコン派遣社員は、ほとんどが被告ニコンの熊谷製作所から去っていた。平成10年7月27日現在の被告ネクスターからの派遣社員は、半露光品証部第2品質保証課には2名しかいない。10月以降は、被告ネクスターからは1名である(乙4の1〜3)。
勇士は「派遣社員って、使い捨ての便利な社員ってことなんだ」「使い捨てられないためには、期待された仕事をこなし続けるしかない。」と、精神的プレッシャーを感じていた。
勇士は、元来、他人から頼まれたことに対し、断らずに引き受ける性格であったが、派遣社員ゆえの弱い立場であったために、処理できる限界を超えた仕事を依頼されても、仕事を断ることが一層困難となり、極限まで働くことになったのである。
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ソフト検査
勇士は、遅くとも平成11年1月に、一般検査より一層高度で複雑な業務であるソフト検査に従事することになった。
また、勇士の勤務時間も増加した。勇士は、平成11年1月9日から残業を行い、同月12日には4時間の残業を行い、翌日の0時58分まで勤務している。その後も14日、15日と3時間の残業を行い、17日には休日出勤をしている。その後、6日間休んだ後、1月24日から後述の15日間連続勤務に従事している。
勇士は、この時期、原告に対して、「目が重苦しい。」「頭痛がひどい。」「メールがいつまでもきりがない。」「自分一人だから早く済ませたかった。」「メールは時間がかかる。」「電子メールに時間がかかった。結局、昨日は、早く帰るつもりが、なかなか帰れず、休日出勤なのに午後9時を過ぎた。」と述べている(甲61、28頁)。
このように、ソフト検査は、勇士に対する肉体的・精神的負担を増加させた。
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引越し |
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1
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Pコーポ
勇士は、同じ被告ネクスター勤務であったByと、埼玉県熊谷市※※※※「Pコーポ206号室」(以下「Pコーポ」という)にて、同居していた。Byは、前記被告ニコンのリストラにより、平成10年9月ころニコン熊谷製作所での勤務を解除され、被告ネクスターの新潟営業所に転勤となった。そのため、Pコーポ206号室から転出した。
そのため、勇士はPコーポに一人で住むことになった。
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2
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被告ネクスターからの引越し要請
ところが、平成10年12月15日、勇士は被告ネクスターから、2人用の部屋であるPコーポから、1人用のアパートに引っ越すように要請された(甲61、23頁)。
被告ネクスターがこのような要請をしたのは、これらのアパートの家賃は被告ネクスターが負担していたので、経費面から2人用のアパートに1人で住まわせるよりは、1人用のアパートに住まわせるのが合理的であると判断したからであると考えられる。
勇士は、同日、原告に対し電話で「今月中に引越し。4万2000円から4万7000円の部屋だって」と報告している。
ただし、この時点では、具体的にどこに転居するかは決まっていなかった。
平成10年の年末、東京の実家に帰ってきた際、勇士は、転居先が未だに決まっていないことについて不満を述べていた。
しかし、平成11年1月5日、突然、被告ネクスターからE証人を通じて、勇士に対し、引っ越すように要請があった。勇士は、同日に、被告ネクスターの指示に従い引越した。引越し先は、勇士が死亡した場所である熊谷市※※※※番地「Bホーム103号室」(以下「Bホーム」という)であった。
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3
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新居についての勇士の感想
勇士は、このBホームについて、住む部屋を選ぶことができなかったことや、部屋が狭いことや、コンロが電熱器のため加熱するのに時間がかかることなど、不満であった。
勇士は、原告に対し、この新居について、「年の暮れまでに休日がかなりあったので、そこに引越しの都合がつくらしいと待っていたが、何の話もなく、正月休が明けてから引越しとなった。本当にがっかりした。仕事を休んで引っ越すのだろうか。最初は、2つの部屋を見に行って、選択するということで楽しみにしていたが、何時の間にか日時がどんどん遅れて電話での決定となってしまった。実際に入ってみると、ガスではなく電気コンロで、火力が弱すぎて、何を作るにも時間がかかってイライラする。さらに収納ベッド式なので、その分、収納しているスペースが部屋にできて狭い。疲れて帰っても落ち着かない部屋になった。」と感想を述べている。
このように、新居自体が、満足の行くものでないうえ、急遽引越しをすることは、勇士の精神的なストレスを高めた。
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